新聞は若い世代に読まれず、テレビは視聴者離れを憂い、いくつもの雑誌の休刊が相次いでいる――ニュースを巡る環境は悪くなっていくばかりだが、本当に希望はないのか？ これらのメディアの未来とは？
気鋭のノンフィクションライターがニュースの本質を論じている。本文では、｢ストック｣という価値観を導入すると、時間を超えて現代社会への批評として機能するニュースという考えが成立すると指摘している。本校としてはオーソドックスな小問構成で、難易度も｢標準レベル｣。手際よく解き進めていきたい。以下、いくつか検討してみたい。

[問一]　｢内容説明記述｣(｢15字以内｣指定)。
傍線部①｢新聞やテレビ｣について、｢インターネットが普及する前、新聞やテレビにとって『新しい』とはどのような情報を指していたか｣を｢15字以内｣で簡潔に説明する。
｢同一意味段落｣から｢『新しい』情報｣を読み解いていきたい(｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠｣｢手がかり｣がある)。傍線部の11行後に｢インターネット以前の新しいニュースとは『新聞なら直前の朝夕刊、雑誌なら直近の発売号に掲載されていないもの、テレビやラジオなら直近のニュース番組で伝えていないこと』｣。これですべてでした｣と述べられている。

つまり、｢新聞｣にとって｢新しい｣とは｢直前の朝夕刊掲載されていない情報｣であり、｢テレビ｣にとっては｢直近のニュース番組で伝えていない情報｣ということになる。これらの内容を｢指定字数｣に応じてまとめていくことになる。

たとえば、｢直近の紙面や番組にはない情報｡｣(15字)といった｢答え｣だ。本校ではこうした｢短い字数指定｣があるので、十分に練習しておく必要があると心得よ。
＜時間配分目安：２分以内＞

[問四]　｢換言表現の抜き出し｣(｢20～25字以内｣指定)。
傍線部④の｢時事的ではないけれど今日的なニュース｣とは｢どのようなニュースか｣を｢二〇字以上二五字以内｣で抜き出して答える。

｢抜き出し｣では、｢抜き出すべき内容｣を特定した上で｢抜き出し範囲｣を絞っていくことが鉄則だ。｢内容｣を捉えるために｢同一意味段落｣をチェックする。傍線部直後から、｢このときに読んでもらわないといけないという時事性はないけれど、社会に広がっている空気にアプローチできるような方法｣で書かれた｢ニュース｣だと読み取れる。

｢範囲｣は｢同一意味段落｣になる。ここでは、傍線部④の形式段落から本文最後までだと判断できる。相当に長いが、近い部分から丁寧に探していく。すると、本文最後から４行前に｢時間を超えて、社会への批評として機能するニュース｣という部分がある。内容も文字数もＯＫだ。同じ｢抜き出し範囲｣に他に候補はない。したがって、｢答え｣は｢時間を超えて、社会への批評として機能するニュース｣(24字)だと特定できる。

尚、｢抜き出し候補｣はひとつとは限らないので、｢範囲｣の全てを隈なく探すことが肝要だ。
＜時間配分目安：１分半＞

[問五]　｢比喩換言の熟語記述｣(｢漢字２字｣指定)。
傍線部⑤の｢地下｣とは｢何をたとえているのか｣を｢漢字二字｣の｢熟語｣で答える。
｢傍線部一文一部の法則｣で確認すると(｢傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という読解の基本となる解法)、直前直後は｢表面ばかりの時代に地下に通じる｣となっている。｢表面｣に対しての｢地下｣だと分かる。

どのような｢比喩｣なのかを｢同一意味段落｣から読み取る。｢出来事や現象の『表面』には出ておらず、したがって、見えないものが『地下』にあるもの｣になる。
ということは、｢出来事や現象｣の｢深い意味｣や｢根本的な性質｣である。したがって、｢答え｣は｢本質｣や｢核心｣になる。本校では、こうした問題でも｢語彙力｣が問われてくると覚悟せよ。
＜時間配分目安：１分半＞

[問七]　｢本文内容合致選択肢｣(４択)。
｢本文の内容に合致するもの｣を答える。典型的な｢本文内容合致｣だ。本文は｢論説文｣なので｢論旨合致｣ということになる。

｢論旨｣が簡潔にまとめられているのはどこか？
｢論説文｣の類型によって、｢頭括型」は｢序論部分｣、｢尾括型｣は｢結論部分｣、｢双括型｣は｢序論部分｣＋｢結論部分｣となる。

本文は明らかに｢双括型｣なので、｢序論部分｣と｢結論部分｣の要点を各選択肢の説明と照合すればいい。本文の｢序論部分｣は最初の２つの形式段落、｢結論部分｣は傍線部④の３行後から最後までだと分かるはず。

各選択肢の説明と照合し、正誤判別していく。
(ア)｢旧来的なマスコミにできなかったことをインターネットで実現しようとして｣⇒筆者は｢広島や長崎を訪問した海外の研究者の声を拾おう｣としていた＝誤り。
(イ)｢『広島への原爆投下を～』という記事は、投下した側からの新しい視点｣⇒｢現代社会に対する批評｣という視点＝誤り。
(ウ)｢ニュースにおいて最新であることの価値がなくなるわけではない｣⇒｢最新情報の価値は変わらない｣と筆者も指摘している＝正しい。
(エ)｢アンダースの文章に共感した｣⇒筆者は｢リルケの詩｣に着目している＝誤り。
よって、｢答え｣は(ウ)になる。

尚、｢論説文｣の三類型のどれなのかが判然としない場合は、念のために｢序論部分｣と｢結論部分｣の両方と照合すればいいいと心得よ。
＜時間配分目安：２分程度＞

[問八]　｢漢字の書きとり｣(全３問)｡
昨年度と比べ難易度はやや高くなったが、本校としては標準レベルだ。本校志望者であれば｢全問正解｣したい。チェックしよう。
二重傍線部(ａ)｢文体がセンレンされていった｣＝｢洗練｣⇒｢高校入試｣の定番だ。
　　　　　(ｂ)｢『新しさ』の意味はジメイのもの｣＝｢自明｣⇒｢文脈｣を正確に読み取りたい。
　　　　　(ｃ)｢オウオウにして取材は……｣＝｢往々｣⇒｢往々にして｣＝｢しばしば、度々、よくある｣というこ    と。
　　　　　(ｄ)｢価値観をよりタイゲンしたもの｣＝｢体現｣⇒｢理念的なあり方や考え方などを現実的･具体的なものとして示すこと｣だ。

｢本校の漢字｣では、前後の｢文脈｣から内容を特定した上で、適切な漢字を当てはめる必要があるので注意したい(本年度は難しくないが)。
また、｢同音異義語｣｢同訓異字｣などにも細心の注意を払うこと。
＜時間配分目安：１分以内＞

恋に敗れて、居場所をなくした25歳の女性｢エミリ｣の物語……職場の上司と不倫して、彼は妻と別れて結婚してくれると信じていたエミリ。裏切られ、社内の皆の知るところとなり、恋も職も失い、居場所もなくなった……。平易な文章で内容は難なく理解できる。長い｢地の文｣の合間に｢セリフ｣がはさまれており、｢状況｣や｢心情｣の機微を読み取るのにやや苦心するかも知れない。以下、いくつかの｢設問｣を検証してみる。

[問二]　｢換言表現の抜き出し｣(｢20字以内｣の｢はじめとおわりの５字ずつ｣指定)。
傍線部②の｢母親が眉毛をハの字にしてみせた｣と｢ほぼ同じ内容を表す表現｣を｢二〇字以内｣で探し、｢はじめとおわりの五字ずつ｣を抜き出して答える。
先ずは｢抜き出すべき内容｣だ。直前で｢母親｣が｢なんか、すみません｣と謝っている。つまり｢謝罪の表現｣が｢抜き出し内容｣になる。｢抜き出し範囲｣は｢同一場面｣になる(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。
丁寧に探していくと、傍線部の23行前に｢母親が……いかにも申し訳なさそうな顔をしたけれど、……｣という部分がある。内容は｢謝罪の表現｣で間違いない。｢いかにも申し訳なさそうな顔をした｣(16字)で、字数も問題なし。同じ｢抜き出し範囲｣に他に候補はない。
したがって、｢答え｣は｢いかにも申～な顔をした｣になる。
＜時間配分目安：１分半＞

[問三]　｢理由説明選択肢｣(４択)。
傍線部③｢切ないくらいに甘い｣について、｢わたし｣が少女からもらったチョコレートの味をこのように表現したのは｢なぜか｣を答える。

先ずは｢原意消去｣をする｡本問は｢理由説明｣なので、｢わたし｣が｢切ないくらいに甘い｣と表現したことの｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣したい。
各選択肢の｢文末｣⇒｢だから｣⇒｢『切ないくらいに甘い』と表現した｣とつながるかどうかだ。チェックしたい。
(ア)｢辛く感じられたから｣、(イ)｢後ろめたさが感じられたから｣、(ウ)｢甘く感じられたから｣、(エ)｢甘ったるく感じられたから｣｡
｢切ないくらいに甘い｣のだから、｢辛く感じられたから｣以外は｢消去｣できなくてはいけない。念のために、｢同一場面｣で他の部分の説明を確認する。特に誤っていないと分かる。よって、｢答え｣は(ア)になる｡改めての｢一発消去｣ではないか。

｢原意消去｣を徹底的に練習し、｢小説｣でも応用できるようにすべし。
＜時間配分目安：１分強＞　

[問四]　｢内容説明記述｣(｢50字以内｣指定)。
傍線部④｢少しばかり余計なお世話だ｣について、｢どのような点が『余計』なのか｣を説明する｡
｢傍線部一文一部の法則｣で確認すると、｢それは少しばかり余計なお世話だ｣となっていることが分かる。
何が｢余計なお世話｣なのか⇒｢それ｣⇒｢指示語｣を開く⇒｢それ｣＝｢ひとりぼっちになっていたわたしを気遣ってくれていること｣だと読み取れる。

さらに、｢同一場面｣から｢状況｣を読み解きたい。
｢わたし｣は楽しく明るい気分で帰省しようとしているのではなく、｢もう15年も会っていない母方の祖父の家｣に｢逃げていく｣ところであって、そのようなときに｢４人がけのボックス席｣のなかで孤立しないように気を遣われても、｢わたし｣には｢余計なお世話｣だという｢状況｣が読み取れる。以上のような内容を整理して、｢指定字数｣を考慮して的確にまとめていく。
たとえば、｢『わたし』の事情を知りもしないのに、『わたし』がボックス席で孤立しないようにと気を遣ってくれる点｡｣(49字)といった｢答え｣になる。

｢小説｣では、｢同一場面｣から的確に｢状況｣を読み取ることが肝要だと心得よ。
＜時間配分目安：３分半＞

[問五]　｢心情説明選択肢｣(４択)。
傍線部⑤｢この人懐こい家族とあれこれしゃべり続けるハメになり｣について、ここから読み取れる｢わたし｣の｢心情｣を答える。
最優先は｢原意消去｣｡本問は｢心情説明｣なので、｢あれこれしゃべり続けるハメになり｣と表現したときの｢心情｣と結びつかないものを｢消去｣したい。
各選択肢の｢文末｣は、(ア)｢戸惑っている｣、(イ)｢後悔している｣、(ウ)｢恐縮している｣、(エ)｢心配になっている｣｡｢ハメになり｣＝｢羽目になり｣⇒｢羽目になる｣＝｢困った状態や悪い事態になる｣ことなので、(イ)｢後悔している｣以外は｢消去｣可能だと判別できるはずだ。念のために、｢同一場面｣で他の部分の説明を確認する。特に誤っていないと分かる。よって、｢答え｣は(イ)でＯＫだ｡

尚、｢小説｣での定番である｢心情把握｣は、｢セリフ｣⇔｢ト書き｣⇔｢動作｣⇔｢情景｣の連関で捉えるのが定石だ。
＜時間配分目安：１分強＞　

[問九]　｢語句の意味の選択肢｣(全２問/各４択)。
｢総合的知識問題｣｡二重傍線部(ａ)｢腹心｣･(ｂ)｢あからさまに｣の｢本文中の意味｣を答える。
｢原意｣(＝｢本来の意味｣)での特定を優先させ､それが困難な場合は前後の｢文脈｣から判断していく。｢答え｣を確認する｡｢腹心｣＝｢腹と胸｡心の奥底｣という意味だ⇒(ａ)の｢答え｣は選択肢(ウ)｢胸の内｣⇒ちなみに、｢腹心｣には｢どんなことでも打ち明けて相談できる人｡信頼できる人｣という用法もあるので要注意だ。｢あからさま｣＝｢包み隠さないで、はっきり表すさま｣⇒(ｂ)の｢答え｣は(イ)｢露骨に｣⇒これも周知のはずだ。
本校ではこの程度の｢語彙力｣は必須だと心得よ。

尚、｢多義語｣には十分注意すること。
＜時間配分目安：全問で１分強＞