言葉の意味が変わってしまうのはなぜか？ 単語の指すものの内実が変わったり、同じものを指していたとしても受け止め方が変わったりする。同じ一つの文の意味も決してずっと同じであり続けるわけではない――このとき、私たちにはいったい何が起きているのだろうか？ そもそも、｢意味｣とは何なのか。｢自己｣とは何か、｢出来事｣とは何かといった、哲学ではよく知られたさまざまな命題と交錯しながら考察している。本文では、私たちが見ている世界は、豊かな可能性や厳しい必然性といった様相のもとにあると指摘している。文章は平易で、内容は難なく理解できる。本校としてはオーソドックスな小問が並んでいる。以下、いくつかを検証する。

[問一]　｢漢字の読み書き｣(全８問。｢読み｣１問と｢書きとり｣４問)｡
本文中の二重傍線部(Ａ)～(Ｃ)･(Ｅ)の｢カタカナ｣を｢漢字｣に直し、(Ｄ)の｢漢字の読み｣を｢ひらがな｣で記す。例年よりやや難解だが、本校志望者であれば失点は避けたい。確認する。(Ａ)｢さまざまな視野をヒカクし使い分け｣＝｢比較｣⇒これは高校入試の｢書きとり｣の定番、｢同音異義語｣に注意せよ。(Ｂ)｢接続をヨウイに行うことができる｣＝｢容易｣⇒これは問題ないはず。(Ｃ)｢相手の見方をホウキさせて｣＝｢放棄｣⇒｢棄｣に要注意だが、高校入試の十八番(おはこ)。(Ｄ)｢忌避されるべき｣＝｢きひ｣⇒これは知っておきたい⇒｢きらって避けること｣だ。(Ｅ)｢立場をヘンセンしてきた｣＝｢変遷｣⇒｢遷｣に要注意。本校志望者はあらゆる難易度の｢漢字｣にも対応できることが求められている。
＜時間配分目安：全問で２分＞

[問三]　｢内容説明選択肢｣(４択)。
傍線部(２)｢互いに接続されて一つの視野を構成しうる｣について、｢この表現から読み取れる筆者の意見｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは､｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ここは｢内容説明｣なので、｢視野を構成しうる｣の｢原意｣と結びつく｢内容｣として、各選択肢の｢文末｣が結びつかないものを｢消去｣したい(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)。確認する。
(ア)｢新たな信念を抱く｣、(イ)｢世界が鮮明に見えてくる｣、(ウ)｢個性を失う可能性がある｣、(エ)｢相手の本性を見抜けるようになる｣｡さあ、どうか？ ｢消去｣できるか？ ｢視野｣を｢構成｣なのだから、｢見えてくる｣以外はすぐに｢消去｣できなくてはいけない。｢同一意味段落｣を確認して、他の部分の説明もＯＫだ(｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠｣｢手がかり｣がある)。したがって、｢答え｣は(ウ)。見事な｢一発消去｣。｢選択肢設問｣での｢原意消去｣を完全に理解し定着させ、応用できるようにすることが肝要だと心得よ。
＜時間配分目安：１分強＞

[問四]　｢対義語の抜き出し｣。
傍線部(３)の｢原初的｣の｢対義語｣として使われている｢語句｣を抜き出して答える。｢原初的｣＝｢物事の最も初めの時期や段階に見られる様子｣だということは知っているはずで、それに対して｢社会｣を構成する人間として行動の仕方やものの考え方などをかたちづくったものが｢文化｣であり、その｢文化｣を取り入れていることを表す｢文化的｣という語句が傍線部の４行後にある。よって、｢答え｣は｢文化的｣になる。本校では、こうした形式でも｢語彙力｣が問われるということだ。
＜時間配分目安：２分強＞

[問八]　｢条件付き内容説明記述｣(｢20～30字以内｣指定)。
傍線部(７)｢重層化した視野を束ねるもの、それを視野と区別して『観点』と呼ぶ｣について、｢『視野と区別』される『観点』とは何か｣を｢二十字以上三十字以内｣で説明する。｢条件｣は｢本文の内容を踏まえて説明する｣こと。｢同一意味段落｣から｢視野｣と｢観点｣の相違を読み取っていきたい。｢視野｣とは単にその人に見えている｢単層的｣な世界のことであり、自分の｢視野｣とは異なる他人の｢視野｣にふれ、それも認めて受け入れるようになると、｢視野｣は｢重層化｣していき、｢多角的で重層的な見方｣ができるようになっていき、この｢多角的で重層的な見方｣が｢観点｣ということになることが読み取れるはずだ。こうした内容を｢指定字数｣に応じて｢過不足なく｣まとめていきたい。
たとえば、｢さまざまな見方を認めて受け入れる、多角的で重層的な見方｡｣(28字)といった｢答え｣になる。尚、｢説明記述｣では必ず｢最重要要素｣を｢文末｣にすること。
＜時間配分目安：３分強＞

[問九]　｢換言説明選択肢｣(４択)。
傍線部(８)の｢可能性を能動的にとらえることができる｣とは｢どういうことか｣を答える。先ずは､｢原意消去｣からだ。ここは｢換言説明｣なので、｢能動的にとらえることができる｣の｢原意｣として、各選択肢の｢文末｣が結びつかないものを｢消去｣したい。照合する。
(ア)｢世界が有している可能性のすべてを体験することができるということ｣、(イ)｢自分の人生を自らの力で切りひらいていけるようになるということ｣、(ウ)｢主体的に生きていくことができるということ｣、(エ)｢自分の生き方に自信が持てるようになるということ｣｡
さあ、どうか？ ｢消去｣できるか？ ｢能動的｣なのだから、｢主体的に生きていく｣以外はすぐに｢消去｣できなくてはいけない。｢同一意味段落｣を確認して、他の部分の説明もＯＫだ。
したがって、｢答え｣は(ウ)。再びの見事な｢一発消去｣。｢選択肢設問｣での｢原意消去｣を完全に理解し定着させ、応用できるようにすることが本校合格にとって肝要だと心得よ。
＜時間配分目安：１分強＞

時代とともに形を変えながら常に私たちのそばにある｢地図｣――私たちは｢地図｣を通して何に出会っているのだろうか？ ｢世界の肌触り｣｢欲望と知の来歴｣｢怪物の気配｣｢置いてきた故郷｣｢融ける国境｣｢街角の冒険｣｢駆け抜ける自転車｣｢戦争の姿｣｢歴史の空白｣｢失われた存在｣｢浮遊する鳥の眼差し｣……。地図製作者でもある翻訳家による、地図に魅せられた思索のエッセイ。本文では、｢飛ぶことの修辞｣と｢飛ぶこと自体｣を区別することは案外難しいと語っている。内容は理解できるはずだ。｢換言説明｣の他は｢内容説明｣と｢理由説明｣などの｢選択肢設問｣のみからなる大問だ。難易度は本校としての｢標準レベル｣。以下、いくつか確認してみたい。

[問三]　｢理由説明選択肢｣(４択)。
傍線部(３)｢飛ぶこととはむしろこのことだったのではないかという素朴な感慨に誘われる｣について、｢それはなぜか｣を答える。最初に、傍線部に｢このこと｣という｢指示語｣があるので真っ先に開いておく(｢指示語｣が出たら即開くこと)。直前から、｢このこと｣＝｢地から足を離した滑らかな地上の移動｣だと分かるはずだ。
その上で、各選択肢にこの｢指示語内容｣が説明されているかを確認すると、選択肢(エ)の｢地面と足が直接触れることのない自転車のすべるような走りは、空を飛ぶことのイメージと合致するから｣という｢説明｣がふさわしいと断定できるはずだ。結果として、本問は｢指示語｣での｢消去｣だったわけだ。こういった｢消去方法｣もあると心得よ。
＜時間配分目安：１分強＞

[問五]　｢空所補充の語句選択肢｣(３問｡３択)。
本文中の空所 ～ に入る｢ふさわしい語句｣をそれぞれ答える。各選択肢の｢語句｣は｢接続詞｣だ。こうした｢接続詞｣や｢副詞｣などの｢空所補充｣は本校に限らず定番だ。｢接続詞｣では、｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意する必要がある｡｢逆接｣以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢文脈｣を確認する必要がある。
また、｢段落冒頭｣の｢接続詞｣は前段落全ての内容を受けているので留意すること。各空所にあてはまる｢言葉｣を確認していく。
 には｢逆接｣の｢接続詞｣である(ウ)の｢しかし｣、  は｢添加｣の｢接続詞｣である(イ)の｢そして｣、 には｢換言｣の｢接続詞｣である(ア)｢つまり｣があてはまると判断できるはずだ。
｢接続詞｣や｢副詞｣などの｢空所補充｣は定番中の定番だからこそ、絶対に失点してはならないと記銘せよ。
＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問八]　｢換言説明選択肢｣(４択)。
傍線部(６)の｢飛行の水平性と垂直性｣とは｢どういうことか｣を答える。先ずは｢原意消去｣から。ここは｢換言説明｣なので、｢水平性｣と｢垂直性｣の｢原意｣と結びつかないものを｢消去｣する。
(ア)｢体を地面に対して平行に保つこと｣と｢真上に向け飛び上がること｣、(イ)｢上昇してゆくこと｣と｢地上から勢いよく離れること｣、(ウ)｢翼を大きく広げ滑空すること｣と｢翼を上下にはばたかせること｣、(エ)｢風を切りながら前進すること｣と｢地上から遠く距離をとること｣｡｢水平性｣と｢垂直性｣なのだから、｢水平性｣＝｢風を切りながら前進すること｣、｢垂直性｣＝｢地上から遠く距離をとること｣がふさわしいと判別できなくてはいけない。よって、｢答え｣は(エ)だ。
いま再びの｢一発消去｣ではないか！ やはり｢原意消去｣は｢正解へのショートカット｣だ。
＜時間配分目安：１分弱＞

例年【大問三】は｢総合的知識問題｣｡
毎年さまざまな｢知識｣が問われているが、本年度は｢故事成語｣だ。さほど難易度は高くないので、本校志望者であれば｢全問正解｣したい。以下、確認する。
(１)｢【 Ａ 】穴に入らずんば【 Ａ 】子を得ず｣、(２)｢【 Ａ 】の威を借る狐｣、(３)｢塞翁が【 Ｂ 】｣、(４)｢【 Ｃ 】口となるも牛後となるなかれ｣、(５)｢【 Ｄ 】頭狗肉｣。

[問一]　 ｢空所補充の動物記述｣(｢漢字1文字｣指定)｡｢答え｣を確認する。
【 Ａ 】＝｢虎｣、【 Ｂ 】＝｢馬｣、【 Ｃ 】＝｢鶏｣、【 Ｄ 】＝｢羊｣。全て問題がないはずだ。
＜時間配分目安：全問で１分強＞

[問二]　 ｢故事成語の意味選択肢｣(全５問｡９択)。
｢答え｣をチェックしてみたい。
(１)｢虎穴に入らずんば虎子を得ず｣＝選択肢(カ)｢功名や成功を得るには危険を冒さなければならない｣、(２)｢虎の威を借る狐｣＝(イ)｢権力者の力を利用していばる｣、(３)｢塞翁が馬｣＝(オ)の｢人生の幸福や不幸を簡単に予測はできない｣、(４)｢鶏口となるも牛後となるなかれ｣＝(キ)｢大きな集団の末端で使われるよりも小さな集団でもその長となった方が良い｣、(５)｢羊頭狗肉｣＝(ア)｢見かけと中身とが食い違う｣。
尚、本校では｢故事成語｣はもとより、｢四字熟語｣･｢慣用句｣･｢ことわざ｣などについても完璧にしておくこと。
＜時間配分目安：全問で２分強＞