東京農業大学第一高等学校 入試対策
2023年度「東京農業大学第一高等学校の国語」
攻略のための学習方法
〇現代文の読解
例年、2題の論説文の長文読解が出題されている。文学的文章は出されていない。2022年度では計5700字、さらに古文の480字ほどがこれに加わる。読解のスピードをつける訓練が必須である。
形式は選択肢が多く、穴埋め・記述が数問ずつ含まれており、漢字や語句の意味などの言語事項も合わせて出題される。記述は25~100字程度の説明記述で、答えるのにある程度の時間を取られる。
説明的文章のみの出題なので、対策もそこに絞ったものとなろう。形式段落→意味段落への転換・意味段落の内容把握(短いタイトルを付けてしまうと良い)・段落のつながりや関係・段落の最初と最後に注目しながら要点と細部の区別・それらを整理して要旨・結論をまとめる……といった論説文読解のパターンに習熟する。
記述問題では特に、要点と要旨のまとめが重要である。求められる答えは、各段落の要点をいくつか組み合わせて作られる場合が多い。50字の記述であれば、書ける内容が2つ(2文)程度と見当をつけて、適切な箇所を使ってまとめるのである。
本文に印や傍線で重要点をマークしておき、関連する部分を結んでおけば、記述問題の答えをまとめる際に大幅な時間短縮が見込める。その際、誤字・脱字や文法の誤りなどにも注意して、不用意な減点を受けないように気をつける。
長い記述問題は時間が取られるので、他の軽い問題をまずは解き進め、最後まで一通り手を付けるのは当然である。
そして、試験対策に限らず、普段から読書を厭わずに自然・人文・社会科学などの分野の書物を多く読む習慣を持てば、すなわち国語力の養成になることも忘れないでおこう。
〇古文の読解
本校の古文の問題は手ごわい。言葉の知識や文法、はては文学史まで、高校の授業で習うことが当然のように訊かれる。中学生向けに現代語訳を付けるといった配慮もない。配点も2割ほどと大きいので、苦手だからと避けてしまうと不利である。
高校生向けの標準レベルの教材で必修単語200、係り受け・枕詞や敬語などの主な文法を覚え、古典の文章にできるだけ触れて、頭を慣らしておかなければならない。
暦の月名や、当時の風俗・暮らしぶりなども問題と関係してくる可能性があるので、そうした知識も一通りで良いので仕入れておきたい。
十分な得点には、相当にしっかりした対策が必要である。
〇漢字・言語事項
現代文の読解とともに出題されるが、さほどの難問は見られない。
語句の意味が多く出されているので、言語事項の問題集や読書を通じて、語彙を増やす努力をお願いしたい。
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2023年度「東京農業大学第一高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
論説文と論説的随筆文の読解2問がそれぞれ約4000字・2500字の計6500字ほど、さらに古文の810字ほどがある(2023年度)ので、総計は7000字超。総解答数は23問。
漢字や言語事項は10問ほどなので2~3分で済ませ、あとは読解問題に充てる。幸い、問題数は多くないので、読みに手間取らなければ考える時間はある。記述問題1問は60字あるので5~6分ほどは取られることも計算に入れておく。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:25分
人は自分の顔を自分で直接見ることはできず、自分の顔を見る他人の顔を見て自己の可視的なイメージを形成するしかない、ということが述べられている。
問一 (a) 虚構 (b) 抹消 (c) 覆(われた) (d) わいきょく (e) 亀裂
問二 「驚くほど緻密に加工・変形」しているのに、そのことを「抹消」して自然であるように見せかける化粧術のことであるから、選択肢5が合う。
問三 1. 人は自分の顔を見ることができず、自分の顔を見る他者の顔を「読む」ことによって自分の様態を知るのである。
問四 自分の顔でありながら自分では見ることができず、他人の顔を見ることによってしか「ふれる」ことができないということを「可視性のアンバランス」と表現している→選択肢1が合う。
問五 空欄Cに注目。次の文で「その解釈の共同性にのみに支えられている」とあるのがCの繰り返しであることに気づけば、おのずと正解は選択肢4に絞られる。
問六 3. 「可視性のアンバランス」についての考察の通り、自分の顔は直接見ることができず、他者の顔を見ることでしか自分の様態を知ることができない。他人を介在しないといけないわけで「じかに繋がっていない」のである。
問七 問九で考察するが、「前者」とは「接触がおこらないところ」である。そこでは「見る」とは観察することであり、ポスターの絵やテレビの画面を見るときのような、「およそ関係というものが発生しない」「顔面と呼ばれているものにまなざしを置くだけのこと」である→選択肢2が選べる。
問八 耕作:「視線の強度を鍛えることで相手の視線を跳ね返すことができる」という筆者の主張はない。
穂菜実:「視線交叉」が起こる時は「隙を狙った盗み見」はしていない。
問九 最後から二番目の段落に、「逆に、顔の接触がなんらかの関係を引き起こさざるをえないところで、人は顔を見ることができない」とある。その「逆」が「接触が起こらないところ」であると考えてここに戻せば、続く「前者」「後者」の指すところが確定し、文意が明確になる。
【大問二】論説的随筆文の読解
- 時間配分:15分
「考え」は書くことで目に見えるようになり、反芻したり他者とともに考えを広めたり深めたりできると述べている。
問一 書かないと「その場で遂行されることとして過ぎて」しまうが、書き留めておけば「反芻したり、さらに考えを広めたり深めたり」できると述べられている。
問二 最後の方の段落で、「わたし」は両親から生まれて複数の人とのかかわりの中で意識を持つようになり「人間」らしくなっていく、とある→選択肢4が合う。
問三 もの心つく――世の中の物事や人の心などが理解できるようになる。
問四 「考える」ことは、書くことによって頭の中にあるものを目に見えるようにすることであり、それによって反芻したり他者を相手に検証したり、さらに考えを広めたり深めたりできるのである、と筆者は述べている。
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
名誉や利益に追い立てられて心が休まる暇もなく苦しむような人生は愚かであると説く徒然草の一節。
問一 「使はれて」は「使役されて・追い立てられて」という意味。名誉や利益を追い求めるあまり心の安寧を失う人生の虚しさを説いている。
問二 直後で「害を受け煩いを招く仲立ちである」と言っているので、選択肢2がよい。
問三 係助詞「やは」は文末を連体形で結び、「疑問」「反語」の意味を持つ。ここでは「反語」で、「位や身分が高いことだけを優れた人と言うべきであろうか? いや、そうではない」。
問四 「名誉を愛するのは人の評判を喜ぶことである」「名誉はまた、人から悪く言われる原因である」
問五 稲助:本文は「(子孫などの)人にとっては煩わしさを感じるであろう」と述べており、「それに関係する遺族のためにやっかいものにされる」は微妙に合わない。
問六 『徒然草』は随筆であり、『枕草子』と『方丈記』が同じジャンルの作品である。
攻略のポイント
論説文主体の長文読解だが、難しいテーマが扱われていたり、文章自体も難しかったりでなかなか手ごわい。記述問題も侮れない。スピードをつけ、最後まで目を通し、できる問題を確実に取ることで得点をあげたい。
古文も十分に学習しておかないとあらすじすら判然としない事態も予想できるので、文法・その他の知識も合わせて高校生レベルでの勉強をしておきたい。
漢字・ことばの意味などの知識問題でも15点ほどの配点があるので、地道に語彙を増やす努力をしておくこと。