高校受験プロ家庭教師 弱点克服・志望校入試傾向対策
高校受験専門プロ家庭教師が語る

慶應義塾志木高等学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2025年度「慶應義塾志木高等学校の国語」
攻略のための学習方法

高校入試における頻出分野は論説文と小説である。この2分野の文章の攻略法について以下に述べてみたいと思う。

論説文を読み切るために

(1)「論説文は難しい」と受験生の多くは思っていないだろうか。なぜ、そのように受験生は思ってしまうのだろうか。理由は様々あるだろうが、本文に展開されている難解な論理や普段使い慣れていない用語などが、受験生の理解を阻んでいると思われる。「論説文は易しい」とまでは言わないが、入試問題として出題される論説文は、筆者の主張も明確で論理展開も整然としている。重要なことは、そのような特質のある文章を如何にしたら試験時間内に手際よく読み込むことができるかである。

(2)前項で確認したように、入試で扱う論説文は極めて論理性が高い。そのような文章を理解するためには、自分自身が論理的思考力を身につけなければならないということである。そのためには、日頃から物事を論理的に考える習慣を付けておくことが重要である。論理的思考力を付けるためには、「自分の頭で考える」ことが必須である。最近は、様々な情報伝達ツールが氾濫しており、必要な情報は手間暇掛けずに容易に手に入ります。そのような利便性の高い環境の中で、物事を論理的に考えるためには安直にそのような便利なツールに頼らず、自力で試行錯誤を繰り返しながら結論を導き出すことである。

(3)上記のような作業を繰り返すことで、「論理の道筋」を自分で組み立てられるのである。それができるようになれば、自力でも論理的な文章を書けるようになり、入試問題で扱われる論説文に対する対策も効率よく習得できるだろう。そして、その結果としては単に論理的文章が読めるようになるだけではなく、そのような論理的思考に裏付けられた記述問題における力も高まるのである。

(4)論理性を高めるためには、論理性の高い文章を読むことが必要であると述べた。具体的には、岩波書店や筑摩書房などから出版されている「新書」を読むことが効果的である。中・高生向けの「ジュニア・新書」も発行されているので、自分の興味のある分野の新書を実際に手に取ってみて中身をぜひ見てもらいたい。自然科学分野は言うまでもなく、社会科学系の内容もたくさん網羅されている。数冊で構わないので、気に入った新書を手に取り読了してもらいたい。さらに言えば、読書録のような文章(400語=原稿用紙1枚)にまとめ上げる訓練も必要である。その文章を他人(学校の国語の先生)に見てもらうと、自分の文章作成上の弱点補強にも役立つことは間違いない。

小説は心情把握を重点に

(1) 高校入試で扱われる小説のポイントは「心情把握」である。登場人物の内面の心理状況がどのように変化してゆくのかを的確に押さえ、把握できるかが合否を分けると言える。その心情描写は、「そのとき太郎は、心から落胆したのである」という具合に「直接的」ではない。情景描写や他の登場人物との会話のやり取りを通じて推量するしかない。そのためにも自分の「感性」を研ぎ澄まさなければならない。

(2)「感性」を研ぎ澄ますためにはどうすればよいか。一口で言うならば「感動する心を失わない」ことである。物事を見て感動しない心では「感性」は磨かれない。小説の本文を読みながら、情景が浮かんできて登場人物の動きが手に取るように理解できるようになるためには「感動する心」が必要である。

(3)小説の文章を理解するためには、「比喩」の表現を活用したい。「比喩」には「直喩」と「暗喩」がある。文章中にあるこれ等の表現技法をしっかり理解し、内容が把握できるようになると小説の読解・理解力は格段に伸びる。日頃から文章を丁寧に読み込み、「比喩」、「擬人法」、「倒置」などの表現方法は意識して読むような習慣を付けることが重要である。

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2025年度「慶應義塾志木高等学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

【大問1】 小説に関する読解問題<19分>。人物の心情把握をしっかり行うこと。
【大問2】 随筆文に関する読解問題<20分>。自伝的分野に関する随筆に関する出題である。
【大問3】 説明文に関する読解問題<13分>。「詩」に関する説明文である。
【大問4】 説明文に関する読解問題<8分>。「日本語」に関する説明文である。

【大問1】小説の総合読解問題

  • 時間配分:19分

出典は、安岡章太郎著『球の行方』。

問1は、表現に関する問題である<2分>。
 文脈から「ハッキリ」となる。
 直後に「手になじみ」となるので「シックリ」が適切である。

問2は、内容把握選択問題である<2分>。
私は「野球は都会的なスポーツで田舎の子がやるものではない」と考えているのである。

問3は、表現に関する問題である<1分>。
い…当初に考えていたこととは、状況が全く異なっていることを指す。「見当違い」である。
は…自分一人で勝手に思い込んでいる状況を指す。「一人合点」である。

問4は、内容把握選択肢問題である<1分>。
前後の文脈を考えると「ハッキリとした」「明確な」という趣旨の言葉が入る。つまり「自信に満ちた」となる。

問5は、内容把握に関する問題である<2分>。
私…「私のグローブ」に対しては、私は特別な感情、かけがえのないとして感じている。
F…「私のグローブ」に対しては、「私」のような特別な感情は抱いていない。

問6は、内容・心情把握に関する問題である<2分>。
「私のグローブ」に対して、「かけがいのないものとして特別な感情」を抱いていたのが、「かまやしない」という感情に変化したのは、自分に対する感情の変化(自分もどうでもいいや)を読み取ること。本文にも「一人ぼっちで放り出されている自分自身の姿が、どうしようもないほど見っともなく、恰好のつかない哀れなものに思われた」とある。

問7は、慣用句に関する選択問題である<2分>。
とても驚いた様子を表す慣用句である。「『身』のすくむ」である。

問8は、心情把握に関する選択問題である<2分>。
野球をするといって出かけた息子が松の木に上っていた現場をあのあたりにした母は、戸惑い、息子になんと声をかけてよいのかわからない状態である。

問9は、内容把握に関する記述問題である<3分>。
「野球を都会的なスポーツで田舎の子がやるものではない」と考えている「私」は、野球をしている中に入っては見たものの、まわりについていけない自分を「情けなく」思っているのである。そして、そのような自分を「母」には見られたくないのである。

問10は、内容把握に関する問題である<2分>。
「ぼく」という人称を用いることによって、自身の中の「幼かった頃」や「本音」の部分をそのままストレートに表現しようとしている。

※以下の類似問題に挑戦しよう。

 次の文章を読み、後の問いに答えよ。
 「もう、行かないの?」
玄関先で声をかけてきたのは、母だった。壁に立てかけられたテニスラケットに視線を落とし、僕は曖昧に首を横に振った。ラケットは、僕が中学三年の夏の大会まで肌身離さず使っていたもので、握り皮は汗で黒ずみ、フレームには激しい練習の跡が刻まれている。   
「別に。体が動かないだけだよ」
僕は嘘をついた。大学までテニスを続けるつもりだった僕が、高校に入ってから一度もコートに立たなくなったのは、体が動かないからではない。あの夏、たった一球のミスで敗退した試合の記憶が、いまだに僕の心臓( ア )で重く横たわっているからだ。
僕にとってテニスは、生きるためのすべてだった。それは父が僕に託した夢でもあり、僕自身の誇りでもあった。父は、僕がプロの選手になることを心から望んでいたが、大会の直前に急な病で倒れ、試合を見ることなく亡くなった。あの時、僕の頭にあったのは、勝利によって父の期待に応えなければならないという強迫観念だけだった。勝利は、僕が父の死を受け入れるための、唯一の儀式だったのだ。
だからこそ、最後のスマッシュをネットに引っ掛けた瞬間、僕の中で何かが決定的に壊れた。それはテニスへの情熱というより、父の( イ )を果たすことができなかった自分への、許しがたい罪だった。ラケットを握るたびに、敗北の瞬間の光景、そして父の病室での沈黙がフラッシュバックする。 [ ウ ]。それが今の僕を最も的確に表す言葉だった。
ある日、高校の図書館で、テニス部の部長だった先輩に偶然会った。彼は僕を見るなり、壁際のラケットに目をやり、静かに言った。
「お前のテニスは、いつも誰かのためのものだったな」
僕は反論しようとしたが、言葉が出なかった。図星だったからだ。僕が父の夢という重荷から解放されずにいることを、彼は知っていた。
「テニスを辞めるのは自由だ。でも、[ エ ]。それは、誰のせいでもない、お前自身の時間だ」
先輩の言葉は、冷たく突き放すようでありながら、どこか優しかった。その夜、僕は壁からラケットを外し、そっとグリップを握ってみた。指先に伝わる使い慣れた感触は、もう罪の重さではなく、父の愛を思い起こさせる、懐かしい温もりに変わっていた。

問1.空欄( ア )に入る、筆者の心情を示す表現として最も適切なものを、次の選択肢から一つ選び、記号で答えなさい。
1.を覆い隠すように
2.の底に
3.から離れて
4.を突き破って

問2.空欄( イ )に続く語句として、文脈上最も適切なものを、次の選択肢から一つ選び、記号で答えなさい。
1.期待
2.目標
3.役割
4.約束

問3.下線部「たった一球のミス」が、その後も主人公をテニスコートから遠ざけている理由を、本文の内容を踏まえ、65字以内の日本語で説明しなさい。ただし、句読点も一字に数えるものとする。

問4.空欄[ ウ ]に入る言葉として最もふさわしい五字以内の言葉を、本文中から抜き出して答えなさい。

問5.先輩の言葉を通して、主人公が最後にラケットを握った際に感じた「温もり」とは、どのような変化を象徴しているか。本文全体の主題を踏まえ、最も適切なものを次の選択肢から一つ選び、記号で答えなさい。
1.テニスを再開することで、亡き父の夢を今度こそ実現できるという、未来への強い決意。
2.敗北の悔しさや父への罪悪感から解放され、テニスを純粋に「自分のためのもの」として捉え直した心の変容。
3.強迫観念を捨て、勝敗を気にせずに仲間との協調性を楽しむという、新しいテニスへの向き合い方。
4.テニスという競技に対する客観的な視点を獲得し、精神的な負荷がなくなった冷静な心境。

【解答と解説】
問1.

解答:2

解説: 主人公はテニスから離れており、その原因である「たった一球のミス」の記憶が今もなお「重く横たわっている」と表現されている。これは、過去の記憶が主人公の内面(心臓の奥底)に深く根を下ろし、活動を妨げている状態を示しており、「心臓の底に」が最も適切である。

問2.
解答:1

解説:「父は、僕がプロの選手になることを心から望んでいた」とあり、その期待に応えられなかったことが「許しがたい罪」になったと述べられている。
•「夢」を果たす、「誇り」を果たす、「強迫観念」を果たすという表現は文脈として不自然である。
•「期待」を果たすことができなかった自分への罪悪感、とするのが最も自然である。

問3.
解答: そのミスが、父の病状から来る強迫観念のもとで勝利という父の期待に応える唯一の儀式を果たすことができなかったという、許しがたい罪の意識に直結しているから。(65字)
解説: ポイントは「父との関係」と「敗北の捉え方」を結びつけること。
1.テニスは「父が託した夢」であり、勝利は「父の期待に応える唯一の儀式」だった(第2段落)。
2.ミスによる敗北は、「父の期待を果たすことができなかった自分への、許しがたい罪」と主人公に認識された(第3段落)。
3.この「罪」の意識が、ラケットを握るたびにフラッシュバックするため、コートから遠ざかっている(第3段落)。
これらの要素を整理し、字数内にまとめる。

問4.
解答: 強迫観念
解説: 空欄[ ウ ]は、直前の「敗北の瞬間の光景、そして父の病室での沈黙がフラッシュバックする」という、主人公の現在の精神状態を総括する言葉が入るべきです。
•主人公は、テニスを「生きるためのすべて」とし、父の期待に応えるという過度な精神的圧力を感じていた(第2段落)。
•その圧力は「父の期待に応えなければならないという強迫観念」と本文中で明記されており(第2段落)、これが現在のテニス忌避の根源となっている。
•よって、現在の主人公の状態を最も的確に表す「強迫観念」が正解である。

問5.
解答:2
解説: 主人公の心の変容の過程を以下に整理する。
1.葛藤の原因: 父の「夢」と「期待」を「重荷」として背負い、「誰かのためのもの」としてテニスを捉えていたこと。→ 敗北が「罪」となる。
2.先輩の指摘: 「お前のテニスは、いつも誰かのためのものだったな」「お前自身の時間だ」
3.変容(最後の行動): ラケットの感触が「罪の重さではなく」「父の愛を思い起こさせる、懐かしい温もりに変わっていた」。
「温もり」は、罪悪感という重い鎖が外れ、テニスと父の愛を切り離して、自分自身の純粋なものとして受け止め直したことを象徴している。つまり、「敗北の悔しさや父への罪悪感から解放され、テニスを純粋に自分のためのものとして捉え直した心の変容」が最も適切です。
•1は、「再開の決意」は明確でなく、主題は「心の変容」そのもの。
•3は、「協調性」は本文では言及されておらず、テニスは個人の問題として描かれている。
•4は、「冷静な心境」ではなく、「温もり」という前向きな感情の変化が主題。

【大問2】自伝的分野である随筆文読解問題

  • 時間配分:20分

出典は、黒井千秋著『老いへの歩み』である。

問1は、漢字の書き取り問題である<2分>。
「精密」「胎内」「雑巾」「淘汰」「埃」である。

問2は、内容把握に関する問題である<3分>。
「陸にいる身体は常になにものかに追われ続けている」のであるが、「風呂の中では、…人は日常の些事から解放」されるのである。

問3は、接続語に関する抜出し問題<2分>。
…空欄以下でその前に述べている事柄の理由が書かれている。
…以下に具体的な事柄が述べられている。

問4は、内容把握に関する問題である<1分>。
「もしも水中動物の巣の中に空気をためた一角があり、魚やタコやイカが呼吸器官だけは水中に残し、身体の他の部分を空気に中に差し入れてじっとしている」のは「逆さ絵」である。

問5は、内容把選に関する問題である<3分>。
「風呂場の方法」とは「小さな思いつきを湯に浮かべるようにして曖昧に漂わせておく」ことである。

問6は、内容把握に関する問題である<3分>。
「なにものかが身の底に沈殿」するのである。

問7は、内容把握に関する問題である<1分>。
「一層よく仕上がるように注意深く睡眠の重しを載せてやる」作業は「押し花」を作るときに行う作業である。

問8は、品詞に関する問題である<1分>。
「が」と言い換えが可能かどうかが判断のポイントである。

問9は、内容把握に関する選択問題である<1分>。
事象の発生が非常にゆったりしている状態を表す言葉である「やおら」である。

問10は、内容把握に関する問題である<3分>。
「風呂の中」では「人は日常の些事から解放され」、「意識下に圧しつぶされていた感覚や思考が裸の形」で立ち上がるのであり、これは思考が「自由に解き放たれる」のであり、それが水中を自由に泳ぐ「人魚の姿」のようなのである。

※以下の類似問題に挑戦しよう。

 次の文章を読み、後の問いに答えよ。
高校の美術部での活動は、私にとっていつも一種の「違和感」を伴うものだった。油絵具の匂い、静まり返った部室、そして、各自がキャンバスに向かってただひたすら筆を動かすあの時間。私は、サッカーを続けてきた人間にとって馴染みの深い、汗と怒号の「動」の世界から、一瞬にして静寂の「静」の世界へと身を置くことになった。
中学までは、チームの勝利がすべてであり、自分が点を取ることも、パスが通ることも、すべてが目に見える結果として評価された。しかし、美術の世界はそうではない。キャンバスの上で格闘しているのは、あくまで「私」という個人であり、その成果は他者との比較ではなく、自己との対話の深さでしか測れない。むしろ、他者との協調を重んじるチームスポーツの感覚こそが、( ア )に映った。
ある日、顧問の先生が、私の描いた抽象画を見て言った。「君の絵は、なんだか動き出したがっているね。まだ、[ イ ]を恐れているみたいだ。」私はその言葉の意味をすぐに理解できなかったが、その日から、それまで無意識に避けていた強い色や、大胆な筆遣いを試すようになった。失敗してもいい、という開き直りにも似た感情が、私の手首に自由を与えたのだ。
それまでは、技術的な正確さにばかりこだわり、デッサン帳に書かれた他者の評価を気にするあまり、自分自身の内側から湧き出る「衝動」を抑えつけていたのかもしれない。サッカーで相手ゴールを奪いに行くときのような、あの一瞬の爆発力。それが、私の中にあった芸術への衝動だと気づいたとき、私は初めて、キャンバスの上で「自分」という存在を全身全霊で表現する喜びを知った。
部室の静けさは、もはや違和感ではない。それは、外部の喧騒から離れ、自分自身の内面へと深く潜り込むための「内省の場」となった。この静かな時間こそが、私にとって最も激しい、そして最も正直な「自分探し」の時間だったのだ。美術とサッカー、一見対極にある二つの活動が、実は私の中で同じ「真の自己を解き放つ」という目的に向かっていたのだと、私は今、確信している。

問1.空欄( ア )に入る、文脈上最も適切な語句を、次の選択肢から一つ選び、記号で答えなさい。
1.異質
2.協調
3.当然
4.虚無

問2.下線部「全身全霊で表現」と同じ文法・用法の「表現」が使われている文を、次の選択肢から一つ選び、記号で答えなさい。
1.彼女は詩の表現を磨くために、毎日音読を続けた。
2.この絵画は、画家の内面の苦悩を表現したものだと言える。
3.美術の表現には、無限の可能性があると言われている。
4.彼の顔の表現は豊かで、感情がすぐに読み取れた。

問3.[ イ ]を恐れている」とは、具体的にどのようなことか。本文の内容を踏まえ、45字以内の日本語で説明しなさい。ただし、句読点も一字に数えるものとする。

問4.筆者にとって、美術部での活動を通じて得られた最も重要な気づきは何か。本文全体の内容に最も合致するものを、次の選択肢から一つ選び、記号で答えなさい。
1.協調性を重視する集団活動よりも、個人で完結する活動の方が、本来の自分を出しやすいということ。
2.運動能力の高さと芸術的才能は、一見無関係に見えて、実は根底で繋がっているということ。
3.技術的な正確さや他者の評価に囚われず、内なる衝動を解き放つことが、真の自己表現につながるということ。
4.静寂な環境は、激しい感情やエネルギーを抑えつけ、精神的な安定をもたらす作用があるということ。

【解答と解説】
問1.

解答:1
解説:
筆者は、チームスポーツ(協調が重要)から美術(個人完結)へ移ったことで、価値観の転換を感じている。「むしろ、他者との協調を重んじるチームスポーツの感覚こそが、( ア )に映った」は、「(個人の世界である美術において)集団を重んじる感覚は、場違いで異質なものに見えた」という意味になるのが最も自然である。

問2.
下線部「全身全霊で表現」の「表現」は、直後に助動詞「する(動詞)」が続く名詞であり、「〜を表現する」というように目的語をとる「サ変動詞」として機能している(この場合、サ変動詞「表現する」の語幹として機能していると見なすこともできる)。選択肢の中で「表現」が動詞(サ変動詞)として使われているのはどれかを確認する。
1.「詩の表現を磨く」→ 名詞(詩作の方法、手段)
2.「内面の苦悩を表現したもの」→ 動詞(サ変動詞)の連用形(「表現した」の「表現」)
3.「美術の表現には」→ 名詞(表現という行為、行為の結果)
4.「顔の表現は豊か」→ 名詞(表情、表出されたもの)

解答:2
解説:
元の文「全身全霊で表現する」は、「〜を表現する」という動詞として使われている。選択肢2の「内面の苦悩を表現した」も、「〜を表現する」という動詞(サ変動詞「表現する」の連用形)として使われており、文法的な用法が一致します。他はすべて名詞として使われている。

問3.
解答:
技術的な間違いや、周りの人から低い評価を受けることを恐れること。(43字)
解説:
「[ イ ]を恐れている」の直前の文脈と、直後の行動変化から読み解く。
•直前の文脈: 先生は「まだ、[ イ ]を恐れているみたいだ」と指摘。
•変化前の筆者: 「技術的な正確さにばかりこだわり、デッサン帳に書かれた他者の評価を気にするあまり、自分自身の内側から湧き出る『衝動』を抑えつけていた」(第4段落)。
•変化後の行動: 「失敗してもいい、という開き直りにも似た感情が、私の手首に自由を与えた」(第3段落)。
このことから、「[ イ ]」とは、失敗や、他者からのネガティブな評価を指しているとわかります。筆者が恐れていたのは、自分の衝動に従って大胆に描くことで生じる失敗や、その結果としての他者の低い評価である。

問4.
解答:3
解説:
本文の主題は、「美術(静)とサッカー(動)」という対極的な活動が、実は筆者の真の自己表現という点で共通していたという発見である。
•筆者は当初、「技術的な正確さ」と「他者の評価」に囚われていた(第4段落)。
•先生の指摘を受け、「失敗してもいい」という開き直りから「強い色や、大胆な筆遣い」を試す(第3段落)。
•最終的に、「自分自身の内側から湧き出る『衝動』を抑えつけていた」ことに気づき、それを「全身全霊で表現する喜び」を知った(第4段落)。
この一連の流れから、最も重要な気づきは、「技術や評価よりも、内なる衝動を解放することこそが、真の自己表現である」という結論(選択肢3)になる。
•1は、美術の環境についての発見であり、主題の核心ではない。
•2は、才能に関する言及がなく、本文の内容を超えている。
•4は、静寂を「内省の場」と捉えていますが、その目的が「激しい衝動の解放」であったため、静寂が感情を抑えつけるという記述は本文の趣旨に反する。

 

【大問3】言語的分野に関する説明文の読解問題

  • 時間配分:13分

出典は、吉本隆明著『詩の力』である。

問1は、語句に関する問題<1分>。
「本格的な倫理性」と類義語は「ヒューマニズム」である。

問2は、内容把握に関する問題<3分>。
「兵士として戦争を体験」したため、「直接に体験したから、深い傷になって内向」したのである。

問3は、内容把握に関する問題である<2分>。
「空は」の詩の中に書かれている「一羽の小鳥」は「外にあるもの」、「にがい心」は「内側なるもの」である。

問4は、語句に関する記述問題である<1分>。
「あてずっぽう」とは明確な根拠に基づかず物事を推し量ることであり「あて推量」という。

問5は、詩の技法に関する問題である<1分>。
「屍体」と「手」が対句になっている。

問6は、内容に関する問題である<2分>。
…「象徴」や「たとえ」ではないので「比喩」が適切である。
…直後の「断定的な口調」から「命令」となる。
…文脈から判断すると「硬い漢詩」との対極にある「抒情性」=「軟弱」である。
…具体的な人間としての「私」ではなく、一般化された、つまり抽象化された「私」である。

問7は、内容に関する問題である<3分>。
「倫理性を保ち続けた人」であり、「自らの戦争体験」によって「詩を次の段階」へと進めたのである。

※以下の類似問題に挑戦しよう。

 次の文章を読み、後の問いに答えよ。
現代社会において、デジタル・インフラは人間の「身体」を拡張する新たな皮膚となった。かつて、道具が手の延長であったように、今やスマートフォンやネットワークは、私たちの認知、記憶、そして社会的な存在そのものの延長となっている。しかし、この拡張は、( ア )的な代償を伴っている。
情報過多の時代において、人間は「選択」の自由を得たようでいて、実際には「沈黙」の自由を失っている。ソーシャルメディアの場では、誰もが自分の意見を表明することが期待され、あるいは強要される。この環境下で、私たちは自己の「発信」を、内的な思索や経験よりも優先しがちだ。その結果、他者との関係も、深い共感や理解に基づくものではなく、「いいね」という数値化された( イ )の交換に還元されてしまう。
このような①「発信至上主義」の社会は、真の主体性を掘り崩す。主体性とは、本来、世界と自己との間に( ウ )を設け、その間に生まれる緊張や葛藤を通じて確立されるものだ。しかし、デジタル環境では、自己と世界との境界線が曖昧になる。私たちの日常的な感覚は、即座にフィードバックという形で世界に吸収され、常に外部の反応によって検証され続ける。
作家のE・M・フォースターが言うように、「つながりを持て (Only connect)」という言葉は、現代においてデジタル的な連結として歪んで解釈されている。重要なのは、量的な連結ではなく、質的な関係性であり、その基盤となるのが「距離」の確保である。私たちが本当に大切にすべきは、即座に反応しない間合いであり、安易な発信を拒否する内なる( エ )である。
真の創造性や深い思索は、多くの場合、この「内なる距離」から生まれる。即座の承認を求めず、孤独の中で熟成される思考こそが、新しい価値を社会にもたらす。デジタル・インフラが深化する現代に、私たちはあえて非効率な沈黙を選択し、[ オ ]という自己の存在の深みを取り戻す必要がある。

問1.空欄( ア )に入る語句として最も適切なものを、次の選択肢から一つ選び、記号で答えなさい。
1.経済的
2.倫理的
3.代替的
4.精神的

問2.空欄( イ )、( ウ )、( エ )に入る語句として最も適切なものの組み合わせを、次の選択肢から一つ選び、記号で答えなさい。


問3.下線部において、筆者が「『発信至上主義』の社会は「真の主体性を掘り崩す」と主張する根拠を、デジタル環境における「自己」と「世界」の関係性に言及し、60字以内の日本語で説明しなさい。

問4.本文の筆者が、デジタル・インフラが深化する現代において、人間が「あえて非効率な沈黙を選択」することの目的として述べているのは何か。本文中の言葉を用いて、二十字以内で抜き出して答えなさい。

問5.筆者は、デジタル環境下での人間の「主体性」のあり方について、どのように論じているか。最も適切なものを、次の選択肢から一つ選び、記号で答えなさい。
1.主体性は、自己の思索を積極的に発信し、フィードバックを得て世界との連結を深めることで初めて確立される。
2.主体性は、本来、自己と世界との間に明確な区切りを設けることで確立されるが、デジタル環境は世界に即座に吸収されることでその境界を曖昧にしている。
3.主体性は、内的な葛藤や緊張によって生まれるが、デジタル環境は「いいね」という即座の承認によって葛藤を解消し、主体性を強化している。
4.主体性は、安易な発信を拒否し、間合いを確保することによって生じる量的な連結であり、それが新しい価値を生み出す。

【解答と解説】
問1.

解答:4

問2.
解答:2

問3.
解答:本来、主体性は自己と世界の間に距離を設けて葛藤から生まれるが、デジタル環境では自己の感覚が即座に世界に吸収され、外部の反応で常に検証され続けるため。(60字)
解説:
ポイントは「本来の主体性」と「デジタル環境下での変化」の対比。(第3段落を参照)
1.本来の主体性:世界と自己との間に「距離」を設け、「緊張や葛藤」を通じて確立される。
2.デジタル環境下での変化:自己と世界との「境界線が曖昧」になり、「日常的な感覚」が即座に世界に「吸収」され、外部の反応によって「検証」され続ける。
これらの記述を統合し、「境界線の曖昧化」と「外部反応による検証」が主体の確立を妨げている、という論理を明確に記述する。

問4.
解答:自己の存在の深み
解説:
最終段落に、「私たちはあえて非効率な沈黙を選択し、[ オ ]という自己の存在の深みを取り戻す必要がある。」とあり、「非効率な沈黙の選択」の目的が「自己の存在の深み」を取り戻すことであると明確に書かれている。

問5.
解答:2

解説:
筆者の主体性に関する主張は第3段落に集約されている。
•本来の主体性: 「世界と自己との間に距離を設け、その間に生まれる緊張や葛藤を通じて確立される」(自己と世界が分離している状態)
•デジタル環境下: 「自己と世界との境界線が曖昧になる」「日常的な感覚は、即座にフィードバックという形で世界に吸収され、常に外部の反応によって検証され続ける。」

選択肢2は、この「本来の主体性の確立プロセス」と「デジタル環境によるその阻害」の論理展開を最も正確にまとめている。
1:「発信し、フィードバックを得る」ことを筆者は批判している。
3:「葛藤を解消し、主体性を強化」するのではなく、掘り崩すと論じられている。
4:「量的な連結」ではなく「質的な関係性」を重視しており、記述が事実と反する。

【大問4】日本語に関する説明文読解問題

  • 時間配分:8分

問1は、語句に関する問題である<2分>。
「光によって投影された」ものを「影法師」という。

問2は、内容把握に関する問題である<2分>。
「地面に人影が落ちる」とき、それを「現代人は単なる影」と考えるが、「古代人」は「実体」と考える、すなわち「実体と非実体」を区別していないのである。

問3は、語句に関する問題である<2分>。
「その人の記憶の投影された、ある人の顔や姿」のことを「面影」という。

問4は、慣用句に関する問題である<2分>。
存在感がなく元気のない様子のことを意味する慣用句は「影がうすい」である。
過去の心配事などが悪い影響を与えることを意味する慣用句は「影をおとす」である。

攻略のポイント

小説、随筆、説明文、説明文から各大問1題ずつの出題である。選択肢問題も紛らわしい選択肢に惑わされることないようにしっかり本文内容を把握すること。本文の文章を読み、内容を把握するだけではなく、設問の意図をしっかり理解したうえで自分の考えをまとめ上げなければならない。設問の答えが自分で理解できたとしても、それを如何に手際よく的確にまとめ上げるかは、日頃から記述力向上の練習を積み上げておく必要がある。また、漢字の読み書き・語句・慣用表現・文学史などの知識問題も怠りなくしっかり押さえておきたい。

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