※本校では全大問の前提として、｢漢字で書くべきものは漢字で答えなさい｣という《注意》を最初に掲げており、本校ＨＰにも｢基本的な地名や人名その他の社会科用語については、必ず正しい漢字を使って書くよう日頃から心掛けて下さい｣と明記してある。したがって、｢事項等記述｣などは､特に指示がない場合は全て｢漢字指定｣と考えよ。

｢2022年２月、ロシアによるウクライナ侵攻｣という｢時事ネタ｣を切り口としての｢隣国であるロシアと日本の関係をめぐる歴史｣についての｢リード文｣からの出題。｢歴史｣単元の基礎的事項中心に問われている。ただし、｢説明記述｣および｢考察論述｣が厄介だ。それらだけ検証してみたい。

[問６]　｢二重下線部についての内容説明記述設問｣(全２問｡ともに｢字数指定｣なし｡各｢25字ほど｣の解答欄)。｢歴史｣単元。｢リード文｣中の二重下線部(Ｘ)｢大津事件｣について、この出来事の意義や重要性について考えた｢カード(Ａ)･(Ｂ)｣から読み取れる｢重要性｣は｢どのようなことなのか｣それぞれ説明する。そもそも｢大津事件｣とは｢1891年に来日中のロシア皇太子ニコライが、滋賀県大津市で警備にあたっていた巡査･津田三蔵に切りつけられ負傷した事件で外交問題に発展する可能性があった一方で、司法権の独立が維持された法学史上重要な事件としても知られている。このことを押さえた上で、それぞれの｢カード｣の｢要点･ポイント｣を読み取り、どのようにまとめるかを考えたい。｢カード(Ａ)｣には、｢殺人未遂罪は最高刑で無期懲役であるのに対して、政府はそれより重い死刑を主張したが、大審院長は無期懲役の判決を下した｣と書かれている⇒｢司法権の独立｣が守られたことになる⇒たとえば、｢裁判所が政府に対して司法権の独立を守り通した点｡｣(24字)といった｢答え｣になる。一方、｢カード(Ｂ)｣には、｢大審院長は担当裁判官に対し自らの法律解釈に同意するよう説得した｣とあり、さらに続けて｢日本国憲法第76条には『すべて裁判官はその良心に従い独立してその職権を行い……』｣と付記されている⇒たとえば、｢大審院長の行動が、裁判官の独立を侵す行為だった点｡｣(25字)といった｢答え｣になる。やや難解だったが、｢設問｣等で｢与えられている情報｣から考えることが可能だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で４分ほど＞

[問７]　｢波線部についての考察論述設問｣(｢字数指定｣なしで｢60字ほど｣の解答欄)。｢考察問題｣。｢リード文｣中の波線部(Ｙ)｢千島列島や北海道｣について、｢江戸時代に蝦夷地と呼ばれていた北海道は、明治時代に先住民のアイヌに対して同化政策をおこなったため、アイヌの人々は土地を失い、差別や偏見に苦しみ、今なお少数派としての立場に置かれている｣。｢多数派による悪意のない言葉が少数派を圧迫し、ダメージを与えることを『マイクロ･アグレッション(微細な攻撃)』と呼ぶ｣が、示されている｢アイヌの人権啓発に関するパンフレット｣の文言にも、よく読むと｢マイクロ･アグレッション(微細な攻撃)｣が潜んでいる。｢アイヌの人々がこのパンフレットを読んだ場合、どの部分の表現がどのような問題を含んでいると受け止める可能性があるか｣を｢解答欄｣に合わせて論述する。｢パンフレット｣には｢東京にもアイヌの人々が生活しています。民族としての誇りが尊重される社会の実現のためには、私たち一人一人がアイヌの人々の歴史や文化、言語や生活様式などについて理解し、尊重することが必要です｣と書かれている。尚、｢解答欄｣は｢……という表現が、……と受け止められる｡｣となっている。｢マイクロ･アグレッション｣など、誰も知るはずがない。しかし、出題されている。ということは、知らなくても解けるわけだ。設問には｢具体例｣が記されている。例えば、日本に来ている留学生に対して｢日本語が上手ですね｣と言うのは、｢外国人は日本語が下手なよそ者である｣という意味を含んだ差別的表現だと受け止められる場合がある。さて、｢パンフレット｣だ。その中の｢表現｣で問題を含んでいると考えられるのは｢私たち一人一人がアイヌの人々の歴史や文化、言語や生活様式などについて理解し……｣という部分で、一見アイヌの人々に寄り添っているように思えるが、｢私たち｣と区別することで、｢この中にはアイヌの人々は含まれていないこと｣を強調しており、｢アイヌの人々｣は｢日本国民ではない｣と言われているように感じられる恐れがある。ということでたとえば、｢『私たち一人一人』(という表現が、)『私たち』にアイヌの人々を含んでおらず、排他的であると(受け止められる｡)｣(55字)といった｢答え｣だ。尚、｢私が知らない｣⇒｢誰も知らない｣⇒｢知らなくても解ける｣と考えよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：５分程度＞

｢為替相場と外国人観光客、そして、観光公害｣についての｢リード文｣からの出題。｢歴史｣｢地理｣｢公民｣｢時事｣の各単元、さらに｢考察問題｣で構成される｢総合問題｣。基本的知識に関するものが多いが、中には厄介な問題もある。いくつかの設問を確認していきたい。

[問２]　｢空所補充の条件付き文章記述設問｣(｢字数指定｣なしで｢20字ほど｣の解答欄)。｢地理｣単元。｢リード文｣中の空所　　お　　に｢あてはまる文章｣を考えて説明する。｢条件｣は『人件費』･『工場』の語句を必ず使って説明する｣こと。空所部分は、｢円高で売り上げが不振になった輸出企業は　　お　　することがある｣となっている。｢売り上げ｣が伸びないのであれば｢経費｣を削減するほかない。｢条件｣の｢人件費｣と｢工場｣は｢経費削減｣の切り札として考えられたわけだ。たとえば、｢人件費を節約するため、工場を海外に移転(する)｣(19字)という｢答え｣だ。｢空所補充｣では、空所前後の｢文脈｣に合わせることが最優先課題になると心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分ほど＞

[問５]　｢下線部についての換言語句記述設問｣(｢カタカナ｣指定)。｢時事｣単元。｢リード文｣中の下線部②の｢観光公害｣のことを｢何というか｣を｢カタカナ｣で答える。典型的な｢時事ネタ｣だ。テレビ･新聞等の報道でもたびたび取り上げられている。｢答え｣は｢オーバーツーリズム｣だ。｢特定の観光地に観光客が集中しすぎて、地域住民の生活、自然環境、景観、文化遺産などに悪影響を及ぼす現象｣のことだ。自ら説明できるようにしておくこと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：30秒強＞

[問７(２)]　｢下線部についての時期整序選択肢設問｣(３択)。｢歴史｣単元。｢リード文｣中の下線部④の｢京都｣の｢歴史｣に関連した資料(ア)～(ウ)を｢古い年代順｣に｢並べ替え｣て答える。それぞれの｢キーワード｣｢要点｣で｢年代(時期)｣を特定していく。(ア)｢この世の中は自分のためにあるようなものだ……満月が欠けていないように……｣⇒すぐに｢この世をば　わが世とぞ思ふ　望月の　欠けたることも　なしと思へば｣という｢藤原道長｣を詠んだ和歌だと気づくはずだ⇒｢摂関政治｣全盛期＝｢平安時代中期｣。(イ)｢山城の国人は平等院で集会をした｡国の法を制定するという……｣⇒｢山城国一揆｣と結びつくはず＝｢室町時代｣。(ウ)｢このごろ都ではやっているもの、夜討･強盗･謀綸旨……｣⇒誰もが知っているはずの｢二条河原の落書｣⇒｢後醍醐天皇｣による｢建武の新政｣(1333～35年)を風刺したものだ＝｢鎌倉時代｣と｢室町時代｣の間。というわけで、｢答え｣は、(ア)→(ウ)→(イ)。尚。｢年代(時期)整序｣は｢うろ覚えの年代｣で整序するのではなく、｢流れ｣や｢キーワード｣を確認し、特定していくことが重要だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分弱＞

[問８(１)]　｢下線部についての地名記述設問｣(｢漢字｣指定)。｢歴史｣単元。｢リード文｣中の下線部⑤｢北海道｣について、｢鎌倉時代、中国の元王朝は北海道北部の島にも遠征している｣が、｢明治時代、ロシア帝国との交渉の結果、ロシア帝国の領土となったこの島｣の名称を｢漢字｣で答える。すぐに｢1875年｣の｢樺太･千島交換条約｣と結びつけたい。｢樺太をロシアに、千島列島を日本が領有する｣ことで合意した。よって、｢答え｣は｢樺太｣。｢漢字｣が曖昧(あいまい)だった諸君は、｢社会科用語｣の｢漢字｣を徹底的に復習せよ。

＜時間配分目安：30秒強＞

[問８(２)]　｢下線部についての人名記述設問｣。｢歴史｣単元。｢リード文｣中の下線部⑤｢北海道｣について、｢江戸時代、松前藩からの圧力に対して反乱を起こしたアイヌの指導者の名｣を答える。無論、｢シャクシャインの戦い｣(1669年)だと判断できるはずだ。よって、｢答え｣は｢シャクシャイン｣。尚、｢外国人の名前｣を混同しないこと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：30秒強＞

[問８(３)]　｢下線部についての人名記述設問｣。｢歴史｣単元。｢リード文｣中の下線部⑤｢北海道｣について、示されている｢略図｣は十勝平野で行われている｢輪作｣を表しているが、｢略図｣の　　　　　にあてはまる｢製糖に用いられる作物名｣を答える。｢十勝平野｣の｢輪作｣で｢製糖に用いられる｣といえばもちろん、｢答え｣は｢てんさい(さとうダイコン･ビート)｣。尚、｢農作物｣は田畑で栽培される植物自体を指すのに対し、｢農産物｣は農作物のほかに畜産物(牛乳や肉など)やそれらを加工した製品も含む｢農業生産物の総称｣のことだと整理しておきたい。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：30秒強＞

※尚、[問４(２)]は｢統計資料読み取り不適切選択肢設問｣(４択｡複数完全解答)だが、こうした｢資料読み取り｣では先入観を持たずに｢資料｣の数字等の読み取りだけで忠実に判別することが重要だ。また、[問６]は｢下線部についての回数判別選択肢設問｣(４択)だが、｢手がかり･ヒント｣が皆無で知らなくてはどうにもならない問題なので、戦術的には｢あとまわし｣にすべきで、｢捨て問｣でも構わない。さらに、[問９(４)]は｢本文に関連しての旅の発達段階選択肢設問｣(全３問)。誰にとっても未知の設問でとても｢手間ひま｣がかかる。｢配点｣(全問で３点)をふまえると戦術的には｢あとまわし｣にせよ。無論、｢捨て問｣でも構わない。

都市部への一極集中を解消するための｢地方創生｣についての３つの｢説明文｣からの出題で、｢歴史｣｢時事｣｢地理｣各単元からの｢総合問題｣になっている。とても平易なので、一気呵成に解き終えたい。唯一注意すべき小問だけ押さえておく。

[問１(１)]　｢説明文の空所補充事項記述設問｣(アルファベット３字指定)。｢時事｣単元。｢説明文(Ａ)｣中の空所(     １    )に｢あてはまる語句｣を答える。｢説明文(Ａ)｣の内容から、この都市は｢栃木県宇都宮市｣だとすぐに分かるはずだ。その上で空所部分は｢2023年には新型の路面電車である(     １    )が整備され……｣となっている。典型的な｢時事ネタ｣で、｢答え｣は｢ＬＲＴ｣だと特定できなくてはいけない。｢Light Rail Transit｣の略称で、｢次世代型路面電車システム｣のことだ。｢宇都宮｣以外では、｢富山市｣や｢広島市｣などでも導入されている。尚、｢時事ネタ｣については｢受験前年｣だけではなく、｢数年前｣のものからチェックしておくことが肝要。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：30秒強＞