｢日本の地理｣に関して、さまざまな｢地図｣(｢立体地図｣｢古地図｣含む)、｢地形図｣、｢写真｣、そして、いくつもの｢統計資料｣からの出題が並んでいる。見慣れない｢地図｣もあって、｢地理｣単元(｢考察要素｣あり)の相当に｢ディープな知識｣も問われており、なかなか厄介な大問だ。いくつかを確認してみる。

[１(１)]　｢自然地名記述設問｣(全８問)。

示されている｢図１｣(｢日本地図｣の中に、(Ａ)～(Ｈ)の｢河川｣とその下流域に位置する｢平野｣が指し示されている)の中の河川(Ａ)･(Ｂ)･(Ｅ)･(Ｈ)について、｢河口付近での名まえ｣とそれぞれの｢平野の名まえ｣をともに答える。

日本列島の地図の中での｢河口の位置｣と｢流路｣から、全ての｢河川名｣と｢平野名｣を特定していきたい。さほど難解なものはないはずだ。

それぞれの｢答え｣をチェックする。(Ａ)の｢河口｣は｢山形県｣で｢南からの流路｣⇒｢最上(川)｣･｢庄内(平野)｣、(Ｂ)の｢河口｣は｢宮城県｣で｢北からの流路｣⇒｢北上(川)｣･｢仙台(平野)｣、(Ｅ)の｢河口｣は｢愛知県｣で｢北東からの流路｣⇒｢木曽(川)｣･｢濃尾(平野)｣、(Ｈ)の｢河口｣は｢福岡県｣で｢南東からの流路｣⇒｢筑後(川)｣･｢筑紫(平野)｣。

万一、ひとつでも曖昧(あいまい)なものがあった諸君は、｢自然地名｣に関してまだまだ習得不足だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で３分弱＞

[１(２)]　｢統計資料読み取りの選択肢設問｣(４択)。

示されている(ア)～(エ)は、｢図１｣中の河川(Ａ)･(Ｂ)･(Ｅ)･(Ｈ)いずれかの河川について、｢河口付近での河川流量｣(月別の棒グラフ)を表しているが、(Ａ)に｢あてはまるもの｣を答える。｢河川流量｣の統計資料、初見の諸君が多いだろう。不思議はない。だが、出題されている。であれば、解けるに違いない。

(Ａ)･(Ｂ)･(Ｅ)･(Ｈ)の河川は[１(１)]で特定できている。

問われている(Ａ)は｢最上川｣だ。で、各棒グラフを読み取ると、(ア)だけが｢流量｣が突出して多く、しかも、他は｢７月｣が最も多いのに対して、｢４月｣が圧倒的に多いということにすぐに気づく。｢４月｣⇒｢雪解け水｣⇒｢降雪量｣が多い⇒｢日本海側｣と結びつくはずだ。(Ａ)･(Ｂ)･(Ｅ)･(Ｈ)で｢日本海側｣は｢最上川｣だけ。ならば、｢答え｣＝(ア)だと判別できて当然だ。

ちなみに、｢河川流量｣とは｢川を流れる水の量｣のこと⇒単位は｢㎥/s｣＝｢１秒間に通過する水の体積｣⇒｢流れ｣が早ければそれだけ多くなる⇒｢五月雨を集めて早し最上川｣というわけだ。

尚、｢私が知らない｣⇒｢誰も知らない｣⇒｢知らなくても解ける｣と考えよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分弱＞

[５]　｢地図および統計資料読み取りの選択肢設問｣(全２問。３択)。

示されている｢図｣(日本地図中での『最大出力が大きい主な発電所の分布図』。

ただし、図中●と▲では発電エネルギーが異なる)について、もうひとつ示されている｢棒グラフ｣(1950～2018年の、日本の総発電量における｢火力｣｢水力｣｢新エネルギー｣｢原子力｣の割合の変化を表したもの)の中の(Ａ)～(Ｃ)で、図中の｢●｣と｢▲｣の｢発電エネルギー｣をそれぞれ答える。

(Ａ)～(Ｃ)は｢1990年の割合｣を示しており、(Ａ)＝｢11.2%｣、(Ｂ)＝｢65.0%%｣、(Ｃ)＝｢23.6%｣となっている(ちなみに、もうひとつは｢0.2%｣)。であれば、誰もが即座に、(Ａ)＝｢水力｣、(Ｂ)＝｢火力｣、(Ｃ)＝｢原子力｣だと特定できるはずだ。

次に図中の｢分布｣をチェックし、｢答え｣を判別したい。｢●｣は全てが｢内陸部｣(山岳地帯)だ⇒｢水力発電｣で決定⇒｢答え｣は(Ａ)。｢▲｣は全てが｢沿岸部｣⇒｢火力発電｣か｢原子力発電｣⇒そして、｢東京湾岸｣に分布しており、｢福井県｣にはない⇒｢原子力｣はあり得ない⇒｢答え｣は(Ｂ)。

尚、２つ以上の｢データ｣(情報)を組み合わせる必要がある場合は、特徴的な事項に着目して｢自らの知識｣も組み合わせて考えること。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で１分強＞

※尚、[１(３)]は｢立体地図｣(｢傾斜量図｣と｢陰影起伏図｣を立体化した地図)の｢読み取り問題｣になっている。全く未知の｢地図｣に違いない。もちろん、しっかりと読み取れば｢答え｣は出せるのだが、とても手間ひまがかかるので｢戦術的｣には｢捨て問｣で構わない。

そして、[６]は｢写真｣と｢地形図｣からの出題だ。｢地形図読み取り｣は本校に限らず｢地理単元｣での定番なので、｢地図記号｣｢等高線｣｢方位｣｢縮尺｣等の｢地形図｣に関連する基礎的事項を完全に定着させておくことが肝要。

｢2021年、明治時代を舞台とした映画『るろうに剣心 最終章』公開｣という｢時事ネタ｣を切り口としての、｢人々が持つ『歴史のイメージ』と『史実』との相違｣についての｢リード文｣からの出題。

｢史料｣や｢写真｣｢図版｣などに関しての｢歴史｣単元からの多種多様な出題が並ぶ。例年になく｢基本的知識｣を問うものが多い。短時間で手際よく得点をゲットしたい大問だ。やや悩ましい小問だけを検証してみよう。

[９]　｢下線部についての史料読み取り選択肢設問｣(４択)。

示されている｢史料｣は｢ある書物の序文の一部｣で、｢リード文｣中の下線部⑨の｢中大兄皇子｣の親族である｢天武天皇が史実の間違いについて述べたもの｣だが、｢この書物｣を答える。｢史料｣の要点をチェックする。｢太安万侶(おおのやすまろ)に、稗田阿礼(ひえだのあれ)がまとめた歴史を文章に記録させたのがこの本｣とある。

各選択肢の｢書物｣は、(ア)｢古事記｣･(イ)｢万葉集｣･(ウ)｢後漢書｣･(エ)｢風土記｣。

やや｢ディープな知識｣が求められているが、本校志望者であれば即座に｢答え｣は(ア)の｢古事記｣だと特定したい。

ちなみに、｢日本書紀｣の編者は｢天武天皇｣の皇子である｢舎人親王(とねりしんのう)｣。無論、｢天智天皇(中大兄皇子)｣の弟が｢天武天皇｣だ。

尚、この頃(７世紀末～８世紀前半)の｢天皇｣に関しては本校に限らず頻出なので｢流れ｣を確認しておきたい(本校では昨年度も出題あり)。

｢天智天皇｣→｢弘文天皇(大友皇子)｣→｢天武天皇｣→｢持統天皇｣→｢文武天皇｣→｢元明天皇｣→｢元正天皇｣→｢聖武天皇｣となっている。定着させておくこと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分弱＞

[12]　｢下線部についての変化内容説明記述設問｣(｢字数指定なし｣で｢60字ほど｣の解答欄)。｢リード文｣中の下線部⑫｢皆さんが学んだ歴史と、大人が学んだ歴史には違いがあるのです｣について、｢研究が進むことにより学校の教科書もその内容が変わることがある｣が、示されている｢1950年と2021年の高等学校の教科書｣に関して、｢どのように変わったのか｣を説明する。

それぞれの｢教科書｣の相違を確認したい。両者はともに｢江戸幕府の海外との交流｣に関する説明だ。

｢1950年｣には｢オランダと中国を除いて交流を断ち｣｢二国との貿易を独占｣｢長崎のみを窓口とし｣とあるのに対して、｢2021年｣では｢中国船やオランダ船の来航を長崎に限った｣｢幕府が貿易を独占｣｢長崎以外の窓口を通して、朝鮮や琉球、アイヌなどとは交流をもった｣となっている。違いは明らかだろう。その内容についても誰もが熟知しているはず。あとは、｢過不足なく｣まとめていきたい。

たとえば、｢江戸幕府はオランダと中国を除いて海外との交流を断ったという説明から、朝鮮や琉球、アイヌなどとも交流をもったへと変化した｡｣(60字)といった｢答え｣になる。

｢変化内容説明｣では、｢Ａ→Ｂへと変化｣と明確にさせることが肝要だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分強＞

｢2021年、１年延期されていた『東京2020オリンピック･パラリンピック競技大会』開催｣という｢時事ネタ｣を切り口にして、｢オリンピックの理念と現実、政治や社会との関係性｣などについての｢リード文｣からの出題。

｢歴史｣｢公民｣｢時事｣の各単元、そして、｢考察問題｣もある｢総合問題｣。中でも｢時事ネタ｣ではとても｢ニッチ｣(すき間)な事項がターゲットとなっており、難解な大問だ。いくつかを検討する。

[２]　｢下線部についての選択肢設問｣(４択)。

｢時事｣単元と｢公民｣単元。｢リード文｣中の下線部①｢当時(2020年)の安倍首相の任期内に開催できなくなるという政治的な理由から１年延期になった｣について、｢この後に安倍首相は辞任し、続く菅首相も東京大会後の自民党総裁選に出馬しなかった｣が、｢これに続いたできごとや日本の首相の選ばれ方｣を答える。

何やらややこしい設問文だが、要は｢2021年秋の政治に関する時事ネタ｣と｢公民の政治分野の知識｣が問われているわけだ。

各選択肢の｢要点｣や｢キーワード｣で正誤判別していく。

(ア)｢与党･自民党の総裁が交代｣｢臨時国会で首相を指名｣⇒｢2021年９月に自民党総裁選挙｣→｢岸田文雄が新総裁｣→｢臨時国会召集｣→｢岸田文雄が新たな内閣総理大臣に指名される｣という流れだったと覚えているはず＝適切。(イ)｢特別国会で首相を任命｣⇒｢国会｣は内閣総理大臣を｢指名｣する⇒｢任命｣は｢天皇｣だということは｢公民｣の常識＝不適切。(ウ)｢解散による総選挙｣｢選挙後に召集される臨時国会｣⇒誰もが｢総選挙後に召集されるのは特別国会｣だと知っている＝不保留。(エ)｢特別国会で首相を任命｣⇒(イ)と同じ＝不適切。

よって、｢答え｣は(ア)になる。

｢時事ネタ｣ばかりに目を奪われていると判別を誤るので要注意。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：30秒強＞

[４]　｢下線部についての空所補充語句記述設問｣。

｢公民｣単元。｢リード文｣中の下線部③の｢文化･国籍などさまざまな違いを乗り越え｣と⑥の｢ユダヤ人｣について、｢中東では長らくユダヤ人とアラブ人の土地をめぐる問題が続いており『　　　　問題』と呼ばれて｣いて、｢スーダンの柔道の選手は、イスラエルの選手と対戦する可能性がわかったため、政治的に　　　　を支持していることを理由に昨年の東京大会を棄権した｣。

　　　　に｢共通して入る適切な語句｣を答える。やや｢深知り知識｣が求められている。確実に定着しているか？ ｢答え｣は｢パレスチナ(問題)｣だ。未定着の諸君はしっかりと習得しておくこと。

尚、｢パレスチナ｣はイスラエルの一部だったが、現在は｢パレスチナ国｣であり、国際連合には未加盟ながらも、2021年時点で138の国連加盟国が国家として承認している。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：30秒強＞

[５(２)]　｢下線部についての具体例記述設問｣(｢字数指定なし｣で｢60字ほど｣の解答欄)。｢公民｣単元。｢リード文｣中の下線部⑤｢(大会組織委員会会長は)女性をさげすむような発言が問題視されて辞任、開閉会式の統括責任者は女性タレントの容姿を侮辱(ぶじょく)する発言で辞任｣について、このような問題の背景には、示されている【資料２】(ＳＤＧｓが示す目標のひとつで｢５ ジェンダー平等を実現しよう｣)の｢目標がこれまで達成されてこなかったことが指摘されている｣が、｢日本の社会において、ジェンダー･バランスがとれていないと考えられる具体例｣を答える。

｢ジェンダー･バランス｣＝｢男女平等｣に決まっている。日本社会で未だに｢男女平等｣が実現していない｢具体例｣を挙げればいいわけだ。

たとえば、｢国会議員に占める女性の割合が極端に低い｡｣(20字)などが｢答え｣になる。

今やどこの中学校でも、｢ＳＤＧｓ｣が｢公民｣や｢時事｣単元の出題の十八番(おはこ)になっている。｢17の世界的目標｣については完璧に理解し、定着させておくことが不可欠だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分＞

 [８]　｢下線部についての問題指摘および条件付き考察論述設問｣(全２問。ともに｢字数指定｣なしで、｢30字ほど｣と｢60字ほど｣の解答欄/複数完全解答)。

｢考察問題｣。｢リード文｣中の下線部⑨｢東京でオリンピックが開催された『おかげ』で、日本の政治リーダーたちがどういった課題を未解決のままにしてきたかが改めて明らかになったとも言える｣について、｢日本社会の中には様々な問題がある｣が、｢最優先で解決するべきものは何だと考えるか｣を説明した上で、｢その問題が抱えている現状と、どのような解決方法が有効だと考えられるか｣を論述する。

｢条件｣は｢本文も参考にしながら具体的に説明する｣こと。

先ずは｢最優先で解決するべき問題｣だ。何でも構わないのだが、｢条件｣があるので｢本文｣を参考にしたい。｢多様性の問題｣や｢地球環境問題｣、｢ジェンダーギャップ｣や｢平和｣の問題などが指摘されている。それらの中から自分が説明しやすい問題について、｢現状｣や｢課題｣を説明していけばいい。

そして、｢そうした現状を解決するためにはどのような方法があるのか｣を｢具体的｣に｢考察｣して｢論述｣したい。

尚、｢考察問題｣では、問題文などで｢与えられた情報｣を的確に読み解いて｢考察｣することが肝要だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で６分ほど＞

※尚、[３(２)]･[５(１)]･[６]は全て｢時事問題｣で、｢安倍政権から菅政権の期間での政治的できごと｣･｢東京オリンピックでの弁当大量廃棄｣･｢ニワトリの卵についての『ケージ･フリー』の不採用｣といったとてもニッチでディープな｢時事ネタ｣が問われている。

即座に答えられないようであれば、｢戦術的｣には｢捨て問｣にすべきだ。