芝浦工業大学柏高等学校 入試対策
2025年度「芝浦工業大学柏高等学校の国語」
攻略のための学習方法
難解な文章ではないので、取り立てて哲学的抽象的な文章を扱った問題演習は必要ないであろう。その代わりに、標準的な問題をしっかり腰を据えて行なうことである。指示語の扱い方や、言うまでもなく『キーワード』や『特徴的な独特な表現』も見逃さないことである。古文についても中心は読解である。基本古典文法を確実に押さえて、正確に本文を読めるようにしなければならない。本問に拘わらず、いかにしたら『論理的思考』が身に付くかということについて、幾つかポイントを挙げてみたい。参考になればと思う。受験生の皆さんは何か文章を書くときに、どのような思いや感情を抱いて書くだろうか。きっと、「この文章を読んでいる人に自分の言いたいことが正確に伝わるように」と思って文章を書くであろう。そういう思いで文章を書かなければ、読み手に作者の意図や本心が伝わる訳がないのは言うまでもない。それでは、皆さんはどうすれば読み手に「自分が言いたいこと」「自分が主張したいこと」が伝わると考えるだろうか。文を作るうえでの作業として、段落を作り各段落ごとに所謂「起承転結」を明確にしようと考えるだろう。その上で、自分が言いたいことは『インパクト』を持たせて繰り返し文章中に書きこんでいくだろう。更に、自分の主張により説得力を持たせるために、具体的事例や第三者の意見なども取り込むのではないだろうか。作家と呼ばれるプロの書き手の人たちも、文章を作る上では同じプロセスを経るのである。文章の構造はそれ程大きくは違わないであろう。しかし、皆さんが作る文章と彼等の文章との決定的な違いは、言葉・語彙の圧倒的な豊富さである。こればかりは、その世界に身を置く絶対的年数の隔たりは埋めることはできないのであるから、より濃密な一般的抽象性の高い文章が出来上がるのは無理もない。そのような論理的文章が入試問題として出題されてくるのである。初見の文章であればあるほど、難解な意味不明の単語を多用されればされるほど、一体何を作者が言いたいのか把握できなくなってしまうであろう。しかし、慌てることは全くない。自分が文章を書く場面をイメージしてもらいたい。何がポイント(繰り返し使われている言葉)かをいち早く見つけることである。それは『キーワード』であったり、理解を深めさせるために引用した具体例の中に言及されているかもしれない。そのような言葉を炙り出すために、本文を鉛筆で真っ黒にしても構わない。どの文とどの文が、どのような関係性を有しているのかを集中力を高めて精査するのである。日頃から、そのような意識で国語の文章題を解いていけば、本当の意味での『国語読解力』が確実に自分のものになることは間違いない。
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2025年度「芝浦工業大学柏高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、論説文読解問題である<21分>。日本語文章に関する言語学的分野に関する論説文の読解問題である。
大問2は、小説に関する読解問題である<16分>。登場人物の心情を読み取る問題と内容把握問題に関する設問である。
大問3は、古文の読解問題である<13分>。主な出題形式は内容把握問題であり、古典文法の基本的理解及び古語単語の習得は不可欠である。
【大問一】日本語での文章作成における言語学的分野の論説文読解問題
- 時間配分:21分
出典は、『日本語の技術―私の文章作法』(清水幾太郎著)。
(1)は、漢字書取り問題である<3分>。
実際に漢字を書かせるのではなく、同じ漢字を用いるのはア~オのどの選択肢であるかを選択させる。選択肢に使用されている漢字についてもしっかり覚えておかなければならない。紛らわしい選択肢に惑わされないように、しっかりとした漢字の知識を習得しておくこと。
①は「非常」、②は「疑惑」、③は「依然」、④は「革命」、⑤は「挙(げる)」である。
(2)は、内容把握問題<3分>。
「何とかして自分の気持ちを読者の心の底へ運びたいと考えた途端に、…漢字の使用」に動き出すのであり、さらに「大和言葉というほどのこともありますまいが、…感覚的であることを狙った一群の表現」があるのである。
(3)は、接続語問題<2分>。
空欄Eの前後は真逆の内容になっているのことがヒントになろう。つまり、Eには「しかし」が入ることが判明し、選択肢は絞り込むことができる。
(4)は、内容把握問題<3分>。
イ 火のように具体的事象がその起源であっても、火そのものではなく「象形文字」であって「原物」とは言えない点で「頼りなさ」がある。
カ 「感情」とは、「本物の姿を誰でも知っているというわけには」いかないのである。つまり、「自分の心の中にだけあるもの」であり「自分の文字や言葉によって初めて社会的に存在すること」ができるのである。
(5)は、段落関係理解問題<2分>。
4は「強い表現」についてのまとめであり、5はその「強い表現」についての問題に関して論を展開しているのである。そのような段落攻勢を把握してうえで適切な選択肢を選ぶ。
(6)は、内容把握選択問題<2分>。
本文の「スポーツ新聞」の例に言及している個所で、「いくら猛烈にしたところで、実際は、誰ひとり死なない」にであり、そのことは「みんなが知っている」のである。つまり、「読者は強い表現が現実とは大きく異なっていることに気付いている」のである。
(7)は、内容把握問題<3分>。
前問の(6)とも関連するが「読者は強い表現が現実とは大きく異なっていることに気付いている」のであるから、「強い表現」が「くり返して使われると…言葉と実情の違いにうんざりする」のである。
(8)は、内容要旨問題<3分>。
筆者は、「抽象的な文字や言葉を使って文章を書くと、自然に、『強い表現』が生まれてしまうものだが、このような強い表現は伝える側の印象も悪くなるので避けるべきである」という趣旨の論理を展開している。
※以下の類題に挑戦しよう。
問 次の文章を読んで、後の設問に答えなさい。
現代社会において、「情報」と「知識」はしばしば混同されます。しかし、この二つは明確に区別されるべきものです。情報とは、外界から得られた事実やデータ、ニュースなどの生の素材を指します。インターネットやソーシャルメディアを通じて、私たちは毎日膨大な量の情報に( A )しています。しかし、そのすべてが私たちの思考や行動を豊かにするわけではありません。
知識とは、この情報という素材を、個人が持つ既存の思考の枠組みの中で整理し、文脈を与え、意味づけを行った結果、生まれた構造体を指します。知識は、情報を取捨選択し、関連づけていくという能動的なプロセスを通じて初めて成立します。単に事実を知っている状態から、その事実を応用したり、他の事柄と結びつけたりできる状態へと移行すること、それこそが知識の本質です。
ところが、現代では、情報の洪水によってある種の錯覚を生んでいます。誰もが簡単に、検索一つで大量の「情報」にアクセスできるため、①「それを知っていること」と「それを使って考えられること」が同じだと誤解されがちなのです。
この錯覚は深刻です。私たちは、情報を消費する側から、それを加工し生産する側へと意識を転換しなければなりません。大量のデータに触れることは重要ですが、それ以上に重要なのは、そのデータを使って何ができるかを問い続けることです。これができなければ、いくら多くの情報を集めても、それは単なる②ガラクタの山に過ぎません。
( B )真の知識は、新しい情報を得たとき、それが自身の既存の思考体系と衝突したり、あるいは補強したりする中で生じます。その葛藤や対話こそが、私たちの知性を鍛える土壌となります。情報の受動的な受け入れに満足せず、自ら問いを立て、批判的に吟味し、そして構造化する努力。これこそが、③情報過多の時代を生き抜くために私たちに求められている姿勢と言えるでしょう。
設問
(1)文章中の空所( A )に最も適切な語句を、次の1~4から一つ選びなさい。
1.依存
2.遭遇
3.活用
4.抵抗
(2)文章中の空所( B )に入れるのに最も適切な表現を、次の1~4から一つ選びなさい。
1.しかしながら
2.したがって
3.たとえば
4.さらに
(3)下線部①「それを知っていること」が指す内容として、最も適切なものを次の1~4から一つ選びなさい。
1.既存の知識の枠組みを批判的に吟味すること。
2.情報を応用し、他の事柄と結びつけて構造化すること。
3.検索によって得られた生のデータや事実を覚えている状態。
4.情報の受動的な受け入れに満足せず、問いを立てる努力。
(4)下線部②ガラクタの山とは、具体的にどのような状態を指すか。文章中の語句を用いて、30字以内で説明しなさい。
(5)下線部③情報過多の時代を生き抜くために私たちに求められている姿勢の例として、筆者が重要だと述べている内容を、文章全体から二つ、それぞれ50字以内で抜き出しなさい。
《解答・解説》
(1)2. 遭遇(そうぐう)
解説: 「情報に遭遇する」は、「思いがけず出会う、出くわす」という意味で、私たちが意図せずとも情報に晒されている現代の状況を最もよく表している。
(2)1. しかしながら
解説: 直前の段落(第四段落)は、「加工しなければ単なるガラクタになる」という、現代社会に対する批判・警告で終わっている。空所( B )の直後(最終段落)は、「真の知識」の具体的な成立過程、すなわち筆者が理想とするあり方の説明で始まる。批判的な現状指摘から、理想的な知識のあり方という話題の転換や強調へ移行しているため、「逆接」を表す「しかしながら」が最適である。
(3)3. 検索によって得られた生のデータや事実を覚えている状態。
解説: 下線部①は、「それを使って考えられること(知識)」と対比されている。知識が「情報を応用し、構造化すること」を指すのに対し、「それを知っていること」は、加工前の「情報」の状態で満足していること、すなわち生のデータや事実を覚えている状態を指す。
(4)情報を集めても、それを加工し生産する側への意識転換ができない状態。 (29字)
解説: 「ガラクタの山」の直前に、「情報を集めても…それ(データ)を使って何ができるかを問い続けることができなければ」とある。さらに、「情報を消費する側から、それを加工し生産する側へと意識を転換しなければならない」という文脈があり、これらの要素をまとめると、情報を能動的に活かせない状態、つまり「情報を集めるだけで、加工・生産に活かせない状態」となる。
(5)
・一つ目(第三段落より)
情報を消費する側から、それを加工し生産する側へと意識を転換しなければならないこと。(41字)
・二つ目(最終段落より)
情報の受動的な受け入れに満足せず、自ら問いを立て、批判的に吟味し、そして構造化する努力。(44字)
解説: 下線部③は、「情報過多の時代を生き抜くために私たちに求められている」筆者の具体的な主張を指しています。
・第一の主張(加工・生産への転換)
第三段落の結びで、筆者は「この錯覚(情報を持っているだけの誤解)は深刻です」と警鐘を鳴らし、「私たちは、情報を消費する側から、それを加工し生産する側へと意識を転換しなければなりません」と、根本的な意識改革を求めています。
・第二の主張(能動的な努力)
最終段落の結びで、筆者は「情報の受動的な受け入れに満足せず、自ら問いを立て、批判的に吟味し、そして構造化する努力。」と、知識構築のための具体的かつ能動的な行動を列挙し、これが「姿勢」であると述べています。
【大問二】小説に関する問題
- 時間配分:16分
出典は『風は山から吹いている』(額賀澪著)。
(1)は、内容把握問題<2分>。
意味は「着いてみてよくわかった」のである。つまり、「森を抜け、視界が広くなり、尾根の両側が開けた」のであり、「高揚感が脈打っている」のである。よって、「『景色が変わっていい気分になりますね』」という発言になるのである。
(2)は、内容把握問題<2分>。
本問該当箇所は「二リットルの水の重さは、…ドスンと襲いかかってきた」のであるが、「疲労や痛みを勝手に快楽に変換して、前へ前へと歩を進めて」いるのである。つまり、「登ることに意識が前向きな状態」なのである。
(3)は、心情把握問題である<2分>。
「遮るものがない山頂に吹く風は、普段頬に感じる風よりずっと幼く、混じりけがない」のであり、「自分が今まで登った山で、鍋割山が一番高い」のである。
(4)は、内容把握問題<2分>。
「体を削ってコツコツ登った先で、…熱々のうどんを啜る。…充実感に全身の細胞が天を仰いで深呼吸をしている」ようであると感じているのである。
(5)は、心情把握問題である<2分>。
適当ではない選択肢を選ぶ問題である。「美しい富士山の姿が登場する様子」が「穂高にとっても新鮮だった」という個所は、本文内容に照らし合わせて適当ではない。
(6)は、内容把握選択問題<3分>。
穂高に対して岳は、登山に関する経験や造詣の深さを認めてはいるものの、素直になれないでいるのである。富士山が見えてときの穂高に対する岳の「(穂高の)得意げな顔に、岳は渋々頷いた」にもその様子が描かれている。
(7)は、内容把握問題<3分>。
本文全体では「風景描写」や「比喩」が多用されており、美しい山の描写が岳の心情も反映した描写となっている。
※以下の類題に挑戦しよう。
問 次の文章を読んで、後の設問に答えなさい。
その古い喫茶店は、街の中心部から外れた、日当たりの悪い角にあった。
扉を開けると、油と珈琲が混ざったような、重く、どこか懐かしい匂いが鼻腔をくすぐった。店内の照明は全体的にオレンジ色で、壁にかかった年代物の時計は、いつも正確な時刻よりも五分遅れていた。壁のあちこちに、かつて店主が旅先で撮ったであろうモノクロ写真が飾られていたが、そのどれもが、長い時を経てセピア色に変色していた。
カウンターの隅に座るわたしを見て、老店主はいつものように何も言わずに、湯気を立てるブレンド珈琲を差し出した。それは、わたしがこの店に通い始めた八年前から変わらない、静かで、ほとんど儀式のようなやり取りだった。
わたしは、今日ここにいるべきではなかった。正確には、この時間、この場所で、珈琲を飲んでいる場合ではなかった。一時間後、わたしは新しい職場での面接を控えていた。昨夜は一睡もできず、心臓はまるで①太鼓を叩かれているかのように激しく鼓動していた。その不安を鎮めるために、わたしは無意識に、この古い「逃げ場」へと足を運んだのだ。窓の外を見ると、冷たい雨が降り始めていた。アスファルトの上で細かく跳ね返る雨粒は、わたしが抱える焦燥感を映し出しているようにも見えた。ふと、わたしはカウンターの隅にある、小さな木彫りの像に目を留めた。それは一匹の眠る猫の像だった。
その像を見た瞬間、②わたしは十年前の、ある日の光景を思い出さずにはいられなかった。
わたしがまだ小学生の頃、父と二人でこの店を訪れたことがあった。父は、当時わたしが飼っていた猫について、「おまえの猫は、この猫と同じで、世界が滅びても気づかないだろうな」と笑いながら言った。あの頃、父はいつも忙しく、わたしの話はいつも適当に聞き流されていた。幼かったわたしは、父の言葉を「わたしを馬鹿にしている」と感じ、怒ってその場を飛び出してしまったのだ。
だが、今になってその言葉を思い出すと、父の表情には③ほんの少しの羨望が混じっていたことに気づく。それは、激しい仕事のストレスと闘っていた父が、あの猫の持つ、④何もかもから切り離された穏やかさを、心の底から求めていたからではないだろうか。
わたしは、冷めかけた珈琲を一口飲んだ。そして、面接で失敗することを恐れ、現実から逃げてきた自分自身の姿が、あの頃の父と重なるのを感じた。不安に打ち勝つために、わたしは⑤立ち上がろうとした。不安から逃げるのではなく、不安と共に、今ここにいる自分を肯定しなければならない。
設問
(1)下線部①太鼓を叩かれているは、どのような心情を比喩的に表現したものか。次の1~4から一つ選びなさい。
1.過去の思い出に浸っている状態。
2.怒りや不満が頂点に達している状態。
3.喜びや期待で胸が高鳴っている状態。
4.不安や緊張で動揺している状態。
(2)下線部②わたしは十年前の、ある日の光景を思い出したのはなぜか。その直接的なきっかけとして最も適切なものを、本文中から10字以内で抜き出しなさい。
(3)下線部③ほんの少しの羨望とは、具体的にどのような気持ちであったと考えられるか。40字以内で説明しなさい。
(4)下線部④何もかもから切り離されたとは、どのような意味か。次の1~4から一つ選びなさい。
1.忙しさから解放され、自由に旅をしていること。
2.他人との関係を断ち、孤独を選んでいること。
3.周囲の状況や不安から無関心でいられること。
4.現実を拒否し、常に過去に閉じこもっていること。
(5)下線部⑤立ち上がろうとした「わたし」の行動の動機として、最も適切なものを次の 1~4 から一つ選びなさい。
1.喫茶店を出て、急いで新しい職場の面接に向かうため。
2.不安に打ち勝ち、現実と向き合う自分を肯定するため。
3.遅れていた時計を直し、正確な時刻を確認するため。
4.店主に謝罪し、父の言葉を誤解していたことを伝えるため。
《解答・解説》
(1)4. 不安や緊張で動揺している状態。
解説: 直前に「昨夜は一睡もできず」とあり、直後に「その不安を鎮めるために」喫茶店に来たことが述べられている。心臓が「太鼓を叩かれるように激しく鼓動する」という描写は、極度の緊張や不安、動揺によって心拍数が上がっている状態を比喩的に表している。
(2)小さな木彫りの像
解説: 該当部分の直前に「ふと、わたしはカウンターの隅にある、小さな木彫りの像に目を留めた。それは一匹の眠る猫の像だった。」という描写があり、その像を見た瞬間に十年前の光景を思い出したと書かれている。
(3)激しい仕事のストレスから解放されたいと願う気持ち。(33字)
解説: 羨望の対象は、父が言及した「眠る猫の像」が持つ穏やかさである。直後に「それは、激しい仕事のストレスと闘っていた父が、あの猫の持つ、穏やかさを、心の底から求めていたからではないだろうか」と、理由が説明されている。これらの要素をまとめ、「ストレスから解放されたい」という具体的な願望として表現している。
(4)3. 周囲の状況や不安から無関心でいられること。
解説: 父は猫について「世界が滅びても気づかないだろうな」と笑いながら発言した。この「切り離された穏やかさ」とは、人間の抱える不安や焦燥、外部の激しい変化から影響を受けず、泰然としている状態を指している。この穏やかさは、面接前の「不安」や、かつての父の「仕事のストレス」と対比されている。
(5)2. 不安に打ち勝ち、現実と向き合う自分を肯定するため。
解説: 「面接で失敗することを恐れ、現実から逃げてきた自分自身」が、かつての父と重なるのを感じたのである。直後に「不安から逃げるのではなく、不安と共に、今ここにいる自分を肯定しなければならない」と、その行動の理由と決意が明確に示されている。これは単に面接に行くという物理的な行動ではなく、精神的な決意を象徴しているのである。
【大問三】古文読解問題
- 時間配分:13分
出典は『十訓抄』。
(1) は、内容把握問題<2分>。
飛び回っている蜂に「とまれ」といったのも、供人を召したのもともに「宗輔公」である。
(2)は、内容把握問題<2分>。
宗輔公に飼いならされた蜂が「そのままに」振舞ったのである。それは、蜂は飼い主である宗輔公の指示に従って「(指示の内容)そのままに」侍を攻撃したのである。
(3)は、古語意味問題<2分>。
「やをら」とは「そっと」という意味である。
(4)は、内容把握選択問題<3分>。
上皇の前で飛び回っている蜂を、蜂の扱いに慣れている宗輔公が蜂を上手くまとめたため、人々も蜂に刺されなくて助かったことを院が宗輔公を褒めた理由である。
(5)は、内容理解問題<4分>。
蜂は「心や知恵がある生き物」であり、数多くの蜂を飼っていた宗輔公は蜂を上手に扱い、蜂も宗輔公の命令をよく聞いたのである。したがって、宗輔公には「奇妙な徳がある」と思われたのである。
※以下の類題に挑戦しよう。
問 次の文章を読んで、後の設問に答えなさい。
京に上る道すがら、①いみじう暑かりければ、ある野辺の木陰に立ち寄りて、馬の汗を拭ひける。供人どもは、水の辺に寄りて涼しげにまどろみけり。
主(あるじ)は、ひとり②あはれなりと思ひて、腰に差したる扇を取り出でて、そよそよと動かしける。
されど、風は起こらず、ただ蝉の声のみ、いと③ものぐるほしく聞こえければ、「これでは、いかでか夏の苦しみを除かむ」とため息つきけり。
ふと見れば、草の葉の露に、日の光の映りて、玉を連ねたるやうに見ゆ。この露は、暑さに疲れたる心には、さながら冬の雪にも勝る心地しけり。
主は、④この美しき光景に、心もとなしと思ひしことを、一時に忘れ果てて、ただただ⑤をかしきと思ひて、思はず立ち上がりにけり。
設問(1)下線部①いみじうの意味として、最も適切なものを次の 1~4から一つ選びなさい。
1.ほんの少し
2.非常に
3.きっと
4.やや
(2)下線部②あはれなりの意味として、この文脈で最も近いものを次の1~4 から一つ選びなさい。
1.派手だ
2.不満だ
3.しみじみと趣深い
4.かわいそうだ
(3)下線部③ものぐるほしくとあるが、主人がこのように感じたのはなぜか。その理由を20字以内で説明しなさい。
(4)下線部④この美しき光景が指す内容として最も適切なものを、本文中から抜き出しなさい。
(5)主人が最終的に下線部⑤をかしきと感じたのは、どのような心境になったからか。最も適切なものを次の1~4から一つ選びなさい。
1.自分の体調が回復し、夏の苦しみがすべて消え去ったため。
2.供人たちが皆熟睡しているのを見て、微笑ましい気持ちになったため。
3.景色が美しすぎて、暑さや焦燥感が一気に吹き飛んだため。
4.扇子を動かしても風が起きず、自分の無力さを悟ったため。
【現代語訳】
都(京)へ上る道の途中、たいそう暑かったので、ある野原の木陰に立ち寄って、馬の汗を拭いた。お供の者たちは、水辺に寄って涼しげにうとうとと眠っていた。
主人は、一人でしみじみと物思いにふけって趣深くいると思い、腰に差していた扇を取り出して、そよそよと動かした。しかし、風は起こらず、ただ蝉の声だけが、ひどく正気を失ったように聞こえたので、「これでは、どうして夏の苦しさを除くことができようか、いやできない」とため息をついた。
ふと見ると、草の葉の露に、日の光が反射して、玉を連ねたように見える。この露は、暑さに疲れた心には、まるで冬の雪よりも勝っているような心地がした。
主人は、この美しき光景に、それまで気がかりだと思っていたことを、一瞬にして忘れ去り、ただただ趣があると感じて、思わず立ち上がってしまった。
《解答・解説》
(1)2. 非常に
解説: 「いみじ」は、古文において肯定的な意味で「たいそう、非常に」、否定的な意味で「ひどい、恐ろしい」の両方を表すが、ここでは「暑かりけれ(暑かった)」という程度を強調しているため、「非常に」が適切である。
(2)3. しみじみと趣深い
解説: 「あはれなり」は「しみじみとした情趣がある、心惹かれる」という意味が基本でである。主人は一人で物思いにふけり、扇を動かしている状況であり、供人たちが休む中で、自分だけが起きている状況を、単に「かわいそう」と思うよりも、「静かで趣深い」と感じていると解釈するのが自然である。
(3)風が起こらず蝉の声ばかりがうるさく聞こえたから。(20字)
解説: 「ものぐるほしく(正気を失ったように)」聞こえた原因は、直前の文で説明されている。「されど、風は起こらず、ただ蝉の声のみ、いとものぐるほしく聞こえければ」とあるため、「風がないのに蝉の声がひどく聞こえる」という状況が、苛立ちや苦しさを増幅させていることがわかる。
(4)草の葉の露に、日の光の映りて、玉を連ねたるやうに見ゆ。
解説: 指示語「この」は、直前の具体的な描写全体を指す。「草の葉の露に、日の光の映りて、玉を連ねたるやうに見ゆ」という、主人が発見した美しい光景全体を指している。
(5)3. 景色が美しすぎて、暑さや焦燥感が一気に吹き飛んだため。
解説: 「をかし」は「趣深い、美しい、面白い」という肯定的な意味で使われる。 主人は直前まで「夏の苦しみを除かむ(除きたい)」とため息をつき、心が「心もとなし(気がかり、不安)」な状態であった。しかし、草の葉の露が日の光に映える光景を見て、「冬の雪にも勝る心地しけり」と感じ、その美しさに「心もとなしと思ひしことを、一時に忘れ果てて」いるのである。したがって、自然の美しさによって、それまでの肉体的・精神的な苦痛が解消されたことが動機である。
攻略ポイント
現代文は、論説文と小説である。前者は、内容把握と論旨をいかにコンパクトに自分の頭の中でまとめ上げるかだろう。後者については、心情を正確にかつ迅速に把握することである。両者に共通して言えることは、キーワードを中心に文の流れを正確に読み取ることである。解答は全て選択肢問題であっても、消去法ではなく正解を一つに特定するための正確で迅速な文章読解力は不可欠である。では、時間的余裕のない受験生にとって、そのような読解力を日頃の学習の中でどのようにすれば身につくのであろうか。それは、ただ単に大量の本を読めばよいというのではなく、過去の入試問題(論理性の高い、言い換えれば入試問題として耐えられる)をじっくり読み解くことである。古文については、基本的な古典文法は確実に押さえ、的確な内容把握を理解できるようにしておくこと。