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<四> 応用解法(記述設問中心)~私立上位校+国公立対応~

  • 「国語」は本来縦書きですが、レイアウトの都合上、横書きとしました。御了承下さい。

前章の[基本解法(選択肢設問中心)](センター試験+私大中堅校対応)に於いて、「鵺なる現代文」を捉える「解法」の一端を垣間見て頂けたであろうか。どこの学校でも必須の「選択肢設問」の大原則[「正しいもの」を「選択する」のではなく、「不適当なもの」を「消去」し、残った「よりマシなもの」=「最も適当なもの」が「正解」となる]は、改めて肝に銘じて欲しい。さて、本章では「記述設問」(「論述」「小論文」も含む)の「解法」の一部を紹介したい。無論、「記述設問」が出題されるのは一部の私大や国公立に限られる。 が、記述は出ないから関係ないや、と言う勿れ。 「記述する」すなわち「文章にする」とは、自らの「思考」をまとめるということであり、その過程は当然、あらゆる「設問」を「思考」する上でとても重要なこととなる。従って、「記述設問」の「解法」を習得し応用できることになれば、「選択肢設問」にも大いに寄与するということになる。

<四> 応用解法[記述設問中心]~私立上位校+国公立対応~

[応用解法(記述設問中心)]
以下、「記述設問」(ここでは「事項記述」や「抜き出し記述」は除く)の「基本的解法」のいくつかを紹介していく。

① 「本文未読者」に向けて記述せよ?!

解答者(受験生)は当然、設問本文を読んでいる。内容を理解している(ハズ)ので、それを「周知の事実」と錯覚する場合がある。「これは言わずもがな」と ばかりに「必要な説明」を端折ってしまうことがある。すると、不十分な「記述」となり、減点されてしまう。そこで、採点者は本文を読んでいないと心得なく てはならない。本文未読者であっても完全に理解できるように、本文で説明されている事項は全て記述し、完結した文章として「記述」を仕上げなくてはならな い。そうでないと、分かっていながら減点されるという結果になってしまう。
更に、解答者と採点者の間には暗黙の了解などは存在しないということも 認識すべきだ。解答者のことを熟知している者(高校の教科担当教諭等)ならいざ知らず、入試の採点者は解答者のキャラを全く知らない。従って、「こうした ことを述べようとしているのだろう」などと忖度してくれないのだ(語彙、文法等の誤りも同様に類推、訂正などしてくれない)。誰が読んでも解答者の意図が 正しく伝わるような「記述」としなくてはならないのだ。

② 「記述」にはタブーが存在する?!

前述の「本文未読者に向けて記述せよ」からも導かれるが、「記述」にはしてはいけない「タブー」(禁忌)がある。先ずは、本文の「指示語」をそのまま使ってはならないということだ。「指示語」は当然、何かを指し示しているのであって、その指し示す事項を述べなければ内容は理解できない。従って、本文の「指示語」は指し示す事項に換言しておく必要がある。尚、「抜き出し設問」でも、「指示語」が単独して存在している部分が「正解」となることは原則的にはないので注意すること。そして、本文の「比喩」もまた同様にそのまま使ってはならない。「比喩」は本文内容に則して理解されるものであって、そのままでは理解しづらいのだ。「比喩」は開いて換言しなくてはならない。他に「重複表現の禁止」等もある。

③ 全ての「記述」は20字で完結する?!

「記述(論述)設問」には様々なバリエーションがあり、「制限字数」も20~30字程度から200~300字以上(「小論文」では無論それ以上)のもの、「制限無し」(国公立に多い)の場合もある。何とも捉えどころがないようだが、採点上のコア(核心)となる重要な要素は20~30字程度で完結する(設問によっては「ひと言」の場合さえある)のが通常だ。「換言記述」であれば端的な「換言事項」、「指示語説明記述」であれば指示語の「直接的指示事項」、「理由説明記述」であれば「直接的理由」等、「正解」のポイントはその程度なのだ。
要するに、「選択肢設問」での各選択肢説明の「末尾部分」だと考えればよい。従って、先ずはそのコアとなる要素を押さえ、その上で「制限字数」に応じて修飾部を加えていくということになる。採点ではコアとなる必要な要素が「記述」されていて初めて得点となるのであって、どれほど修飾部が的確であってもコアが外れていればゼロとなってしまう。逆に、コアさえ適切であれば、他はどうあれ途中点を得ることができるということだ。それぞれの「設問」が求めている核心的要素は何か? それを捉えて、簡潔且つ端的なコアとなる要素を「記述」することで、「記述(論述)設問」は必ず得点源となるのだ。

④ 「積み上げ方式」でパーツを組み立てよ?!

前項の「核心的要素」を捉えた上で愈々「記述」していくわけだが、コアとなる要素を末尾とすることが大原則だ。先ず末尾を調え(「文末表現」も「設問条件」に合わせる)、そこから修飾部となる「説明的要素」を、「制限字数」に応じて(「字数制限なし」の場合は本文に説明されている必要な要素を過不足なく網羅する)積み上げていく。その際、重要度に応じて積み上げていくことがポイントとなる。
では、実際の入試問題で「解答」を作成してみよう。

2013年度北海道大学[総合入試(文系・前期)]「国語」の「大問一」を教材とする。下のリンクからダウンロード可能。
http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/13/ho1-31p.pdf

「問四」[傍線部C「天地自然に関する壮大な形而上学」を五〇字以内で説明せよ]という「換言記述」だ。
コアとなる要素は当然、「形而上学」を如何に換言するかということだ。一種の比喩表現なので、原意を想起したい。[形而上⇔形而下=抽象的⇔具体的](この程度の認識は基本的「語彙力」として必要)であって、ひとまず「抽象的な考え方」とでも換言しておく。その上で、本文に則した換言を考えることになる。 「段落相互関係の法則」(「論説文」の「本論部分」に関する基礎的解法のひとつだ)から、傍線部Cの段落は前段落(本居宣長の「具体例」)に対する筆者の「一般的説明」として対応しているので、前段落に注目する。すると、「壮大な屁理屈」という箇所に気付くはずだ。「壮大な」という修飾部も同じなので、「屁理屈」が本文に則した換言となる。ただ、「屁理屈」そのままでは必ずしも「換言」としては相応しくないので(一種の比喩表現とも捉えられる)、筆者の意図を考慮して「非現実的な理屈」としておく。
「解答」の末尾となるコアは「非現実的な理屈」として、残りの「天地自然に関する壮大な」を換言し積み上げていく。重要度を考慮して修飾部となる「説明的要素」を積み上げるのだが、何といってもまず必要な事項は、「何の」(何に対する)「非現実的な理屈」なのかということだ。傍線部Cの前段落、「壮大な屁理屈」の直前に「この」という指示語があり、指し示しているのは前の行の「天地自然の道」だと分かる。傍線部Cの「天地自然に関する」という部分に対応しており間違いない。ここまでで「天地自然の道という非現実的な理屈」(16字)という「記述」となる。
次に、「天地自然の道」の内容は何?となる。それは、「壮大な屁理屈」の次文で説明されている。[天地自然の仕組みを「理」によって説き、人が踏み行なうべき道の徳を明らかにする、というやり方]ということだ。従って、前述の「天地自然の道」をこの内容に換言し、「天地自然の仕組みを理によって説き、人が踏み行なうべき道の徳を明らかにするという非現実的な理屈。」(47字)となる。
これで完成、と早まってはいけない。「換言記述」では必ず「代入確認」することが鉄則だ。傍線部C部分に作成した「記述」を「代入」するのだが、ここで重要なのは「傍線部一文一部の法則」(前章参照)、傍線部Cは「そうやって作られている。」と結ばれている。無論、指示語の「そうやって」が気にかかる(「指示語は必ず開く」というのも大原則)。「そうやって」→どうやって? と開いていくと[「上から見下ろして何でも知った気になる」という「心地のいい」「見晴らしはどこにもない」「となれば無理にも作り上げる人間が出てくる」]ことによってということになる。ということは、何故どうして「無理にも作り上げる人間が出てくる」のかという「理由」が傍線部Cに必要となってくる。その「理由」は何か?傍線部Cの3行前~に[「見晴らしが可能なら」「いろいろな行動の上で圧倒的な優位に立てるだろう」]とある。この「理由」を次なる修飾部の「説明的要素」として積み上げる。更に、傍線部Cの「壮大な」も換言しておきたい。前段落に[「天地自然の道」は「人々を引き付け、酔わせるのに充分過ぎる力を持っていた」]とあるので、アレンジする。以上をまとめると「人が行動の上で圧倒的な優位に立つために、天地自然の仕組みを理によって説き、踏み行なうべき道の徳を明らかにするという充分過ぎる力を持った非現実的な理屈。」(75字)となる。
最後に「字数調整」だ。重複を避け捨象していく。ひとつの解答例を示しておく。「人が優位に立つために、天地自然の仕組みを理で説き道徳を明らかにする、という力を持った非現実的な理屈。」(50字)。
以上のように、「記述」は「パーツ」を重要な順に積み上げていく作業ということになる。その際、最も重要な「パーツ」(コアとなる要素)を末尾とすることが肝要だ(採点者は先ず末尾だけで正否を判断する)。 つまり、下→上に積み上げていくわけだ。[末尾「コアとなる要素」]+[重要度A「説明的要素」]+[重要度B「説明的要素」] +[重要度C「説明的要素」]……となり、逆から「記述」を完成させていくということだ。

⑤「制限字数」は最大のヒント?!

前項のように「記述」を作成する際、どこまで積み上げていけばいいのかが問題となる。当然、「過不足なく」ということだが、その判断は意外と難しい。そこで、「制限字数」に注目する。「制限字数」は単なる「制限」ではなく、「その字数分の要素が必要だ」というヒントになっているということだ。従って、末尾の「コアとなる要素」を確定した後、「制限字数」の残りに合致させて重要度に従い他の「説明的要素」を積み上げていくことになる。ということは、たとえば「本文のある箇所をまとめよう」と考えた時、その箇所が「制限字数」にあまりにも合致しない(過不足共に)場合は「誤り」だと判断し、考え直すべきなのだ。

⑥「早稲田国語」はマルチで臨め?!

実践演習を続けよう。私大の現代文では最難関ともいわれる早稲田大学法学部、例年、最終設問に100字以上の「記述」が「関門」として待ち構えている。2013年度の「大問三」。 下のリンクからダウンロード可能。

http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/13/w06-31p.pdf

「問三ノ七」[傍線部7「歴史的責任は、だから、未来へ向かっての変革の仕事とかかわっている」とある。この「変革の仕事」とは具体的にはどのようなことか。本文全体を振り返りつつ、一〇〇字以上一三〇字以内で記述せよ]という「論旨換言記述」だ。
「制限字数」やいくつかの「設問条件」を考慮すると、やはり一筋縄ではいかない。多面的且つ多角的(マルチ)に捉え、思考する必要がある。
先ずはコアとなる要素を確定する。「変革の仕事」の具体的な換言だ。直前の接続詞「だから」に注目して(「接続詞」には常に注意せよ)、傍線部7を整理する。[「歴史的責任は」、結果として(だから)、「変革の仕事」とかかわっている]ということで、要は「歴史的責任」の「結果」が「変革の仕事」となるわけだ。では、その「結果」の具体的内容は何か。 それは傍線部7の前文に述べられている。[ (「歴史的責任は、私を」)「民族・国民的なアイデンティティから解放してくれる」]というのが、「結果」の具体的内容だ。但し、ここで注意しなくてはいけないのは修飾部にある「変革」の原意だ。「変革」という以上、A→Bという変化を示す必要がある。つまり、前述の「解放してくれ」た(A)後のこと(B)も説明しなくてはならないのだ。「変革」の修飾部として「未来へ向かっての」とあるので、その「未来」が「解放」後の姿(B)ということになる。それは何か?傍線部7の1行前に、[「歴史的責任」を「直視する」前提として「両者ともに国民や民族といった立場ではない別の関係に移行しうるときにのみ」]とあり、更にその前文には[「中国人」と「日本人」という対比以上の、異なった構図へと潜在的に開かれた関係が予想されている必要]とある。この両者はほぼ同義であり、「未来」の姿だと考えていい。ここまでで、コアとなる要素としての「変革の仕事」の具体的な換言はほぼ完成となる⇒[民族・国民的なアイデンティティから解放され、それまでの関係とは異なる構図へと新たに移行させるということ。]( 「未来へ向かっての」も「新たに移行」と換言しておいた)ということだ。このコアとなる末尾部分で50字程度だ。
次に「前半」を積み上げていくことになる。「歴史的責任」の「結果」が「変革の仕事」となるのだから、当然、「歴史的責任」の「説明」をすることになる。ここで注意すべきは「本文全体を振り返りつつ」という設問条件だ。要は本文の「論旨を踏まえよ」ということだ(※こうした「条件」がなくとも「論説文」に於いて「序論部」及び「結論部」に関する設問では、必ず「論旨直結と心得よ」が「解法」の大原則)。 では、本文全体を俯瞰してみる。筆者は、[「戦後生まれの日本人」は「法的な」戦争責任は問われずとも「歴史的な責任を逃れることはできない」(1・2段落)との前提で、「歴史的な責任と自己画定の関係」を論じていく(3段落)。 そして、「歴史的な責任」は、たとえば、「日本人の戦争犯罪の責任」への「中国の知人」といった他者からの「詰問」を「引き受ける」ことだとしている(3・4段落)。その際、「とりあえず日本人である」ことを「引き受ける」ことが、「応答義務」を果たし「応答可能性の回路」を作るという「歴史的責任の第一歩」になると捉えている(6段落)。更に、「詰問している他者がいるからこそ」「歴史的責任に直面せざるをえない」のであって、「そのような他者と共生することは」「歴史的実存の掛け替えのない事実性」だ(7段落)とした上で、「歴史的責任」を定義づけていく。曰く、「歴史的責任を負うということは」「個人としての応答の義務を引き受けることであり、応答の発詰行為の主体として」「自己画定をとりあえずおこなうこと」(8段落)だ]と。そこから、前述の最終段落、傍線部7へと論を収斂させていっているのだ。 以上の「要約」を捨象した「論旨」を、「歴史的責任」の視点でまとめ、末尾(前述下線部)へと繋げて字数調整をすれば、本設問「記述」の完成となる。解答例は以下の通り。
[直接関知しなかった戦争責任等に就いて他者から詰問された場合、とりあえず「日本人」であると自己画定し詰問を引き受けて応答義務を果たすという歴史的責任を負うことで、民族・国民的なアイデンティティから解放され、以前の関係とは異なる構図へと新たに移行させるということ。](130字)。
如何だったろうか? 流石、私大の雄、手強かったに違いない。だが、「解法」に則り、順を追って作成すれば、充分に太刀打ちできるはずだ。ポイントは、如何に多面的且つ多角的(マルチ)に思考できるかだ。上記の手順を改めて自ら整理し、自分なりの「解法」を「虎の巻」として欲しい。

以上、「記述設問」の「解法」のいくつかを説明してきたが、理解してもらえただろうか。「解法」はまだまだ多数ある。 しかも、「記述力」は受験生各位が実際に「記述」した答案を、添削指導を受けながら何度も修正し自ら完成させていくことを繰り返して習得できるものだということは肝に銘じておいて欲しい。決して、「解答例」(模範解答)を理解し納得したからといって身に付くものではないということだ。

尚、ひとつお詫びをしなくてはならない。「予告」では本章で[「慶應小論文」は「本文」に拘泥するな?!]という項目も予定されていた。早稲田の次は当然、「慶應小論文」と考えていたが、単に「記述」の延長として「小論文」の「解法」を説明することは紙幅も含めて無理があるということに思い至った。「小論文」は慶應に限らないわけでもあり、やはり、別章を立てて説明をしたいので、申し訳ないが本章では割愛させて頂いた。御了承願いたい。
ということで、次章の「予告篇」。 第5章は急遽予定を変更し、[「慶應小論文」を中心とした「小論文」対策]とさせて頂く。

※当初の予定では、本稿「王道現代文」は次回の第5章で終了予定だったが、残っている[高度解法(記述設問中心)](東大等旧七帝大対応)も含め、まだまだ続くかも?!(無論、受験生諸君の求めがあればだが……)。

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