「関東地方と長野県との地理的特色や両者の地形的つながり、人的往来、そして、その歴史についてのリード文」からの出題。内容は、「歴史的行政区分」「地形グラフ」「人口増加率」「模式図」「統計資料」「農産物」「観光地」等と多種多様。ほとんどが「基礎的事項」を問う問題だが、中には「見慣れない統計資料」や区別が容易ではない「組み合わせ選択肢」といった、東邦大東邦らしいものもある。以下、いくつか確認してみたい。
 
[問２]  「地形グラフの選択肢設問」
下線部①「関東平野」に関して、「群馬県」「千葉県」「東京都」「栃木県」各都県の、「面積」に占める「土地の傾き」の「角度別」の「面積割合」を示したグラフについて、「東京都」に当てはまるものを答える(４択)。誰もが初めて見る「グラフ」に違いない。いかにも東邦大東邦らしい問題だ。知らなくて当然。「知っていること」から考えればいい。臨海部の「平野」は「土地の傾き」が「小さい」に決まっているのだから、「グラフ」(ウ)(エ)が「千葉県」か「東京都」だとすぐ分かる。次に、「地図」を思い浮かべる。「千葉県」ほぼ全てが「関東平野」に含まれるのに対して、「東京都」の西部は「武蔵野台地」から「関東山地」に至る。従って、「傾斜地」の比率が高い(ウ)が「答え」となる。初めて目にするものでも慌てる必要はない。自分が「知っていること」に結びつければいい。
 
[問８]  「家畜飼育頭数の組み合わせ選択肢設問」
下線部⑦「畜産」に関して、日本地図上に示された「肉用牛」「乳用牛」「豚」それぞれの各都道府県別「飼育頭数」を表す「円グラフ」について、「組み合わせ」が正しいものを答える(６択)。これらの「家畜飼育頭数」の統計は誰でも押さえているので、具体的に「都道府県別順位」が示されていればすぐに判別できる。しかし、ここでは「頭数」が「円の大きさ」で表されており、しかも、「円」が重なっている部分もあり分かりづらい。知っていながら得点できないという可能性がある。冷静に判断しなくてはいけない。「肉用牛」「豚」の上位には「鹿児島県」「宮崎県」が入っているのは常識なので、両県が目立たない「グラフ」(ア)が「乳用牛」だと分かるので、選択肢としては(ウ)(エ)に絞られる。とすれば、「肉用牛」トップは「北海道」という「基礎」から、「答え」は(エ)にできるはず。落ち着いて読み取ることが重要だ。
 
[問10]  「観光客数グラフの条件付き不適切説明選択肢設問」
下線部⑨「観光客」に関して、「長野県内の観光地」における「月別利用者数」を示した(あ)～(え)のグラフの「説明」について、「誤っているもの」を答える(４択)。「条件」は各「観光地」の「地形図」を参考にすること。「設問」の「情報」が実に多い。典型的な東邦大東邦らしい問題。丁寧に「情報」を検討することは必要なのだが、先ずは「目くらまし」があるかどうかを判別する。そのためには、「選択肢」の「説明」だけで正誤を判別できるかを確認すればいい。選択肢(ウ)に気づきたい。明らかに間違っていないか？ 「長野市内」の「善光寺」が「冬は雪によって閉ざされる」となっている。「長野盆地」が「雪によって閉ざされる」などあり得ない、と判断できなくてはいけない。よって、(ウ)が「答え」となる。「情報」を選び取る「選択と集中」が重要。

「校外学習」で訪れた「富士山」「会津地方」「長崎」３か所それぞれについての「説明文」からの出題。「世界遺産登録」「ＮＨＫ大河ドラマ」といった時事ネタをうまく取り入れた大問。内容は、「時代説明」「美術史」「年代特定」「人物写真」「女性史」「年代整序」「時期正誤判定」等。「歴史」の「基礎的事項」を問う問題がほとんどだが、中には意表を突く東邦大東邦ならではのものもある。２問だけ検討してみよう。
 
[問３]  「年代の選択肢設問」
「台湾が日本領となった年」を答える(４択)。「設問文」はやたらと長いが、要はこういうことなので、惑わされないこと。いたって易しい問題なのだ。だが、悩むはず。なぜなら、意表を突く「元号表記」だからだ。通常、「年代」は「西暦」で覚える。それで基本的には問題ない。「元号表記」で問われるにしても「昭和」が普通だ。が、ここでは「明治」、混乱して当然。東邦大東邦らしく一筋縄ではいかない。落ち着け！ 「答え」は「1895年」と分かっている。「明治元年」が「1868年」ということも知っている。あとは、「算数」だ。1895−1868＋１＝28、ということで「答え」は(イ)の「明治28年」になる。ここでも、慌てず冷静にということ。なお、「西暦」⇔「昭和」換算は覚えておくと便利だ。「西暦19○○年」⇔○○−25＝××⇔「昭和××年」となる。
 
[問４]  「地図上の地点を結ぶ選択肢設問」
「会津地方」の「説明文」中にある「会津藩城下町」・「安中藩(群馬県) 城下町」・「京都」、「地図上」に示された「これらの３地点を結ぶ線」を答える(４択)。要は、「地理」。これまたいかにも東邦大東邦といった風変わりな問題。それほど難しくはないが、なんじゃこりゃ？ となるのは間違いない。「京都」はすぐ分かるので、選択肢(ア)は即「消去」。「会津藩」が「福島県」ということは知っているはずだが、「城下町」の「若松」はどうか？ 現在の「会津若松市」だと結びつけたい。そうなれば、「内陸部」ということで、「答え」は(ア)となる。「意表を突く問題」も、結局は「設問」を正確に理解し、「知っていること」に結び付けて「多角的」に考えればいいということ。

「ポツダム宣言受諾から現在までの、日本の政治・経済と国民生活の変化についてのリード文」からの問題。内容は、「日本国憲法補足」「年代整序」「統計資料読み取り」「説明文と地図の組み合わせ」「外交交渉」「労働状況」「国際社会」「時事問題」など多種多様。「時事問題」の比率が高く、なおかつ難しい。また、例によって「あれっ？」となつてしまう東邦大東邦ならではのものも並ぶ。以下、いくつか検証してみる。

[問１]  「空所補充の事項記述設問」
下線部①の「日本国憲法公布」に関連して示されている、「日本国憲法第十一章補足」の「条文」中にある空所[あ][い]を答える(「漢数字」指定)。まさに、「あれっ？」という問題。「補足」？ 知らなくて当然。誰も知らないのだから、いつものように「知っていること」に結びつければいい。「条文」を確認する。「公布の日から起算して[あ]か月」経過した日から「施行する」、そして、「第一期の参議院議員」のうち「半数」の「任期」は「[い]年とする」となっている。[あ]は実に単純、「日本国憲法」の「公布」と「施行」の間隔だから、「答え」は「六(か月)」。[い]はちょっと悩むか？ 「参議院議員」の「半数」⇒「３年ごとに改選」と考えていきたい。つまり、「第一期参議院議員」の「半数」は、「３年」で「改選」を迎えたということ。当然、「答え」は「三(年)」。ちなみに、「３年」の「任期」となった「半数」は、「得票数の順位」で決められた。ここでも、「多角的思考」がものをいう。

[問３]  「年代整序の選択肢設問」
下線部③の「平和主義」に関連して示されている、(ア)～(エ)の「できごと」を古い順に並べたとき「３番目」に当たるものを答える(４択)。「現代史」の問題。意外と抜け落ちている可能性がある「難問」。「年代整序」では、無理やり「年代」を思い出してつなげようとしてはダメ。「記憶」があいまいで「数字」が少しでも違えば、「順序」が入れ替わってしまう恐れがある。「できごと」の「背景」をとらえて、「流れ」で考えなくてはいけない。(ア)～(エ)の「流れ」を確認する。「サンフランシスコ平和条約」と同時に(ア)「日米安全保障条約」⇒「冷戦」を背景に「警察予備隊」が(ウ)「自衛隊」に⇒「核軍拡競争」の中で(イ)「非核三原則」決議⇒「冷戦」終結直後に(エ)「湾岸戦争」、という「流れ」だ。従って、「答え」は「(イ)」となる。東邦大東邦の「歴史」では、「背景」を理解し「流れ」をとらえることが重要。
 
[問７]  「不適切説明の選択肢設問」
下線部⑦の「輸入」に関連して、現在進められている「ＴＰＰ交渉」での「日本への影響の説明」として「誤っているもの」を答える(４択)。典型的な「時事問題」。「ＴＰＰ」に関しては誰もが押さえているはず。何ということはない。と思いきや、「説明」は「詳細な交渉内容」に及んでいる。えっ、ここまでは知らない……。そう、だが問題はない。必ず何か「誤っている」部分があるはずなのだ。自分の「知っている知識」を総動員して、確認すること。「細部」まで注意して、読んでいく。すると、選択肢(エ)の「一般に日本の畜産物の価格は国際価格より安く」という部分に気づくはずた。「安く」、明らかに「誤っている」。従って、これが「答え」だ。実は、「ＴＰＰ」を知らなくても解けたということ。東邦大東邦では「時事問題」を「詳細」に定着させることが重要だが、万一押さえていなかったとしても、「細部へのこだわり」と「多角的思考」で解けると心得よ。