私たちは自分の人生の中で出会うさまざまな課題を、見つけ、調べて、解決することが求められる時代に生きている――日常の関心を一歩前に進め、｢対話｣を通じて学びを広げるための｢探究型の学習｣に関して論じている。本文では、多様化する現代社会では心のあり方、学びや教養も変化し、積極的に活動した経験が重要になるので、教育では｢探究｣を重視すべきだと指摘している。文章は分かりやすく、内容は難なく理解できるはずだ。｢本校らしさ｣にあふれる多様な設問が並ぶ大問だ。以下、いくつかを検証してみたい。

[問二]　｢内容説明記述｣(｢２行以内｣指定、｢60字ほど｣の解答欄)。傍線部(２)に｢しばしば言われるように、学びも生涯にわたるものとなるのです｣とあるが、これは現在あるいは将来の学びのあり方を述べたものだ。では、｢かつて学びはどのようなものと考えられていたか｣を｢二行以内｣で説明する。｢同一意味段落｣に｢手がかり｣を求めたい(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)。確認すると、次の形式段落で｢かつての学び｣のことが述べられていると分かるはずだ。そこには、｢かつて子ども時代はもっぱら学校に行くように推奨(すいしょう)された。それは、さらに昔には子どもが労働によって学ぶ機会を奪われていたからであり、子どもを学校で庇護(ひご)して十分に成長してから社会に出すという形がとられていた｣といったことが説明されている。あとは、こうした内容を整理して｢過不足なく｣まとめていけばいい。たとえば、｢子どもが働かされることで学ぶ機会を奪われずに、十分に成長してから社会に出られるように、庇護される学校でもっぱら学ぶもの｡｣(60字)といった｢答え｣になる。｢設問内容｣に応じた的確な｢解法｣を用いて解き進めていくことが重要だ。

[問三]　｢内容説明選択肢｣(４択)。傍線部(３)｢外の社会との結びつき｣について、｢これについて述べたもの｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)。ここは｢内容説明｣なので、｢結びつき｣の｢原意｣と結びつかない｢内容｣を｢消去｣する。各選択肢の｢文末｣を確認する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)｡(ア)｢連携することも増えてきている｣､(イ)｢考えることができるようになっている｣､(ウ)｢必要性がなくなりつつある｣､(エ)｢連携するようになっている｣｡どうだろうか？ ｢結びつき｣なのだから、｢連携すること｣･｢連携するように｣以外はそのまま｢消去｣できなくてはいけない。これで２択だ。次に、｢何と『外の社会』の連携なのか｣をチェックしたい。｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という｢重要解法｣)に｢手がかり｣を求める。直前に｢学校はその(外の社会との結びつき)｣とある。つまり、｢学校｣と｢外の社会｣との｢連携｣だと分かる。そして、各選択肢は全て｢大学｣の説明なので、｢大学｣と｢外の社会｣との｢連携｣を｢同一意味段落｣から読み解いていく。次の形式段落の最後に｢高校と大学とが協同して教育を行う高大連携も増えてきました｣とある。よって、｢企業など異なる領域とも連携する｣となっている(エ)は｢消去｣で、｢高校など学校間で連携する｣とある(ア)が残ると判別できるはずだ。念のために、他の部分の説明を｢同一意味段落｣で確認しても特に誤っていないので、｢答え｣は(ア)になる。本問は｢２段階消去｣だったが、先ずは｢原意消去｣が不可欠だと心得よ。

[問六]　｢空所補充の語句選択肢｣(全４問/４択)。本文中の空所　Ａ　 ～　D　 に｢当てはまる語｣を答える。各選択肢は、｢接続詞｣と｢副詞｣だ。本校に限らず定番の問題。｢接続詞｣では｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意すること。｢逆接｣以外ではどれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認すること。また、形式段落冒頭の｢接続詞｣は｢前段落全ての内容｣を指し示すことにも注意したい。では、それぞれの空所の｢答え｣を確認していきたい｡　Ａ　 には｢例示｣を表す｢副詞｣である(エ)｢たとえば｣があてはまり、　Ｂ　 には｢換言｣の｢接続詞｣(ウ)｢すなわち｣､ 　Ｃ　 には｢逆接｣の｢接続詞｣の(ア)｢しかし｣、 　Ｄ　 には｢順接｣の｢接続詞｣の(イ)｢したがって｣がそれぞれ入ると判別できるはずだ。｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず全て｢代入確認｣すべし。

[問七]　｢漢字の書きとり｣(全５問)。昨年度よりも易しい。本校としては｢平易なレベル｣。よって、本校志望者であれば｢全問正解｣が必須条件だ。当然、｢文脈｣を正確に読み取り、的確な｢漢字｣に結びつけることを忘れてはならない。それぞれを確認する。(ア)｢研究開発のジゲンだけではなく｣＝｢次元｣⇒何ら問題なし。(イ)｢非エイリ組織｣＝｢営利｣⇒｢ＮＰＯ｣＝｢非営利組織｣は｢社会科｣での必須定着事項。(ウ)｢狭(せま)くサイブンカされすぎている専門性｣＝｢細分化｣⇒｢文脈｣を正しく読み取ること。(エ)｢セイタイケイへの悪影響｣＝｢生態系｣⇒お馴染みのはず。(オ)｢社会の変化にコタえようとしている｣＝｢応(え)｣⇒｢答(え)｣ではない。｢同訓異字｣に要注意。尚、｢トメ｣｢ハネ｣などにも配慮し丁寧に記すことは言うまでもない。

｢女の子らしくしろ｣と口うるさい祖父にモヤモヤと反感を覚える｢瑠美奈｣は、ある日、クラスになじまない転校生の｢詩音(しおん)｣が坊主頭で登校してきたことに衝撃を受ける……｢多様性｣をテーマにしつつ、人を思うこと、助け合うことについて、深く感じられる物語。本文では、｢姉｣を応援したくて坊主頭にした｢詩音｣だったが、｢姉｣は｢ジェンダー｣について説明した後、｢詩音｣に坊主頭をやめるように忠告する様子が描かれている。内容は難なく理解できる。｢総合的知識問題｣を含め､多彩な小問が待ち構えている。中には、本校としては初出の｢内容推測記述設問｣もある。以下、いくつかの｢設問｣を確認する。

[問一]　｢成句の意味の選択肢｣(全５問/５択)。｢総合的知識問題｣｡傍線部(１)に｢海軍｣とあるが、示されている５つの｢『海』や『軍事』に関連する語を使った成句｣の｢意味｣をそれぞれ答える。示されている｢成句｣は、(一)｢井の中のかわず大海を知らず｣､(二)｢勝ってかぶとの緒(お)をしめよ｣､(三)｢軍門に下る｣､(四)｢船をこぐ｣､(五)｢渡りに船｣｡誰も知らないものがあるやも知れぬ。が、本校志望者であれば｢消去法｣も駆使してなんとか｢全問正解｣といきたい。｢答え｣を確認する。(一)＝(ウ)｢広い世界のことを知らずに考えがせまい｣､(二)＝(オ)｢成功しても気をゆるめてはいけない｣､(三)＝(イ)｢戦いに負けて相手の言うとおりになる｣､(四)＝(ア)｢いねむりをする｣､(五)＝(エ)｢都合のいいことにちょうど出会う｣｡｢成句｣(＝古くから慣習的に用いられているひとまとまりの言葉)は３年連続して出題されている。本校では、｢故事成語｣･｢ことわざ｣･｢慣用句｣、そして、｢四字熟語｣などの習得、定着は必須だ。ちなみに、｢渡りに船｣は｢川を渡ろうとするときに、渡し場に都合よく船がいること｣からのたとえだ。無論、知らなくてはいけない。

[問二]　｢条件付き内容説明抜き出し｣(｢10字以内｣指定)。傍線部(２)｢お姉ちゃんとあの映画のヒロインが重なって見えた｣について、｢どのような点で重なって見えたのか｣を、｢十字以内｣で抜き出て答える。｢条件｣は｢『という点｡』に続くようにする｣こと。｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を正確に捉(とら)えた上で、｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。｢内容｣は｢傍線部そのもの｣だ。｢お姉ちゃん｣と｢あの映画のヒロイン｣の共通点を｢同一場面｣で確認したい(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。｢お姉ちゃん｣は｢男女差別｣を感じさせる校則を変えたいと坊主頭にした。一方、｢あの映画のヒロイン｣は女性という理由だけで拷問のようなしごきを受けたが、やはり坊主頭になって男性たちと同じ訓練にいどんだ。つまり、ともに｢女性｣として｢男女差別｣と闘ったわけだ。そうした内容を抜き出したい。｢範囲｣は当然｢同一場面｣。丁寧に探していくと、傍線部の２行前に、｢あの映画のヒロイン｣に関して｢差別に立ち向かう女性の姿が、脳裏に焼きついている｣という部分がある。まさに、｢抜き出し内容｣そのものだ。｢指定字数｣もＯＫ。よって、｢答え｣は｢差別に立ち向かう女性(という点)｣(10字)だ。尚、｢抜き出し｣では｢候補｣は決してひとつとは限らないので、必ず｢範囲｣のすべてを確認する必要がある。

[問三]　｢条件付き内容推測説明記述｣(｢２行以内｣指定、｢60字ほど｣の解答欄)。傍線部(３)｢さっき見たポスターは、ジェンダーレスを呼びかけていたんだ｣について、｢どのようなポスターだと推測できるか｣を｢二行以内｣で説明する。｢条件｣は｢『ジェンダー』あるいはこれを含む語は用いずに説明する｣こと。自ら｢推測｣しなければいけない。しかも｢さっき見たポスター｣のことは本文では説明されていない(まあ、だからこそ｢推測｣する他ないのだが)。どうすればいいのか？ 先ずは、｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣で｢手がかり｣を求めたい。すると、直前に｢そっか､｣とある｡｢さっき見たポスター｣が｢ジェンダーレスを呼びかけていた｣と納得していることになる。何に｢そっか｣なのか？ ｢指示語｣なので開くと、さらに直前の｢お姉ちゃん｣の｢言ったこと｣に対して｢そっか｣だと分かるはずだ。よって、｢同一場面｣から、｢お姉ちゃん｣の｢言ったこと｣を読み取っていく。｢社会でつくられた性別で役割に男女差をつけるのが『ジェンダー』で、ファッションやヘアスタイルに関する『ジェンダー』をなくそうとする動きがを『ジェンダーレス』と言う｣と説明していると判断できる。そのことから、｢ジェンダーレスを呼びかけているポスター｣を｢推測｣していくことになる。もちろん、自分なりに｢推測｣すればいい。一例としては、｢社会でつくられた性別にこだわらず、男女差のないファッションやヘアスタイルをしたさまざまな性別のモデルが登場するポスター｡｣(60字)といった｢答え｣だ。｢推測｣であっても、｢与えられている情報｣をつなぎ合わせて、それらに応じた｢解法｣を駆使していくことが肝要だと心得よ。

[問五]　｢心情説明選択肢｣(４択)。傍線部(５)｢詩音の胸もシクッとした｣について、｢このときの詩音の気持ち｣を答える。先ずは｢原意消去｣から。ここは｢心情説明｣なので、｢シクッとした｣ときの｢心情｣と結びつかないものを｢消去｣する。各選択肢の｢文末｣と照合する｡(ア)｢罪悪感を覚えた｣､(イ)｢ショックで落ちこんだ｣､(ウ)｢つらい気持ちになった｣､(エ)｢悲しい気持ちになった｣｡｢消去｣できるか？ ……。｢チクッ｣だったら分かるが、作者オリジナルの｢シクッ｣はどうにも判別できないだろう。残念だが、次の｢消去方法｣だ。で、何か気づかないか？ ｢詩音の胸も｣となっているではないか。｢も｣という｢繰り返し｣の｢助詞｣だ。ということは、｢直前のこと｣について同じように｢シクッとした｣わけだ。直前は｢お姉ちゃん｣の言葉で、｢パパとママのことを考えるとつらいの｣とある。つまり、｢つらい気持ち｣なのだ。｢同一場面｣から、他の部分の説明も特に誤っていないと分かるので、｢答え｣は(ウ)だ。本問は｢原意消去｣ではなかった。｢選択肢消去｣にはさまざまな方法があるということだ。しかし、先ずは｢原意消去｣だということを忘れてはならない。