國學院大學久我山高等学校 入試対策
2025年度「國學院大學久我山高等学校の国語」
攻略のための学習方法
1.読解力はすべての学力を高める不可欠な要素である
国語(特に現代文)の入試問題における「読解力」の重要性は、いまさら言うまでもないだろう。しかし、受験生の大半は「どのようにしたら合格力に直結する読解力が身につくのか」と素朴な疑問を抱いているだろう。数学などと違い国語は、学習した成果がなかなか感じられにくく、模擬試験などの得点アップに即効性をもって表れてくるわけでもない。したがって、具体的な国語攻略法も見つからないまま漫然と学校の授業を受け、塾のテキスト問題を演習し、何となく国語対策をしたつもりになっているのではないだろうか。国語力、究極的には、「読解力」がすべての教科の学力を支えている要素であることを忘れてはならない。勉強とは考えるプロセスであり、考えるためには素材を十分吟味しなければならない。この「吟味」の作業が「読解力」なのである。数学と国語の読解力の関連性があまりないのではないか、と思っている受験生も少なくないのではないだろうか。しかし、よく考えてみると数学は、「思考過程」を文字ではなく「数式」に置き換えただけであり、本質的な部分は問題の原理を正確に「読み解く力」が求められており、正解を導く上では不可欠な要素なのである。したがって、一見関係のないような国語と数学ではあるが、その根本的な部分で「読解力」というキーワードでつながっているのである。
2.読解力を高めるにはどのようなことに留意すればよいのか
結論から言えば「自分の頭で考え、答えを導き出す」ということに尽きる。「自分の頭で考える」ということは、いろいろな場面で受験生も耳にしていることだろう。その具体的な内容・作業とはどのようなものだろう。「疑ってかかる」ということである。これは、「人を信じるな」といいことを言っているのではない。つまり、本に書かれてあること、テレビで流れていること、新聞に書かれていること、著名人が話していること等々、自分の身の回りの事象が「本当にそうなのか?」と一歩引いた立場で考えてみるということである。一歩引くと視野が広がる。考えに余裕が生まれる。その結果、今まで見えなかった部分が見えるようになってくる。その見えてきた部分に対して、自分の考えや価値判断を当てはめるのである。そういう作業を日頃から継続してゆく中で、物事を捉える「自分の眼」が養われ、磨かれてゆくのである。そうすると、物事の本質を見抜く視点を持つことができるようになり、評論文のような難解で複雑な文章も「すんなり」自分の頭の中に入ってくるようになるのである。
受験生には、是非とも「自分の頭で考え」て「読解力」を今以上に高めてもらいたい。
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2025年度「國學院大學久我山高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問一】小説に関する読解総合問題<17分>。記述問題(60 ~70字)が1題含まれている。
【大問二】論説文に関する読解総合問題<14分>。記述問題(50~60字)が1題含まれている。
【大問三】古文読解総合問題<12分>。現代語訳ができるように古語・古典文法の知識を確実にしておくこと。
【大問四】漢字問題<7分>。どれも標準的な問題である。確実に正解できようにしておくこと。
【大問一】小説に関する読解問題
- 時間配分:17分
出典:『一ノ瀬ユウナが浮いている』(乙一著)
(問一)内容把握記述問題<8分>。60字以上70字以内の記述問題である。ユウナの死を受け入れられない「俺」にとって、「クラスメイトたちの明るい表情、楽しげな様子」は耐えられなく我慢できなかったのである。
(問二)内容把握問題である<2分>。友人が入れ替わり立ち代わり「俺」を誘ってくれるのは「週替わりで俺を遊びに連れ出す協定でも結んでいるのだろう」と「俺」は感じたのである。つまり、友人たちの気遣いを感じたのである。
(問三)心情把握問題である<3分>。ユウナの葬儀のとき、「彼(=満男)の着ている制服はぱつんぱつんのサイズで、今にもはちきれそうになっていた」のであり、「そんな状態の満男が、ユウナの横たわる棺の前で泣いていた」のである。「俺」は「ずっと思い出さなかった光景が、不意に頭に浮かび、数ヶ月遅れでおかしみを感じた」のである。
(問四)内容把握問題である<2分>。ユウナが亡くなって「気づくと冬になっていた」のであるが、この間の身の回りの環境の変化すら見えてはいないのである。なぜならば「(俺は)廃人同然の精神状態で暮らしていたのである」からだ。。
(問五)心情把握選択問題である<2分>。ユウナの好きな線香花火についての懐かしい思い出が「俺」の記憶に蘇ったのである。「俺」の本当の気持ちをユウナに伝えることができず「俺」は後悔しているのである。
※以下の類題に挑戦しよう。
問 以下の文を読んで後の問いに答えなさい。
現代のテクノロジーは、私たちが抱える課題の多くを、極めて合理的に解決しようとします。特にAI(人工知能)の進歩は目覚ましく、情報処理やパターン認識において、人間の認知能力を遥かに凌駕する効率性を実現しました。AIは、特定の目的を与えれば、最短距離で最適解を導き出し、均質で完成度の高いアウトプットを即座に生成します。この効率化の波は、デザイン、ライティング、プログラミングといった、かつては人間の「創造的」な領域とされていた場所にも深く浸透しています。
①「この『効率』への全面的な信頼は、私たちから重要なものを奪いつつある」と言えるかもしれません。AIが生み出すアウトプットが完璧であればあるほど、それは予測可能性と再現性に縛られます。つまり、驚きや意図せぬ飛躍、そして何よりも「エラーの美学」を排除してしまうのです。創造性とは、しばしば論理の飛躍や偶然の産物であるにもかかわらず、です。
筆者が今、再評価すべきだと考えるのは、「手仕事」や「身体性」を伴う非効率なプロセスです。手で粘土をこねる、インクが滲む紙に文字を書く、あるいは木材をノミで削るといった行為は、目的達成までの時間がかかり、技術的な未熟さゆえに必ず「ズレ」や「抵抗」を生みます。このズレこそが、【 A 】なのです。
道具や素材がもたらす物理的な抵抗は、私たちに立ち止まり、考え直すことを強います。
AIのような純粋な思考空間では、この「抵抗」はノイズとして排除されますが、身体を伴う創造においては、その抵抗こそが触媒となります。身体が持つ不器用さや偶発的な動きが、認知だけでは到達し得なかった新しい発想の種をまくのです。
伝統工芸の職人たちが、何十年もかけて一つの技術を磨くのは、単に熟練を目指すためだけではありません。むしろ、②「身体が素材と対話する過程」そのものに、彼らの価値観が宿っています。彼らにとって、アウトプットされたモノ自体よりも、そのモノが生まれるまでの試行錯誤、素材への敬意、そして時間という「無駄」の蓄積こそが、計り知れない豊かさをもたらすのです。
現代に生きる私たちは、意識的に非効率な「余白」を日常に取り戻す必要があります。デジタルデバイスから離れて散歩する、目的もなく手紙を書く、絵を描く。これらは一見、生産性の低い行為に見えますが、内的な世界と外的な世界を再びつなぎ直すための、極めて能動的な試みです。
③「その意味で、手仕事とは現代における『静かな反逆』である」。それは、ただ古いものに戻ることを意味しません。効率と合理性が支配する巨大な流れに対し、人間的な感性や、予測不可能な発見の可能性を守ろうとする、静かで確固たる意志の表明なのです。
問一 下線部①「この『効率』への全面的な信頼は、私たちから重要なものを奪いつつある」とありますが、筆者が、効率の追求によって失われると指摘している要素を、文中の言葉を二箇所からそれぞれ抜き出し、以下の三十字以内の空欄を完成させなさい。(抜き出した二箇所は、連続した語句とは限りません。)
効率の追求は、私たちから「 ( ) 」と「 ( ) 」を奪う。
問二【 A 】に当てはまる内容として、最も適切なものを次の中から一つ選び、番号で答えなさい。
1. 思考の邪魔となるノイズとして排除すべき抵抗である。
2. 身体的な未熟さから生まれる、予測不可能な発見の契機である。
3. 目的達成を遅らせるだけの、単なる技術的なエラーである。
4. AIによるアウトプットの再現性を高めるための前提条件である。
問三 下線部②「身体が素材と対話する過程」とはどういうことですか。筆者の主張を踏まえて、50字以上60字以内で説明しなさい。
問四 本文の内容に合致するものとして、最も不適切なものを次の中から一つ選び、番号で答えなさい。
1. AIは目的達成において極めて合理的であるが、それゆえに偶発的な発見や論理の飛躍といった創造性の要素を排除しやすい。
2. 手仕事における道具や素材の抵抗は、純粋な思考空間では得られない、新しい発想を引き出す触媒としての役割を果たす。
3. 現代人は、意識的にデジタルデバイスから離れ、非生産的で受動的な活動を取り入れることで、内面的な豊かさを回復できる。
4. 伝統工芸の職人にとって、価値があるのは完成したモノだけでなく、そのモノを生み出すまでの試行錯誤や時間という蓄積された「無駄」である。
問五 下線部③「その意味で、手仕事とは現代における『静かな反逆』である」と筆者が述べる理由を、「支配」という言葉を用いて、80字以内で説明しなさい。
《解答》
問一 驚きや意図せぬ飛躍 エラーの美学
問二 2
問三 身体の不器用さや偶発的な動きを通して、素材や道具の抵抗を受け入れ、論理を超えた新しい発想や発見を生み出す試行錯誤のプロセス。
問四 3
問五 効率と合理性が現代社会を巨大な流れとして支配している状況に対し、非効率な手仕事によって人間的な感性や創造性を守ろうとする、確固たる意志を表明しているから。
【大問二】経済に関する論説文読解総合問題
- 時間配分:14分
出典:『お金で買えないものはあるのか?』(平川克美著)
(問一)内容把握問題<3分>。本文中に「贈与的な交換が存続していく理由」として、「交換の不等価性こそが、ひとに負債の感覚を生み出し、負債の解消が義務」であるかの感じを抱かせるのである。
(問二)内容把握問題<2分>。Xが生じることで「共同体を維持存続」させることが可能になるのであるから、「秩序や調和」である。
(問三)内容把握記述問題<2分>。貨幣交換は、人々を身分制や世間のしがらみから解き放つのであり、結果、近代社会に経済的発展をもたらすのである。
(問四)内容把握問題<5分>。「ひとは家族を生きる上での最小の単位」であり、他の哺乳類と同様に家族を作り相互に助け合うということである。
(問五)要旨把握選択問題<2分>。「家族関係、共同体内部の相互扶助、国家による救済は、関係の絶えざる断絶を阻害しているように映るだろう。関係の絶えざる断絶が、貨幣交換に拍車をかけ、経済成長を保証する」のであり、贈与交換の重要性は近代社会にあっても揺るぎないのである。
【大問三】古文読解総合問題
- 時間配分:12分
出典:『十訓抄』
(問一) 内容把握問題<3分>。本文中に、「といひければ」という個所があり、その前の部分が発言内容である。すなわち「主たち、…もの聞け」が発言内容である。
(問二) 内容把握選択問題<3分>。「今はかぎり」とは、「これが最後になる」という意味である。
(問三) 内容把握選択問題<3分>。本文に「よくよく聞きて、曲終りて、先の声にて、『君が船に心をかけて、寄せたりつれども、曲の声に涙落ちて、かたさりぬ』とて、漕ぎ去りぬ」とある。つまり、海賊たちは用光の演奏に涙の落とすほどに感動し、何もせずに漕ぎ去ったのである。
(問四) 内容把握選択問題である<3分>。本文の内容は「演奏(=音楽)」に感動し涙を流し、海賊は何もしないで立ち去ったのである。つまり、「音楽は人を動かす力がある」ということである。
【大問四】漢字問題
- 時間配分:7分
(問一) 漢字問題の書き取り問題である<5分>。全部で7題。書き取り問題は「委嘱」「湖畔」「回顧」「篤志」「紛」「狭」、読み取りは「鋳造=ちゅうぞう」「滞(る)=とどこお(る)」である。完答を目指そう。
(問二) 四字熟語問題である<2分>。①「ちょっとした短い言葉」という意味の四字熟語は「片言隻語」である。②「よくよく考えて実行すること」という意味の四字熟語は「熟慮断行」である。
攻略のポイント
論説文、小説、古文、漢字(知識問題)と出題としては、すべてのジャンルから偏りなく出題されている。出題された題材も標準的レベルであり、難解な文章ではない。ただし、記述問題対策はしっかり行っておくこと。指示された本文箇所の表現をどのように言い換えているのかを注意深く捉えていくことが重要である。また、漢字の書き取りの知識問題も比較的出題数が多いので、事前の準備をしっかり行い完答してほしい。全体的な出題レベルは、標準的であるのでしっかり本文を読み、前後関係を把握して解答するクセを付けよう。対策としては、上位高校の入試問題のうち論説・随筆・小説に関する問題演習を70題程度こなしておくこと。