慶應義塾女子高等学校 入試対策
2025年度「慶應義塾女子高等学校の数学」
攻略のための学習方法
全体としては、いわゆる「難問・奇問」の類は出題されていない。受験生にとっても、初見の問題も少ないだろう。それゆえ、解答にあたっては確実にかつ迅速に問題を解く必要がある。しかも、解答は記述式である。そのような入試問題の対策について、以下に何点か対策としての学習法について述べてみたい。
① 出題傾向のある分野の問題を何度も繰り返し演習を行うこと
よく出る分野としては、計算問題(展開・因数分解の応用、式の値、平方根に関する計算、指数法則を用いた計算)、関数(直線(1次関数)と放物線(2次関数)の融合問題)、方程式の応用問題(方程式を用いた文章問題)、場合の数と確率、平面図形(円に関する各種定理、三平方の定理)、空間図形(立体の切口の形状・面積)は、繰り返し演習をしておく必要がある。特に、放物線に関する問題は関数に関する設問はいうまでもないが、y軸に関して対象移動した場合のグラフの式や回転させて出来上がる立体の体積を求める問題には十分慣れておく必要がある。さらには、xy座標面において、ある図形(三角形である場合が多い)と面積が等しい図形を考えるような問題(等積変形や相似・合同の考え方を駆使する)にも対応できるようにしておきたい。図形問題(幾何問題)については、参考書に掲載されているような定理や原理などを暗記するのではなく、根底から理解しておくこと。確かに、公式などは道具としてそのまま使い正解を求めるためには非常に便利である。しかし、暗記した公式は時間がたてば記憶も薄くなり、やがて忘れてしまうものである。そのような状況を回避するためには、定理・公式を暗記するのではなく、そのような定理などがどの様なプロセスを経て導き出されるかを自分の手を使って確かめることである。その中で大事なことは、定理・公式という「結果」がどのようにして得られたのかを理解することである。その理解こそが、あらゆる問題に適応可能な発想力を生み出すのであり、確実で柔軟なヒラメキを約束するものである。
② 解答における記述の内容とボリューム感が適正になるように十分な練習を積むこと
慶應女子の入試問題は記述式問題である。答えは分かるが、それをどの様にして(ボリュームと論理展開)解答用紙に表現していくかが合否を分けるといっても過言ではない。答案は、他人(採点者)に読んでもらう、ある意味では受験生からのメッセージである。であるならば、自分の考えが相手に正確に伝わらなくては意味がない。つまり、自分の考えが伝わらないのである。そのような事態を回避するために、普段の学習においてしっかりと解法の手順を書くことである。また、解法のボリュームの点でも留意が必要である。基本的には、スタートの発想(立式)を明確に書き、結論(解答)に至る論理展開を全て書くのではなく、途中の考え方は重要なターニングポイントの式だけ書き、最後に結論となる式を書くというのが原則である。いずれにしても、適度な記述式の解答を書くには十分な練習を積む必要があり、必要最低限の内容にする判断基準を確実に身につけたい。
③ 数学的発想力を確実に習得すること(新傾向問題に対する対策として)
数学的発想とは何か。いろいろと考え方・捉え方はあろうかと思うが、一口で言うならば「客観的な根拠に基づく判断」を下せることが数学的発想であるといえよう。特に、図形(幾何)の問題においては顕著に表れてくる。解答にたどり着くために障壁となっている三角形が、特に設問上の条件は全くない状態で、この三角形は設問上の設定条件は全くないが「なんとなく正三角形っぽいな~」という憶測に基づいて問題を解いてはいけないということである。この三角形が、どうして正三角形なのであるかを根拠づけなければならない。三辺がすべて等しいか角度がすべて等しいという事実が証明できない限り、この三角形は正三角形とは言えないのである。図形を見かけだけで判断するのではなく、しっかり根拠に基づく判断ができるようにしよう。
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2025年度「慶應義塾女子高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は<10分>、小問集合問題(1次方程式・連立方程式の応用)である。
大問2は<9分>、場合の数・確率の問題である。条件整理をしっかり行うこと
大問3は<13分>、2次関数と1次関数の融合問題である。頻出の問題である。
大問4は<13分>、合同、中心角と円周角の関係、三角形の特性(正三角形、直角二等辺三角形)などの平面図形の原理を適切に当てはめる。
大問5は<15分>、空間図形(立方体)に関する問題である。平面図形の原理と発想力が重要である。
【大問1】小問集合問題
- 時間配分:10分
[1]<6分>。食塩水の濃度に関する方程式の問題である。食塩水の濃度問題を苦手とする受験生は比較的多い。特に、複数の食塩水間で一定の量を同時に入れ替える操作をした場合の濃度に絡んだ問題に対し、問題を見た瞬間に「思考の扉が」ピシャリと閉じてしまうようである。食塩水の濃度の問題は、ビーカー図を描いて、塩の量を徹底的に追いかけてゆくことである。
[2]<4分>。連立方程式の応用問題である。川の上流、下流を移動する際の上りの速さ、下りの速さの関連した問題である。貨物船が荷物を積んだときと積まないときの速さの違いを確実にとらえ、線分図で情報を整理し解法のためにつかえる有用な情報を正確に抽出すること。
【大問4】平面図形(正方形と円)
- 時間配分:13分
[1]<2分>。角度を求める問題である。△APD≡△APBであるので、PD=PBとなる。また、与えられた図の中で、円周角や中心角の関係性から∠BPRの大きさを求める。
[2]<3分>。円Pの半径を求める問題である。∠BPR=90°であり、かつPB=PRであるので、△PBRは直角二等辺三角形である。このことより円Pの半径を求める。
[3]<3分>。角度と辺の長さを求める問題である。弧BQ:弧QR=2:1であるので、∠BPQ:∠QPR=2:1となる。また、△PBQは正三角形になることより∠PBQ=60°となる。さらに、PよりABに垂線PHを引くと△PBHは3辺の比が1:2:√3 の直角三角形となることなどを利用して問題を解く。
[4]<5分>。面積を求める問題である。求めたい面積の四角形PQCR=2△PQCであることを利用する。また、△PBQは正三角形であることよりBQ=PB=2√2 であることも利用する。
攻略ポイント
全問題、途中の計算式を書かせる方式である。記述式の解法において何をどの程度まで書くかが重要なポイントである。あまり詳しすぎても答案用紙のスペースの関係で書ききれなくなってしまうし、短すぎても採点者へ自分の考えを正確に伝えることができなくなってしまう。その意味でも、日頃から時間を決め記述答案の作成に関する準備をしっかり行っておくべきである。また、図形の問題も出題されるので、平面図形・立体図形について様々なバリエーションの問題を事前に経験しておくことが大切である。








