慶應義塾高等学校 入試対策
2025年度「慶應義塾高等学校の数学」
攻略のための学習方法
基本的原理や定理などをしっかり理解することである。つまり、公式や定理についてもできれば、一通り自分の力で証明しておくことを勧める。公式や定理はいうまでもなく『一つの考え方の結果』である。したがって、『結果』としての公式や定理を『道具』としてしか使うことができない場合、確かにスピーディーに正解を導くことは可能かもしれないが、それが本当の学力なのかを考えて欲しい。受験生(特に慶應義塾高校を志望する受験生)には、『公式や定理』を導くプロセスにおける『考え方』を理解し、安易に『公式や定理』を暗記するという学習姿勢に陥らないようにしてもらいたい。とにかく自分の頭で『考えること』、そして『考え抜くこと』である。
さらに、極めて高いかつ正確な計算力が求められていることはすでに述べた。特に、連立方程式、因数分解において、文字の置き換えによる計算式の簡略化を図ることが正解への近道である場合がある。この解法手法については連立方程式、式の展開、因数分解の問題演習においてしっかり事前準備を行うことである。しかも、入試問題全体を通じ、因数分解や展開の考え方を用いなければ徒に解答時間が長引いてしまう設問が多い。そのためにも、最高レベルの計算問題(式の展開、因数分解、連立方程式、平方根)を日々演習する必要がある。場合によっては、高校数学Ⅰの問題集に掲載された式の展開および因数分解に関する問題(ただし、式の展開および因数分解の範囲は2次まで)を徹底的に行うことも必要になってくると思われる。
関数については1次関数、2次関数、そしてその融合問題は事前にしっかり練習を行っておくこと。放物線と直線の交点に関する問題、放物線上の異なる点を結んでできる図形に関する問題など、放物線と直線に関する問題は単に関数の分野に限らず、方程式、相似、回転体(立体)とその表面積・体積を問う求積問題など出題範囲は多岐にわたる。慶應義塾高校の入試問題は難問というよりも標準問題が多く出題される。しかも、その解法にあたってはオーソドックスな思考で十分正解可能な問題ばかりである。したがって、少しのミスも許されず手際よく解答できなければいけない。
また、論理的思考力を見る問題にも積極的に挑戦してもらいたい。高校数学では論証というジャンルであり、具体的には命題という内容である。一つの文章内容が反例(内容が間違っていることを示す例)もなく正しいかどうかを考える問題である。受験生の「自分の頭で考え」そして「最後まで考え抜く」姿勢が大事であることは明白である。受験生の側においても根本的な設問の原理や仕組みを掘り下げて考えるという「骨太で逞しい地頭」というものを自分のものにするために、標準以上の問題を自分の頭でとことん考え抜くという練習に全力を注いでもらいたい。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2025年度「慶應義塾高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、小問集合問題<11分>。
因数分解、4次方程式、連立方程式、データ活用、平面図形に関する小問である。
大問2は、約束記号(数の性質)に関する問題<5分>。
自然数nを素数の積で表したとき、素数2と3の個数の和を〈n〉で表すという約束記号に関する問題である。
大問3は、確率に関する問題<10分>。
男女3人ずつで男子は女子を、女子は男子を指名した場合、ペアの組み合わせができる確率を求める問題である。
大問4は、平面図形(台形)の面積に関する問題<9分>。
直角二等辺三角形や30°・60°・90°を内角としてもつ直角三角形の特性、また三平方の定理を利用して解く問題である。
大問5は、空間図形(三角錐と球)に関する問題<10分>。
三角錐の一辺を直径とする球と三角錐が一部の共通部分の面積を求める問題である。
大問6は、関数(1次・2次関数の融合)に関する問題<15分>。
xy平面座標上の指定された点の座標を求め、指定された条件に合致する円の半径を求める問題である。
【大問1】小問集合問題
- 時間配分:11分
(1)式の計算(因数分解)問題<2分>。与式を一度展開し、y2+9を共通因数としてくくり因数分解をする。
(2)4次方程式問題<2分>。x2=Xとおくことによって、xの4次方程式はXの2次方程式になることを利用してxを求める。
(3)連立方程式に関する問題<2分>。x=3、y=-2を与式に代入してa、bに関する連立方程式を解き、そのa、bを次の連立方程式に代入しxyを求める。
(4)データ活用に関する問題<2分>。データ活用に関する平均値、最大値、第1四分位数、中央値、第3四分位数などの用語の意味をしっかり覚えておくこと。
(5)図形(辺の長さ)に関する問題<3分>。正方形に内接する4つの円に挟まれた中央で4つの円に接する円の半径、また、立方体に内接する8つの円に挟まれた中央で8つの球に接する球の半径を求める問題である。特に、立方体における球の半径を求める場合に、特定の平面をとらえて平面図形における原理(三平方の定理など)を適用する。
※以下の類似問題に挑戦しよう。
問1.次の式を因数分解せよ。
x2(x+2y)2−2xy2(x+2y)−3y4
(解答)(x+y)2(x−y)(x+3y)
問2.mをこえない最大の整数を[m]で表す。
たとえば、[0.25]=0、[1]=1、[√6]=[2.449…]=2である。
1<x<2、x−[x]=x2−[x2]のとき、xの値を求めよ。
【大問2】約束記号に関する問題
- 時間配分:5分
決められた約束記号のルールに従って〈n〉に関する数値を求める問題である。〈n〉=0となる2025以下の自然数とは、2025以下の2でも3でも割り切れない自然数の個数である。本問の求めている本質が理解できれば容易に答えが得られるはずである。
※以下の類似問題に挑戦しよう。
問1.xを正の整数とし、xの約数の個数をn(x)と表すことにする。例えば、6の約数は1、2、3、6の4個であるのでn(6)=4である。
(1) n(12)の値を求めよ。
(解答)6
(2) n(x)=5となる最小の正の整数xを求めよ。
(解答)16
問2.2つの正の整数m、nの最大公約数を(m、n)で、最小公倍数を[m、n]でそれぞれ表すとき、xについての2次方程式
(9、12)x2−[2、3]x−([12、18]、27)=0 を解きなさい。
(解答)−1、3
【大問3】確率に関する問題
- 時間配分:10分
【大問4】平面図形(台形の面積)に関する問題
- 時間配分:9分
1組の対辺が平行である台形の性質とA、Dより垂線AH、DIを引くことによって得られる角度から△BCD∽△CDEが導かれる。得られた角度から△BDIは3辺の比が1:2:√3となる直角三角形であり、△CDIで三平方の定理を当てはめる。また、大前提として△ABCは直角二等辺三角形、△BCDは二等辺三角形であることを活用する。
【大問5】空間図形(三角錐と球)に関する問題
- 時間配分:10分
本問における三角錐の断面図はOAを直径とする円であり、この円はOB、ABと交わることをイメージすることが重要である。OAが直径であることより、その円周角が90°になることを利用すること。円とOBの交点をEとすると、∠OEA=90°(直径OAの円周角)であり、かつ∠AOB=30°であるので、△OAEは3辺の比が1:2:√3となる直角三角形となることより、Lの長さが求められる。また、円の中心をPとしたとき∠APE=60°となるので、△PAEは正三角形となる。さらに、円PとABの交点をFとしたとき、S=△PAF+△POE+扇形PEFである。
【大問6】関数(1次・2次関数の融合)に関する問題
- 時間配分:15分
攻略のポイント
全体的には、極めて標準的なレベルの出題である。ただし、問いかけの切り口が極めて特殊であったりする問題の割合が高いので、様々な問題を事前に演習しておかなければ解法への一歩が踏み出せないであろう。
また、試験時間との関係で考えると見直しをする時間的余裕はない。見直しをできないことを考えると、正確な計算力と正解を得るための解法に対する見通しの良し悪しが重要なカギとなる。平面図形における各種定理(三平方の定理、中心角と円周角、相似と面積・体積、合同など)をしっかり自分のものにすることである。それらの定理は必ず立体図形にも応用できる。また、関数(1次・2次の融合問題)も難度の高い問題に果敢に挑戦し、安易に解説を見ることなく自分の頭で考え抜くことが合格への王道である。また、新傾向の問題(特に規則性が関係している問題)は、当然ながら初見の問題が多いだろうが、そのような問題でも手掛かりは必ずあるので論理的数学的思考に慣れるようにしておくことが大事である。

