聖マリアンナ医科大学 化学
入試対策と勉強法
特徴と時間配分
出題範囲(分野)の特徴
2020年入試までは大問の数が2~3題で小問数は60問前後でした。2021年から変化して、2021年、2022年と大問数が2題、小問数が50問前後となりました。2021年までは無機の出題は少なく有機が多かったですが、2021年はむしろ有機が少なく、2022年は大問1が有機・理論の融合、大問2が無機・理路の融合といえるセットでした。変化している最中なので、先入観なくバランスよく準備しないといけないでしょう。かつては理論にしろ、有機にしろ、小問集という形態も多くみられましたが、この2年は小問集ではなく、融合問題、総合問題の形となりました。理論は原子の構造、結晶格子、モル計算、熱化学方程式、酸・塩基の中和、酸化還元、電池・電気分解、気体、溶液、平衡など幅広く出されます。エネルギー・熱化学方程式関連、平衡の理論・計算問題は必須といえます。無機については、2021年が硝酸やアンモニアなどの窒素化合物の反応を中心とした出題でした。2022年はリン酸、ケイ酸、コークスなどを素材として、黒鉛の同素体を3つ尋ねたあと、リン酸の2段階電離の平衡の問題に移っています。有機はエステル、油脂、芳香族などは当然として、糖・アミノ酸・タンパク質といった高分子の出題が多いです。また合成高分子も出ていて、医薬品関係や生物の知識も基本レベルは押さえておきましょう。私立医学部受験生としては必須です。
出題量と時間配分
理科2科目で150分です。ここ2年は上記のように大問2題で、小問が50問前後なので、以前に比べ時間的に落ち着いて取捨選別できるテストとなりました。本学は論述・記述式の問題がとても多い大学であり、また計算問題も少なくないので、化学に比較的多くの時間がとる戦略のほうが高得点を狙いやすいでしょう。もちろんペア科目と相談の上ではありますが。難易度も以前に比べて易しくなっているので、各自適正な時間配分を見つけ出せば7割から8割も可能でしょう。
出題形式・解答形式
すべて記述式です。選択問題もありますが、記号を記述する形です。繰り返しになりますが、生物顔負けの論述式問題が多いです。化学式も組成式、分子式、反応式、熱化学方程式、構造式、示性式と注文に従って書き分けなければなりません。数値計算も2桁、3桁、小数第1位までなど指定が小問ごとに異なります。文字式の計算もあります。描図問題も出ます。さらにグラフを用いて考えさせる問題にも対応が必要です。
攻略のポイント
第1段階:まずは教科書レベルの定着が基本かつ重要。
特に本学は「定義を書け」などの論述あり。教科書の太文字の用語をサブノートにまとめましょう。
言うまでもないことですが、教科書の内容の定着が基本かつ重要です。医学部受験生たるもの、教科書は初めから最後まで、すみからすみまで熟読して、すべての例題や問を解くことは当然のことと考えましょう。なにしろ「入試問題の出典」は原則教科書なのですから。教科書にある公式などは、単位を含めてスラスラと出てくることが必要です。既卒生は手元に無い場合も考えられますが、入試の出題の基本枠・原点の確認のために必ず教科書は入手しましょう。さらに、図表や口絵、写真に至るまで目を通せば、力のある受験生も思わぬ発見や収穫があるでしょう。教科書の例題を見た瞬間、解法が浮かび、すらすらと解けるのがこの基準です。また、ダブルチェックの意味で、教科書傍用の問題集として定番の『セミナー化学基礎・化学(いわゆるセミナー化学)』(第一学習社)または『エクセル化学・総合版』(実教出版)の基本例題・基本問題を演習しストレス無く解ける基準を固めましょう。(ここで言う教科書とは「化学基礎」「化学」の両方のこと)
第2段階:次は入試物理の「標準」レベルの問題集を一または二冊マスターすること
『セミナー化学』(第一学習社)または『エクセル化学・総合版』(実教出版)の発展例題・発展問題がこのレベルに相当します。最低でも一冊を2周、できれば受験期も含めて3周して、大問の中盤くらいまではすらすら解けることを目指しましょう。
第3段階:次は何と言っても過去演習。論述問題は添削をしてもらいましょう。
「習うより慣れよ」です。本学が受験生に求めているものを研究しましょう。満点を取る必要はありません。7割以上、8割前後を想定目標にして、今の自分自身との距離感を把握しましょう。繰り返しになりますが、本学は国立大のように全問記述式で、しかも生物かと思うほど論述問題も多いです。私立医大としてはユニークともいえる出題形式と傾向ですから、過去問は可能な限り入手して時間演習で鍛えることが必要となります。また、論述問題は誰かに添削してもらうに越したことはありません。「合ってる」つもり、「合ってた」つもりは禁物です。過不足のない答案が稼ぐその数点が本学合格の決定打となるでしょう。
推奨テキスト
(1)『教科書』(各出版社)
第1段階用です。
教科書はなければ合格できないというものでもなく、これさえマスターすれば合格というものでもありません。しかし、教科書が入試の出典の原点であることは強調し過ぎということはないでしょう。各種公式・法則の導出過程やさまざまなカラーの図式・写真などだけでも相当の価値があるでしょう。
(2)『セミナー化学基礎・化学(セミナー化学)』(第一学習社)
(3)『エクセル化学・総合版(エクセル化学)』(実教出版)
第1段階用です。
『セミナー化学』、『エクセル化学』は、定番の教科書傍用の問題集です。教科書の例題とともにこの基本例題、基本問題をマスターするのが第1の段階です。『セミナー化学』はとても良い問題集ですが、市販されていないのが難点です。入手が困難なら、『エクセル化学』で十分です。『化学重要問題集−化学基礎・化学(重問)』(数研出版)も大定番の市販問題集です。『セミナー』や『エクセル』の発展例題、発展問題が大丈夫なら、『重問』にトライしましょう。少しずつ入試問題も更新されていて、しっかりとした内容です。
(4)『化学(化学基礎・化学)基礎問題精講(基礎精講)』(旺文社)
(5)『化学重要問題集−化学基礎・化学(重問)』(数研出版)
(6)『鎌田の理論化学の講義(大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
(7)「『鎌田の無機化学の講義(大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
(8)『鎌田の有機科学の講義(大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
第2段階用です。
『基礎精講』、『重問』は長年受験生の愛用問題集として風雪に耐えた定番の良問題集です。ボリュームがかなり違うので、どちらにするか手に取って選びましょう。『重問』はA、Bの問題ランクがありますが、本学の場合Aだけで十分です。また、理論、無機、有機の『大学受験Doシリーズ』三部作も必須といえます。仕組みや受験で出やすいポイントが整理されているので、教科書を読んで生じる、“なぜそうなのか”や“どこを覚えるのか”という疑問が解決できます。
<番外編>
(1)『化学 図録』(数研出版)
無機化学のさまざまな「色」の暗記には誰しも苦労します。また、化学は本来なら実験によって学ぶべきものですが、受験科学に登場する有名実験といえども実際に経験した者は少ないでしょう。追体験的な意味でビジュアル的要素の本書は必須です。
(2)『化学の新研究 改訂版』(三省堂)
これは文字通り「大学入試化学のバイブル」と言えます。本学突破のためには必ずしも必要とはいえませんが、医学部受験生として辞書代わりに1冊買っておいても後悔はしないでしょう。
テキストは相性があります。できれば書店で手にとって選びましょう。
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