出典は、『実用「哲学する」入門』（平居高志著）である。

問１は、漢字問題＜2分＞

標準的な漢字なので、完答を目指したい。「枯渇」「脅」「享受」「虐」「必衰」である。

問２は、接続語問題＜2分＞

aに該当する接続語が重要である。前後の関係よりaに入る接続語は「逆接」になる。

問３は、内容把握問題＜1分＞

「現在地球上に生きている『全ての人』であるだけではなく、将来に生きる『全ての人』をも含む…」のであり、そのような認識に基づき「誰かに殺される心配も、ご飯が食べられない心配もせず、家族が仲良く生きていける」ことが、「実現するべき『幸せ』」である。

問４は、内容把握問題＜2分＞

本文には「個人の価値に合理的な差を付けることが難しいから」とある。つまり、「この世には永遠の繁栄」はないのであり、「現在、どんな栄華を誇っている人も、やがては必ず没落」するのである。

問５は、内容把握問題＜1分＞

「全ての人が生きていられること」を「正しさ」のスタート、基準、始まりとしなければならないのである。

問6は、内容把握問題＜2分＞

挿入分として与えられてる文頭の「これら」が何を指すかを考える。「化石燃料をたくさん消費」することによるさまざな影響を指すのであり、その影響は「『全ての人が幸せになること』と矛盾」するのである。

問７は、内容把握選択問題＜2分＞

「『哲学』は様々な学問の総称」であったのであり、「現在、博士号を『Ph. D』」と表記する中にPh＝Philosophyが含まれている。

問8は、要旨把握問題＜5分＞

「無知の知」とは「自分は何も知らないことを自覚している」ということである。その前提に立って「ひたすら広く知識を集めるようにすること」が必須事項なのである。

出典は、『休館日の彼女たち』（八木詠美著）

問１は、漢字問題＜2分＞

標準的な漢字の書取り問題である。「悠々」「堪能」「呆気」「規律」「祝福」である。

問２は、内容把握問題＜3分＞

ハシバミの会話の言葉に注目する。「ヴィーナスと話すため」であったが、「言葉は…最後には果てしない差異を浮かび上がらせ」るのである。つまり「果てしない差異」とは「彼女(ヴィーナス)は自分からかけ離れた存在であることを思い知らされ」ることである。

問３は、心情把握問題＜3分＞

「ハシバミが昇給を提案」する理由がハシバミ自身が「私」に魅力的な男性ではない、ということを自覚しているのである。

問４は、内容把握問題＜3分＞

「現在の自分」は、他人との人間関係を構築できない状況つまり「他人と積極的に接触することを避けて生きている」のである。

問５は、内容把握問題＜3分＞

ハシバミは「何事も美しくあり続けるためにはたゆまぬ努力と犠牲が必要」と述べ「ハシバミはポケットからハサミを取り出すと、伸びかけていた枝をすばやく切り落として微笑んだ」のである。

問６は、内容把握問題＜3分＞

ヴィーナスの言葉の中に手がかりがある。ヴィーナスは「あなたは死ぬ。私があなたを求めて待つほど、あなたはさっさと死ぬ。…私を助けたいと思うなら、死ぬ前に私を台座から突き落として終わりにしてほしい」と願望しているのである。

問７は、内容把握問題＜7分＞

「熱風」は「ヴィーナスの鋭い指摘」、「レインコート」は「自分を必死に守ろうとする自分の殻」、「惑星」は「別名『金星』の名をもつヴィーナス」をそれぞれ例えたものである。

問8は、内容把握問題＜2分＞

「私はそれに気づかないふりをした」とあるが、「それ」とは何かを考える。ヴィーナスは自分を遠ざける言いながらもそれはヴィーナスの本心ではないと分かってはいるが、ヴィーナスの「死ぬ前に私を台座から突き落として終わりにしてほしい」という願いもかなえてあげられないことに対するヴィーナスの悲しみに「あえて触れないようにした」、つまり「気づかないふり」をしたのである。

出典は、鴨長明著『発心集』である。

問１は、現代語訳問題＜2分＞

「心にくし」とは「心ひかれる」という意味であるので、「感心なこと、殊勝なこと」だと思ったのである。

問２は、歴史的仮名遣い問題＜2分＞

「いふやう」は「いうよう」である。

問３は、現代語訳選択問題＜4分＞

（１）「空」は「うそ」という意味であるので、「いつわりの夢」である。

（２）夢の内容は「此の庭に、色々なる鬼の怪しげなる、あまた出で来て、…鬼のいはく、…と答ふる」である。

問４は、古語文法問題＜2分＞

古典文法の重要事項である係り結びの法則を思い出すこと。

問５は、内容把握問題＜3分＞

高齢になってもまだ別当職を求めているという証空の貪欲さを戒め、別当職を諦めさせようとしているのである。

問６は、内容把握選択問題＜2分＞

弟子たちの証空を戒める『夢の話』に対して、証空は「此の所望(別当職になりたいという証空の願望)の叶ふべきにこそ」と述べ、「別当職」になれることを予言した「夢」であると証空は解釈したのである。

問７は、文学史問題＜2分＞

鎌倉時代の作品でないものは平安時代に紫式部によって書かれた『源氏物語』である。

※以下の類題に挑戦してみよう。

①　次の文を読んで後の問いに答えなさい。

情報技術の急速な発展は、私たちに「速さ」と「効率」という神話をもたらした。瞬時に必要なデータにアクセスし、複雑なタスクを自動化できる現代において、立ち止まって考えること、つまり①内省の時間は、しばしば無駄なものとして切り捨てられがちである。

人間は、目の前に絶えず流れ込む新しい情報や刺激を処理することに追われ、自らの確固たる信念や価値観を吟味する暇を持てないでいる。これは、あたかも洪水に流されるボートのように、目的地を持たぬまま流されている状態と言えるだろう。【　ア　】私たちは、スマートフォンを開くたびに、他人の意見や華やかな生活を目にし、無意識のうちに自分の価値基準を外部の基準に合わせようとする。

しかし、本当に価値ある創造や、主体的な意思決定は、この②立ち止まる時間、つまり内省の過程なくしては成立しない。内省とは、単なる「ぼんやりと考える」ことではない。それは、過去の経験、現在の感情、そして未来への願望を照らし合わせ、その中で自己の行動原理を再構築する、能動的な精神活動である。

例えば、ある技術がどれほど効率的で便利であっても、それが本当に「良い」ものなのかどうかは、効率性という単一の尺度では測れない。私たちは、「速さ」や「便利さ」を追求する目的が、真に豊かな人生を送るためであったことを忘れてはならない。効率化そのものが目的となってしまうと、人生はただのタスク処理の連続となり、最終的には③生きる喜びが損なわれてしまうという皮肉な結果を招くことになるのだ。

内省を欠いた社会は、進歩しているように見えても、実は外部の力に依存し、常に表面的な刺激に振り回される、脆い砂上の楼閣となる危険性をはらんでいる。故に、現代において最も必要な能力は、技術的な知識ではなく、むしろ自分自身の内側に深く潜り込み、真実を見定める精神的な強靭さではないだろうか。

問1．下線部①内省と意味が近い語句を次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

ア. 外観 　　イ. 反駁 　　ウ. 自律 　　エ. 省察

問2．空欄【ア】に入るものとして最も適切な接続詞を次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

ア. それにもかかわらず 　　イ. なぜなら 　　ウ. ただし 　　エ. ところが

問3．下線部②立ち止まる時間とは、具体的にどのような時間だと筆者は述べているか。本文中から二つの要素を抜き出し、それぞれ10字以内で記述しなさい。

問4．下線部③生きる喜びが損なわれてしまうという皮肉な結果とは、どのような状況を指しているか。「効率化」という言葉を必ず用いて、45字以上55字以内で説明しなさい。（句読点含む）

問５．筆者が本文を通じて最も訴えたいことは何か。本文全体の論旨を踏まえ、60字以上80字以内で説明しなさい。（句読点含む）

《解答》

問1．エ. 省察

解説：「内省（自分の精神活動を深く見つめ直すこと）」と「省察（過去の行為や考えを反省して深く考えること）」はほぼ同じ意味である。

問2．イ. なぜなら

解説：空欄【ア】の前の文（目的地を持たぬまま流されている状態）が、後の文（他人の意見や生活に価値基準を合わせようとする）の原因・理由を説明しているため、「なぜなら」が適切。

問3．

1.過去の経験
2.現在の感情
解説：傍線部直後の「過去の経験、現在の感情、そして未来への願望を照らし合わせ」の中から、二つの要素を抜き出す。

問4．

 解答例： 効率化を追求する本来の目的が豊かな人生であるにもかかわらず、その効率化そのものが目的化し、タスク処理に終始することで人生の充足を失う状況。（55字）

解説：単に「便利さを求めたのに不幸になる」ではなく、「本来の目的と、手段の目的化」という論理的な皮肉の構造を説明できているかがポイント。

問5.

解答例： 現代社会において、情報や効率性の追求に流されることなく、過去・現在・未来を照らし合わせる能動的な内省を通じて、真に主体的な価値基準と強靭な精神性を確立することの重要性。

解説：筆者の主張である「内省の重要性」を核とし、その理由（情報に流されないため）と目的（主体的な価値基準の確立）を盛り込む。

②　次の文を読んで後の問いに答えなさい。

「部長、この次の文化祭の企画、これでいきます」

俺の目の前で、後輩の山岸がまっすぐに、不安と期待の入り混じった顔を上げて言った。企画書には、美術部としては挑戦的な、校舎全体を使った巨大なインスタレーション案が書かれていた。去年の俺なら、即座に「無理だ」と却下していただろう。

去年の俺。夏休みを丸々使って準備した、あの油絵の失敗。結果的に評価はゼロに等しく、俺は秋の展覧会以降、①筆を持つこと自体に臆病になっていた。完璧を目指したはずの努力が、一瞬で砂のように崩れた、あの瞬間の記憶が、いつも俺の肩に重くのしかかっている。

だから、安全で、評価が確約された小さな作品を作ることだけを望んでいた。傷つくのが怖かったのだ。

「……大掛かりだな。準備期間も短い。予算もギリギリだ」

俺の言葉は、まるでどこか他人事のように響いた。言い訳を探している自分自身が透けて見えるようで、ひどく②情けない気持ちになった。山岸の瞳に映る俺は、頼りない、④逃げ腰の部長でしかないだろう。

「わかっています。でも、このままじゃ、去年と同じです。去年、先輩が、あの…③『完璧でなくていいから、もっと自由な表現をしろ』って言ったじゃないですか。だから、やります。絶対、成功させます」

山岸の言葉は、俺が心の奥底に封印していた、去年、指導を仰いだ先生の言葉を、正確に引っ張り出してきた。そして、その一言は、俺の胸の奥で長い間凍っていた何かを、急激に溶かし始めた。

俺はゆっくりと立ち上がり、窓の外を見た。午後の強い陽射しが、グラウンドに長い影を落としている。風が、不安を打ち消すように勢いよく吹き込んできた。

「わかった。やってみよう。失敗しても、今年の責任は全て俺が取る。その代わり、山岸、お前は後悔のないように、全力で楽しんでやれ」

そう言った瞬間、肩に乗っていたはずの重石が、跡形もなく消えた。それは、過去の失敗を許容し、再び挑戦することを選んだ、⑤俺自身の決意の軽さだった。山岸は一瞬、目を丸くしたが、すぐに大きく頷いた。

問1．下線部①「筆を持つこと自体に臆病になっていた」とあるが、主人公がこのように感じるに至った直接的な原因を、本文中から30字以上45字以内で説明しなさい。（句読点含む）

問2．下線部②「情けない」気持ちになったのはなぜか。「言い訳」という言葉を必ず用いて、40字以上50字以内で説明しなさい。（句読点含む）

問3．主人公が後輩に言った下線部③「完璧でなくていいから、もっと自由な表現をしろ」という言葉の真意を、この時点の主人公の心情の変化（「去年」から「今年」へ）を踏まえて、50字以上65字以内で説明しなさい。（句読点含む）

問4．下線部④「逃げ腰の部長」とは具体的にどのような態度か。本文の内容を踏まえ、30字以内で述べなさい。（句読点含む）

問5．下線部⑤「俺自身の決意の軽さ」とあるが、この時の「軽さ」はどのような心理状態を表しているか。最も適切なものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

ア. 責任を放棄し、物事を深く考えなくなった安易な気持ち。

イ. 過去の失敗から完全に立ち直り、余裕を持って状況を俯瞰できるようになった自信。

ウ. 失敗を恐れて消極的になっていた状態から、再挑戦を選んだことによる、過去からの解放感。

エ. 準備期間が短いことや予算の厳しさを、深く気にしなくなった諦めの気持ち。

《解答・解説》

問1．

解答例： 完璧を目指して努力した油絵の制作が、結果として評価を全く得られず、その努力が一瞬で無駄になった過去の記憶が重荷になっていたから。

解説：原因は「油絵の失敗」だけでなく、「完璧を目指した努力」と「評価がゼロ」という二つの要素が結びついた「記憶」まで含める必要がある。

問2．

解答例： 後輩の意欲的な提案に対し、困難を理由に言い訳を探し、安全策を選ぼうとしている自身の頼りない態度が、後輩に透けて見えていると感じたから。

解説：「言い訳」と「自身の頼りない態度」を核として、後輩の目からそう見えているという状況を説明する。

問3．

解答例： 去年、完璧な作品の失敗にこだわり過ぎたがために筆を持つことに臆病になっていた主人公が、今、再び自由な表現のために失敗を恐れずに挑戦することを選んだという、過去への決別と成長の真意。

解説：この言葉は過去の失敗と現在の再挑戦を結びつけるキーフレーズであり、「完璧主義からの脱却」と「自由な表現への回帰」という二重の意味を説明する。

問4．

解答例： 傷つくことを恐れて、安全で小さな作品作りを望む消極的な態度。

解説：具体的に、主人公が望んでいた「安全で評価が確約された小さな作品」という態度を指す。

問5．ウ. 失敗を恐れて消極的になっていた状態から、再挑戦を選んだことによる、過去からの解放感。

解説：「重石が跡形もなく消えた」という表現から、それまで抱えていた重圧からの解放と、再挑戦という前向きな決意が結びついている。