ここでは、青山学院大学の総合文化政策学部を目指す方に対して、小論文の試験の出題傾向や試験合格のための勉強法、さらに、おすすめのテキストをご紹介いたします。なにから始めればいいのかわからない、効率的に勉強したい受験生は、ぜひ参考にしてください。

※本大学では2021年度に大幅な大学入試制度改革が実施されました。それに伴い一般の選抜は、一般選抜(全学部日程)･一般選抜(個別学部日程)･大学入学共通テスト利用入学者選抜という３つの選抜方法となっています。受験生は学部･学科ごとに定められたさまざまな選抜の組み合わせ方式から選択することになります。
本稿では、｢大学入学共通テスト｣(「世界史Ｂ｣、｢日本史Ｂ｣、｢倫理、政治･経済｣、｢数学Ⅰ･数学Ａ｣、｢数学Ⅱ･数学Ｂ｣のうち１科目選択)との組み合わせが課せられている｢総合文化政策学部総合文化政策学科Ｂ方式｣の｢独自問題(論述)｣(22年度の科目名。21年度までは｢独自問題(小論文)｣という名称)の説明となっています。
尚、準拠しているのは基本的に21年度の試験問題です(但し、一部は20年度以前や22年度の情報も参照している)。

青山学院大学総合文化政策学部　小論文試験の出題傾向とは

出題範囲（分野）

2022年度の｢論述｣の出題科目(範囲)としては｢文章やデータを読み、分析する能力、自分の文章を論理的に展開できる力、自由に発想する力、自分の意見や発想を十分に表現する力を総合的に問う論述等を課す｣となっています(本大学の試験概要)。
尚、20年度までの｢総合文化政策学部総合文化政策学科Ｂ方式｣の｢独自問題(小論文)｣と比べ、出題形式･内容でいくつかの相違があります。ちなみに、新たな同Ａ方式は｢独自問題(総合問題)｣で、出題科目(範囲)は『国語総合(近代以降の文章)』、『地歴公民(主に｢世界史Ｂ(現代史)｣、｢日本史Ｂ(現代史)｣、｢倫理、政治･経済｣) 』です(20年度までは｢国語総合(古文･漢文を除く)｣だった)。
以下は基本的に21年度｢小論文｣の問題に就いての説明です。
｢総合文化政策学部総合文化政策学科Ｂ方式｣の｢論述｣(21年度は｢小論文｣)の出題の意図･狙いには｢以下の能力を問う。■読解力(データの解読を含む)と表現力 ■論理的･批判的･多角的な思考力 ■現代の文化事象に関する知識を踏まえた問題発見力と解決提案力｣と記されています。
大問(設問)は２題で(20年度までは大問はなく小問だけだった)、設問１は論説文(評論文)からの出題です(21年度は哲学論)。過去に出題された文章内容は、政治論・社会論・文化論・国家論・自由論・経済論・災害論等々と実に多種多様です(特に海外の著名な出典が多い。尚、文章ではなく図表のみという年度もあった)。小問では要約記述、反論記述、見解論述が近年の定番です。
尚、21年度は未出でしたが、20年度までは４つ目の小問として別の問題文中の空所補充選択肢問題がありました(出題構成･特徴的な問題の例示等では19年度が挙げられているので、今後の出題はあり得るので要注意)。21年度の設問２はグラフからの出題で、２つの小問でグラフ上の値の説明とグラフから読み取れる解釈とが選択肢問題として問われています。出題科目(範囲)には文章だけではなくデータに就いても問うと記されているので当然、今後の出題が予想されます。

出題量と時間配分

2021年度の設問１の問題文の文章量は4000字強でした(20年度以前は2000字強～4000字ほど)。他の私大上位校と比較して標準的ですが、要約記述、反論記述(ともに200字以内)と見解論述(300字以内)が求められています。設問２では図表を読み取った上での２つの選択肢問題が課されています。
試験時間は80分です｡トータルで700字以内の記述･論述を記し、２問の選択肢判別を解かなくてはなりません。もちろん、時間的なゆとりはないでしょう。設問１を60分程度でまとめ上げ、残りの時間で設問２を解いていきましょう。

出題形式

2021年度の設問１は啓蒙の概念をテーマとした論説文(評論文)からの出題でした(出典はイマヌエル･カント｢永遠平和のために/啓蒙とは何か｣)。小問は３問です。
問１は、本文の主張を200字以内での日本語で要約しなさいというものです。例年とは異なり、21年度は問題文の６つの意味段落ごとに小見出しが付されていました。そのことにすぐに気づきましょう。それぞれが全文の流れに即した要点になっているのですから、各30字程度に整理して繋いでいけばいいわけです。今後もこうした形式かどうかは不明ですが、手がかり･ヒントにすぐに気づく目敏さは意識しましょう。
問２は｢問１で要約した主張に対する論理的な反論を200字以内での日本語で述べなさい｣です。｢総合文化政策学部Ｂ方式｣の｢論述｣(21年度以前は｢小論文｣)で最も特徴的な設問です(直接的な反論記述は本大学他学部、否、他大学でもほとんど類例がない)。論理的な反論と明確に限定されています。徹頭徹尾、明確な論拠を示した反論となるようにしましょう。たとえば、問題文の主張の中で、啓蒙とは自分で考えることと指摘する一方で人々が自分で考えるように仕向けるとありますが、両者は明らかに矛盾する等々……。当然、この問２を勘案した上で問１の要約をする必要があります。
そして、問３が｢問１と問２を踏まえた上で、あなたはどちらの立場に立つか表明し、それを現代の具体的な事例をあげながら300字以内の日本語で展開しなさい｣です。条件付き見解論述になります。……さて、賢明な皆さんはもう何かに気づいたはずです。｢Ａの主張｣→｢Ｂの反論｣→｢Ｃの見解展開｣……。そう、ディベートそのものではありませんか。設問１の出題形式はこのパターンにほぼ固定化されています。したがって、ディベートだということを明確に意識して３つの小問を連関させて述べていくことが必須です。
設問２は｢中学生当時にゲームで遊んでいた時間と、偏差値60以上の高校への進学率との関係について行った調査｣の結果を表したグラフからの出題です(出所:田中辰雄｢ゲームによる学力低下に閾値はあるか――想起による大規模調査｣)。小問は２つで、問１は｢グラフに示されている値の説明｣、問２では｢グラフから読み取れる解釈｣を各選択肢から選ぶ問題です(ともに４択)。如何に虚心坦懐にグラフを正確に読み取ることができるかがポイントになります。出題の意図･狙いに｢■読解力(データの解読を含む)｣とある以上、当然ながら今後も、｢総合文化政策学部Ｂ方式｣の｢論述｣ではこうした図表からの出題が予想されます。

解答形式

マーク方式と記述方式が混在しています｡
2021年度のマーク方式では内容説明の正誤判別でした(20年度以前はほとんどが空所補充の語句判別)。
記述方式では要約記述(200字以内)･反論記述(200字以内)･見解論述(300字以内)各が例年のお約束です。

青山学院大学総合文化政策学部　小論文試験を攻略するための勉強法

知識

｢小論文｣と｢データ分析｣なので知識は無関係、とはもちろんなりません。2021年度の哲学論に限らず、これまで出題された文章内容は政治論・社会論・文化論・国家論・自由論・経済論・災害論等々と多彩です。こうした硬質な論説文(評論文)を理解し咀嚼する為には、難解な語句や頻出テーマに関するキーワードを読み解く語彙力が当然、必要になります。さらに、反論記述や見解論述での誤字･脱字は確実に減点要素になります。したがって、漢字ひとつたりとも疎かにはできず､高度な語彙力を養成する必要があります。その為には、先ずは｢己が実力｣を把握することが重要です。そこで、共通テスト(センター試験)の漢字問題(要は｢同音異字｣｢同訓異字｣の判別)が基礎的語彙力のひとつのバロメーターなります。最低10年分以上の過去問をこなしましょう。その結果次第で、具体的な学習を進めていきましょう。
尚、以下のサイトは｢漢字問題｣だけがまとめられていて便利です。
http://www.kanjijiten.net/center/index.html

読解

｢論述｣という出題教科であっても、課題文や図表が示され、それに就いての設問として反論記述、見解論述等があり、データ分析の正誤判別選択肢問題(問題文中の空所補充語句判別選択肢問題もあり得る)もあるのですから、その点では｢現代文｣の問題と捉えなくてはいけません。課題文の内容をいかに正確に読み取るかが最優先となります。基本は論説文(評論文)であって、そこで肝要になるのが、最重要解法である｢Ｎの法則｣の習得です。本文を序論・本論・結論に分け、論旨が述べられている序論部、結論部の対応関係および本論部での段落相互関係に着目して読解するという手法です。これを完璧に理解、定着させ、応用できるようになるまで問題練習を重ねることが重要です。読解に際しては出題の意図･狙いで指摘されている｢人間と社会について論理的に思考･判断｣するという視点を意識することが肝要です。
尚、具体的解法については本ＨＰの別ページ｢大学入試”王道現代文”｣をご覧ください。

要約記述

設問１で課される要約の基本は形式段落の中心文をつないでいくことです。しかし、｢総合文化政策学部Ｂ方式｣のように長い問題文(4000字程度)では字数的に困難です。そこで、論旨中心にまとめることを旨として、意味段落の序論部+結論部+α(本論部からの補足)という形でまとめていきましょう。
尚、今後は単なる主旨(論旨)要約ではなく限定的な論点・視点が提示される場合があるかも知もれません。そうしたときは、そこに焦点を絞って主旨(論旨)をまとめる必要があります。先ずは、参考書などを活用して、あらゆる論点・視点を即座に把握できるようになるまで、｢現代文｣の解法に習熟しましょう。その上で、多くの問題集に記されている要約や問題文の要旨等を活用して記述練習を重ねましょう。その際、文法・文脈などの文章の基本や、内容が正確に伝わっているかどうか等に就いて添削指導を受けることが望ましいです。

反論記述

本方式の設問での最大の肝です。前述のように｢論理的な反論｣と明確に規定されているので、再反論が不可能なほどの確実な論拠を示した上での反論にしましょう。その際にポイントとなるのは、論点の選択と視点の変換です。｢Ａ｣に対する｢反論Ｂ｣の場合、いくつかある｢Ａ｣の論点のどれに反論するのか、自らが最も論じやすいものを選択することが肝要です。そして、｢反論Ｂ｣ではその論点に就いて｢Ａ｣とは異なる視点で論拠を展開していきましょう。もちろん、｢反論記述｣といっても要は長文の内容説明記述なので(200字以内)、その記述方法はしっかりと押さえておく必要があります。説明記述で必要なひとつの要素は通常20～30字程度なので、先ず最も重要な要素を的確に把握し、その他の要素は設問内容から必要度の優先順位を特定できるように徹底的に練習することが肝要です。そして、正否の分かれ目となる最重要な要素を文末として他に必要な要素を５～10程度積み上げていく「積上げ方式」という手法を、過去問や練習問題などを通じて完璧にマスターしましょう。

見解論述

300字(2016年度以降同じ)という制約の中で自らの見解を的確に論じるには、構成メモの作成が不可欠です。脳内イメージを可視化、客観的に捉える作業です。最重要な論旨、説得力溢れる説明に必要な論点(提示されているものも含め)や視点をアトランダムに記し、整理してチャート化します。その上で、見解を頭括型の論述としてまとめるべく各要素を取捨選択します。その際には、批判的スタンスの視点を特に意識し、カウンターとしての論点も用意しましょう(前述したように、出題の意図･狙いで｢批判的･多角的な思考力｣が問われている)。そして、絶対に意識しなくてはならないのは、設問１の出題形式がディベートそのものだということです。｢Ａの主張｣(問１)→｢Ｂの反論｣(問２)→｢Ｃの見解論述｣(問３)となっている。したがって、それぞれを的確に連関させ、整合性が損なわれないようにしなくてはいけません。そこではもちろん、求められている問題発見力と解決提案力をいかんなく発揮させましょう(同上｢出題の意図･狙い｣)。
尚、実際の論述練習では、添削指導を受けることが必須です。

推奨テキスト

ここからは、勉強に役立つテキストをご紹介します。テキストには相性がありますので、できるかぎり書店で手にとって確かめることをおすすめします。
ここではテキストを知識対策篇、読解力対策篇、要約･反論記述対策篇、見解論述対策篇、ディベート対策篇に分けてご紹介します。

知識対策篇

（１）『漢字 一問一答【完全版】』(東進ブックス)
（２）『現代文最重要語句(暗記いらずの)らくらく練習帳―熟語･慣用句･評論語句･外来語』(学研プラス)
（３）『新版完全征服 頻出現代文重要語700 三訂版』(ピアソン桐原)
（４）『ことばはちからダ! 現代文キーワード―入試現代文最重要キーワード20 (河合塾シリーズ)』(河合出版)
（５）『現代文キーワード読解[改訂版]』(Ｚ会出版)

前項の共通テスト(センター試験)の漢字問題チェックで、５割未満の場合は（１）から、６割は（２）から、７割は（３）から、８割は（４）から始め、９割は（５）のみが目安です。反復練習して完全習得しましょう。特に（５）では、｢キーワード編｣のみならず｢頻出テーマ編｣も熟読し、完全に理解しましょう。

読解力対策篇

（１）『システム現代文 バイブル編(改訂新版)』(水王舎)
初級レベルです。｢解法｣って何？ といった皆さんにお薦めの入門書です。根本を徹底的に解説しており、マスターすれば解法は一通り理解できるでしょう。

（２）『現代文読解力の開発講座(新装版)』(駿台文庫)
中級レベルです。文章を客観的に捉える術が丁寧に説明されており、中堅から難関私大へのステップアップ段階の一冊です。

（３）『現代文と格闘する(三訂版)』(河合出版)
上級レベルです。文章を読み繋ぐことを主眼として、その為のシンプルな視点を提案しています。｢総合文化政策学部Ｂ方式｣の論述の問題文を確実に読解する一冊です。
※尚、②③には要約問題があるので必ずこなしましょう(設問１、問１の要約記述の対策になる)。

要約･反論記述対策篇

（１）『システム現代文 論述･記述編(改訂新版)』(水王舎)
初級レベルです。説明記述問題から要約問題までを明快に解説し、要約記述、反論記述習熟の為に何を学習すればいいかが分かる一冊です。

（２）『得点奪取 現代文[三訂版]』(河合出版)
中級レベルです。記述問題から説明･要約問題までを明快に解説し、要約記述、反論記述のポイントを確実に学ぶ為の一冊です。

（３）『[記述篇]現代文のトレーニング(改訂版)』(Ｚ会出版)
上級レベルです。頻出テーマに沿った問題構成で、完成度も自ら把握できる。反論記述問題の総仕上げへ向かっては不可欠の一冊です。

（４）『上級現代文Ⅰ』(ピアソン桐原)
最終レベルです。自らの解答の欠点を採点者の視点でチェックできます。段落要旨や全文要約の他に参考図書も紹介されています。｢総合文化政策学部Ｂ方式｣の長文反論記述対策に万全を期す１冊です。

見解論述対策篇

（１）『吉岡のなるほど小論文講義10(改訂版)』(桐原書店)
初級レベルです。｢小論文とは何か？｣｢どのように文章を組み立てたらよいのか？｣という基礎･基本を体系的に解説しています。入門から基礎力養成の一冊です。

（２）『資料と課題文を攻略して合格答案を書くための 小論文のオキテPRO』(KADOKAWA)
中級レベルです。入試で戦える解き方が身につきます。小論文のオキテを習得でき、｢総合文化政策学部Ｂ方式｣の論述で必出の図表読み取りのポイントもつかめる一冊です。

（３）『小論文を学ぶ――知の構築のために』(山川出版社)
上級レベルです。読みと書きの技術論、小論文に必要な知の構築、実践演習を通じての知の習得の３部構成で、論述で８割以上の得点ゲットをターゲットに据える一冊です｡

（４）『小論文 テーマ別課題文集 21世紀を生きる〈改訂版〉』(駿台文庫)
最終レベルです。主要頻出テーマごとの論点整理、キーワード解説が充実しています。万全を期すための一冊です。

（５）『文藝春秋オピニオン○○✕✕年の論点100』(文藝春秋/毎年11月発売)
毎年の日本の様々な争点が多角的に提起されており、論点・視点の捉え方を習得できます。時事対策にも活用できます｡また、条件として言及すべき具体例のストックにもなる一冊です。

（６）『青山学院大学総合文化政策学部Ｂ方式の｢独自問題(論述)｣(過去問)』
実践レベルです。10年分程度の論述は確実にこなし、解法をトレースしましょう。

ディベート対策篇

（１）『反論が苦手な人の議論トレーニング』(筑摩書房)
初級レベルです。｢反論？ どうすればいいの？｣といった皆さん向けです。問題の仕組を明らかにする、議論へのツッコミをいれる、相反する意見をまとめてよりよい解決を提示するという３つの技法が示されています。

（２）『即興型ディベートの教科書――東大で培った瞬時に考えて伝えるテクニック』(あさ出版)
中級レベルです。賛成側･反対側の立論のコツとポイントがつかめて、ディベート力が鍛えられる一冊です。

（３）『ザ・ディベート――自己責任時代の思考･表現技術』(筑摩書房)
上級レベルです。ディベート本来の論理的に思考し表現する技術という特徴が、具体的テーマに沿った形で詳しく説明している一冊です｡