いくらでも選択肢のある自由なこの社会で、私たちは息苦しさを感じている。既存の枠組みを超えてきた先人たちから、見取り図のない時代を生きる術を学ぶ論考集。本文では、ミヒャエル･エンデの寓話を紹介しつつ、それを手がかりに｢自由｣とは何かを論じている。｢寓話｣や｢比喩｣でやや分かりづらい部分もあるが、何とか内容をつかみたい。｢総合的知識問題｣も含めて、実に多様な｢設問｣が並ぶ。基礎的な問題が多いが、最後に本校の｢新定番｣ともいえる｢長文自由作文｣が待ち構えている。以下、いくつか確認する。

[問一]　｢漢字の書き取り｣(全５問)。
二重傍線部(Ａ)～(Ｅ)の｢カタカナ｣を｢漢字｣に直す。基本的なものなので、本校志望者は全問正解でいきたい。強いて、注意すべきものを挙げれば、(Ａ)｢体験談を話しているというセッテイ｣(＝｢設定｣)､(Ｃ)｢閉じられた場所に入れられたジョウタイ｣(＝｢状態｣)｡本校の｢漢字の書き取り｣では、わざわざ｢ていねいに書きなさい｣という｢条件｣が明記されている。ということは、それだけ厳しく採点されるわけだ。一点一画を意識して記すこと。
＜時間配分目安：１分＞

[問二]　｢語句の空所補充選択肢｣(全４問/８択)。
本文中の｢１～４の空所｣に入れる｢適当な語｣(ほとんどが｢接続詞｣)を答える。本校に限らず定番の問題。｢接続詞｣では｢逆接｣はともかく、｢順接｣には十分に注意すること。同じ｢順接｣だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。ここでは、｢逆接｣はない。順に確認する。１には｢転換｣の(オ)｢では｣､２には｢例示｣の(ウ)｢例えば｣､３には｢結果｣の(カ)｢だから｣､４には｢まとめ｣の(エ)｢このように｣が入る｡選択肢が多いので、いくつかの｢候補｣をしっかりと｢代入確認｣してから確定することが重要だ。
＜時間配分目安：２分＞

[問六]　｢条件付き換言説明記述｣(｢40～50字以内｣指定)。
傍線部④｢私たちが今置かれている状況｣について、｢具体的｣に説明する。｢条件｣は｢問題文中の語句を用いる｣こと。｢換言説明｣なので、｢状況｣とは何かが｢最重要要素｣(正否の決め手となる)だ。｢傍線部一文一部の原則｣(｢傍線部が一文の一部分｣だった場合、｢傍線部以外が重要｣ということ)で確認する。直前直後から｢この話｣＝｢状況｣の｢比喩｣だと分かる。｢指示語｣を開く(｢指示語｣が出たらすぐに開くこと)｡｢この話｣＝｢自由がありすぎて自由がないこと｣だと判明する。つまり、｢状況｣＝｢自由がありすぎて自由がないこと｣なのだが、｢具体的｣ではない。そのことが他で説明されているはずだ。｢論説文｣は｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある。確認する。すると、次段落に｢不自由なこともなく、たいていのことならやっても許される社会にいる。なのに、なんとなく息が詰まるというか、解放された気分にならない｣とある。｢自由がありすぎて自由がない｣と合致する。従って、この｢問題文中の語句｣を字数に合わせてまとめればいい。たとえば、｢不自由もなく、たいていのことが許される社会にいるのに、息が詰まり解放された気分にならないという状況。｣といった｢答え｣になる。｢換言説明｣では、｢傍線部の文脈｣に即してまとめること。
＜時間配分目安：２分半＞

[問七]　｢比喩換言説明抜き出し｣(｢13字｣指定)。
傍線部⑤｢あまりにもドアがありすぎて外に出られない｣について、｢このことの意味を言いかえて説明している部分｣を抜き出す。｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を特定した上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。｢比喩｣なので、｢内容｣の手がかりを探す。先ずは｢傍線部一文一部の原則｣を使う。直後から、｢傍線部｣＝｢イッシーアラーと同じ状況｣だと分かるはずだ。次に｢抜き出し範囲｣だが、当然｢同一意味段落｣だ。３段落前に｢イッシーアラー｣の説明がある。そこには｢部屋のドアが開いているのに出ることができない｣ということが｢比喩｣として紹介されており、最後に｢自由がありすぎて自由がない｣という｢逆説｣だとまとめられている。ということは、｢答え｣は｢自由がありすぎて自由がない｣だ。尚、｢抜き出し｣では｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず全てを確認することを忘れずに！
＜時間配分目安：１分半＞

[問八]　｢内容説明選択肢｣(４択)。
傍線部⑥｢『自由』とは何か｣について、｢筆者の『自由』に対する考えの説明｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣を試みたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡が、ここでは｢問い｣に対する｢答え｣の説明なので、さすがに無理だ。｢同一意味段落｣で｢『答え』が説明されている部分｣を探していく。それぞれの｢形式段落｣の｢冒頭｣に着目しながらたどっていくと、傍線部から７段落目が｢まとめ｣だと分かる。その最後に｢つまり『自由な主体』とは、『責任を負う主体』と同じこと｣とある。要は、｢自由｣⇒｢責任を負う｣ということだ。各選択肢の文末を確認する(選択肢の説明でのポイントは｢文末｣だ)｡(ア)｢結果が決まっている｣､(イ)｢責任を負うべきもの｣､(ウ)｢責任も大きくなっていくもの｣､(エ)｢それ(＝自由)が存在する余地はまったくないと言えるもの｣｡無論、(イ)以外は｢消去｣できなくてはいけない。他の部分の説明も特に誤っていないので、｢答え｣は｢(イ)｣になる。｢選択肢設問｣では、｢消去法｣を徹底すること。
＜時間配分目安：１分半＞

[問十]　｢条件付き自由作文｣(字数指定なし、｢150字ほど｣の解答欄)。
傍線部⑧｢人間は成長するにしたがって、自由の範囲が大きくなっていくのだ｣について、｢あなたはどう考えるか｣を、｢自由に作文｣する。｢条件｣は｢自分の毎日の生活や経験なども具体的に盛りこむ｣こと。いくら｢自由｣といっても、｢本文｣に関することを問われているのだから、先ずは｢手がかり｣｢ヒント｣を探す｡傍線部⑧は本文全体の｢結論部(まとめ)｣であって、｢成長する｣＝｢大人になる｣＝｢自由な主体になる｣⇒｢責任を負う主体になる｣ということがポイントだと分かるはずだ。従って、こうしたポイントを押さえながら、｢自分の毎日の生活や経験｣に｢具体的に｣ふれて､まとめていけばいい。ただ、｢評価は内容と表現の両面から行う｣と明記されているので、｢表記｣｢文法｣｢構成｣等にも十分に配慮すること。尚、この｢設問｣は本校が求めている｢鑑賞力･想像力･創造力･表現力｣全てが網羅されているので、｢白紙｣のままというのは避けた方がいい。
＜時間配分目安：５～６分＞

｢甲子園という舞台｣をめざす者どうしの友情、嫉妬、ライバル心、そして一体感――少年たちの熱い夏を描いた涙と感動の高校野球小説集の一篇。本文は、プロ入りを期待されながらも最後の甲子園を前に故障した強打者｢益岡｣の｢代走｣に起用された｢俺｣(｢須藤｣)が、心にため込んでいたうっぷんを一気に晴らす場面。[問一]は３つの｢空所｣に対して何と10もの｢オノマトペ｣(擬態語)からの｢選択肢問題｣、[問二]は｢慣用句｣で｢あご(をしゃくる)｣｢まゆ(を寄せる)｣の｢記述問題｣､[問三]は｢語句の意味｣で｢気圧される｣などの｢選択肢問題｣と、本校らしい｢総合的知識問題｣が続く。いかに､これら前半で失点しないかが勝負となる。以下、他の２問を検討してみたい。

[問九]　｢換言説明選択肢｣(４択)。
傍線部⑥｢お前が未練がましくいるせいで、俺たちはずっと、針の筵(むしろ)だ｣について、｢どういうことを言っているのか｣を答える。｢換言説明｣なので、先ずは｢原意消去｣｡無論｢針の筵｣の｢原意｣で｢消去｣する。｢慣用句｣で、｢一時も心の休まらない、つらい場所や境遇｣のことだ。各選択肢の文末を確認する｡(ア)｢居心地が悪い｣､(イ)｢冷たい態度で接している｣､(ウ)｢ねたまれている｣､(エ)｢つらい状況にいる｣｡であれば当然、(エ)以外は｢消去｣できるはずだ。他の部分の説明も特に誤っていない｡よって、｢答え｣は｢(エ)｣。｢一発消去｣だ。｢原意消去｣､活用すべし。尚、仮に｢針の筵｣という｢慣用句｣を知らなかったとしても、｢比喩｣なのだから、｢針｣と｢筵＝敷物｣から類推できなくてはいけない。ただし、本校志望者には、この程度の｢慣用句｣は習得していてもらいたい。
＜時間配分目安：１分以内＞

[問十]　｢理由説明記述｣(｢50～60字以内｣指定)。
傍線部⑦｢だけど、腹ん中が一番へんだ｣について、｢このように『須藤』が感じる理由｣を説明する。｢理由説明｣なので、｢直接的理由｣が｢最重要ポイント｣となる。先ずは、直前直後から｢状況｣を確認する(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡｢須藤｣は､｢益岡｣にとってはとても｢受け入れられない事実｣を｢きつい言い方｣で指摘してしまい、｢益岡｣を激怒させた｢状況｣だ。そして、直前に｢くそ、喉が痛ぇ｡背中も痛ぇ｣とあって傍線部につながる。｢喉｣｢背中｣＝｢身体｣であれば、｢腹ん中｣＝｢心情｣だと分かる。その｢心情｣は？　傍線部直後に｢あんなこと言うつもりじゃなかった。後悔してももう遅い。いったん､口に出したものはもう取り消せない｣とある。要は｢後悔｣だ。しかも｢もう遅い｣｢もう取り消せない｣ものだ。こうしたことを｢過不足なく｣まとめればいい。たとえば、｢『益岡』にとってはとても受け入れられない事実をきつい言い方で指摘してしまい、取り返しのつかない後悔の気持ちがあるから。｣といった｢答え｣になる。｢小説｣では｢同一場面｣を丁寧に読み取ることが肝要。また、｢説明記述｣では、｢最重要ポイント｣を｢文末｣にすること。
＜時間配分目安：３分＞