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<五> 小論文(論述設問)~慶応大対策~Ⅰ

  • 「国語」は本来縦書きですが、レイアウトの都合上、横書きとしました。御了承下さい。

本章では「小論文」を考えてみたい。「小論文」は現在でも数多くの大学入試に課せられている(特にAO入試や医歯薬系ではほぼ必須)。そして、今後更にその重要性が増すと考えられる。先般、2016年度からの導入が発表された東京大学初の「推薦入試制度」では、出願段階での「関心分野に関する論文等の提出」が課せられているし、同様に同年から実施される京都大学の「特色入試」でも11学部(学科)中、7学部(学科)で「小論文」による選抜がある。また、新しい学習指導要領では「思考力・判断力・表現力等の育成」を重視し「レポートの作成」等の「学習活動を充実させる」としている。当然ながら、大学側もそれに対応した選抜方法として「小論文」を更に重視することが予想される。そもそも、大学入学後に求められているのは「論理的思考力」と「表現力(プレゼンテーション能力)」であり、レポート提出を「コピペ(コピー&ペースト)」で済ますようになっては顰蹙を買うだけだ。勿論、大学のみならず社会人としても「論理的思考力」と「表現力(プレゼンテーション能力)」が求められるのはいうまでもない(「就活」はいわずもがな)。要は、「小論文」を学び「論述力」を身につけるということは、「人間力」を高めることに繋がるわけだ。

<五> 小論文(論述設問)対策Ⅰ

以下、「小論文」及び「論述設問」の「実相」に迫ってみたい。

① 「小論文」は「論説文」?!

先ずは「小論文」の基礎確認から。

[小論文とは?]
要は「さな」。つまり、字数は圧倒的に少ないが、「現代文」で出題される「論説文」(評論文)と同じということだ。従って、筆者(受験者)が自らの「考え方」を読者(採点者)に説明、説得し、納得させる文章ということになる。

[出題形式は?]
「テーマ型」(「論題」が与えられ自由に論じる)、「課題文型」(「課題文」を読解しそれに就いての「設問」の答えを論じる)、「資料型」(様々な「資料」を論拠として「設問」の答えを論じる)、「英文型」(英語の「課題文」を読解しそれに就いての「設問」の答えを論じる)等。

[小論文の構成は?]
意味段落は「序論・本論・結論」(字数配分「2・6・2」)が基本。形式段落は「1段落200字」が目安。 内容構成は「頭括型」が望ましい。

[表記・表現は?]
a)誤字・脱字・送り仮名の誤り・仮名遣いの誤り・難読表記・略字等は厳禁→全て減点対象。

b)文法的誤用(「助詞」「呼応の副詞」「ラ抜き言葉」等)、用語的誤用(「慣用句」「諺」「故事成語」「四字熟語」等)は厳禁→全て減点対象。

c)文体は「常体」が原則(「敬体」との混用は絶対に避けること)。「口語」(話し言葉)は使用不可。一人称は「私」とすること。

d)数字表記~縦書きは漢数字使用(1マスに1字)。 横書きは算用数字使用(1にマス1or2字)。

e)アルファベット表記~縦書きは全て1マスに1字。 横書きは、大文字1マスに1字、小文字1マスに2字。

[原稿用紙の使用方法は?]
冒頭、改行頭は1マス空ける。句読点、閉じカギ(」)は行頭1マス目には入れない(前行末尾の文字と同じマスに入れる)。促音も1マスを使う(行頭でも)。「会話文」「引用文」は改行しない。
雑記号(?!… 等)は原則使用禁止。
*因みに「記述設問」(「要約設問」含む)のマス目は字数を数えるもの。従って、冒頭の1マス目から記し、段落は設けない。 記号(「」、。)はそれぞれ1マスを使う(行頭でも)。

[字数制限は?]
1字でも字数超過(句読点・記号含む)は誤答扱い(得点ゼロ)。9割以上記すこと。制限字数の5割未満は採点されず(得点ゼロ)。8割未満は減点大。9割未満も減点。

[採点基準は?]
a)評価項目~
「理解力」(「設問」「課題」の求めをどれだけ的確に理解し、答えようとしているか?/加点)。
「論述力」(「論旨」が明確で説得力ある十分な説明がなされているか?/加点)。
「構成力」(一貫した「論理展開」となっているか?/加点)。
「表記・表現」(適切表現・語彙力は加点/誤りは減点)。
b)配点比率~
「理解力」:「論述力」:「構成力」:「表記・表現」(加点部分)=3:3:2:2が目安。
c)総合評価~
各校設定の満点から上記比率に応じ項目別加点、そこから「表記・表現」
(減点部分)をマイナスし合計得点となる。

② 「小論文」は変幻自在で拱手傍観?!

次に慶應義塾大学の入試問題を例に挙げ、「小論文」の「実態」を確認していきたい。慶應では、文学部・経済学部・総合政策学部・環境情報学部・看護医療学部(2次)が「小論文」、法学部は「論述力」、商学部は「論文テスト」という入試科目になっている。

2013年度法学部の問題を教材とする。下のリンクからダウンロード可能。
http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/13/k12-61p.pdf

「課題文型」の問題で、課題文に就いての「設問」と論題に就いての「論述」という形式は例年通りだ。課題文は「日本における内閣制度発足当時の状況」を論じたもので、「設問」として「当時の内閣制度が抱えていた問題点」をまとめ(300字程度)それを踏まえて「現在の内閣総理大臣のリーダーシップのあり方」という論題に就いて「あなたの考えを自由に」論じる(総字数1000字以内)。

「設問」の方だが、これは「論説文」の「解法」に従って丁寧に読み解いていけばよい。段落相互の関係から、「当時の内閣制度が抱えていた問題点」に簡潔に 論及しているのは7段落だと分かる。冒頭に「これらの不安定要因を抱えているかぎり、内閣というものが本来備えるべき政治力、またそれを発揮するのに必要 な総理大臣のリーダーシップをどのように調整するかは大問題であるはずであった」とある。まさに、この部分が「問題点」の要諦である。「これらの不安定要 因」なので、指示語を開くと前段落全て(段落冒頭の指示語なので)だが、端的にまとめているのは段落末(形式段落「Nの法則」)となる。つまり、「総理大 臣の役割は主導よりは調整に傾かざるを得なくなる」という「不安定要因」だ。 以上をまとめると、[「総理大臣の役割は主導よりは調整に傾かざるを得なくなる」という「不安定要因」を「抱えているかぎり、内閣というものが本来備える べき政治力、またそれを発揮するのに必要な総理大臣のリーダーシップをどのように調整するか」が「大問題」だ]となる。これで「記述」の核心部分が確定し たので、後は「300字程度」という条件に合わせ「大問題」が起きる「理由」を付加すればよい。その「理由」は11段落冒頭で簡潔に述べられている。曰 く、「このように、薩長均衡との兼ね合い、各省割拠状態、また議院内閣制との関係といった諸問題が、リーダーシップの必要性と同じかそれ以上に意識された ため」ということだ。各事項の細目は「このように」の指示語を開き、9、10段落に説明されている。後は、字数に注意しながらまとめればよい(前章「応用 解法(記述設問中心)」参照)。

そして、「自由論述」だ。論題は「現在の内閣総理大臣のリーダーシップのあり方」だが、ここでの「現在」は「当時の内閣制度」(内閣制度発足当初)に対応しているのだから、「現在の内閣総理大臣」=安倍晋三と捉えるのではなく、「現在の内閣制度に於ける内閣総理大臣のリーダーシップ」として考えなくてはいけないので注意すること。では、「当時」と「現在」の「内閣制度」の相違点は何か。
「当時」に就いては、 課題文にもあるように、内閣制度発足と共に「内閣職権」が制定され、各省大臣に対する「かなり強い統制権」を「内閣総理大臣の職責」として明確にしている。 ただし、その「かなり強い統制権」は実際には行使されていないことは課題文にある通り。その後、1889年に発布された大日本帝国憲法では内閣それ自体については特段の規定は設けられておらず、「国務大臣」が「統治権を総攬する天皇」を輔弼するために設けられた組織体と位置づけられ、「内閣総理大臣」も「国務各大臣」の一人として他の「国務大臣」と同格であった。また、同年の「内閣官制」(内閣制度運用基準)では「内閣職権」をおおむね踏襲しつつも、内閣総理大臣の各省大臣に対する統制権限が弱められている。
一方、「現在」の日本国憲法では、「議院内閣制」という基本的枠組みの中で、内閣は「行政権の主体」として位置付けられている。 そして、「内閣総理大臣」に「内閣の首長」たる地位が与えられ、内閣を代表すると共に、内閣の統一性と一体性の確保のために閣内に於ける地位も高められ、権限も強化された(ただ、その権限は、国務大臣の任免権あるいは国務大臣の訴追に対する同意権など単独の権限であるものを除いては、閣議にかけて行使するのが原則)。

以上の前提条件の基づき「内閣総理大臣のリーダーシップのあり方」を考察して、論述していくことになる。

※尚、慶應義塾大学法学部を志望する以上、この程度の「公民の知識」は必須のものなので、近代の法学、政治学的な概念や理論は習得しておくことが重要だ。

ここからは受験生各位の独壇場だ。当方には何もできない。「考察」し「論述」するのは受験生自身であって、当方がそこに介在する術は基本的にはない。後に「成文」となったものを論評し、前述の基準に従って採点し、アドバイスすることができるだけだ。「小論文」にひとつの「模範解答」は存在しない。受験生の数だけ「解答」があり、それぞれに対してゼロから満点までの判断が下されるだけだ。勿論、過去問や問題集には「解答例」が示されている。だが、それはあくまでも「一例」であって、その論述を精読し、理解、納得したところで何の意味もない。「小論文」の得点力が習得できるものでもない。受験生各位が自ら「考察」し「論述」した成文を、的確な論評に従って筆者(受験生)それぞれが繰り返し何度でも推敲して、よりグレードの高いものに仕上げていく。その過程のみが「小論文」の得点力を磨く方法なのだ。

では、受験生の皆さんからの「解答」を待つこととし、当方は一旦筆を擱くこととしよう……。

[「じぇ、じぇ、じぇ!」「えっ、何?! これで終わり?」「まだ何も始まってないぞ! ここからじゃないの?」「これじゃ、サギじゃん」「カネ、返せー!」「助けてよ」「いつ教えてくれるの?」「今でしょ!」「なんでやねん!」……]

あらゆるツッコミやクレームが幻聴の如く脳裏に木霊する……。分かってま、慌てなさんや。 何もできない当方でも、「考察」し「論述」する「ガイドライン」程度は示すことはできる。だが、今ではないでしょ。 この場ですぐに示すべきではないだろう。先ずは「自力」で「考察」してみよう。そして、「成文」としてみよう。その上で、「ガイドライン」を参考にするな らば、より実践的なアプローチが可能となるはずだ。 故に、本章はここで終わりたい。次章がアップされるまでに、皆さんの「小論文」第一項が完成していることを切に願う。

ということで、次章の「予告篇」。 第6章はまたまた予定を変更し、[小論文(論述設問)対策Ⅱ]とさせて頂く。

※[高度解法(記述設問中心)](東大等旧七帝大対応)はその後となるので、御容赦願いたい。

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