青山学院大幅アップ、法政大幅ダウン、全体には横ばい
早慶は志願者ダウンだが想定の範囲
空前の経済危機下における09年度入試が終わった。この不況が続けば、私大の志願者数は今後ますます厳しいものになるだろう。首都圏主要大学の志願者動向を見ると、青山学院大の大幅アップ、法政大の大幅ダウンを除けばほとんどが想定内の志願者減か横ばいになっている。私立大学全体の約4割が定員割れを起こしている現状を考えると、この数字は驚異に近く、地方と中央の格差がさらに拡大している。もちろん、これらの有力私大といえども、少子化による受験生の絶対数減少と経済不安で、常に大幅な志願者ダウンのリスクにさらされている。ここでは、首都圏の難関私大(早慶上智・MARCH)について、志願者数と簡単な分析をしてみる。早稲田大は全学トータルの志願者が125,219人(08年)→121,166人(09年)で4,083人の減少。一般が105,503人→101,814人で3,689人減、センター利用が19,746人→19,352人で394人の減少という内訳になっている。4,000人以上の減少は数字としみれば大きいが、毎年これだけの大規模入試を行ってこの程度のマイナスで済むのは、経済不況や生徒減を考慮すると、大幅減とは言えないだろう。各学部で志願者が少しずつ減少しており、トータルで上記のようなマイナス減となっている。ここでは細かな分析はまだ出せないが、高校の進路指導部の話を聞いてみても、早稲田大は学部ことの難易差が広がりつつあり、学部によってはかなり入り易くなっているのは確かである。
慶応大は、昨年旧共立薬科大学との合併で薬学部が新設され、4,888人の志願者を集めた。これによって慶応大は、既設の医学部・看護学部と合わせて医療系3分野をカバーすることになった。今年は、これといった変更や話題もなく全学の志願者は53,316→49,889人で3,427人の減。もともと、慶応大は入試改革の動きは少なく、入試のシステムや科目を変更しなくても志願者を確実に確保できるブランド力がある。3,427人の減少もトータルで見るならば、想定の範囲内だろう。
上智大は23,799→24,229人で430人の増。もともと入試の規模が小さいので志願者も毎年2万〜2万5千に間におさまっている。センター利用を全く行っていないし、入試の変更もほとんどない。その点を考えると、2万の大台を割り込まないでいる上智大の人気も依然根強いといえよう。ただし、難易では早慶との間の差は広がりつつあり、「早慶上智」という括りは崩れつつある。
MARCHは学部増設ラッシュが一段落でこれからが試金石
MARCHグループは学部の増設ラッシュが一段落し、これから各大学の真価が問われる。確かに、新しい学部が出来れば受験生がその大学を受ける機会が増え、当然その分の志願者が増える。さらに学部の増設は、その大学のが新しい領域にチャレンジしようとする姿勢を対外的にアピールする効果も生みだす。しかし、それを一時的な志願者アップだけではなく、実質の伴った内容を展開していかなければ逆にコスト負担として跳ね返ってくるのである。
MARCHと早慶上智との大きな違いの一つに、センター試験依存率の差がある。センター試験依存率とは総志願者のうち、センター利用の志願者が占める割合のことをそう呼んでいるのだが、MARCHの各大学は、早慶上智と比較してこの率が高い。今年は、慶応大が6.9%、早稲田大が16.0%なのに、MARCHはすべてが5%を超えている。特に中央大はほぼ半分をセンター利用の志願者が占め、立教大も約35%を占めている。このクラスの大学のセンター利用はほとんど国立大第一志望者が併願しており、歩留りはせいぜい1割で、2割までいくケースはほとんどない。つまり、センター利用による志願者増は実質的なものではなく、この割合の高低は入試の健全度を測る一つの目安となる。
さらにMARCHで目立つのは、06年度から立教大が始め、明治大と法政大が追随した全学一斉方式の導入である。今年は中央大が導入した。この方式の採用は同じ受験生が同一学部複数出願し、合格を複数手にするケースが多くなりやすい。見かけの志願者が増えているだけだが、それでも対外的には志願者アップに写るというメリットのほうが大きいのである。
これらを踏まえてMARCHの各大学の動向を見ていくと、まず、青山学院大は、このところ志願者の伸び悩みで停滞している印象を与えてきたが、昨年総合文化政策・社会情報という2学部を増設して2,419人の増、さらに今年は教育人間科学部の増設と新規のセンター利用で7,720人の大幅アップになった。すでに青山学院大は2012年から文系7学部を渋谷に移す計画を昨年末発表している。4年間渋谷キャンパスで過ごすとなれば、一気に人気が回復し、難度も上がる可能性がある。相模原に広大なキャンパスを構えたばかりなのに、結局都心に回帰せざるを得ない。
青山学院大の移転によって、MARCHのなかで郊外のみにキャンパスを置くのは中央大だけとなる。中央大も立地的な不利から苦戦が続いていたが、、07年あたりから志願者増に転じた。伝統校の強みで一定の下げ止まりまできた感はある。今年度は80,681人→84,541人で3,860人のアップになった。ただ、中央大の最大の問題点はセンター依存率が非常に高いことである。昨年は総志願者80,681人のうち41,080人がセンター利用志願者で、ついに依存率は50%を超えた。今年は45.9%だが、全学一斉方式も導入している。見せかけの志願者アップという要素はさらに濃くなっている。受験生の質という面から考えると志願者数増も手放しでは喜べないのではないか。
法政大は昨年、工学部を理工学部と生命科学部に改組し、グローバル教養学部を立ち上げた。さらに今年は、スポーツ健康学部を立ち上げ、これで15学部を擁する総合大学となるが、志願者97,017人→85,686人で11,331人の大幅減だった。法政大は07年から全学一斉方式も導入しており、大学改革と入試改革の両面から志願者増を目指してきた。ただ学部増設には限界があり、これだけ一気に増えた学部の負担がすでにあらわれている。学部増設で伸びてきた大学だけに、これからどう乗り切るかが課題だろう。
明治大の総志願者は8,946→106,261人で2,685人のダウンだが、今年も10万の大台を維持した。今年、志願者が10万を超えたのは早稲田大と明治大のみである。明治大の全学一斉方式は、同一問題で複数の学部に出願できるというサプライズ・システムだが、今年の全学一斉方式は18,382人で昨年より713人増えている。最後に立教大は、志願者71,382人→70,941人で微減。昨年、異文化コミュニケーション学部を増設して、立教大の学部数も10になった。このうち、観光・コミュニティー福祉・現代心理の3学部が新座キャンパスに所属している。立教大は入試上手で、近年大幅な志願者減になったことはほとんどなく、早め早めに手を打っている。今年度入試において、全学一斉方式は前年より926人減、センター利用の志願者は横ばいでセンター依存率は4.7%だった。
—安田教育研究所より— |