日本医科大学の傾向と対策
化学(2012年)の傾向と対策
全体的に問題量が多く計算問題など難易度の高い出題が多くなっています。また近年は実験に関する出題も頻出となっています。2012年度も例年同様、計算問題の難易度が高く、また計算力が要求される出題となりました。理科2教科で120分の試験時間で例年大問4、5題の出題となっており、年度によって差はありますが7~8割程度が合格ラインのひとつの目安と言えるでしょう。
2012年度の大問別テーマは、大問1で理論無機小問集合問題。大問2で固体の溶解度と凝固点降下などの問題。大問3で弱酸二種の混合溶液を水酸化ナトリウムで中和した際のpHの問題。大問4で有機小問集合問題。大問題5で炭水化物の構造式や計算問題となっています。
大問1、4,5は基本的な問題が中心となっています。
大問1は元素の周期的な特徴(融点、沸点が原子番号とともにどうなるのか)などの本校の好きなタイプの問題が集まった集合問題となっています。普段から周期表を利用しながら学習することが大切となります。
大問4で乳酸のような光学異性体が存在する際、この異性体は平面偏光に対する性質が異なるが、この平面偏光とはどのような光かを20字以内で記述する問題が出題されました。
大問2は標準的な問題なのですが、多少計算が煩雑で計算力で差がついたでしょう。大問3は難易度が高く、多くの受験生が苦戦したでしょう。この問題が半分程度しかできなくても他をしっかり答えれば十分合格圏内に届くかと思われます。
このように難問ができなくても基本から標準的な問題ができれば十分合格圏内に届くことはよくありますので、本番では慌てず解ける問題を素早く確実に解くことがとても大切だということを強く意識して本番に臨むことが重要となります。
特に本校では難易度の高い大問と易しい大問の差が激しい年度がよくありますので、問題全体を見渡して、どの問題は解きやすいかを瞬時に判断する能力も大切になってくると思われます。この感覚を養うにはやはり典型的な問題を中心に数多く問題演習をこなすことが絶対不可欠になるでしょう。
2011年度は、大問1で第4周期までの元素と化合物の性質・反応などの問題。大問2で錯塩の組成式、錯イオンの配位数・イオン式・異性体の数などの問題。大問3で緩衝溶液の水素イオン濃度とpHなどの問題。大問4でタンパク質の構造と分子間の結合、構成アミノ酸の分子量の決定などの問題となっています。
本校の頻出分野、計算問題が中心の年度となっています。大問2の出来が得点差につながったと思われます。
2010年度は、大問1で電子親和力、鉛、カルシウム、金属の結晶格子、硝酸、ミョウバン、塩の分類と液性、水のイオン積、コロイド、フェノールの置換反応などの問題。大問2で水の状態図、三重点と臨界点、状態変化に伴う体積変化のグラフなどの問題。大問3で硫酸銅水溶液と食塩水の電気分解の問題。大問4で圧力変化による平衡移動の問題。大問5で芳香族化合物の分離と反応に関する問題となっています。
この年は30字の論述問題も出題されました。また2005年度以降の大問数が5題の年となりました。
以上、本校の傾向は理論分野が出題の中心で、難易度の高いテーマの問題もあります。2011年度の大問2の錯塩の組成式、錯イオンの配位数・イオン式・異性体の数や2009年度の大問2のニクロム酸イオンの反応、溶解度積と沈殿量などは得点差が生じやすかったと思います。理論分野では特に反応速度と化学平衡は頻出分野となっていますので重点的に演習を重ねましょう。
無機分野に関しましては、2006年度と2011年度に周期表との関連が問われていますので、断片的な知識より総合力が要求されていますので、周期表と各事柄の相関関係は常に意識しながら学習を進めましょう。
また実験に関する問題が例年出題され、エステルの合成実験や気体の発生に関する出題がありました。全体的に計算問題が多いのが特色となっていますので、スピードと正確性の両方を常に追求しながら問題演習を繰り返すことが大切になるでしょう。
最後に具体的な学習法としては「化学重要問題集(数研出版)」と「化学Ⅰ・Ⅱの新演習(三省堂)」などをどれだけ繰り返せるかが勝負となります。繰り返すことで知識を確実なものとし、計算力をつけることが絶対不可欠となります。また本校は特に計算の煩雑さなども考慮して時間を計っての過去問演習を繰り返すことで時間配分などに十分慣れるようにしておくことが重要となるでしょう。