麻布中学校 入試対策
2025年度「麻布中学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
「知識」は一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。先ずは「語彙力」。麻布志望者はなぜか「語彙力」がないという傾向があるので、油断せず取り組んでほしい。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や分かりづらい言葉の意味等も押さえておきたい。
また、過去問や演習問題を実施する場合、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあやふやなものがあったら、書き出して自分なりの「言葉ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉がたまっていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。
これらの「語彙力」は読解力につながるだけではなく、「記述」の際にも当然重要だ。特に、定番である「心情記述」を考えると、「心情語(心情表現)」に磨きをかけておきたい。「心情語」に限れば、テキストとしては「言葉力1200」(学研)がオススメ。
次に、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。「文法」そのものが出題されることはないが、「記述」には不可欠なのであなどってはいけない。日本語として「文法」的に正しい文でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらないからだ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。
速読
大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。多いときには8000字程度。しかも、解答時間は40分。当然、「速読」が求められる。しかも、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。
出題は「小説」に限られているので、それに応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、ざっと読んでいく。「人物関係」「家庭環境」等の「状況設定」が複雑なものが多いので、前半はしっかり読みたい(「状況設定」は前半に述べられていることが多い)。
また、「心情」把握のために、「会話文」「地の文」それぞれの「心情表現」中心に押さえていく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだし、自分から聞いてみてもいい。
その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。麻布だけでなく、他の学校の入試問題も読んでおきたい。特に、少年・少女の成長物語で、「自立」「自由」「自分探し」といった哲学的テーマのものを選ぶといい。練習あるのみ。
そうして、最終的には分速600字以上(できれば650字以上)で「速読」できるようにしておきたい。
解法
「小説」特有の「解法」。そして、全ての文章に共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。特に、「心情に関する設問」がとても多いので、徹底的に習得しておきたい。
たとえば、「心情をめぐるスクエア」(「心情」は「セリフ」「ト書き」「動作」「情景」という4つの要素から多角的に読み取るという「解法」)等は必須だ。塾での練習問題、答え合わせをして解説を聞き、納得したからそれで終了、ではいけない。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要だ。特に、間違った問題は宝の山。解き方の過程のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する解き方を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
「記述」は麻布の最大の合否ポイントだ。先ずは「文を記す」ことに慣れる必要がある。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらうこと。「文法」等正しい日本語の「文」になっているか、言いたいことが正確に伝わっているかどうか等を確認しなくてはいけない。
何を「書く」か。「小説」の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その「小説」の「要約」を「テーマ」中心にまとめてみるのがとてもいい方法だ(麻布定番である最後の長文記述はその作品の「テーマ」に関する設問が多い)。100~150字程度で書いてみる。無論、内容は塾の先生に確認してもらう。「要約力」は文章内容の「理解力」にもつながるので一石二鳥だ。
次のステップとしては、「字数の感覚」を身につけること。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅いし、下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要だ。その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要なポイント」は、1つ当たりその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書きたいポイントがその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「マス目のない解答欄」にもチャレンジ。1行ほぼ30字程度なので、「2行枠」なら3つ程の「ポイント」。「最重要ポイント」を文末にして、他の「ポイント」を下から積み上げていくように記述する訓練をしていく。「心情記述」「比喩換言記述」「情景説明記述」がよく出題されるので、それらを中心に練習しておきたい。
意識
重要ことは、常に何かを「意識」しながら学習することだ。何となく机に向っていてもダメ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが大切だ。そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにしたい。麻布の問題では特に「設問」どうしが関連していることが多い。そのことを十分に「意識」すること。
また、「設問」を正しく理解しているか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことも、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2025年度「麻布中学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
出典は伊与原新「藍を継ぐ海」所収「藍を継ぐ海」(文字数約7800字)。
小問は全13問(解答数17)。
設問内容は「説明記述設問」(10問)。全て「字数指定」なし。
「解答欄」は「1行半」・「2行半」・「4行」が各1問、「2行」が4問・「3行」が3問、「選択肢設問」(2問)、「抜き出し」(1問)、「漢字の書き取り」(4問)。
問題文は10分弱で読み切り、設問を50分強で解きたい。
【大問】
- 難度:標準
- 時間配分:60分
- ★必答問題
人間の生をはるかに超える時の流れを見据(す)えた、科学だけが気づかせてくれる大切な未来を描く全5篇の1篇。
徳島の海辺の小さな町で、なんとかウミガメの卵を孵化させ、自分ひとりの力で育てようとする、祖父と二人暮らしの中学生の女の子のお話。本文では、13歳の「沙月(さつき)」は故郷というものに縛られ悩んでいたが、カナダ人の「ティム」やウミガメ監視員の「佐和」などとの交流を通じて、生まれ故郷から離れてよいのだと気づく様子が描かれている。いくつか馴染みのない言葉があろうが、「※注」を活用すれば内容は理解できるはずだ。本年度の「説明記述設問」は、10問中6問が「理由説明」となっている。他は「内容説明」3問、「心情説明」が1問だ。無論、定番の「条件付き」の設問がある。「条件」をいかに的確にクリアできるかが正否のポイントとなってくる。当然ながら、「選択肢設問」や「抜き出し」も抜かりなく。以下、具体的にいくつかの設問を検討する。
※尚、本校では例年、「本文」全体に「5行ごと」に「行番号」が記されている。
[問一] 「条件付き指示語換言抜き出し」(「13字」指定)。
傍線部①「あの子も、あの潮にのって海を渡った」について、「『あの子』とは何を指しているか」を「十三字」で抜き出して答える。
「条件」は「『1~67行目』から抜き出す」こと。「抜き出し」では、「抜き出し内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞り込んでいくのが大原則。先ずは「内容」。設問のとおりで「あの子」の「指示内容」だ。「抜き出し範囲」は「同一場面」が基本だが((「小説は同一場面の直前直後に根拠あり」が大原則)、ここでは指定されている。傍線部は「佐和」の言葉、「同一場面」から状況を読み取りたい。すると、カナダ人の「ティム」がカナダの浜で見付けたウミガメのことで、それは4年前に「沙月」と「佐和」がふたりで育て、海に放った個体だったと分かる。「指示範囲」を丁寧に探していくと、傍線部の9行後に「四年前、浜に取り残されていた子ガメを見つけたのは、沙月だった」という部分がある。「内容」も「字数」もOKだ。「範囲」をさらに探しても、他に候補はない。したがって、「答え」は「浜に取り残されていた子ガメ」(14字)になる。
「抜き出し」では「候補」はひとつとは限らないので、必ず「抜き出し範囲」の全てを確認することが肝要だ。
<時間配分目安:2分半>
[問二] 「内容説明記述」(字数指定なし。解答欄2行、1行=30~35字程度。以下同じ)。
傍線部②「なんであのとき、役場に連絡しようって言わんかったんですか」について、「『あのとき』とはいつの、どのようなことがあったときか」を説明する。「同一場面」で「状況」を確認したい。前の部分から、「あのとき」とは、四年前、浜に取り残されていた死にそうな子ガメを「沙月」が連れて帰り、助けようとしたがうまくいかず、泣きながら佐和に助けを求めたときだという「状況」が分かるはずだ。あとは、内容を整理して過不足なくまとめればいい。
たとえば、「四年前、沙月は浜に取り残されて死にそうな子ガメを連れて帰り、助けようとしたがうまくいかず、泣きながら佐和に助けを求めるということがあったとき。」(71字)といった「答え」になる。
「説明記述」では「最重要要素」を必ず「文末」にすること。
<時間配分目安:3分半>
[問三] 「条件付き理由説明記述」(字数指定なし。解答欄2行半)。
傍線部③「この子ガメは、沙月ちゃん――」について、「このようにいえるのはなぜか」を説明する。
「条件」は「『子ガメ』と『沙月』、それぞれの状況がわかるように説明する」こと。傍線部は「佐和」の思いになっている。そのことを踏まえて、「同一場面」から「子ガメ」と「沙月」の「状況」を確認する。
「子ガメ」は他の仲間たちが海へ出ていくなか、一匹だけ置いていかれ、かなり衰弱していた。一方、「沙月」は姉の「未月」が都会に出ていってしまい元気をなくしていた。そして、「沙月」がそうした自分自身の境遇を無意識に「子ガメ」に重ねていると、「佐和」には思えたのだ。こうした内容を「理由」として的確にまとめていく。
たとえば、「海に一匹だけ取り残されかなり衰弱していた子ガメと、姉が家を出て元気をなくしていた自分自身の境遇を無意識に重ねているのだろうと、佐和は思っているから。」(74字)といった「答え」になる。
「理由説明」では「直接的理由」を「文末」とすること。
<時間配分目安:3分半>
[問八] 「状況説明選択肢」(4択)。
傍線部⑧「沙月は一人黙って膝を抱え、じっと水平線を見つめていた」について、「このときの沙月についての説明」を答える。
「選択肢問題」は「消去法」が大原則だ。先ずは「設問」だけで「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。本問は「状況説明」なので、「一人黙って膝を抱え、じっと水平線を見つめていた」という動作の「原意」と結びつかない「沙月の状況」を「消去」していきたい(ポイントとなる最重要要素は「文末」にある)。それぞれの選択肢の「文末」を確認する。
(ア)「思いにふけっている」、(イ)「心を打たれている」、(ウ)「恐れおののいている」、(エ)「深く反省している」。
「黙って膝を抱え」「じっと水平線を見つめていた」のだから、 「思いにふけっている」以外は即「消去」できると判別できなくてはいけない。念のために「同一場面」で他の部分の説明を確認する。特に誤ってはいないと判断できる。よって、「答え」は(ア)になる。なんと見事な「一発消去」ではないか!
「原意消去」(「理由説明」では「直接的理由」での「消去」)、十分に活用すべきだ。
<時間配分目安:1分半>
[問十二(1)] 「条件付き内容説明記述」(字数指定なし。解答欄2行)。
【 】(328~341行目)の部分について、傍線部⑫の「ティムさんみたいな人」とは「どのような人のことか」を説明する。
「条件」は「 線部A『ウミガメとおんなじやね』、 線部B『遠い記憶を頼りに、帰ってきてくれる』をふまえて説明する」こと。傍線部は「佐和」の言葉だ。「佐和」は、「ティムさん」が「ウミガメとおんなじ」ように「遠い記憶を頼りに帰ってきてくれる」と思っているわけだ。
どのようなことなのかを「同一場面」から読み解いていくことになる。直前から、「遺伝子が姫ケ浦(子ガメの故郷)に自分を呼んだ」と話す「ティム」を「遺伝子によって母浜回帰をするウミガメになぞらえ、「ウミガメとおんなじやね」と「佐和」は言っており、また、「遠い記憶を頼りに、帰ってきてくれる」という話も、「遺伝子に刻まれた祖先の記憶をたどって、故郷に帰るように親しみをもって見知らぬ土地を訪れる人がいるはずだ」ということを意味していることが読み取れなくてはいけない。
これらの内容を整理して、適切にまとめていくことになる。
たとえば、「ウミガメと同じように遺伝子に刻まれた祖先の記憶をたよりに、故郷に帰るかのように親しみをもって見知らぬ土地を訪れるような人。」(61字)といった「答え」だ。
「条件」は「手がかり・ヒント」でもあると心得よ。
<時間配分目安:3分半>
[問十二] 「漢字の書きとり」(4問)。
(a)「白くマいたあの波を超えて」=「巻(いた)」⇒「同訓異字」に要注意。「文脈」を正しく捉(とら)えよ。
(b)「ゼッコウの脱出日和」=「絶好」⇒できて当然だ。
(c)「(トーテムポールというのは)家や集会所、ボチなどに立てられる」=「墓地」⇒問題ないはず。
(d)「(村の長老から聞いたハイダ族のデンショウ」=「伝承」⇒やや厄介か? 「伝え聞くこと。人づてに聞くこと。 ある社会や集団の中でのしきたりや信仰、口碑、伝説などを受け継いで後世へ伝えてゆくこと」という意味も押さえてくこと。
本年度を含めここ数年は平易なものが多い。だからこそ、油断せずに細部に注意すること。無論、本校志望者は「全問正解」が必須だ。
<時間配分目安:全問で2分>
攻略のポイント
●出題傾向は完全に安定しており、難易度もほぼ一貫している。合格ラインは35点弱と推測できる(60点満点/一昨年度までの過去15年間の「合格者最低得点率」は56.6%)。
ちなみに、2025年度の4科目合計(200点満点)の合格者最低点は104点(52.0%)となっている。
●配点は「漢字」「選択肢」「抜き出し」が各2~4点、「説明記述問題」は各3~9点程度となっている(本年度は4~5点)。「漢字」「抜き出し」「選択肢」は平易なので、全問正解が基本。「説明記述」では戦術を考える必要がある。先ずは各設問を概観し、どうにもピンとこない問題は「捨て問」にすること。勇気ある撤退は、結果として得策だ。そして、答えられる設問でいかに減点をなくすかが課題となる。「ポイントとなる要素」を外さずに「過不足なく」記す必要があるが、「設問条件」が「ヒント」になっている場合が多いので、正しく理解することを常に意識していたい。
●制限時間は60分。問題文のボリュームは6000~8000字(ここ数年は増加傾向で昨年度は約8500字だったが、本年度はやや落ち着いて約7800字)。いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速800字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要。
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