開智高等学校 入試対策
2025年度「開智高等学校の国語」
攻略のための学習方法
〇長文読解
説明的文章・文学的文章が各1問ずつ出題される。2025年度では論説文3500字・小説6800字の計10000字ほどの文量であった。
文章自体は高校受験の試験としては適した内容で、難し過ぎるということはない。小説の主人公も中学生の設定になっていたりする点、中学三年生向けの難易度で配慮されている。
形式は選択肢問題がやや多めで、書き抜き・記述・文中の内容を自分で考えて言葉にする問題なども見られる。記述は字数指定のないものや、50~60字ほどのものも出題されている。
【記述問題】 配点も大きく、字数指定の無いものもあり、やはり差がつくところであろう。 「簡潔に説明しなさい」という形で訊かれるものが多いので、何をどのようにどのくらい記述するのかは自分で判断することになる。
論説文であれば、要約の能力が必要である。設問で求められた点を過不足無くまとめなければならない。
小説の場合は、文中にはっきり表現されていない場合も多いので、文中の出来事・人物の言動や表情・情景などから、(おそらくは)人物の心情を感じ取って、説明しなければならない。
字数指定が無い問題は、解答欄の大きさからだいたいの行数を考え、1行につき20~25字くらいの見当で書ける文量を決める……など。類似問題で十分な練習を積んでおかないと対応できないことである。
20~30字・70~80字などの字数で要旨・要約をまとめたり、人物の行動理由や気持ちを自分なりに表してみたり、一定の字数で記述を整える感覚を体得しておいていただきたい。
【 読 解 】
記述問題に慣れておくことは当然のこととして、つまるところは文章の要約であり登場人物の心情理解が求められているわけである。長文読解の力が無ければ記述問題など手もつけられない。長文読解のテクニックを磨くこと。
形式段落と意味段落・段落のつながり・要点と細部・要旨のまとめ……論理の流れをしっかりたどる。場面の転換・登場人物の関係・言動や表情や情景などから心情を理解する……テーマを読み取る。同じような文量の問題でスピードをつけておくことももちろん必要となる。
〇古文
大学受験と同様の素材文が出されているが、難しい箇所には現代語訳がついていて難易度の配慮はされている。このレベルの試験だと助詞の接続による意味の変化を見分ける必要があったりするが、全体の筋が読めれば答えられるような問題にはなっている。
ともあれ、難易度としてはやはり高校で詳しく習うことなので、重要語句や基本文法・古典の知識を一通り覚えて古文を読みなれておかないと、十分な得点に結びつかないだろう。高校初級~標準レベルの教材で学習しておくことをお薦めする。
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2025年度「開智高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
論説文4000字・随筆文3500字の7500字ほどに古文の約400字といった文量で例年通りであった。総解答数は34問。記述問題が5問、その他は記号選択が多くなっている。記述問題以外はあまり時間を取られるような問題はないので、素材文を読むスピードが十分にあれば、時間は足りるだろう。記述問題は30~70字ほどでまとめるもので、答える内容もそれほど難しくはなっていない。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:18分
文明の目指すところは人為による徹底した自然の管理であった。人間と自然が分断された結果生まれた自然科学は自然を管理するのに役立ったが、人間ももともと自然の一部である故、人間も自然科学によって管理されることとなったのである。
問1 a. 派生 b. 示唆 c. 埋没 d. 貫徹 e. 図柄
問2 A. 《civilization》を直訳すると「都市化」あるいは「市民化」となる。「都市」や「市民」は「人為」ということだろう。「そして」「人為」に対置されるのが「自然」である。
B. 「文化」では十分ではなかった。「なぜなら」~感じられたからである。
C. ……同じような経過を辿った。(同じような経過とは)「つまり」~になるのである。
D. 「人為」の世界にも「自然」を残さざるを得なかった。「たとえば」性欲、食欲……。
E. かつて人間の支配は神によってのみ可能であった。「しかし」今や……人間の原理で……。
問3「文明」のイデオロギーとは「人為によるより徹底した自然の管理」を目指すことであり、「自然」な人間は「野蛮で未開」である→選択肢エ。
問4「文明という概念の誕生」と「近代的な科学・秘術の形成」との間にある「より構造的な内的な関連」とは何か、という質問である。少し後で、筆者が「(こう)述べた理由の一つはここにある」と書かれているのが大きなヒントになる。「ここ」の内容を見ると、自然と人間が分断された結果、自然を対象とした「自然科学」と人為の世界を対象とした「文化科学」に学問が分裂した、とある。そして次の段落で「自然科学」を利用すれば「人間が自然を支配し、制御し、管理」しやすくなると書かれており、これが筆者の言う「より構造的な内的な関連」を指していると考えられる。
〔ワンポイント!――問題のレベルとしてはやや難しかった。しかし、上記のように手掛かりの場所を示してくれている部分があり、ここを見落とさないのが肝心である。ここはあそこと関連があるなと思った箇所は忘れずマークするようにしよう。〕
問5「文明」は「人為によるより徹底した自然の管理」を目指すものであり、自然への介入として不徹底に感じられる「農耕」は、「文明」の疑似的・初期的な段階である「文化」に過ぎないのである→選択肢オ。
問6「真の文明」のイデオロギーは「人為による徹底した自然の管理」であると読み取れる。これをもう少し具体的に説明したのが、数段落後の「人間は自然から自立する、自立した上で自然を管理し、支配し、征服し、収奪する」の部分である。
問7人間と自然が分断され、自然(第一の自然)を対象とする「自然科学」と人為を対象 とする「文化科学」に分かれたが、人間ももともと自然の一部(内に第二の自然を抱えている)であり「自然科学」の対象となる。自然を支配するための「自然科学」よって人間も支配されることになったわけである→選択肢ア。
問8オ. 本文の最後尾「こうして~」以降に書かれている内容と一致する。
他の選択肢は部分的に本文に書かれていないこと・本文と合致しない内容が含まれている。
【大問二】小説の読解
- 時間配分:22分
自分の名前が俳句にちなんでつけられたことをクラスメイトに気づかれたことをきっかけに、祖父から聞いた戦争の話と現実が結びつき、現実と俳句とが不思議に重なり合う。
問1 ア. ぎょうし イ. ちょうへい ウ. しにせ(ろうほ)
問2 文芸部に所属している高見は、主人公の名前に「五・七・五」という俳句の数字が含まれていることに気づき、感嘆しているのである。
問3 直後の主人公の内心の独白に書かれている。「隣になって一週間」さらに「初冬」である現在まで自分の名前を覚えていなかった高見に呆れ憤慨している。
問4 主人公の発言の中でここより前で十七音になっている「だからなに、用があるなら早くして」を指しているのであろう。
問5 戦時中に生まれていれば幼くて覚えていなかったとしても「体験」はしていることになるので、戦争が終わってから生まれたということだろう。
問6 「戦争になったら俳句なんて、悠長なことしてられないよね」という主人公に、戦時中も詩や俳句を書くことで人としての尊厳を守ろうとした心の強い人たちがいたことを教えている。自由な表現が禁止された状況で、それに抵抗して逮捕された人もいたことなどを話し、俳句も作れないような世の中であってはいけないということを、主人公に知って欲しいと思ったのである。
問7 「戦争が廊下の奥に立ってゐた」という俳句を知り、ウクライナ紛争という現実のニュースを突きつけられたことで、普段と同じ廊下のはず「なのに、(例)いつもより暗く見えた(十字)」ということが、主人公の心情描写になっている。
〔ワンポイント!――本問では短編小説をまるまる一本読むことになった。筆者の創作と現実の事件が織り交ぜられて語られる物語で、中学生には難しかったかもしれない。こういうときに普段から本を読んでいるかどうかで差が出るものである。小説のフィクションとしての記述法に慣れていれば、内容も理解しやすいのである。〕
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
弓の名手である為朝は御所の門を守る任務に配下の軍勢を連れずに一人で一方を守ると言い、その真意を述べた。
問1 a. にはか(なり)――急である
c. まれまれ――ごくまれに・たまたま
問2 ふきょう
問3 兄にも従わないし、弟もつれていくまい、「その故は」、「他人の失敗・自分の手柄・自分の失敗・他人の手柄を見分けることができないから」と、失敗も成功も自分の責任においてでありたいからという理由を述べている。
問4 【解釈】オ 【心情】ア
問5 「親に縁を切られた身で、たまたま上京を許された者が、大勢を引き連れてきたら都へは入れてもらえないだろう」と、身の程を考えたことが語られている。
問6 問5のような事情があるので、「自分に味方してくれる意思がある者は、後日上京せよ」と、為朝は他の皆を置いて都に上った。
〔ワンポイント!――古文の読解は必ず出されているので対策が必要である。とはいえ、大学入試レベルの品詞分解までは要求されていないようである。読んで意味が分かり、現代語と意味を取り違えやすい単語などに注意していれば及第点は得られそうである。ともあれ、古典文学を読み慣れておくのが得策である。〕
問7 ⑤ オ ⑥ ア
問8 オ
攻略のポイント
長文読解の対策として読むスピードをつけて、読解の技術を磨いておくこと。
記述問題に対しては同程度の字数で要約や心情の説明をまとめる練習を積み重ねる。
今年度も古文の配点は約2割と大きいので、苦手な人も諦めずに勉強に取り組むこと。古文の教材でやや高いレベルの古文演習をこなしておきたい。
全体としてはオーソドックスな内容で得点しやすい問題も多いので、難しい問題にとらわれすぎない冷静さも必要である。できる問題から確実にこなすこと。