3大模試における志望状況は4年前とどう変化しているか?(2011.12)
ほとんどの偏差値ゾーンで4年前より入試規模が縮小
今回は、4年前の2008年入試に向けた2007年10月の3大模試での志望者数(上段)と、2012年入試に向けた2011年10月の3大模試での志望者数(下段)との比較をしてみたい。男女別・偏差値ゾーン別に志望者の多い上位10校(入試回)を調べて上下で対比してみた。偏差値ゾーンは、2008年・2012年入試に向けた首都圏模試の予想偏差値11月版による。
まず、こうした表を作成してみて、全体的に気づいたことを挙げてみよう。
〇表は、男子・女子、1月中・2月1日で計12の欄があるが、10位の学校の入試規模に注目すると、60以上の校数が少ない女子の08年1月中と12年2月1日の欄を除けば、偏差値が高いゾーンほど入試規模が大きいことがわかる。60以上と49以下の表を比べると、男子のほうがより差が拡大している。
〇各欄の1位の学校を08年と12年で比較してみると、男子・女子とも、12年の1月中も2月1日も、どの偏差値ゾーンも08年より減少している。
〇各欄の10位の学校を08年と12年で比較してみると、2月1日は男子も女子もどの偏差値ゾーンも08年より減少している。1月中はまちまちで、男子の50以上、女子の50以上と49以下が08年より減少している。
男子
■08年1月中
60以上 | 50以上 | 49以下 |
市川① 2498 立教新座① 2366 渋谷幕張① 1824 東邦大東邦前期 1580 芝浦工大柏① 871 昭和秀英②一般 711 江戸川学園取手① 634 栄東A 573 栄東東大クラス選抜 466 函館ラ・サール前期 437 |
城北埼玉① 904 専修大松戸① 712 獨協埼玉① 671 西武文理① 594 千葉日大一① 564 城西川越① 560 春日部共栄① 382 麗澤① 335 開智② 296 専修大松戸② 289 |
東海大浦安A 526 |
■12年1月中
60以上 | 50以上 | 49以下 |
立教新座① 1659 市川① 1443 東邦大東邦前期 1203 渋谷幕張① 943 栄東A 904 専修大松戸① 635 芝浦工大柏① 633 栄東東大選抜① 546 昭和秀英②一般 540 開智① 506 |
城北埼玉① 795 獨協埼玉① 540 西武文理① 455 千葉日大一① 406 城西川越① 358 麗澤① 337 城北埼玉② 272 開智② 266 春日部共栄① 247 江戸川学園取手② 243 |
東海大浦安A 318 千葉日大一② 302 東京農大三① 177 城西川越② 169 浦和実業② 167 常総学院① 163 東海大浦安B 160 八千代松陰1/20 135 東京農大三② 118 二松学舎大柏① 117 |
■08年2月1日
60以上 | 50以上 | 49以下 |
開成 1363 芝① 1288 早稲田① 1257 麻布 1196 逗子開成① 988 慶應普通部 973 東京都市大付① 919 海城① 878 桐朋 847 駒場東邦 839 |
日本大学① 812 成城① 696 日大豊山① 678 東京農大一① 672 攻玉社① 554 高輪A 520 青稜①B 492 明大中野八王子① 449 獨協① 429 日大二① 420 |
日大一① 424 東海大相模A 275 東海大高輪台① 213 足立学園① 207 明法①PM 195 立正①PM 185 横浜①B 174 藤嶺藤沢① 160 かえつ有明難進① 140 聖学院① 132 |
■12年2月1日
60以上 | 50以上 | 49以下 |
東京都市大付① 1095 開成 921 早稲田① 862 芝① 803 麻布 645 海城① 600 駒場東邦 541 城北① 537 逗子開成① 523 サレジオ学院A 497 |
高輪A 538 成城① 481 日本大学A 430 中央大附① 424 獨協① 374 日大二① 350 関東学院B 332 中央大横浜山手① 331 桜美林①PM 287 青稜①B 286 |
日大豊山① 353 日大一① 243 日大三① 230 足立学園① 206 東海大相模A 200 城西大城西①PM 128 東海大高輪台① 126 明法①PM 124 聖学院①特 108 鶴見大附①難 101 立正①PM 101 |
男子は49以下に増加校が1校もない
■1月中
4年前と比較してみると、この間の大きな変化が目につきやすい。60以上では08年にあった江戸川学園取手①、函館ラ・サール前期に代わって12年に新登場したのは、専修大松戸①と開智①の2校(入試回)。専修大松戸①・②は、08年では50以上のゾーンだったが、偏差値が上昇して12年では60以上のゾーンに移動している。
次の50以上では、その専修大松戸の抜けた分に城北埼玉②と江戸川学園取手②の2校(入試回)が新登場校している。
49以下では新登場校が7校(入試回)もあり、08年と同じ顔ぶれはわずかに東海大浦安のAとB、常総学院①だけであった。この背景には、埼玉栄の3入試回がいずれも50以上のゾーンに移動していること、東京農大三が2009年に、二松学舎大柏が2011年に開校していることがある。
50以上の2つのゾーンは比較的固定化しているのに対し、49以下はこの間に学校の人気に大きな地殻変動が起きていることがわかる。
次に、志望者数の増減を見てみよう。60以上で増加したのは栄東の2入試回だけであった。50以上ではかろうじて2名増の麗澤①があるだけで他はみな減少。49以下には増加校は1校もない。全体に、入試規模が縮んでいる学校(入試回)のほうがはるかに多くなっている。
志望者の減少が大きいところは、やはり入試規模が大きい偏差値60以上の学校(入試回)に目立っている。市川①はなんと1000名以上も減少、渋谷幕張①が881名減、立教新座①が707名減(それでも1位)、東邦大東邦前期が377名減となっている。偏差値ゾーンが上昇した専修大松戸①でも77名と若干だが減少している。50以上の学校(入試回)でも城西川越①など200名以上減少したところがある。偏差値49以下でも東海大浦安Aが208名も減少している。
■2月1日
2月1日も4年前と比べて大きな変化が見られる。60以上で志望者を増やしているのは東京都市大付①のみである。176名増えて、ランクも4年前の7位から1位に大きく躍進した。増減を調べると、50以上では高輪Aの1校だけが増加、49以下では増加している学校は1校もない。
一方で、大きく減少している学校が目立つ。60以上では、麻布が551名減、芝①が485名減、逗子開成①が465名減、開成も400名以上減らしている。50以上でも、日本大学Aが382名減、成城①が215名減、青稜①Bが206名減と増加に比べると減少幅は著しく大きい。49以下では、日大豊山①が325名減、日大一①が181名減と減少幅が大きく、他は元々の入試規模が小さいので、100名以下の減少となっている。日本大学の付属系の減少がここへきて目立っている。
4年前にはなくて、新しく登場した学校(入試回)がかなりある。60以上では慶應普通部、桐朋に代わって城北①とサレジオ学院Aの2校(入試回)が、50以上では東京農大一①、攻玉社①、明大中野八王子①に代わって中央大附①、関東学院B、中央大横浜山手①、桜美林①PMの4校(入試回)が新登場している。この間、東京農大一①、攻玉社①は60以上のゾーンに移動している。新登場の4校(入試回)は奇しくも4年前にはなかった入試回ばかりになった。中央大附は2010年の開校、中央大横浜山手は2012年から共学化、関東学院B、桜美林①PMは2008年にはなかった午後入試である。
49以下では横浜①B、藤嶺藤沢①、かえつ有明難進①に代わって日大豊山①、日大三①、城西大城西①PM、鶴見大附①難の4校(入試回)が新しく登場した。藤嶺藤沢①、かえつ有明難進①は50以上のゾーンに移動している。逆に日大豊山①は、08年には50以上のゾーンにあったが、12年には49以下のゾーンへ移動している。
学校種の観点で見てみると、60以上はすべて男子校で、50以上では3校、49以下では4校が男子校になっている。男子では偏差値が高くなるほど男子校志向が強いことに変化はない。
女子
■08年1月中
60以上 | 50以上 | 49以下 |
浦和明の星① 1870 市川① 1465 東邦大東邦前期 943 渋谷幕張① 794 淑徳与野① 766 昭和秀英②一般 741 江戸川学園取手① 455 栄東A 409 県立千葉 222 栄東B 175 |
星野学園① 856 国府台女子学院① 760 獨協埼玉① 611 専修大松戸① 601 西武文理① 551 麗澤① 386 芝浦工大柏① 362 千葉日大一① 358 大妻嵐山① 340 春日部共栄① 315 |
和洋国府台女子① 700 東海大浦安A 346 和洋国府台女子② 226 埼玉栄①AM 219 常総学院① 203 日出学園① 162 聖望学園① 159 東海大浦安B 151 聖徳大附①AM 106 土浦日大① 97 |
■12年1月中
60以上 | 50以上 | 49以下 |
浦和明の星① 1475 淑徳与野① 889 市川① 869 国府台女子学院① 837 東邦大東邦前期 754 昭和秀英②一般 644 栄東A 599 専修大松戸① 573 渋谷幕張① 380 開智① 379 |
獨協埼玉① 621 星野学園① 428 西武文理① 406 大妻嵐山① 357 麗澤① 345 千葉日大一① 283 春日部共栄① 267 大宮開成①特進 267 千葉日大一② 246 江戸川学園取手② 210 |
和洋国府台女子① 386 東海大浦安A 227 和洋国府台女子② 146 常総学院① 143 浦和実業② 131 二松学舎大柏① 118 東海大浦安B 106 開智未来① 98 聖望学園① 97 聖徳大附①AM 96 |
■08年2月1日
60以上 | 50以上 | 49以下 |
女子学院 1128 桜蔭 770 吉祥女子① 734 フェリス女学院 671 大妻① 635 雙葉 589 立教女学院 529 横浜共立学園A 528 東京農大一① 527 日本女子大附① 503 |
香蘭女学校 835 共立女子A 787 江戸川女子① 585 跡見学園① 530 十文字②S選抜 457 八雲学園① 455 横浜女学院A 435 実践女子学園① 432 三輪田学園① 424 日本大学① 420 |
横浜富士見丘①B 399 共立女子第二①PM 370 桐朋女子 320 日大一① 290 玉川聖学院① 280 トキワ松A・PM 257 東京家政大② 244 横浜英和A 186 麹町学園①PM 180 東京家政学院①PM 174 |
■12年2月1日
60以上 | 50以上 | 49以下 |
女子学院 637 大妻① 527 洗足学園① 450 吉祥女子① 446 東京農大一① 437 桜蔭 417 立教女学院 403 鴎友学園女子① 402 雙葉 376 フェリス女学院 373
|
共立女子A 743 大妻中野②アド 686 香蘭女学校 602 八雲学園① 464 十文字②S選抜 463 江戸川女子① 453 品川女子学院① 443 跡見学園① 386 広尾学園② 383 富士見① 383 |
和洋九段女子② 303 十文字① 227 桐朋女子A 197 女子美大付① 192 日大一① 178 麹町学園①PM 176 玉川聖学院① 167 横浜富士見丘①B 164 共立女子第二①PM 152 トキワ松A・PM 144 |
女子は偏差値ゾーンの移動がほとんどない
■1月中
4年前と比べて見てみると、60以上では江戸川学園取手①、県立千葉、栄東Bに代わって国府台女子学院①、専修大松戸①、開智①が新登場している。このうち、国府台女子学院①と専修大松戸①は、08年の50以上から、12年の60以上へ入ってきたもの。
50以上では、先の国府台女子学院①、専修大松戸①プラス芝浦工大柏①(ここも60以上のゾーンに移動)に代わって大宮開成①特進、千葉日大一②、江戸川学園取手②の3校が新登場。49以下では、埼玉栄①AM、日出学園①、土浦日大①に代わって浦和実業②、二松学舎大柏①、開智未来①の3校が新登場。このうち埼玉栄①AM、日出学園①は60以上のゾーンに移動している。二松学舎大柏①と開智未来①は、昨年に新設されたばかりだ。
次に志望者数の変動を増加校から見ていこう。60以上で4年前より増えたのは、淑徳与野①と栄東Aの2校。それぞれ123名増、190名増という大幅増である。50以上では獨協埼玉①と大妻嵐山①の2校があるが増加幅は小さい。49以下では増加校は1校もない。
男子でもそうであったが、女子でもこの4年間でかなり減少しているところが多くなっている。60以上では、市川①が596名減、渋谷幕張①は414名減でなんと4年前の半数以下になった。難しくなりすぎて女子には敬遠されているようだ。浦和明の星①も395名減と大きい。50以上では、星野学園①一般が428名減でちょうど半減。西武文理①が145名減で、他は2ケタの減少となっている。49以下でも減少傾向は続き、和洋国府台女子①が314名減、東海大浦安Aが119名減となっている。
■2月1日
まず、志望者数が増加した学校を見ていこう。60以上では増えた学校が1校もない。50以上で八雲学園①と十文字②S選抜の2校があるが、増加数がそれぞれ9名と6名だから、かろうじて増加している程度である。49以下では増加したところが1校もない。
次に、減少した学校を見ていこう。60以上では、女子学院が491名減、桜蔭が353名減、フェリス女学院が298名減、吉祥女子①が288名減、雙葉が213名減と、最難関校が軒並み志望者を大きく減らしている。50以上で、香蘭女学校が233名減、跡見学園①が144名減、江戸川女子①が132名減である。49以下でも減少校は続いていて、横浜富士見丘①Bが235名減、共立女子第二①PMが218名減である。
表に登場する学校の変化だが、60以上では横浜共立学園A、日本女子大附①に代わって洗足学園①と鴎友学園女子①の2校が新登場。50以上では4校の入れ替わりがあり、横浜女学院A、実践女子学園①、三輪田学園①、日本大学①に代わって大妻中野②アド、品川女子学院①、広尾学園②、富士見①が登場している。さらに49以下では東京家政大②、横浜英和A、麹町学園①PM、東京家政学院①PMに代わって(このうち横浜英和Aは60以上に移動)和洋九段女子②、十文字①、女子美大付①の3校が登場している。
女子の2月1日は偏差値ゾーンの移動がほとんどなかったことが特徴的である。
学校種別に見ると、60以上、50以上、49以下すべてで10校中9校が女子校であり、女子校が圧倒的多数を占めている。これは4年前と変わっていない。
情報提供:安田教育研究所