2011年度中学入試動向リポート① (2010.10)
7月模試で志望者が増えている学校、減っている学校
そろそろ来年入試の志望動向が気になる時期だ。今回は、7月に行なわれた四谷大塚の合不合予備テスト第2回、中学入試センターの志望校判定テストにおける志望動向を見てみよう。前年同時期より20名以上増えている学校を表にしてみた(模試により入試回の表記が異なっていることをお断りしておく)。
まず、四谷大塚の合不合予備テストから。
四谷大塚 ≪減少している学校の方が圧倒的に多い≫
<男子>
20名以上増加した学校 | |||
東京 | |||
順 | 校名 | 志望者数 | 前年比増加数 |
1 | 早大高等学院中学部 | 313 | 137 |
2 | 中央大学附属 | 183 | 109 |
3 | 中央大学附属(2回) | 309 | 109 |
4 | 開成 | 683 | 69 |
5 | 海城 | 297 | 47 |
6 | 東京都市大学付属 | 306 | 43 |
7 | 麻布 | 471 | 29 |
8 | 世田谷学園(2次) | 209 | 27 |
9 | 明大明治 | 410 | 27 |
10 | 慶應中等部 | 387 | 23 |
11 | 広尾学園(特進選抜2回) | 107 | 22 |
12 | 明法(2回午後) | 27 | 21 |
神奈川 | |||
1 | 山手学院 | 85 | 36 |
2 | 慶應湘南藤沢 | 188 | 33 |
3 | 聖光学院 | 276 | 23 |
埼玉 | |||
1 | 栄東(A) | 270 | 27 |
千葉・茨城 | |||
1 | 東邦大学附属東邦(前期) | 513 | 27 |
※20名以上増加した学校のみ掲載(減少した学校は割愛)
<女子>
20名以上増加した学校 | |||
東京 | |||
順 | 校名 | 志望者数 | 前年比増加数 |
1 | 大妻中野(2回アドバンスト) | 171 | 88 |
2 | 中央大学附属 | 157 | 68 |
3 | 中央大学附属(2回) | 239 | 56 |
4 | 桜蔭 | 340 | 48 |
5 | 鴎友学園女子(3次) | 280 | 45 |
6 | 広尾学園(特進選抜) | 49 | 35 |
7 | 吉祥女子 | 247 | 34 |
8 | 白百合学園 | 179 | 31 |
9 | 雙葉 | 248 | 29 |
10 | 富士見(2回) | 159 | 27 |
11 | 東京学芸大学附属世田谷 | 103 | 26 |
12 | 頌栄女子学院 | 155 | 25 |
13 | 富士見 | 104 | 24 |
14 | 豊島岡女子学園(3回) | 231 | 24 |
15 | 筑波大学附属 | 146 | 21 |
16 | 日大豊山女子(3回) | 101 | 21 |
17 | 八雲学園 | 114 | 21 |
神奈川 | |||
1 | 中央大学横浜山手(2回) | 122 | 67 |
2 | 慶應湘南藤沢 | 156 | 20 |
※20名以上増加した学校のみ掲載(減少した学校は割愛)
男女とも減少している学校の方が圧倒的に多い。特に、女子の埼玉、千葉・茨城は20名以上増えている学校はゼロ。四谷大塚合不合判定予備テスト第2回全体(全国)では前年より若干増えているが(400名ほど)、こうしてみてくると首都圏では減っているように見える。
次に、男女別、都県別に気が付いたポイントを挙げていこう。
<男子>
2010年度入試では付属校志向が低下したが、その反動か、早大高等学院中学部、中央大学附属、明大明治、慶應中等部と、有力な総合大学の付属が増やしている(早大高等学院中学部、中央大学附属は前年の7月はまだ開校が定着していなかったせいもある)。神奈川の慶應湘南藤沢も同じ流れといえる。
また、開成、海城、麻布が増えており、これも安全志向が強かった2010年度入試の反動といえるだろう。
一方減らしている学校だが、明大中野、巣鴨、成城、法政大学、成蹊、日大第三・・・・・・と、複数の入試回で減らしている学校が目に付く。特に共通点はなく、これらの学校は「ねらい目」となりそうだ。
埼玉で増やしているのは栄東(A)のみ。定員が増えることが志望者増につながっている。減少校では、開智は難しくなったことによる敬遠と栄東に流れていることが原因か。城北埼玉、立教新座は前年も減少していたので2年続くことになる。東京からの1月入試お試し受験層が、これら男子校から開智、栄東といった共学校へシフトしている。
千葉も増やしているのは東邦大学東邦(前期)のみ。上位校では前年も東邦大学東邦(前期)のみが増加。市川、渋谷教育学園幕張の減少も前年の動向が続いている。
<女子>
複数の入試回で増えているのは、中央大学附属と富士見のみ。特にどこかが爆発的人気を呼んでいるといった現象は見られない。
一方減少となると、品川女子学院、実践女子学園、共立女子、法政大学、神奈川大学附属、鎌倉女学院・・・・・・といった四谷大塚の予想偏差値55~52を中心とするゾーンの人気校が複数の入試回で減らしている。
神奈川の中央大学横浜山手は、このほど共学化を1年前倒しにすると発表したが、そのことが今後の志望動向にどう影響するか注目したい。
千葉の東邦大学東邦(前期)は男子とは逆で、減らしている。
センター模試 ≪東京女子、千葉のみ増加校数の方が多い≫
<男子>
20名以上増加した学校 | |||
東京 | |||
順 | 校名 | 志望者数 | 前年比増加数 |
1 | 獨協③ | 168 | 45 |
2 | 駒場東邦 | 230 | 35 |
3 | 成城② | 175 | 31 |
4 | 攻玉社② | 199 | 28 |
5 | 高輪B | 148 | 27 |
5 | 早稲田高等学院中学部 | 112 | 27 |
7 | 高輪A | 112 | 22 |
8 | 芝① | 219 | 21 |
9 | 慶應義塾中等部 | 172 | 20 |
9 | 攻玉社① | 131 | 20 |
神奈川 | |||
1 | 山手学院C | 99 | 40 |
2 | 鎌倉学園③ | 231 | 35 |
埼玉 | |||
1 | 栄東A | 228 | 33 |
2 | 栄東B | 82 | 20 |
千葉・茨城 | |||
1 | 渋谷教育学園幕張① | 441 | 82 |
2 | 市川① | 565 | 77 |
3 | 渋谷教育学園幕張② | 102 | 35 |
4 | 東邦大学付属東邦(前) | 362 | 29 |
5 | 専修大学松戸② | 96 | 24 |
6 | 県立千葉 | 117 | 22 |
7 | 芝浦工業大学柏② | 71 | 21 |
8 | 昭和学院秀英② | 153 | 20 |
※20名以上増加した学校のみ掲載(減少した学校は割愛)
<女子>
20名以上増加した学校 | |||
東京 | |||
順 | 校名 | 志望者数 | 前年比増加数 |
1 | 大妻中野② | 178 | 71 |
2 | 東京女学館② | 157 | 52 |
3 | 晃華学園③ | 131 | 45 |
4 | 跡見学園③ | 174 | 41 |
4 | 実践女子学園③ | 136 | 41 |
6 | 東京農業大学第一① | 109 | 40 |
7 | 三輪田学園③ | 184 | 36 |
8 | 大妻② | 183 | 35 |
9 | 大妻多摩③ | 109 | 33 |
9 | 共立女子B | 237 | 33 |
11 | 鴎友学園女子③ | 192 | 31 |
11 | 頌栄女子学院① | 110 | 31 |
13 | 雙葉 | 167 | 29 |
14 | 鴎友学園女子① | 105 | 27 |
15 | 明大明治② | 95 | 26 |
16 | 東洋英和女学院B | 118 | 23 |
17 | 大妻③ | 192 | 21 |
17 | 東洋英和女学院A | 81 | 21 |
19 | 吉祥女子② | 140 | 20 |
19 | 恵泉女学園③ | 92 | 20 |
19 | 立教女学院 | 141 | 20 |
神奈川 | |||
1 | 森村学園③ | 130 | 35 |
2 | 横浜英和女学院C | 89 | 33 |
3 | 洗足学園① | 113 | 29 |
4 | 慶應義塾湘南藤沢 | 163 | 27 |
5 | 日本女子大学附属① | 111 | 26 |
6 | 湘南白百合 | 126 | 25 |
7 | 日本女子大学附属② | 166 | 21 |
7 | 横浜英和女学院A | 100 | 21 |
埼玉 | |||
1 | 栄東A | 159 | 26 |
千葉・茨城 | |||
1 | 専修大学松戸① | 165 | 47 |
2 | 専修大学松戸② | 83 | 29 |
3 | 国府台女子学院① | 207 | 25 |
3 | 昭和学院秀英② | 156 | 25 |
3 | 東邦大学付属東邦(前) | 229 | 25 |
6 | 渋谷教育学園幕張① | 220 | 22 |
※20名以上増加した学校のみ掲載(減少した学校は割愛)
センター模試は四谷大塚ほどではないが、やはり減少している学校の方が多く、増加校の方が多いのは東京の女子と千葉のみ。センター模試志望校判定テスト全体(全国)でも前年より若干減っているので(270名ほど)、どうしても減少校の方が多くなる。
<男子>
2月1日が大きく増えているのは駒場東邦、高輪、芝、攻玉社で、四谷大塚では開成、海城、麻布が増えていたのと対照的。神奈川も含め、上位校の2回目以降の入試が増えているのが目に付く。
栄東の定員増は既に広く知られているようで、センター模試でも埼玉で唯一増加している。千葉で大きく増やしているのは上位校ばかり。9月以降徐々に敬遠が始まりそうだ。
一方減らしている学校だが、こちらは四谷大塚とは対照的に、開成、麻布、武蔵、筑波大附属駒場、浅野、聖光学院、慶応義塾湘南藤沢・・・・・・と難関校がことごとく大幅減。神奈川ではこのほか逗子開成、サレジオ学院、桐光学園・・・・・・と2月1日の難度の高い入試回も減。神奈川の男子はどこに移動しているのか。
複数の入試回で大幅に減っているのは、神奈川大学附属、逗子開成、桐光学園男子部。2011年度入試では「ねらい目」となりそうだ。
埼玉では男子校の3校がともに大幅減。埼玉での共学校志向はますます強まりそうだ。千葉は前年が低調だったため、大幅減少校は芝浦工業大学柏のみ。
<女子>
2月1日午前入試に注目すると、頌栄女子学院、雙葉、鴎友学園女子、東洋英和女学院、立教女学院が大幅増。ここ数年キリスト教系校離れが顕著だったが、5校すべてキリスト教系という際立った傾向になった。しかも雙葉以外はプロテスタント系。複数の入試回で増えているのは東洋英和女学院、横浜英和女学院、日本女子大学附属、専修大学松戸。
一方減少となると、品川女子学院、学習院女子、神奈川大学附属、横浜共立学園、清泉女学院が複数の入試回で減っている。品川女子学院、神奈川大学附属は前年の反動、学習院女子は「愛子様騒動」から敬遠されたか。また、男子同様、豊島岡女子学園①、女子学院、桜蔭、学習院女子A、青山学院・・・・・・と、難関校が敬遠されている。
埼玉の栄東の大幅増、千葉も難関校ばかりが増となっていることは男子と同じような動向だ。
四谷大塚、センター模試で逆の傾向も
四谷大塚とセンター模試を対比して見てみると、
<男子>
・東京 両方ともで大幅増 早稲田高等学院中学部と慶応義塾中等部。
片方が増、片方が減 開成、麻布。
両方ともで大幅減 国学院久我山③、芝②、渋谷教育学園渋谷③、桐朋、東京農業大学第一②、
東京都市大学付属④。
・神奈川 両方ともで大幅増 なし。
片方が増、片方が減 慶應湘南藤沢、聖光学院。
両方ともで大幅減 法政第二②、浅野、神奈川大学附属A・C、桐光学園男子部。
・埼玉・千葉・茨城 両方ともで大幅増 栄東A。
片方が増、片方が減 市川、渋谷教育学園幕張。
両方ともで大幅減 城北埼玉、立教新座、獨協埼玉。
<女子>
・東京 両方ともで大幅増 大妻中野②、鴎友学園女子③、雙葉、頌栄女子学院。
片方が増、片方が減 桜蔭。
両方ともで大幅減 品川女子学院①・②・③、青山学院、山脇学園C、田園調布学園②、共立女子
C、普連土学園②、女子学院。
・神奈川 両方ともで大幅増 慶應湘南藤沢。
片方が増、片方が減 日本女子大学附属②、森村学園③、横浜英和女学院C。
両方ともで大幅減 カリタス女子②、神奈川大学附属B・C、鎌倉女学院。
・埼玉・千葉・茨城 両方ともで大幅増 なし。
片方が増、片方が減 東邦大学東邦前期。
両方ともで大幅減 なし。
母集団のレベル・志向の違いから最難関校ほど逆の傾向になっている。それにしてもこれだけ逆の傾向の学校があるのだから、1模試だけで判断しない方がいいだろう。
まだ7月の段階なので、こうした動向を見た保護者が減っているところに動く可能性が高い。とりわけ2回目以降の入試が反対のベクトルになることが大いに予想される。
それでも現段階で両方ともで大幅減の学校は、これからの説明会で是非巻き返しを図っていただきたい。
情報提供:安田教育研究所