「熱血指導」「予習復習」早稲田アカデミーでつまずきやすいポイント
夏季合宿や日曜特訓など、熱血指導のイメージが強い早稲田アカデミー。「予習シリーズ」を軸としたカリキュラムと、問題集を活用した復習によるトレーニングが特徴です。
早稲田アカデミーに通うお子さんには、どのような学習サポートが必要なのでしょうか。中学受験のプロフェッショナルである塩津先生、小池先生、長塚先生にお話しいただきました。
(聞き手:フリーライター 井上マサキ)
Professional of Leaders’Brain
塩津先生
■プロフィール
應義塾大学卒
“わかったつもり”を見逃さない徹底した足固め指導を重視し、親子共に最後に達成感を感じられる受験へと導きます。
Professional of Leaders’Brain
長塚先生
■プロフィール
千葉大学卒
「できないこと」よりも「できたこと」に焦点を当てながら上手に褒め、生徒のやる気を引き出す指導を心掛けています。
Professional of Leaders’Brain
小池先生
■プロフィール
横浜国立大学卒
楽しく軽快でテンポの良い授業で、わからなかったことが、いつの間にか不思議と理解できるようになっていきます。
「熱血」「体育会系」に秘められた、カリキュラムへの自信
――早稲田アカデミーといえば、やはり「熱血」の印象があります。
塩津:「合格」と書かれたはちまきを締めて、「エイエイオー!」と声をそろえる姿はインパクトがありますよね。夏期合宿や正月特訓、「NN(何がなんでも)志望校別コース」に代表されるように、体育会系のイメージが強い。きちんと実績もついてきており、御三家の合格率も伸びてきています。
小池:テキストは、四谷大塚の「予習シリーズ」を軸に、早稲田アカデミー独自の物を組み合わせています。「予習シリーズ」は、非常に研究されたテキストだという印象ですね。受験に必要となる土台を固めるのに、とても使いやすいんです。6年生の夏までにこれを一冊仕上げれば、志望校は大丈夫ですといっても過言ではないと思います。
塩津:早稲田アカデミーのオリジナル教材は、「Wベーシック」と「バックアップテキスト」ですね。どちらも問題集であり、特に「Wベーシック」は、家庭学習で基本を定着させる狙いがある冊子です。「予習シリーズ」と併せて、2倍速で問題をたくさんこなそう、という考え方ですね。
小池:テキストやカリキュラムには、かなり自信を持たれていると感じます。以前、早稲田アカデミーのお子さんを担当したときに、裏技的な解き方を教えたことがあるんです。すると後日、「解き方が違うと注意された」というんですね。塾にとってみれば、「自分たちがベストのやり方を教えているのに」という思いがあるのでしょう。それだけ力を入れて、テキストやカリキュラムを作られているのだなと。
長塚:「熱血」を敬遠される方もいるとは思いますが、言い換えれば「面倒見がいい」ともいえます。熱心な先生ともなると、生徒の家まで電話をかけてきて「◯◯さんは最近どうですか?」とフォローすることもありますから。
小池:夏休みの合宿も人気がありますしね。「みんなでいっしょにがんばろう!」という熱意がとにかく強い。その熱意に対して、ご家庭でどのように学習を進めるかがポイントになるかと思います。
「何でわからないの」は言わず、質問しやすい空気を作る
――早稲田アカデミーに通われるご家庭からは、どのような相談をされることが多いのでしょうか。
長塚:「予習シリーズ」の名のとおり、早稲田アカデミーのカリキュラムは予習型なんですね。事前に予習をして講義に臨み、終わったら復習もしなくてはなりません。宿題もどんどん出ますので、すべてに手をつけようとすると時間が足りなくなってしまいます。そこで、どの問題をやるべきか取捨選択し、学習をサポートする役割としてお声掛けいただくことが多いです。
塩津:「予習シリーズ」だけでも、かなりの量があります。そこに「Wベーシック」が加わるわけです。1日は24時間しかないわけですから、どこを優先して取り組むかを考えなくてはいけません。ご家庭だけでは、「今何がわからないか」「この問題は志望校で出題されるのか」を判断するのは難しいかもしれませんね。
小池:宿題に関してなんですが、他の塾にない特徴として、早稲田アカデミーは宿題をやらないと先生に怒られてしまうんです。生徒に本気を出してもらいたい思いからなのでしょうが、中には怒られることを極端に嫌う子もいます。宿題がわからない、でもやらないと怒られる。そうなると、答えを丸写ししてやり過ごしてしまう子が生まれてしまう。
長塚:宿題はやってあるので、先生は「わかったもの」として教える。でも、実際は理解していないので、再び宿題の答えを丸写しにしてしまう…という悪循環ですね。親御さんからは「宿題はできているのに、テストで点が取れない」と見えてしまいます。
――その「悪循環」を断ち切るために、家庭教師としてどのようなアプローチをされていますか?
小池:早稲田アカデミーに通われているお子さんは、塾で十分きびしく指導されていますから、ご家庭でも同じようにきびしく接してしまうと、やる気を失いかねません。自尊心を損なわないよう、極力否定しないように心掛けていますね。間違うことは悪いことじゃないんだから、少しずつできるようになろうと。
長塚:家庭教師として「何でわからないの」は絶対言ってはいけないことなので、粘り強く解説していきます。6年生でも、理解があやふやな部分があれば、5年生以前のテキストに戻りますし、その日の授業をまるまる教え直すこともありますね。
小池:わかります。私はよく親御さんに、「食事中にでも、本人が今日、何を習ったのか聞いてみてください」と提案するんです。授業を理解していれば「今日はこんなことをやった」と、ちゃんと答えられるはずです。振り返ることで復習にもなりますしね。
ただ、習ったことを言えなかったとしても、「何やったの?」「わからないの?」と口を出しすぎると、子供はしゃべらなくなってしまいます。そうなると復習どころか、理解度も把握できなくなってしまう。子供の気持ちをくんで、話をできる空気を作るようにすることが大切です。
長塚:話をしやすい雰囲気を作ることで、質問も出やすくなりますしね。
塩津:質問の仕方で、その子の学力も見えてきますよね。成績の良い子は質問を選り好みしないんです。100人の生徒がいて、99人がわかっていたとしても、自分がわからないことはちゃんと聞ける。プライドが邪魔をしたり、難しい問題を聞かなければと構えたりすると、本当に聞きたいことが聞けませんよね。
小池:確かに。難しい問題を質問してくる子に、その前段階の問題について聞いてみると、理解が怪しいこともしばしばです。「家庭教師の先生にはこれくらい難しいことを聞かなきゃ」と思っているのかもしれません。
塩津:思い込みを捨てて、フラットに自分が聞きたいことを質問できる子は伸びていきますね。教える側もわからないことを責めず、「ここからやっていこう」「ここができればいい」といっしょに歩んでいければと思います。
「クラスにかける言葉」と「その子に必要な言葉」は違う
――最後に、早稲田アカデミーの生徒に対するプロ家庭教師の役割についてお聞かせください。
小池:「予習シリーズ」「Wベーシック」という問題の中から、志望校合格に向けた取捨選択をしてあげることが、ひとつの大きな役割だと思います。あなたの志望校では、この単元の問題が必ず出ていますとか、逆にこの問題は今必要ありませんとか、具体的に提案してフォローしていく。
塩津:取捨選択をする上で、子供が今、学力的にどの位置にいるのか、客観的に伝えることも家庭教師の役目だと思います。各塾では、定期的にオープンなテストを実施していますが、同じ「偏差値50」でも塾ごとに意味が異なります。A塾のテストで偏差値65の子が、B塾のテストで偏差値50ということは往々にしてありますから。
長塚:早稲田アカデミーのこのクラスでこのくらいの順位なら、志望校までこれくらいの位置にいますよ、と外からの視点で語れるのは、家庭教師ならではのメリットかもしれませんね。
塩津:自分の立ち位置に合った勉強をしていきたいですよね。お子さんは、塾の先生の発言をそのまま受け止めて、「たくさんやらなければ」と焦ってしまいがちなのですが、クラス全体にかける言葉とその子に必要な言葉というのはどうしても異なります。あなたの今の学力を考えたら、まずは自分のペースで苦手を克服するべきだとか、冷静に見極めてあげる。総じて、取捨選択に尽きますね。
小池:親御さんも「絶対合格しなければ」とプレッシャーを感じていて、それがお子さんにまで伝搬していることもありますね。塾できびしく指導されているからこそ、ご家庭では安心感を与えてあげたいです。中学受験というのは人生のひとつのハードルでしかありませんから、肩の力を抜いて、持てる力を最大限に発揮できるようサポートできればと思います。
長塚:サポートできる内容は、学年によって変わってきます。6年生の夏に短期決戦で慌てて勉強を始めるよりも、4、5年生の時点からじっくり計画を立てて進めるほうが効果的ですから、ぜひ余裕を持ってお声掛けいただければと思います。