大学受験プロ家庭教師 弱点克服・志望校入試傾向対策

<八> 高度解法(記述設問以外)Ⅱ(東大以外の旧七帝大対応)

  • 「国語」は本来縦書きですが、レイアウトの都合上、横書きとしました。御了承下さい。

今回こそ、東京大学以外の「旧七帝大対応」としたい。 京都大学、東北大学、九州大学、北海道大学、大阪大学、名古屋大学(設立順)。無論、各大学とも名門であり難関国立大学だ。2014年度入試では「難関国立大学は敬遠」される傾向があった(前年比で志願者減)。だが、それは15年度から始まる「新課程入試」を翌年に控えた「後がない」意識が大きな要因だと考えられる。大きなトレンドとしてはやはり、少子化の中で激しい競争を好まない現在の受験生は、都市部の大規模な大学よりも比較的小規模な大学を好む傾向があり、学費という経済的側面や卒業後の就職にも有利ではないかといった理由からも、国公立大学、特に難関大学志向が潜在的には多くある。 更に、地方では少子化で子どもを身近に置いておきたいという保護者の意識変化、若者の「地元志向」の高まり(「マイルドヤンキー」=原田曜平著「ヤンキー経済 消費社会の主役・新保守層の正体」で提唱)もあり、今後、地元国公立大学への志望がますます強まるとも考えられる。ということは、首都圏から地方の「旧七帝大」等を志望する諸君も安穏とはしていられないわけだ。
では、これらの大学の入試「現代文」は、どのような問題なのか? 基本的には、東京大学同様「記述設問」中心だ。京都大学・東北大学・北海道大学は例年、「漢字設問」以外は全て「記述設問」、九州大学・大阪大学・名古屋大学では「選択肢設問」「抜き出し設問」「空欄補充設問」等も出題されている。

<八> [高度解法(記述設問以外)Ⅱ](東大以外の旧七帝大対応)

では、具体的な「解法」を考えてみたい。前章「東京大学」の論考で「記述設問」に就いて詳しく論じたので、ここでは「記述設問」以外を検証してみたい。検証素材は、2014年度の大阪大学と名古屋大学。 下のリンクからダウンロード可能。

http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/14/

① 大阪大学・大問1「評論」(出典は川田順三「コトバ・言葉・ことば——文字と日本語を考える」)

問二「筆者が傍線部(B)のように考える理由として適当ではないものを、次のア~オの中から一つ選びなさい」。 「理由説明」の「選択肢設問」だ。 「本稿第3章」で説明したように、「選択肢」では「消去」が大原則。「理由説明」では、傍線部の「直接的理由」として因果関係が結びつかない選択肢を消去することになる(本問は「不適切」なものを残すので、消去したものが「正答」)。 傍線部(B)は「声には、理性を超えて、人間の生理の最も奥深い層にまで、じかに届くような力がある」。 要は「声には」「力がある」ことの「理由」だ。各選択肢の「直接的理由」部分(選択肢説明の後半)を確認する。選択肢(ア)は「異なる行為であるから」、選択肢(イ)は「生々しく発せられるものであるから」、選択肢(ウ)は「書きとめられて伝承されてきたから」、選択肢(エ)は「受動的に受け取るという意味が込められているから」、選択肢(オ)は「人類に普遍的にあるから」となっている。(ア)~(オ)⇒「声には」「力がある」と因果関係が結びつくかどうか? 実はこの段階で既に「正答」が明らかになっている。気付いただろうか? (ア)~(オ)の中にひとつだけ異質なものがある。 「ひとつだけ異質なもの」は当然ながら、「消去すべきもの」か「正答」かのどちらかだ。本問では「消去すべきもの」(不適切なもの)が「正答」だ。どれが異質か? 無論、(ウ)だ。 「書きとめられて伝承されてきた」とある。 「声には」「力がある」ことの「理由」であるのに、「書きとめられて」となっている。「書きとめられ」たら、もはや「声」ではないのだ。従って、因果関係が成立する筈がない。故に、「理由」としては不適切=「正答」となる。念のために、他の選択肢も確認してみよう。(ア)は「声を聞くということは」「書かれたものを」「読み」「理解すること」と「異なる行為である」となっている。主語は「声」であり、内容的にも傍線部(B)の直後の2文に合致している。「理由」として適切だ。(イ)は「声は生物的な基盤を持ったコミュニケーションの媒体で」「衝動的に」「生々しく発せられる」となっている。これも主語は「声」で、内容的にも傍線部(B)の次段落3~5行目と合致する。(エ)は「『聞く』という行為には」「メッセージを受動的に受け取るという意味が込められている」となっている。「声」を「聞く」ことに就いての説明だ。その点は適切だ。内容的には、そのまま合致している本文部分はない。だが、傍線部(B)の次文に「『聞く』という行為には、声で発せられた指示への服従の意味がこめられている」とある。選択肢の「メッセージを受動的に受け取るという意味が込められている」と齟齬はないと考えていい。(オ)は「音声言語は人類に普遍的にある」となっている。「音声言語」=「声」であり、傍線部(B)の次段落1~2行目から判断して内容的にも問題はない。以上から、(ア)(イ)(エ)(オ)は傍線部(B)の「理由」として「適当」であると確認できた。因って、改めて「正答」は(ウ)であると断定できる。

② 大阪大学・大問2「評論」(出典は長谷川寿一・長谷川眞理子「進化と人間行動」)

問三「条件(3)の空欄部(ア)~(オ)を補うのに最も適切な語を、次のa~gの中から選び、記号で答えなさい。ただし、同じ記号を二回使用してはならない」。「空所補充」の「選択肢設問」だ。 「空所補充設問」の「基本的解法」原則は、各「空所」及び各「選択肢」の「対応関係」の見極めだ。ここでいう「対応関係」とは、端的にいえば「イコール」or「対(逆)」or「その他」ということだ。先ずは「空所」から。 条件(3)を単純化すると「(ア)の(イ)よりも、(ウ)の(エ)の方が(オ)」となる。とすれば、「(ア)⇔(ウ)」、「(イ)⇔(エ)」、(オ)は「その他」ということはすぐに分かる(分かって欲しい!)。 次に「選択肢」。 「(b)損失⇔(e)利益」、「(c)行為者⇔(d)受け手」、「(f)小さい⇔(g)大きい」、(a)は「その他」となる。 そして、更なる「解法」として考慮すべきは、「空所」の「文法的適合性」だ。(ア)(イ)(ウ)(エ)は「体言」、(オ)は述部で「用言」となる。 選択肢で「用言」は「(f)小さい」「(g)大きい」なので、(オ)はそのどちらかだ。(ア)と(ウ)、(イ)と(エ)は各々「対」なので、(a)は消去してよい。続けて、条件(3)は「(ア)がこうむる」「(ウ)が受ける」となっているので、(ア)と(ウ)には「(c)行為者」か「(d)受け手」のどちらかが入るが、(ウ)の直前の修飾部にまで注目できれば特定可能だ。「行動の(ウ)」 とあるので、「(c)行為者」は不自然だ(「行動の行為者」となってしまう)。ということは、(ア)=「(c)行為者」(ウ)=「(d)受け手」となる。(イ)と(エ)には「(b)損失」か「(e)利益」が適合することになる。このようにして、内容の吟味に入る前に候補を絞り込んでおくことが重要だ。ここまでくれば後は容易い。条件(1)~(3)の換言説明は次段落でなされている(「段落の相互関係」)。条件(3)の説明は段落最後だ。「行為者のコストは受け手の利益よりも小さい」とある。「コスト」=「(b)損失」と換言できるので、(イ)=「(b)損失」(エ)=「(e)利益」、比較対象は逆になっているので(ここで間違わないこと)、(オ)=「(g)大きい」が「正答」となる。

③ 名古屋大学・大問1「評論」(出典は藤原辰史「『食べもの』という幻影」)

問二「空欄Ⅰ・Ⅱに当てはまる語として、最もふさわしいものを次から一つずつ選んで記号で答えよ。 ただし、同じ記号を二度使ってはならない」。「空所補充(接続詞・副詞)」の「選択肢設問」だ。「接続詞・副詞」設問は、国立大学に限らず、定番だ。小学生の頃から慣れ親しんだ設問だろうが、なめてはいけない。合格者のほとんどはここで失点はしない。つまり、ここでの失点は致命的になるのだ。思わぬ陥穽が潜んでいるので、注意したい。例えば、「空所」と「選択肢」が同数の場合、ひとつの間違いで×2の失点となってしまう(1~2点が合否の境界となる入試では大問題)。また、「空所」より「選択肢」が多い場合、最初に見出した「正答」候補をそのまま記入して他の「選択肢」を検討せず、結果、「誤答」となってしまうことがままあるのだ。では、どうするか? 先ずは、「逆接」の確定だ。「空所」前後の文脈から「逆接」箇所があるかどうか(注意さえすれば「逆説」はほぼ間違わない)。あれば、「選択肢」の「逆接」を当てはめればいい(もし明確な「逆接」がない場合、「限定」も候補とする)。そして「順接」だが、ここでは注意を要する。様々な「順接」の「接続詞・副詞」があるが、ザックリとした判断だけでは、その多くが「空所」のどこにでも当てはまってしまうのだ。「単純接続」「並立」「添加」「換言」「補足」「転換」等々、同じ「順接」でも細目の意味用法は異なっているので、前後の文脈から細心の注意で読み取る必要がある。前述のように、最初に見つかったからといって即決定ではなく、他の「選択肢」も確認し「順接」の候補があるのなら全て代入確認して見極めなくてはならない。さて、本問。「空所」は2か所で「選択肢」は5個。要注意だ。セオリー通りに進める。「順接」か「逆接」か? 「空所Ⅰ」の直前は「幻影を食べて生きている」で直後には「やっかいなのは」とあり、「空所Ⅱ」の直前は「別の物語だ」、直後は「対抗する物語でさえ幻影かもしれない」と結んでいる。何と共に「逆接」だ。「選択肢」を確認する。明白な「逆接」はない。では、「限定」はどうか? 「(ア)たしかに」と「(イ)ただ」がある。他には候補はない。両方を代入確認する。前後の一文からではどちらも当てはまるようで、決めかねる。検討範囲を広げる。すると、「空所Ⅱ」の次文は「しかし」で始まっている。これは決定的だ。同じ「限定」でも、「(ア)たしかに」は「肯定的」で、一方「(イ)ただ」は「否定的」だ。ということは、次文が「逆接」の「しかし」で繋がる以上、その前は「肯定的」である筈だ。従って、「空所Ⅰ」=「(イ)ただ」、「空所Ⅱ」=「(ア)たしかに」が「正答」となる。

④ 名古屋大学・大問1「評論」(出典は藤原辰史「『食べもの』という幻影」)

問四「傍線部Bにおいて言われる『現代日本の食のあり方』が、別の表現で最も端的に言い表されている一文を抜き出し、最初と最後の五文字(句読点・かっこ類も字数に含める)で答えよ。「換言説明」の「抜き出し設問」だ。これまた、「入試現代文」の頻出設問だ。「換言説明」の「抜き出し設問」では、換言部分(傍線部)の内容を「傍線部一文一部の法則」(「本稿第3章」参照)等を用いて把握することが先決だ。その上で、「段落の相互関係」から抜き出し箇所が含まれる可能性がある段落を絞り込いく。そして、内容を吟味して候補の箇所を捉え、設問条件等を考慮しながら確定していくことになる。では、本問を検証する。内容把握。傍線部B「現代日本の食のあり方」、これ自体は原意そのものでしかない。その内実は何か? 「傍線部一文一部の法則」から考察すると、傍線部Bの直前にある「この告白」が「現代日本の食のあり方」を「映し出している」と読める。指示語なので、当然開いてみる。新聞記事からの引用で「野菜卸売業者」の「告白」だ。「大根」を「具体例」として挙げ、「野菜は見た目が九割」「味は二の次」という内容。ちょいと厄介だ。「現代日本の食のあり方」といった「一般論」の内実が「具体例」のみで説明されている。しかし、仕方がない。そのまま解釈すると、傍線部Bの内容は「野菜は見た目が九割」というような「現代日本の食のあり方」ということになる。次に、抜き出し段落の絞り込み。ここでも一瞬、たじろぐ。何故なら「*」(中略)があるからだ。何らかの段落が省略されている以上、問題文記載の各段落の「冒頭部分」等から、単純に「段落の相互関係」を把握することはできない。だが、臨機応変に対応する他ない(実際の入試でも重要なことだと心得よ)。前後の段落を整理してみる。「*」を「意味段落」の括りと考える。 傍線部Bの前の「*」を挟んだ「意味段落」(「Ⅰ」とする)では、「食べものとは何か」という問題提起の上で「具体例」をいくつか挙げ、最後に「食べもの」には「物語」があると述べている。そして、傍線部Bの段落以降で新たな展開として三つの「物語」を論じている。次だ。傍線部Bの「意味段落」(「Ⅱ」とする)では「見た目」、次の「意味段落」(「Ⅲ」とする)は「偽装」、三つ目の「意味段落」(「Ⅳ」とする)が「差別」に就いての「物語」だ。その後の「意味段落」(「Ⅴ」とする)では、「物語」の問題点の打開策に論及し、問題文最後の「意味段落」(「Ⅵ」とする)は筆者の「体験談」(要は「具体例」と同じ)で終わっている。 抜き出しの候補となる段落はどれか? 傍線部Bは「見た目」の「物語」に就いて論及している段落だ。「物語」の論述は「Ⅱ」から始まっているので、「Ⅰ」は無視してもいい。三つの「物語」は、「見た目」「偽装」「差別」と全く論点が異なっているので、「Ⅲ」「Ⅳ」も除外したい。「Ⅴ」はそこまでの一種の「まとめ」なので残す。最後の「Ⅵ」は「具体例」で、無論外す。ということで、候補となるのは「Ⅱ」「Ⅴ」の「意味段落」だ。「野菜は見た目が九割」というような「現代日本の食のあり方」という内容に即した抜き出し箇所はあるのか? ……残念ながら、ない。なかなか難問だ。一筋縄ではいかない。が、諦めてはいけない。振り出しに戻ろう。傍線部Bの内容に就いてもう少し手がかりはないのか? 筆者は新聞引用の「具体例」を踏まえて、傍線部Bの一文以降で自らの考えを論じている。そこに注目する。「直売所」で「見た目の悪い野菜」を「売っている」のは、「消費者」も「何かが過剰」だと「気づきはじめた」「証拠だ」と述べている。そこで、前述の傍線部Bの内容と対照してみる。「現代日本の食のあり方」は「見た目が九割」だが、それは「何かが過剰」だと「消費者」も「気づきはじめた」ので「見た目の悪い野菜」を「売っている」ということになる。つまり、「現代日本の食のあり方」は「何かが過剰」だということだ。 内容に就いての新たな視点だ。光明になる筈だ。抜き出し候補の段落絞り込みもやり直しだ。流石に「Ⅰ」「Ⅵ」は可能性がないので、前回外した「Ⅲ」「Ⅳ」に絞って検証する。「Ⅲ」(「偽装」の「物語」)の第3段落冒頭に「さきほどの大根と同質の問題が潜んでいる」とある。おおっ!! 「さきほどの大根」とは、まさに傍線部Bの「具体例」そのものではないか。次の一文はどうか? 「過剰なパッケージ」「過剰な添加物」「過剰な広告費」……。 「何かが過剰」だという「現代日本の食のあり方」に論及しているのではないか。全文を確認する。「食べものに、過剰なパッケージと、過剰添加物と、過剰な広告費を投入している現在の食品企業のおかげで、消費者は食品から生命を抹消できるようになっている」。「野菜は見た目が九割」というような「何かが過剰」な「現代日本の食のあり方」という傍線部Bの内容と合致している。抜き出し最有力候補だ。念のために「Ⅳ」(「差別」の「物語」)も検証する(「抜き出し設問」の候補はひとつとは限らないので、必ず他の候補も確認すること)。見当たらない。後は設問条件に注意することだ(「抜き出し設問」では条件に完全に合致していなければ得点にはならない。途中点はないので細心の注意を払うこと)。「一文を抜き出し、最初と最後の五文字(句読点・かっこ類も字数に含める)」なので、「『食べものに』~『っている。』」が「正答」となる。流石に難関国立大学だけあって少し手こずったが、「解法」を的確に応用し丁寧に解いていけば「正答」に辿り着けるのだ。

以上、2回に亘って「高度解法」(旧七帝大対応)の一端を紹介した。勿論、ベースは「基本的解法」であり、それを完全に理解、定着させた上で「高度解法」に応用していくということだ。両者を組み合わせることであらゆる入試問題に対応でき、鵺なる「現代文」の得点力が確実にアップすることになる。
ということで、次章の「予告篇」。 第九章は[「基本的解法」徹底習得Ⅰ]。

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