2010年度に形式が大きく変わり、難易度も下がりました。2012年度は昨年度と比べて難易度はあまり変化なく、分量がやや増加しました。しかし基本的な問題が多く、計算問題も典型的な問題でした。本校の特徴である空欄補充問題が多く、基本用語、物質名をしっかり押さえておくことが重要となります。理科２教科で150分の試験時間で例年大問５～７題の出題となっており、年度によって差はありますが７～８割程度が合格ラインのひとつの目安と言えるでしょう。

  2012年度Ⅰ期の大問別テーマは、大問１で酢酸と酢酸ナトリウムの緩衝溶液に関する問題。大問２で鉛蓄電池と電気分解の問題。大問３で有機化合物構造式決定に関する問題。大問４で硫酸の工業的製法と硫黄の同素体に関する問題。大問５で糖類に関する問題。大問６で天然ゴムに関する問題となっています。

  大問１の酢酸と酢酸ナトリウムの緩衝溶液に関する問題では、空欄補充で電離、共通イオン、水素イオンが問われ、緩衝作用という語句が問われました。次に水素イオン濃度、ｐＨが問われ、典型的な計算問題が３題出題されています。緩衝溶液の典型的な問題だったと思いますが、今回の問題の中では多少差がついたかと思われます。

  大問２の鉛蓄電池と電気分解の問題では、鉛蓄電池の化学反応式を記述するなど基本問題ばかりでしたので、問５の電池の陽極の質量の増減を問う計算問題も含め完答したいところです。

  大問３の有機化合物構造式決定に関する問題では、基本的な組成式から分子式を問う問題からはじまり、空欄補充でマレイン酸、フマル酸、コハク酸を答え、構造式を１つ答え、最後にまた空欄補充で不斉炭素、旋光性、鏡像（光学）を答えるという基本問題ばかりでした。しいてあげるなら、旋光性が多少難しかったかもしれませんが、こちらも完答が十分狙えた問題となりました。

  大問４の硫酸の工業的製法と硫黄の同素体に関する問題では、空欄補充で接触、硫黄、二酸化硫黄、触媒、三酸化硫黄、発煙、硫化水素、還元、ゴム状硫黄、斜方硫黄、単斜硫黄、同素体と基本用語ばかり答える問題となっています。次に５つの硫黄に関する化学反応式を記述する問題などがあり、計算問題も１問出題されました。用語も反応式もどの問題集にも載っている典型的な問題となっていますので、素早く対処したいところです。

  大問５の糖類に関する問題では、空欄補充でアミロース、アミロペクチン、マルトース、スクロース、フルクトース、転化糖、デオキシリボース、リボースを問う問題からはじまり、アミロースとアミロペクチンの構造上の大きな違いを答える記述問題が出題されました。そしてグルコースの平衡状態の構造を完成させる問題や計算問題も１題出題されました。完答は難しいかもしれませんが、医学部で頻出の糖類の基本問題が大半でしたので、大きな失点は命取りになったと思われます。ただし現役生は化学Ⅱの有機化学分野の学習が追い付かず現役生と差がつきやすいので、現役合格を目指すなら早い段階に化学Ⅱの有機化学も攻略することが重要となるでしょう。

  大問６の天然ゴムの問題も現役生と浪人生で差が生じた問題になったと思われます。

  2011年度の難易度の高かった問題として、炭酸水素ナトリウム水溶液のｐＨを求める計算問題が出題されました。2010年度の難易度の高かった問題として、植物の必須微量元素に関する問題、生命科学からサポニンの洗浄作用なども出題されました。生命科学に関して深い知識が必要な問題も頻出なので、ここまで押さえられればベストです。

  以上、本校の傾向は標準問題を中心にやや難易度の高い生命科学の問題も出題され、空欄補充問題が多いのが大きな特徴となっています。ただし上述した2012年度の空欄補充で問われている用語、物質名をみても分かる通り、ほとんど基本的な問題となっていますので、苦手分野なく基礎力をしっかり固めることが合格への鍵となります。

  最後に具体的な学習法としては「実力強化問題集化学Ⅰ・Ⅱ（文英堂）」、「私立中堅医大医学部受験の化学Ⅰ・Ⅱ（文英堂）」などをどれだけ繰り返せるかが勝負となります。繰り返すことで知識を確実なものとし、典型的な問題を瞬時に解ける力がまず絶対不可欠となります。また有機化合物に関しては「有機化学の最重点　照井式解法カード（学研）」などを併用するとより効果的になるでしょう。