都立は安全志向

10月中に行われた進研「Ｖもぎ」の集計がまとまった。参加者は前年の約97％と、都内公立中学3年生の減少の割合（約4％）に近い値だった。
例年、10月の模試では、受験生は実力以上の高校名を志望校欄に記入することが多く、高校側からみると、志望者が実際の受験層より低めに収まる傾向があ る。ところが今年は、志望者の平均偏差値が前年よりアップした高校が目立ち、受験生の安全志向を反映した結果となっている。

「都立もぎ」の学科別志望件数の前年比を調べると、普通科学年制…96％、普通科コース制…199％、普通科単位制…100％、商業科…98％、工業 科…112％、農業科…109％、総合学科…108％と、コース（外国語）や工業（デザイン）、農業（園芸、動物）などの実業志向も感じられる。

一方、学力段階別の志望者分布では、最上位レベルの減少と、最下位レベルの増加が明らかであった。
学力最上位の受験生のなかには、高倍率で特別な準備の必要な自校作成校を敬遠して、ワンランク下の学校に移る者が増えている可能性がある。しかし、駒場、竹早など、来年度学級減となる学校に移れば、さらに高倍率が待っている。
模試を受ける者が少ない下位レベル志望者層で最下位レベルが増えたことは、レベルを落としてでも確実に都立へ入りたい受験生の増加と、下位にも生徒指導や進路指導のしっかりした学校が生まれていることを伝えている。
前年より志望者数を増やしたのは、普通科学年制では、①竹早（男子）72名増、②東（男子）68名増、③八王子東（男子）67名増、④武蔵野北（女 子）54名増、⑤調布南（女子）41名増の順。単位制や専門学科等では、①国分寺76名増、②多摩科学技術41名増、③第三商業37名増、④大泉桜28名 増、⑤墨田川27名増の順。
竹早の増加は前述の理由のほかに、土曜講座の実施がある。八王子東は、模試の会場を近隣地区に増設したため。武蔵野北と国分寺は、募集減となる武蔵からの流入があったものとみられる。調布南は大規模改修を行っている。
新規開校の王子総合は90名を集め、2年目の多摩科学技術も増やしている。このほか雪谷、武蔵丘、東など、地元に帰る動きも見られる。
全体から推して来春の都立の倍率は、高倍率となった前年を上回る恐れがある。

私立の志望件数増加

私立の集計は延べ件数で調べた。今年の総件数は66,170件で、前年より3千件近く増加。昨年からの傾向だが、併願校を多めに考える受験生が増えている。

志望件数の順では、①豊島学院…1990件、②関東第一…1919件、③東洋…1837件、④國學院…1831件、⑤錦城…1716件、⑥八王子…1686件、⑦日大鶴ヶ丘…1604件、⑧杉並学院…1453件と、上位の学校は昨年とまったく変わっていない。
前年の増減では、全体の約56％の学校が増加、その約半数が30件以上増やしている。志望件数600件以上で、増加率の高い順では、①東洋…29.3％・ 416件増、②淑徳巣鴨…18.0％・106件増、③淑徳…17.7％・96件増、④実践学園…17.5％・123件増、⑤大成…17.3％・126件 増、⑥桜丘…16.6％・130件増、⑦関東第一…16.1％・266件増、⑧昭和第一学園…16.1％増・111件増など。
募集を停止する海城の志望層の一部は、開成（58件増）や城北（31件増）に移った模様だが、他の上位男子校で件数を増やした学校は見あたらない。共学となった貞静学園は前年の2倍超の317件を集めたが、特進のみ共学の目黒学院は伸びていない。
一方、志望者の平均偏差値が上がった学校が、特進クラスを中心に目立っている。

志望件数30件以上で、偏差値がアップした順では、①武蔵野女子学院（薬学・理系）…5.5ポイントアップ、②成立学園（特進Ｇ類男子）…4.9ポイント アップ、③順天（英語男子）…4.9ポイントアップ、④朋優学院（特進男子）…3.8ポイントアップ、⑤成立学園（特進Ｇ類女子）…3.4ポイントアッ プ、⑥立志舎（平日男子）…3.4ポイントアップ、⑦白梅学園（選抜女子）…3.4ポイントアップ、⑧駒場学園（国際女子）…3.3ポイントアップ、⑨郁 文館グローバル（国際男子）…3.3ポイントアップ、⑩共栄学園（特進男子）…3.3ポイントアップなど。駒込（特進）、広尾学園（特進Ⅰ類）、多摩大目 黒も上昇している。

情報提供：安田教育研究所