｢熟語の漢字の同音異字判別｣(全５問/各４択)。

｢書きとり｣ではなく｢選択肢｣なので、どうにでもなるさ、などと甘く見てはいけない。より厳密に判別しないと誤ってしまう恐れがある。しかも、｢各４択｣ということは、合計で｢25の熟語｣を正確に知らなくてはいけないことになる。まあ、本校志望者であれば｢全問正解｣といきたいが、やや悩ましいものとしては、

(２)｢写真を現ゾウする｣(＝現像)⇒｢答え｣は(ウ)｢金色の仏ゾウ｣(＝仏像)
⇒他の選択肢は、(ア)｢動物園のゾウ｣(＝象)/(イ)｢土ゾウ｣(＝蔵)/(エ)｢ゾウ器を提供｣(＝臓)｡
(３)｢地位は同カク｣(＝同格)⇒｢答え｣は(エ)｢カク差が広がる｣(＝格差)
⇒他の選択肢は、(ア)｢技術のカク新｣(＝革)/(イ)｢内カク総理大臣｣(＝閣)/(ウ)｢勢力のカク大｣(＝拡)｡
(５)｢大気汚セン｣(＝汚染)⇒｢答え｣は(エ)｢感センをふせぐ｣(＝感染)
⇒他の選択肢は、(ア)｢草津温セン｣(＝泉)/(イ)｢料理のセン門家｣(＝専)/(ウ)｢商品のセン伝｣(＝宣伝)｡

本校では｢漢字｣の正確かつ完璧な定着が不可欠だ。

刊行当時､｢14歳スーパー中学生作家、待望のデビュー｣と大いに話題になった作者の短編集の一篇。｢田中花実｣(＝｢田中さん｣＝｢花ちゃん｣)は小学6年生。ビンボーな母子家庭だけれど、底抜けに明るいお母さんと、毎日大笑い、大食らいで過ごしている。そんな｢花実｣と｢田中さんのお母さん｣を中心とした日常の大事件やささいな出来事を、時に可笑(おか)しく、時にはホロッと泣かせる筆致で描き切り､これまでにない瑞々(みずみず)しい感性で綴(つづ)られた作品。本文は表題作で、中学受験に失敗し､寮のある遠くの男子校に入学されられた｢僕｣と､｢田中さん｣親子ら周囲の人との交流を通して、｢中学受験｣とそこにまつわる現代の｢毒親｣を子どもの視線で描いている。諸君と同世代の作者の作品なので当然、内容は理解できる？はずだ。小問も比較的平易なものが並んでいる。ここは、手際よく得点をゲットしていきたい。以下、いくつかを確認してみたい。

[問一]　｢語句の意味の選択肢｣(全２問/各４択)。｢総合的知識問題｣｡

傍線部(ａ)｢絶対君主｣､(ｂ)｢案の定｣の｢本文における意味｣を答える。

これらの｢原意｣(本来の意味)に忠実に判別すれば何の問題もないはずなのだが、｢本文における意味｣を意識し過ぎると､間違ってしまう可能性があるので要注意だ。
それぞれの｢答え｣を確認したい。｢絶対君主｣＝｢なにものにも拘束されない絶対的で無制限の権力をふるった君主｣のことなので(無論、ここでは比喩表現)、

(ａ)の｢答え｣＝選択肢(イ)｢比べようもないほど権力の強い者｣、
｢案の定｣＝｢予想していたとおりに事が運ぶさま｣なので、(ｂ)の｢答え｣＝(エ)｢予想した通りに｣だ。

こうした｢語句の意味｣では、｢設問｣に惑わされずに｢原意絶対優位の原則｣(｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)を徹底させること。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問二]　｢状況説明選択肢｣(４択)。

傍線部(１)｢田中さんのお母さんが、静かな暗い目でこっちを見ている｣について、このときの｢田中さんのお母さん｣の｢説明｣を答える。

｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意絶対優位の原則｣に基づき｢原意消去｣をしたい｡ここは｢状況説明｣なので、｢静かな暗い目｣のときの｢状況｣として結びつかないものを｢消去｣したい。

各選択肢の｢文末｣で照合する(｢選択肢｣の｢説明｣では｢文末｣が最重要ポイントだ)｡

(ア)｢明るい未来が待っているということを教えようとしている｣
(イ)｢生きることの尊さについて優しく諭そうとしている｣
(ウ)｢気力を取り戻させようとしている｣
(エ)｢感謝を思い出させようとしている｣

さあ、どうだろうか？　｢静かな暗い目｣なのだから当然、(ア)の｢明るい｣や(イ)の｢優しく｣は｢消去｣できるはずだ。ここで２択になった。次に｢同一場面の直前直後｣に｢消去｣の｢ヒント｣を求める(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡直前で、｢田中さんのお母さん｣が｢死のうとしていた『僕』｣(⇒｢前説｣から分かる)に対して､｢……、一食食べて、その一食分生きるんだ。そうやってなんとかでもしのいで命をつないでいくんだよ｣と言っている。よって、｢人の話を聞こうとしない『僕』に､自分のことばかり考えず、ここまで育ててくれた両親への｣とある(エ)は｢消去｣で、｢『僕』が死のうとしたことを見抜いた上で、食事という生きるために不可欠な営みに向きあわせ｣とある(ウ)が｢答え｣だと判別できる。ここでは、｢原意消去｣→｢文脈消去｣の２段階だったが、設問段階での｢原意消去｣は必ず試みるべし。

＜時間配分目安：１分半＞

[問四]　｢内容説明選択肢｣(複数解答/７択)。

傍線部(４)｢うちの柔軟剤の香り｣について、｢どのようなことを表しているか｣を｢三つ｣答える。無論、｢原意消去｣から｡ここでは｢うち｣がポイントとなる。｢うち｣の｢原意｣と結びつかないものを｢消去｣する。

各選択肢の｢文末｣を確認する｡

(ア)｢自分の情けなさ｣
(イ)｢優しく迎え入れてくれる家｣
(ウ)｢自分と家族との間にあるつながり｣
(エ)｢自分の甘えた姿勢｣
(オ)｢安心感を与えてくれる兄や姉｣
(カ)｢ぼんやりとした不安｣
(キ)｢母への悲しみ｣

｢うち｣＝｢家｣＝｢家族｣なのだから、(ア)(エ)(カ)は即｢消去｣できなくてはいけない。残りは確かに全て｢家｣や｢家族｣についての説明だが、｢三つ｣であれば、｢母｣だけに関しての(キ)も｢消去｣可能だと判別できるはずだ。他の部分の説明も特に誤ってはいない。したがって、｢答え｣は(イ)(ウ)(オ)になる。結果的には｢一発消去｣だ。畏るべし｢原意消去｣､やはり十二分に活用すべきだ。

＜時間配分目安：１分＞

[問六]　｢内容説明不適切選択肢｣(４択)。

傍線部(６)｢やっぱり田中さんのお母さんはすごい人だ｣について、｢田中さんのお母さん｣の｢どのような点が『すごい』のか｣､その説明として｢適当でないもの｣を答える。

｢原意消去｣からといきたいが、｢すごい｣の｢内容｣が問われているので、流石(さすが)にここだけでは無理だ。｢すごい｣と思った｢きっかけ｣は何か？　｢同一場面の直前直後｣で確認する。｢田中さんのお母さん｣が娘(＝｢田中さん｣)の卒業式で胸につけていたコサージュ(＝｢小さな花飾り｣⇒｢※注｣)が新聞紙で作ったものだと分かったことだと読み取れる。

各選択肢の｢説明｣を確認する｡

(ア)｢お金をかけなくても、立派に娘を育てている点｣
(イ)｢いつでも『僕』の気持ちを見抜くことができる点｣
(ウ)｢人が驚くような物を、器用に作ることができる点｣
(エ)｢苦労している様子を見せず、明るく生きている点｣

前述の｢きっかけ｣を考えれば、ここでの｢すごい｣の｢内容｣は｢僕｣自身とは無関係だと分かるはずだ。よって、(イ)が｢消去｣すべき不適切なものなので｢答え｣となる。当然、｢不適切設問｣だということを見逃してはアウトなので注意すること。

＜時間配分目安：１分＞

私たちの指や血管は、円柱の形をしている。いやいや、ナマコやミミズ、ゾウの鼻やネコの胴体だって――なぜ自然界にはかくも｢円柱形｣が溢(あふ)れているのだろうか？ 生きものが総じてやわらかいのはどうしてだろうか？ 物理的時間とは異なる、生きものの｢『円い』時間｣とは？ 私たちが五感で捉えることのできる実感を手がかりに、生きものの本質へと大胆に迫る論考。本文では、｢四角い煙突｣に違和感を持った筆者が、｢人にやさしい技術｣とはどういうもので、それを目指すには何を知るべきかについて論じている。本大問は、｢説明記述｣以外は比較的オーソドックスなものが並んでいる。以下、いくつかを検討する。

[問二]　｢換言説明選択肢｣(４択)。

傍線部(１)｢こういうアイデア｣について、｢どのようなものか｣を答える。

典型的な｢時事語換言｣だ。このままでは｢消去｣できないので、｢指示語｣を開く｡直前から、｢こういう｣＝｢現実の四角い煙突｣のことだとすぐに分かる。ただ、これだけでは｢アイデア｣の内容が不明だ。そこで、｢同一意味段落｣を確認する(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠｣｢手がかり｣がある)｡前段落で｢都会は四角い建物が多いので、煙突も四角くすれば美観に配慮した街づくりができる｣といった｢アイデア｣だと説明されている。

各選択肢の｢文末｣を確認する｡

(ア)｢丸い煙突とは別に四角い煙突も作る｣
(イ)｢丸い煙突の形を四角形に変えることで調和をとる｣
(ウ)｢煙突の根元部分を少し広げた形にする｣
(エ)｢(細くて瀟洒な煙突にすることで)現代風の景観を作り出す｣

｢アイデア｣＝｢町の美観に配慮して煙突を四角くする｣ことなのだから､ (イ)以外は｢消去｣だと判別できるはずだ。他の部分の説明も特に誤ってはいない。したがって、｢答え｣は(イ)でいい。尚、本問のように｢指示語｣が直接問われていない場合でも、｢指示語｣が出たらすぐに開くことが肝要だ。

＜時間配分目安：１分半＞

[問三]　｢理由説明不適切選択肢｣(４択)。

傍線部(２)｢丸い断面は良い形なのです｣について、それは｢なぜだと筆者は考えているか｣の説明として｢適当でないもの｣を答える。｢原意消去｣をしていく。ここは｢理由説明｣なので、｢良い形｣の｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣したい。

各選択肢の｢文末｣と照合する｡

(ア)｢全方向からの力にも対応できる構造だから｣⇒｢良い形｣
(イ)｢横から吹く風の力を受け流しやすい形だから｣⇒｢良い形｣
(ウ)｢内外から加わる圧力に影響を受けやすい構造だから｣⇒｢良い形｣
(エ)｢煙が淀むことなく上部へと流れやすい形だから｣⇒｢良い形｣｡

さあ、どうか？　｢加わる圧力に影響を受けやすい｣のは｢良い｣わけがないのだから当然、(ウ)は｢消去｣＝｢不適切｣だと判別できなくてはいけない。ここは｢不適切選択肢｣なので､｢答え｣は(ウ)になる。無論、｢不適切選択肢｣だということを十分に意識しなくてはならない。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問四]　｢内容説明の条件付き抜き出し｣(｢一文の最初の５字｣指定)。

傍線部(３)｢この手の箱形至上主義｣について、｢その根本にある意識について対比の形で述べている一文｣を探し、｢最初の五字｣を抜き出して答える。

｢なお､『至上主義』とは、『それが最も良いものだととする考え方』という意味｣だと説明されている。｢条件｣は｢これより前から探す｣こと。｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を捉えた上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。｢内容｣は無論、｢この手｣という｢指示語｣を開いて特定することになる。ここで注意すべきは、｢この手｣が段落冒頭にあることだ。｢段落頭の指示語は前段落全ての内容を指し示す｣ということを忘れずに。確認すると、｢この手の箱形至上主義｣＝｢丸い体は四角い部屋にそぐわない。丸い人体は醜い。これからは四角い顔が美人の条件｣といった｢四角が最も良いものとする考え方｣だと分かる。｢範囲｣はもちろん｢同一意味段落｣｡｢これより前から探す｣ので、｢同一意味段落｣が始まっている５段落前から丁寧にチェックしていく。その際、｢対比の形で述べている一文｣だということを意識すること。すると、３段落前の最後に｢『四角は美しい、丸は醜い』というのが、四角で埋め尽くされた都会の美意識になってしまったのかもしれません｡｣という｢一文｣がある。｢内容｣も合致している。したがって、｢答え｣は｢『四角は美｣だ。尚、｢抜き出し｣では｢候補｣は決してひとつとは限らないので、必ず｢範囲｣のすべてを確認する必要がある。

＜時間配分目安：１分半＞

[問六]　｢条件付き内容説明記述｣(｢字数指定｣なし､｢60字ほど｣の解答欄)。

傍線部(５)｢人にやさしい｣について、それは｢どのようなことだと筆者は考えているか｣を説明する。

｢条件｣は｢本文の言葉を用いて説明する｣こと。筆者が考える｢人にやさしいとは何か｣ということを説明するわけだが、｢本文の言葉を用いて｣と｢条件｣にある以上、｢本文｣で述べられているはずだ。確認すると、傍線部直後で｢『やさしい』という言葉を『相性がいい』と言い換えればはっきりしてくる｣と指摘されており、２段落後の｢同一意味段落｣でまとめられていることが分かる。そこでは｢人間は生物の一員で、環境も多くの生物によってつくられているので、人へのやさしさ、環境へのやさしさこそ、今後、目指すべきで､そのためには生物との相性を良くする必要がある｣といったことが述べられている。こうした｢内容｣を｢過不足なく｣まとめていけばいい。たとえば、｢『やさしい』とは『相性がいい』と言い換えることができ、人間は生物の一員であるので、人と生物との相性がいいということ｡｣(58字)といった｢答え｣になる。本問でも分かるように、｢条件｣は｢手がかり･ヒント｣でもあると心得よ。

＜時間配分目安：３分＞