日本に本格的なフランス菓子を伝えた筆者が、本場の洋菓子と日本のケーキの違いについて説明している。本文では、日本人はフランス菓子を美化しているが、実際は民族や生活の香りがするもので、しかも、伝統の枠から出て革新を続けてきたと指摘している。専門用語はあるが、｢*注｣を活用すれば内容は理解できるはずだ。｢説明記述｣を含めて本校らしい多彩な小問が並んでいる。以下、いくつか検証してみる｡

[問一]　｢漢字判別の選択肢｣(全５問/各５択)。傍線部(ｂ)･(ｅ)･(ｆ)･(ｇ)･(ｈ)の｢カタカナの部分と同じ漢字が使われているもの｣をそれぞれ答える。一昨年度までの｢書きとり｣ではなく、昨年度から｢同音(訓)漢字｣の判別になっている。｢文脈｣を的確に捉えて判別する必要がある。｢答え｣を確認していく。傍線部(ｂ)｢デザインもセン練されている｣⇒無論、｢洗練｣は知っているはず⇒｢答え｣は選択肢(イ)｢洗剤｣。(ｅ)｢冷ゾウ庫｣⇒｢冷蔵庫｣に決まっている⇒｢答え｣は(ウ)｢蔵元｣。(ｆ)｢しっとりとしたシツ感｣⇒｢文脈｣から｢材質が持つ、視覚的･触覚的な感じ｣という意味の｢質感｣だと特定したい⇒｢答え｣は(ア)｢人質｣。(ｇ)｢フン糖をふりかけた｣⇒これは分かりづらい。｢ふりかけた｣から｢粉砂糖｣＝｢粉糖｣と結びつけられるか？⇒｢答え｣は(エ)｢粉雪｣。(ｈ)｢さくらんぼでツクったお酒｣⇒｢同訓異字｣に要注意。｢作った｣ではない。｢酒造｣というではないか⇒｢答え｣は(オ)｢造花｣。来年度以降に向けても、｢書きとり｣だけではなく｢同音異字｣｢同訓異字｣などにも習熟しておくことが肝要。
＜時間配分目安：全問で１分強＞

[問二]　｢漢字の読み｣(全５問)。傍線部(ａ)･(ｃ)･(ｄ)･(ｉ)･(ｊ)の｢漢字の読み｣を｢ひらがな｣でそれぞれ答える。難しかった昨年度と比べ本年度は平易だ。｢全問正解必須｣のレベル。｢答え｣だけを記す。傍線部(ａ)｢崇高｣＝｢すうこう｣。(ｃ)｢圧倒的｣＝｢あっとうてき｣。(ｄ)｢発酵｣＝｢はっこう｣。(ｉ)｢土俵｣＝｢どひょう｣。(ｊ)｢継承｣＝｢けいしょう｣。本年度は平易だったが、｢漢字の読み｣では、｢音読み｣｢訓読み｣は勿論、｢熟字訓｣｢慣用読み｣などの難読漢字にも対応できるようにしておくこと。
＜時間配分目安：全問で１分以内＞

[問四]　｢語句の用法判別選択肢｣(５択)。｢総合的知識問題｣｡｢慣用句｣だ。傍線部①の｢地に足がついた｣という｢慣用句を正しく用いている文｣を答える。｢落ち着いた考えや行動をし、堅実であること｣という意味は知らなくてはいけない。よって、｢答え｣は選択肢(エ)の｢その日暮らしに慣れきってしまったため、いまさら地に足がついた生き方ができるはずはない｡｣になる。ちなみに、｢地に足がつかない｣という否定形での用法が多いので注意せよ。本校では、｢ことわざ｣｢故事成語｣｢四字熟語｣なども頻出なので、しっかりと定着させておくこと。
＜時間配分目安：１分弱＞

[問五]　｢理由説明の抜き出し｣(｢一文｣の｢最初と最後の５字｣指定)｡傍線部③｢多くの人は８～10%くらい砂糖を減らすとちょうど良いと感じることがわかりました｣について、｢なぜ西洋と日本の味覚にはこのような違いが生じるのか｣を述べた｢一文｣を探し、｢最初と最後の五文字｣を抜き出して答える(句読点不要)。｢抜き出し問題｣では、｢抜き出すべき内容｣を捉えた上で｢抜き出し範囲｣を特定し探していく。先ずは｢内容｣だが、設問のとおりだとすぐに分かる。次に｢範囲｣、本文は｢論説文｣なので｢同一意味段落｣だ(｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)。ここでは本文冒頭から傍線部の段落までの４段落だと判断できるはず。丁寧に探していくと、２段落目の最後に｢味覚は食習慣や気候など、土地に根差しているものなんですね｡｣という｢一文｣がある。｢味覚は土地に根差している｣→だから→｢西洋と日本の味覚には違いが生じる｣。｢理由｣として成立する。｢範囲｣全体を改めて確認しても、他に相応しい｢一文｣はない。よって、｢答え｣は｢味覚は食習～なんですね｣となる。ここで注意したいのは、設問に｢句読点不要｣とあるので｢｡｣を抜き出さないことだ。ただし、こうした｢条件｣がない限り、通常は｢一文｣の抜き出しでは必ず｢｡｣も抜き出す(｢一文｣だと示すため)と心得よ。尚、｢抜き出し問題｣では｢候補｣はひとつとは限らない｡｢範囲｣を網羅的に確認し、全ての｢候補｣をチェックしてみることが肝要だ。
＜時間配分目安：１分半＞

[問九]　｢理由説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢60字ほど｣の解答欄)。傍線部⑦｢フランスは『伝統の国』と言われていますが、むしろ、それは逆だと思います｣と｢筆者が思うのはなぜか。その理由｣を説明する。傍線部は段落冒頭で、同段落最後には｢そうやって、常に革新し続けてきたのがフランスという国なのです｣とある｡つまり、この段落全体で｢『伝統の国』とは逆だ｣(＝｢常に革新し続けてきた｣)という｢理由｣が説明されていることになる。読み解いていきたい。｢(フランス人は)『伝統的なセオリーがある』と教えながら｣｢枠から出るのは自由で｣｢新しい味｣を追求しているなどと述べられている。こうした内容を｢過不足なく｣まとめていけばいい。たとえば、｢フランスは、伝統的なセオリーの枠から出るのは自由だと考えており、新しい味を追求しながら常に革新し続けてきた国だから｡｣(58字)といった｢答え｣になる｡｢論説文｣や｢説明文では、｢同一意味段落｣から｢根拠｣を的確に把握することが肝要だと心得よ。
＜時間配分目安：２分半＞

｢碁打ち｣にして｢暦法家｣でもある｢渋川春海｣の20年に亘(わた)る奮闘･挫折･喜び、そして、恋を描いた壮大な歴史小説。本文では､｢春海｣が｢老中･酒井忠清｣に、対局を通して碁を指導している様子が描かれている。江戸時代の歴史的背景や囲碁の対局についての知識がないとなかなか理解が難しい内容だが、｢*注｣を使って食らいついていきたい(ただし、｢*注｣は18もあり、1300字以上にも及ぶ)。ユニークな観点での｢本文内容合致｣、ひねりのある｢指示語関連｣といった趣向を凝らした｢選択肢設問｣に特徴のある大問だ。以下、いくつか検討したい。

[問一]　｢指示語換言説明選択肢｣(４択)。傍線部①の｢その疑問｣とは｢何についての疑問か｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ただ、ここは典型的な｢指示語換言｣なので、前提として｢指示語｣を開いておく必要がある。直前から、｢その疑問｣＝｢いったいなぜ自分(春海)などの言動を酒井が知りたがるのかという疑問｣だと分かる。ここで、各選択肢の｢文末｣を確認する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)。(ア)｢愛好しているかどうか｣、(イ)｢関心を持つ理由｣、(ウ)｢得意としているのかどうか｣､(エ)｢得意としている程度｣｡｢なぜか｣という｢疑問｣なのだから、｢理由｣となっている(イ)以外は｢消去｣できるはずだ。｢同一場面｣をチェックして、他の部分の説明も特に誤ってはいない(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。したがって、(イ)が｢答え｣だと断定できる。なんと｢一発消去｣だ。畏るべし！｢原意消去｣。｢選択肢設問｣では確実に活用できるようにしておきたい。尚、本問のように直接的に問われていなくても、｢指示語｣が出たら即開くことが肝要だ。
＜時間配分目安：１分強＞

[問二]　｢内容説明選択肢｣(４択)。傍線部②｢まるで判断がつかぬ｣について、｢それは何の判断か｣を答える。流石(さすが)に本問はこの段階での｢消去｣は不可能だ。そこで、｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所)以外が重要｣という｢重要解法｣)に｢手がかり｣を求める。すると、直前に｢(酒井は春海を)好ましいと思ったかどうか｣とある。各選択肢の｢文末｣と照合する。(ア)｢相応しい趣味なのかどうか｣、(イ)｢武士として相応しいかどうか｣、(ウ)｢良いことと思われているかどうか｣､(エ)｢評価に値するかどうか｣｡もう分かったはずだ。｢思ったかどうか｣という｢判断｣なのだから、｢思われているかどうか｣とある(ウ)以外は｢消去｣可能だと分からなくてはいけない。｢同一場面｣から、他の部分の説明も特に誤ってはいないと判断できる。よって、(ウ)が｢答え｣になる。またしても、｢一発消去｣。｢原意消去｣の応用なくして合格なし、と心得よ。
＜時間配分目安：１分弱＞

[問四]　｢意図判別および条件付き理由説明記述｣(｢数字｣記述/｢100字以内｣指定)。傍線部④｢まさにそうなのだ｣について、｢『そうなのだ』とは、春海が酒井のある意図を特定･断定したことを表す言葉｣だが、｢その場合、酒井の意図は満たされたか、満たされなかったか。『満たされた』と考える場合には『１』、『満たされなかった』と考える場合には『２』｣と答える。また、｢その内容とそう考えた理由｣を｢百字以内｣で説明する。｢条件｣は｢～ということから、…という意図が満たされた(満たされなかった)ことが読み取れる｡｣という形で説明すること。｢酒井のある意図｣は｢指示語｣なので開く。直前から、｢春海の本性とでも言うべきものに迫ろうとする意図｣だと分かる。では、｢酒井｣はどのような｢春海の本性｣に｢迫ろう｣としているのか？ 直前で、｢酒井｣は｢お主、お勤めで打つ御城碁は、好みか？｣と問い、続けて｢その言葉が春海の内部へ迫った｣とある｡つまり、｢酒井｣は｢御城碁｣に対する｢春海の本性｣に｢迫ろう｣としているわけだ。では、｢酒井の意図｣＝｢御城碁に対する春海の本性に迫ること｣は｢満たされた｣のか｢満たされなかった｣のか？ 結果なので、｢同一場面｣の直後から読み解いていく。｢酒井｣の問いに対して、｢嫌いではありません｣と｢春海｣は答え、さらに、その後に｢『しかし、退屈です』 秘めていたはずの想いが、よりにもよって老中の(＝酒井)の前で口をついて出た｣とある。｢秘めていたはずの想い｣はまさに｢本性｣であり、結果として｢酒井の意図｣は｢満たされた｣ことになると読み取れるはずだ。したがって、｢意図判別｣の｢答え｣は｢１｣だ。そして、｢理由説明記述｣は｢条件｣の形にあてはめるように、｢同一場面｣の直前直後をまとめていくことになる。たとえば、｢酒井が、お勤めで打つ御城碁は好みかと問い、定石を外れた攻めに出た結果、春海が嫌いではないが退屈だという本音を口に出したということから、酒井の、春海の本性に迫ろうという意図が満たされたことが読み取れる｡｣ (100字)といった｢答え｣になる｡尚、本問は問題文そのものがとても複雑で分かりづらい。｢設問内容｣を的確に把握することが最優先なので、注意したい。
＜時間配分目安：４分半＞

[問七]　｢心情説明選択肢｣(４択)。｢総合的知識問題｣の要素あり。傍線部⑦｢毒を食らわば皿までといった心境｣について、｢ここではどういう心境か｣を答える。無論、｢原意消去｣からだ。ここでは｢毒を食らわば皿まで｣という表現が要(かなめ)となる。｢いったん悪に手を染めたからには、最後まで悪に徹しよう｣ということをたとえた｢ことわざ｣だと知っているかどうかが勝負の分かれ目となる。各選択肢の｢文末｣と照合する。(ア)｢ある意味解放されたような気持ち｣、(イ)｢反撃をしておきたいという気持ち｣、(ウ)｢共犯者に引き込んでしまおうという気持ち｣､(エ)｢覚悟を決めようという気持ち｣｡｢居直り･開き直り｣の｢心境｣なのだから、(ア)と(エ)以外は｢消去｣できて当然だ。これで｢２択｣だ。次に、どのような｢状況｣でこうした｢心境｣に至ったのかを｢同一場面｣から読み解いていく。直前で、｢酒井｣が｢退屈ではない勝負が望みか｣と訊(き)いたことに対して、｢春海｣が｢『はい』と淀(よど)みなく答え｣ている｢状況｣だと分かる。であれば、｢『飽きた』という表現｣と説明している(エ)は｢消去｣で、｢『退屈』と表現してしまった｣となっている(ア)が残るはずだ。念のために他の部分の説明を｢同一場面｣で確認する。特に誤ってはいない。したがって、｢答え｣は(ア)でいい。勿論、本問の｢ことわざ｣が未定着であっても、｢文脈｣から正解にたどり着くことはできる。だが、手間暇がかかり過ぎる。やはり、｢高度な語彙力｣が磨いておくことが大きなアドバンテージになると心得よ。
＜時間配分目安：２分＞