東工大附属科学技術高等学校 入試対策
2021年度「東工大附属科学技術高等学校の国語」
攻略のための学習方法
記述
「東工大附属の記述対策」は「問題解説」及び上記のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。
最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か？ 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。100字程度で書いてみる(東工大附属の「要旨記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか？ 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。
その際、20～30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく(その際はマス目のない用紙を使いたい)。
解法
「選択肢」「脱文挿入」「記述」、その他の問題も含め、「東工大附属の国語」で勝利を手中に収めるための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。
「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか？ その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
大学入試にも匹敵する問題文を読まなくてはならない。
全体で5000字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。
しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Ｎの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。
その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。東工大附属に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「敬語」等の「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「東工大附属の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。いかなる「攻略法」があるのか？
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ、かも知れない。が、そこで諦めてしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。
先ずは、「己が実力」を悟ることだ(「己が」＝「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも５年分以上)、「５割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。
「５割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。
日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。
また、残念ながら「中学入試レベル」からの再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(ＨＰから購入可能)等がオススメ。
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2021年度「東工大附属科学技術高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問?は｢論説文｣、出典は志水彰･角辻豊･中村真｢人はなぜ笑うのか――笑いの精神生理学｣所収の｢快と笑いの心理学｣(文字数約2400字)。小問は全９問(解答数15)｡｢選択肢｣(｢語句換言｣｢本文内容合致｣｢総合的知識問題｣等、｢空所補充｣あり)､｢説明記述｣(｢100字以内指定｣１問)、｢漢字の読み記述｣｡問題文は３分ほどで読み切り、設問を20数分で解きたい。
大問?は｢小説｣、出典は朝井リョウ｢世界地図の下書き｣所収の｢暮秋｣(文字数約5500字)。小問は全11問(解答数18)｡｢選択肢｣(｢漢字判別｣｢総合的知識問題｣、｢空所補充｣)､｢抜き出し｣(｢空所補充｣２問)､｢説明記述｣(｢字数指定なし｣１問)｡問題文は７分程度で読み切り、設問を20分弱で解きたい。
【大問一】
- 時間配分：
愛想笑い、苦笑い、せせら笑い、満足した笑い――人はどんなときに、どんな理由で、どんな笑い方をするのか？ 笑いのルーツからメカニズムまでを｢医学｣｢生理学｣｢心理学｣を合わせ総合的に論考している。本文では、さまざまな研究から｢笑うとおかしく感じる｣ことが分かっているが、｢快･不快の感情｣は顔の筋肉活動からのフィードバックや血液温度の変化が関係していると指摘している。専門用語が多々あるが、｢*注｣を活用して内容を理解したい。｢長文説明記述｣を含めて本校らしい実に多彩な小問が並んでいる。中には｢設問内容｣そのものが把握しづらいものもあるが、決して難解ではないので冷静に対処したい。以下、いくつか検証してみる｡
[問二] ｢語句の意味用法の換言選択肢｣(全２問/各４択)。
｢総合的知識問題｣｡波線部(ⅰ)｢まんざら｣･(ⅱ)｢ちなみに｣の｢語の言い換え｣として｢本文に合うもの｣をそれぞれ答える。｢語の言い換え｣？ などと悩むことはない。要は｢原意｣に忠実に判別すればよいわけだ(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)。順に｢答え｣を確認する。｢まんざら｣⇒｢副詞｣で、否定的な表現の後にさらに打消しの語を伴って｢否定的な意味合いをやわらげたり、むしろ逆に肯定したりする気持ち｣を表すことは知っているはず⇒よって、(ⅰ)＝選択肢(エ)｢必ずしも｣。｢ちなみに｣⇒｢接続詞｣で、｢前に述べた事柄に、あとから簡単な補足などを付け加えるときに用いる｣ことは周知⇒ (ⅱ)＝(イ)｢補足すると｣になる。本校では、あらゆる｢語彙力｣が問われていると心得よ。
＜時間配分目安：全問で１分半＞
[問三] ｢条件付き内容説明記述｣(｢100字以内｣指定)。
傍線部①｢まだ検討の余地が残されていた｣について、｢どのような検討の余地だと考えられるか｣を｢百字以内｣で説明する。｢条件｣は｢本文、特に『ジェームズ＝ランゲ説』を参考に、『キャノンらの検討』の不十分な点について考慮して説明する｣こと。何について｢まだ検討の余地が残されていた｣のか？ 傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所)以外が重要｣という｢重要解法｣)で確認する。直前に｢ジェームズ＝ランゲ説が完全に否定されるかどうかについては｣とある｡｢条件｣を踏まえて判断すると、要するに｢『ジェームズ＝ランゲ説』の論点の中で、それらを否定する『キャノンらの検討』がなされていない部分｣を説明すればいいと考えられるはずだ。先ずは、｢ジェームズ＝ランゲ説｣の｢論点｣を｢同一意味段落｣で確認したい(｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)。傍線部の２段落前で説明されている。❶｢刺激についての情報が大脳皮質に達する｣→❷｢骨格筋と内臓の活動に変化が生じる｣→❸｢変化の情報が大脳皮質へとフィードバックされる｣→❹｢感情的経験が生じる｣というものだ。一方、｢キャノンらの検討｣はその次段落にある。❶は同様で、❷❸について｢内臓活動のフィードバックではなく、脳の中のある部分の情報｣→❹｢感情的経験が生じる｣と証明したことが分かる。では、何が検討されていないのか？ すぐに気づかなくてはいけない。｢ジェームズ＝ランゲ説｣の❷では｢骨格筋｣と｢内臓｣とのふたつの論点が示されているが、｢キャノンらの検討｣では｢内臓活動｣についてだけしか示されていないのだ。したがって、その視点の｢検討｣がなされなければ、｢ジェームズ＝ランゲ説が完全に否定される｣とは断定できないわけだ。こうした内容を｢条件｣を考慮して的確にまとめていきたい。たとえば、｢キャノンらの検討は、ジェームズ＝ランゲ説のうち､内臓活動からの情報の脳へのフィードバックを否定しただけだったので、完全に否定するためには骨格筋から脳へのフィードバックも検討する必要があったという余地｡｣(100字)といった｢答え｣になる｡｢論説文｣や｢説明文では、｢同一意味段落｣から｢根拠｣を的確に把握することが肝要だと心得よ。
＜時間配分目安：３分半＞
[問六] ｢内容説明選択肢｣(４択)。
傍線部④｢ラジエータ｣とは｢ここではどのような仕組みや働きを持つものと考えられているか｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(原意絶対優位の原則)｡ここでは｢ラジエータ｣の｢原意｣と結びつかない説明を｢消去｣することになる。各選択肢の｢文末｣と照合する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)。(ア)｢熱を冷ます｣、(イ)｢温度を一定に保つ｣、(ウ)｢温度を調節する｣､(エ)｢気体や液体を個体に変化させる｣｡どうだろうか？ 本校志望者であれば｢ラジエータ｣＝｢液体や気体の熱を放熱する装置｣だということを知っているはずだ。よって、｢答え｣は(ア)だ。万が一、｢ラジエータ｣を知らなくても、｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣から直前に｢脳に供給する血液の温度上昇をおさえる｣と説明されていることが分かるので判別可能なのだが、｢原意｣が定着してさえいれば瞬時に｢正解｣できるわけだ。やはり、｢語彙力｣(本校では｢理系分野｣も含め)の向上は不可欠だと心得よ。
＜時間配分目安：30秒＞
[問七] ｢空所補充の文選択肢｣(全２問/４択)。
本文中の空所 Ⅰ ･ Ⅱ に｢当てはまる言葉｣を答える。｢設問｣を見てすぐに気づかなくてはいけないことは、各選択肢の｢文末｣が｢表情｣か｢感情｣かの二通りだということだ。要は｢２択｣。どちらだ？ ひとつの空所前後が｢さらに、 Ⅰ は、それにともなう表情筋のはたらきによって……、血液を冷却するはたらきがある｣となっている。｢表情筋｣なので、｢感情｣となっている(イ)と(ウ)は｢消去｣できると判断できなくてはいけない。また、｢さらに｣とあるのでその前をチェックすると、｢温度が低いと快い感情をひきおこし｣となっている。であれば、 Ⅰ ＝｢ニッコリほほえんだり笑ったりする表情｣となっている(エ)が｢答え｣だと判別できるはずだ。結果として、 Ⅱ の｢答え｣は(ア)｢怒ったり悲しんだりといった表情｣になる。｢選択肢設問｣では、｢見る｣だけで各選択肢をいくつかにくくれるということを意識していたい。
＜時間配分目安：全問で１分強＞
【大問二】
- 時間配分：
両親を交通事故で亡くした小学６年生の｢太輔(たいすけ)｣は、児童養護施設｢青葉おひさまの家｣で暮らし始める。心を閉ざしていた｢太輔｣だが、仲間たちとの日々で、次第に心を開いてゆく――子どもたちが立ち向かうそれぞれの現実と、その先にある一握りの希望を新たな形で描き出した長編小説。本文では、｢太輔｣が、自分を引き取りたいと面会を申し込んできた｢伯母(おば)｣のところを訪れたときのさまざまな人たちとのやりとりが描かれている。内容は難なく理解できる。問題文自体が複雑な｢設問｣や、ひねりの効いた｢総合的知識問題｣等、本校の真骨頂発揮といった大問。以下、いくつか検討したい。
[問一] ｢漢字判別の選択肢｣(全５問/各５択)。
傍線部ⓐ～ⓔの｢カタカナの部分と同じ漢字が使われているもの｣をそれぞれ答える。３年前までは｢書きとり｣だったが、一昨年度から｢同音(訓)漢字｣の判別になっている。｢文脈｣を的確に捉えて判別する必要がある。｢答え｣を確認していく。傍線部ⓐ｢布団の中にいる太輔を、いろんなものが幾エにも覆(おお)っていく｣⇒なかなか難解だ。｢文脈｣から｢いくつかの重なり｣を表す｢幾重｣だと特定したい⇒｢答え｣は選択肢(エ)｢慎重｣。ⓑ｢佐緒里のテイ案にみこちゃんが両手を合わせる｣⇒ここは即座に｢提案｣だと分かるはず⇒｢答え｣は(オ)｢前提｣。ⓒ｢イ動する途中｣⇒これまた平易、｢移動｣で決定⇒｢答え｣は(ウ)｢推移｣。ⓓ｢自分の体にソってできたどうくつ(寝ていた布団の中)｣⇒これはやや分かりづらい。｢比喩表現｣を読み解き｢沿って｣だと判断したい⇒｢答え｣は(ア)｢沿岸｣。ⓔ｢寝転んで足を上げたり、うつ伏せになって左右に揺れてみたり、いろんな体セイをしてみた｣⇒｢同音異字｣に要注意。｢体制｣ではなく｢体勢｣だ⇒｢答え｣は(ウ)｢気勢｣。来年度以降に向けても、｢書きとり｣だけではなく｢同音異字｣｢同訓異字｣などにも習熟しておくことが肝要。
＜時間配分目安：全問で１分強＞
[問二] ｢空所補充の語句選択肢｣(全３問/７択)。
本文中の空所 Ａ ～ Ｃ に｢入れるのにふさわしい語｣を答える。選択肢は｢接続詞｣と｢副詞｣､本校に限らず定番の問題だ。｢接続詞｣では｢逆接｣以外には十分に注意しなくてはいけない。｢逆接｣以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢文脈｣を確認する必要がある。また、段落冒頭の｢接続詞｣は前段落全ての内容を受けているので注意すること。各空所の｢答え｣を確認してく。 Ａ には｢逆接｣の｢接続詞｣である(キ)｢だけど｣、 Ｂ には｢あまり時間や日数がたたないうちに、ある事が起こるさま｣を表す｢副詞｣である(イ)｢やがて｣、そして、最後の Ｃ には｢順接｣の｢接続詞｣である(オ)｢だから｣がそれぞれあてはまる｡｢接続詞｣｢副詞｣などの｢空所補充｣は頻出だ｡失点は致命傷になると心得よ。
＜時間配分目安：１分半＞
[問四] ｢様子表現用語の判別選択肢｣(５択)。
波線部(ⅱ)の｢でろんと｣のような｢様子を表す言葉を何というか｣を答える。各選択肢は、(ア)｢擬音語｣･(イ)｢擬人語｣･(ウ)｢擬声語｣･(エ)｢擬態語｣･(オ)｢擬物語｣。誰もが定着していなければならない｢語彙｣だ。｢擬音語｣と｢擬態語｣とで悩んだりしてはいけない。そもそも、｢擬音語｣と｢擬声語｣とは同じ内容なので、選択のしようがない。無論、｢答え｣は(エ)の｢擬態語｣。｢物事の状態･身ぶりを、それらしく表した語｣のことだ。尚、｢擬声(音)語｣は｢動物の音声や物体の音響を言語音によって表した語｣。ちなみに、｢擬人法｣はあるが｢擬人語｣などという言葉はない。また、｢擬物語｣は正しくは｢擬古物語｣で、｢鎌倉時代に、作り物語の最盛期であった平安時代中期の物語を模倣して作られた物語｣のこと。
＜時間配分目安：30秒＞
[問六] ｢理由説明選択肢｣(４択)。
傍線部②｢二足しかありませんように。二足しかありませんように。二足しかありませんように。外出していますように。外出していますように。外出していますように｣について、｢この箇所において同じ表現がそれぞれ三回ずつ繰り返されているのはなぜか｣を答える。先ずは｢原意消去｣から。｢三回｣も｢繰り返されている｣のだから｢強調したいから｣に決まっている。各選択肢の｢文末｣を確認すると、全て｢太輔の強い気持ちが表れている｣となっている。ということは、流石(さすが)にこの段階での｢消去｣は不可能だ。そこで、どのような｢太輔の強い気持ち｣なのかを、｢同一場面｣から読み取っていきたい(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。直前に｢(太輔が)この家に住んでいたころ、ドアを開ける直前、太輔は毎回祈っていた｣とある｡何を？ さらに｢状況｣を確認する。すぐ前の段落から、｢玄関の真ん中にはいつも、伯父(おじ)さんの三足の靴が並んでいた｣ことが分かる。その｢状況｣で｢二足しかありませんように。外出していますように｣と思っているということは、｢伯父さんの外出｣を祈っていたことになる。現に、傍線部の直後で｢太輔｣は｢伯父さんは？｣と聞き、｢伯母さん｣が｢大丈夫よ｣｢今日は帰ってこないから｣と答えている。ここで再度各選択肢をチェックする。(ア)｢彼(伯父さん)とはどうしても顔を合わせたくないという(太輔の強い気持ち)｣、(イ)｢(伯父さんと伯母さんの)どちらかは家にいないでほしいという(太輔の強い気持ち)｣、(ウ)｢この家から一日も早く出ていきたいという(太輔の強い気持ち)｣､(エ)｢誰かが外出していてほしいという(太輔の強い気持ち)｣｡もう分かったはずだ。ターゲットは明らかに｢伯父さん｣なのだから、(ア)以外は即座に｢消去｣可能だ。｢同一場面｣から、他の部分の説明も特に誤ってはいないと判断できる。よって、(ア)が｢答え｣になる。｢設問｣段階ではなかったが、結果として｢一発消去｣。｢原意消去｣の応用なくして合格なし、と心得よ。
＜時間配分目安：２分弱＞
[問九] ｢心情説明選択肢｣(４択)。
傍線部④｢太輔は足の指をぎゅっと丸める｣について、｢ここには太輔のどのような気持ちが表れていると考えられるか｣を答える。無論、｢原意消去｣からだ。ここでは｢足の指をぎゅっと丸める｣という｢動作｣の｢原意｣と結びつかない｢心情｣を｢消去｣することになる。各選択肢の｢文末｣と照合する。(ア)｢(自分自身を)勇気づける気持ち｣、(イ)｢あきらめる気持ち｣、(ウ)｢開き直る気持ち｣､(エ)｢決心する気持ち｣｡自分の｢足の指｣を｢ぎゅっと丸める｣のだから、｢決心する気持ち｣以外は即｢消去｣できなくてはいけない。念のために他の部分の説明を｢同一場面｣で確認する。特に誤ってはいない。したがって、｢答え｣は(エ)でいい。見事な｢一発消去｣だ。やはり、｢原意消去｣は使える！ 尚、｢心情把握｣では、｢セリフ｣⇔｢ト書き｣⇔｢動作｣⇔｢情景｣といったさまざまな観点から多角的に捉えることが肝要だと心得よ。
＜時間配分目安：１分弱＞
[問十] ｢空所補充の語句抜き出し｣(｢５字以内｣指定)｡
本文中の空所 Ｘ に｢入る語｣を、｢五文字以内｣で抜き出して答える。｢抜き出し問題｣では、｢抜き出すべき内容｣を捉えた上で｢抜き出し範囲｣を特定し探していく。先ずは｢内容｣を前後の｢文脈｣から読み取っていく。空所は２箇所あって、ともに｢太輔｣が｢伯母さん｣に語っている言葉の一部。｢伯母さんはお母さんの Ｘ にはなれないよ｣、そして、続けて｢それとおんなじで、おれは、伯父さんの Ｘ にはなれないよ｣となっている。ということは、｢伯母さんがなれないお母さんの何か｣、｢太輔がなれない伯父さんの何か｣、それぞれに共通する｢何か｣が｢抜き出し内容｣になる。次に｢範囲｣、当然ながら｢同一場面｣だ。空所部の前にある｢(中略)｣の後から本文最後までになるが、近くから丁寧に探していくと、｢大輔の言葉｣の４行後に｢伯父さんがいなくなった｡だから伯母さんはその代わりを探した｣という｢大輔の考え｣が述べられている部分がある。つまり、｢伯母さん｣は｢伯父さん｣の｢代わり｣を探していたわけだ。しかし、｢大輔｣は｢代わり｣にはなれない。無論、｢伯母さん｣は｢大輔｣の｢お母さん｣の｢代わり｣にはなれない。両方の空所に共通してあてはまることが分かるはずだ。｢範囲｣全体を改めて確認しても、他に相応しい｢語句｣はない。よって、｢答え｣は｢代わり｣となる。尚、｢抜き出し問題｣では｢候補｣はひとつとは限らない｡｢範囲｣を網羅的に確認し、全ての｢候補｣をチェックしてみることが肝要だ。
＜時間配分目安：１分半＞
攻略のポイント
●｢長文説明｣や｢論旨説明｣など、一筋縄ではいかない｢説明記述問題｣、どうすれば｢攻略｣できるのか？ 愚直に｢説明記述｣の｢練習｣を続けることに尽きる。先ずは、正否の分岐となる｢最重要要素｣を｢文末｣として他の｢必要要素｣を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。｢内容｣の優先度を勘案し、高いものから積み上げていく。それぞれの｢要素｣を｢20～30字程度｣でまとめられるようにしたい。｢合格ライン｣は７割程度(学校非公表。推定)。出題数は少ないが｢説明記述｣の｢配点｣は大きいので(本年度は８点と６点)、｢失点｣はもちろん、｢減点｣もできるだけ防ぎライバルに差をつけておきたい。
●多種多様な｢選択肢設問｣はどうするか？ できるだけ単純な方法で、｢選択肢｣を少しでも｢消去｣しておくということだ。有効なのが｢原意消去｣。それにより可能な限り｢消去｣し、その上で様々な｢解法｣を用いて、最終的に判別していく。したがって、基本的｢解法｣を完全に習得し的確に応用できるようにしておくことが重要だ。｢選択肢設問｣での｢失点｣を防ぎ、｢得点力｣を安定させること。
●｢知識問題｣も決して侮れない。｢高度な語彙力｣だけではなく、｢敬語｣や｢古文｣も含めた｢あらゆる知識｣が問われる。独自に｢幅広い知識｣を常に習得していくことが必要だ。学校や塾での学習だけでは、全く不十分なので、｢独習｣は欠かせない。尚、前述したが、本年度は昨年度に引き続き｢漢字｣の｢同音(訓)異字判別｣が出題された。それに対する練習も忘れないこと。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。文章量は安定していないが、近年は増加傾向で本年度は約7900字｡当然、速く正確に読み取ることができた方がいい。分速750字以上を目標に｢読む練習｣を常にすることが重要だ。