医大・医学部受験プロ家庭教師 入試解剖

慶應義塾大学医学部の傾向と対策

数学(2010年)の傾向と対策

首都圏の私立大医学部を考えた場合、慶応大医学部の数学が偏差値では最難関ということになりますが、東京医科歯科大の数学などに比べると、過去問の傾向がハッキリしているという点では、対策の立てやすい大学といえます。(対策が立てやすいから、簡単というわけではありません。)大問4題で100分という試験時間は私医大ではもっとも長く、記述式の問題はなく解答のみを記入する客観形式の問題ばかりになります。
したがって東大や慈恵医大や順天堂大医学部の数学で見られたような、基本重要公式の証明問題などはありません。しかしながら伝統的に出題される、確率の漸化式に帰着させるような問題などに
見られるように、状況を細かく具体的に分析して数学的に翻訳するプロセスでは、公式主義的な学習だ
けでは十分に身に付かない、豊かな論理的思考力が必要とされます。そのような問題解法能力をマスターす
るには、数I・II・III・B・Cなどの分野別の問題集(1対1対応の演習やチャート式など)では不十分であり、入試数学の高度な知識やテクニックを駆使しながら、伝統的に難問題と言われるような問題群を系統的に理解・演習する必要があります。
市販の問題集でそのような要求をみたす完璧な本は存在しません。模範解答があっても、そこにいたるプロセスが理解出来なければ、合格点に至る学力にはなりません。
また大手予備校の場合は圧倒的に解説する問題数が少なく、反復演習が生徒の側に任されている為、合格するまでの学力に至らない場合がほとんどです。個人指導の強みは、本人の学力に合わせて難問題に至るカリキュラムを無理なく、理解・実践を確認しながら進められるということです。
2007年よりやや易化したと言われていますが、客観形式で解答をしっかり書く必要がない分、解答に至る読解量や計算量が多く100分の試験時間であっても、時間が足りないこともあり得ます。
2次の合格を考えれば、少なくとも8割以上は得点する必要があるでしょう。

 

問題分析)

2008年から全体的にやや易化している。

大問1について

数学
II、III、中心の計算問題(領域、積分、極限、など)であ
るが、入試数学としては、標準レベルであ
り、全問正解が望まれる。
2010年の(2)では、定数係数2階線形微分方程式(同次形)の一般解の問題が出題された。以下、参照。

 

1)(*)の解が2つの異なる実数解s,t、のとき   y=Ce+Ceとなる。
2)(*)の解が重解 s, のとき         y=Ce+xCeとなる。
3)(*)の解が2つの虚数解s tiのとき     y=Ce cos tx+Ce sin txとなる。

 

結果は簡単なので、大学数学であるが覚えておくと便利である。上の一般解は2次元ベクトル空間になる。
また2009年の(2)ではガウス記号による評価の問題が出題された。ガウス記号は整数部分を取り出すという意味では、「状況を簡単化する。」という気持ち(このキモチが大事!)を持って欲しい。このテーマは問題を系統的に実践しないと、苦手意識を克服することは難しい。ガウス記号については
 

kを整数として、k=[x]⇔k≤x<k+1⇔x-1<[x]≤xが基本である。

大問2~3について

A)2次曲線のからんだ微積の問題

B)数列の漸化式のからんだ確率の問題

が伝統的に出題されている

A)について、2008年は1階微分方程式(変数分離形)を解く形になっていて、かなり昔の入試数学
に見られた定石である。以下、参照

 

2009は、楕円についての有名問題である。楕円の式にy=mx+kを代入してxの2次方程式の実数解を2交点のx座標と見るやり方では、かなりの計算と時間がかかってしまう。y方向にb/a倍の相似変換で、楕円を半径bの円に変換する方法で、計算量を減らすことが可能であるが、線分の長さや角度は保存されないので、尐し工夫が必要である。例えば、
傾きmの線分PQの長さは、b/a倍の相似変換で
2010年は最短距離の問題で、対称点をとればよいが、やはりグラフを正確に書くことが必要である。
残念ながら最近の高校生は、答えを求めることばかりに気を使い、グラフを正確に書いて分析・翻訳することの重要性をそれほど意識していないことが多い。模範解答を写すだけでは、実戦に対処することは難しい。

 

B)について、伝統的に出題されている確率を漸化式で表現して求める問題である。

n回目とn+1回目、あるいはn回目とn+1回目、n+2回目の状況を、式や図やグラフでイメージをはっきりしながら「調べる」ことが要求される。ここで問題の状態を正確に「翻訳する」分析・表現力が必要とされている。まさに公式にあてはめて問題を解くパターンの対極にあると言えよう。しかしながら、より簡単な構造の類題からコッコツと練習していけば着実にマスターしてゆくことが出来る。大手予備校のように1題をくわしく解説することも大事であるが、それでは「わかったつもり」にはなっても、本番で必ずしも解けるようにはならない。自分から「調べる」という積極的な姿勢がどうしても必要とされるのである。やはりある程度の問題演習量は必要であり、個人指導によって弱点を確認・補強しながら進むのが着実に合格に近づく方法であると思われる。

 

大問4について

2008年は関数列の漸化式、

2009年は曲線のパラメーター表示と面積の積分計算

2010年は単調減尐関数と面積の変化

昔から繰り返し出題されている教科書には載っていない難問のパターンである。難問というのは、1題し
かやらなければ難問?であるが、尐し構造をやさしくした問題から系統的に複数題をしっかり演習してい
けば、ストーリーがはっきり理解できて入試の標準的問題とそれほど変わらない感覚で問題に臨むことが
できる。

使用テクニック例)大問1~4を通じて

1)点と直線の距離の公式(ヘッセの公式

3)平面上の直線L上に点Pがあり、点A,BがLを境界とする同じ領域にあるとき、線分の長さAP+BPの最小値は、AまたはBの直線Lについての対象点A’、B’をとって、A’BまたはAB’で与えられる。

など・・・・。特に問題が簡単に解けるようなテクニックは、見当たらない。

(対策)

予備校講師がよくやるような「こうすると早く解けるよ・・・」などという問題は非常に尐ない。
慶応大は2012年度からセンター試験に参加しないようであるが、裏ワザを使わないと試験時間が足りなくなるようなセンター試験は、もともと伝統ある難関大の試験には向いていない(数学に関しては)。このことは(私の所属する)数学教育学会などでは常識になりつつある。慶応大の数学問題には、パズル的な「落とし穴」をたくみに用意するよりも、ある程度の糸口を受験生に与えつつ問題の状況を、翻訳・分析する論理的思考力が要求されている。そういう意味では「対策の立てやすい」大学と言えよう。

(三富 記)

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