人間についての普遍的な原理を難しい言葉で記述するばかりが｢哲学｣ではない。書物に書かれている高尚な哲学ばかりが｢哲学｣ではない。ときに肉声のなかに、手紙のなかに、あるいは人知れぬ行為のなかに、真の哲学は宿っている――。本文では、染織作家の｢志村ふくみ｣、その｢志村｣に影響を与えた美術評論家の｢柳宗悦｣について論じている。平易な文章なので内容は理解できる。｢抜き出し｣と｢総合的知識問題｣が中心の大問だ。さほど難易度は高くないので手際よく得点を重ねていきたい。以下、いくつか確認してみる。

[問二]　｢空所補充の語句選択肢｣(４択)。
｢総合的知識問題｣｡｢語句の意味美｣。本文中の２カ所の空所　　　２　　　に共通して｢あてはまる語句｣を答える。２カ所の空所前後の｢文脈｣から、｢めったに見られない｣という意味になると分かるはずだ。各選択肢は、(ア)｢有徳の｣･(イ)｢稀代の｣･(ウ)｢遺憾な｣･(エ)｢凡庸な｣。無論、｢答え｣は(イ)の｢稀代の｣になる。｢稀代｣は｢世にもまれなこと｣｢非常に珍しいこと｣を表している。他の｢語句｣についても｢意味･用法｣が怪しいものがある諸君は、しっかりと確認しておくこと。
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[問三]　｢内容説明抜き出し｣(｢45字以内｣指定の｢始めと終わりの５字｣)｡
傍線部③の｢色を無機質な物質としてのみ捉えていた従来の視座を、根本から覆すものだった｣は｢ゲーテのどのような考え方をもとにしているか｣を｢～という考え方｣につながるように｢四十五字以内｣で探し、｢はじめと終わりの五字｣を抜き出して答える。
｢抜き出し問題｣では、｢抜き出すべき内容｣を捉えた上で｢抜き出し範囲｣を特定し探していく。本問の｢内容｣は設問どおりで、｢色を無機質な物質としてのみ捉えていた従来の視座を、根本から覆すもの｣という考えのもとになっている｢ゲーテの考え方｣になる。｢範囲｣は｢同一意味段落｣になる(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)。ここでの｢同一意味段落｣は本文冒頭から空所　　　２　　　の前の行までだと判断できる。丁寧に探していくと、冒頭から４行目に｢万物は自然の呼びかけに応じて生まれ、人間の感覚器官は外界に存在する働きに従って生れたものだ｣(45字)という部分がある。｢内容｣はふさわしいし、｢字数｣もＯＫだ。そして、同一の｢範囲｣には他にふさわしい｢候補｣もない。
よって、｢答え｣は｢万物は自然～れたものだ｣となる。
尚、｢抜き出し問題｣では｢候補｣はひとつとは限らない｡｢範囲｣を網羅的に確認し、全ての｢候補｣を確認してみることが肝要だ。
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[問五]　｢空所補充の乱文整序選択肢｣(複数完全解答/４択)。
本文中の空所[  　 ⑤　　 ]には、示されている(ア)～(エ)の各文が入るが、｢正しい順序｣に並べかえて答える。｢乱文整序｣では先ず、｢乱文｣どうしで｢順序｣が特定できる組み合わせを探すことで｢選択肢｣を減らしておきたい。その際は無論、｢接続詞｣や｢指示語｣が重要な｢手がかり｣になる。本問には(ア)に｢ここでの｣、(イ)に｢そうした｣という｢指示語｣があり、(ウ)は｢だが｣という｢接続詞｣から始まっている。それらを勘案すると、(ア)→(エ)→(イ)が特定できる。その上で最終的に空所[　   ⑤　　 ]に｢脱文挿入｣するので、本文の空所前後との｢繋がり｣を確認すると、最終的に｢答え｣は(ウ)→(ア)→(エ)→(イ)になる。｢乱文整序｣では、｢乱文｣どうしの｢順序特定｣が最大のカギとなると心得よ。
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[問六]　｢換言説明選択肢｣(４択)。
傍線部⑥の｢彼女の『手』は『耳』になる｣とは｢どういうことか｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ここは｢換言説明｣なので、｢『手』は『耳』になる｣の｢原意｣と結びつかない換言説明を｢消去｣することになる。各選択肢の｢文末｣をチェックする。(ア)｢自然の声を感受しているということ｣、(イ)｢音が実感として伝わってくるということ｣、(ウ)｢植物と向き合おうという決意を持つこと｣、(エ)｢良い色に染めるよう努めるということ｣。｢『耳』になる｣のだから、｢声を感受している｣以外は｢消去｣に決まっている。念のために｢同一意味段落｣で他の部分の説明を確認する。特に誤ってはいない。したがって、｢答え｣は(ア)だ。見事な｢一発消去｣。｢原意消去｣を確実に習得して応用できるようにしておくこと。
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[問八]　｢理由説明選択肢｣(４択)。
傍線部⑧｢志村は、柳の正統なる後継者である｣について、｢筆者が『志村』を『後継者である』と考える理由｣を答える。先ずは｢原意消去｣をする｡本問は｢理由説明｣なので、｢筆者｣が｢『志村』が『後継者である』と考えること｣の｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣したい。各選択肢の｢文末｣⇒｢だから｣⇒｢『志村』が『後継者である』｣とつながるかどうかだ。チェックしたい。だが、それぞれの選択肢の｢文末｣は全て｢柳の姿勢(考え)に志村が影響を受けたから｣で同じなので、この段階での｢原意消去｣は無理だ。そこで、｢柳のどのような姿勢(考え)｣なのかで｢消去｣したい。｢同一意味段落｣から読み解いていく。共同体の一員として人とともに仕事をする｢志村｣は、｢自己の表現｣としての作品でではなく、職人たちが協力して生み出した｢日常において用いられるもの｣にこそ美が宿るという姿勢(考え)だと読み取れる。したがって、｢日常の場で使われる度に美が現れる｣と説明されている選択肢(エ)が｢答え｣になると判別できなくてはいけない。本校では、単純ではないこうした｢選択肢設問｣もあるということだ。
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詩人でもある作者が独特の筆致、リズムで｢靴｣をめぐっての思い出や思索を綴(つづ)っている。内容的には理解できるはずだが、独特の｢言葉づかい｣に戸惑いを覚えるかもしれない。以下、いくつかの｢設問｣を検証する。

[問一]　｢表現の特徴判別不適切選択肢｣(４択)。
本文冒頭部分の傍線部①の｢表現の特徴｣として｢ふさわしくないもの｣を答える。｢表現の特徴判別｣なので｢原意消去｣は無理で。｢事実関係｣で正誤判別していく。確認する。(ア)｢短文が重ねられ……｣⇒｢靴が片方、落ちていた｡｣｢鳥が、警戒の声をたてる｡｣等々＝適切。(イ)｢倒置法を用いる……｣⇒｢～革靴だった｡男物の｡｣等＝適切。(ウ)｢擬人法を含んだ情景描写……｣⇒｢近づかれれば走り出しそうな緊張が革靴を押しこみ、薄青の空は硬くなる｡｣等＝適切。(エ)｢直喩表現を使用し……｣⇒｢まるで～｣｢～のようだ｣等の｢直喩表現｣は用いられていない＝不適切。よって、｢答え｣は(エ)になる。本校では、こうしたさまざまな｢表現技法｣の設問が頻出なので、整理して定着させておきたい。｢直喩｣｢隠喩｣｢擬人法｣｢体言止め｣｢倒置法｣｢反復法｣｢対句法｣等々だ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分強＞

[問二]　｢比喩換言説明選択肢｣(４択)。
傍線部②の｢口の中に、薬のような味が広がる｣とは｢どういうことか｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣だ。ここは｢比喩換言説明｣なので、｢薬のような味が広がる｣という｢比喩表現｣の｢原意｣と結びつかない換言説明を｢消去｣することになる。各選択肢の｢文末｣をチェックする。(ア)｢嫌悪感を抱いたということ｣、(イ)｢避けたいと感じたということ｣、(ウ)｢孤独感を抱いたということ｣、(エ)｢無力感を痛感させられたということ｣｡問題はないはずだ。｢薬のような味｣なのだから、｢嫌悪感｣以外は｢消去｣に決まっている。念のために｢同一意味段落｣で他の部分の説明を確認する。特に誤ってはいない。したがって、｢答え｣は(ア)だ。またしての｢一発消去｣。やはり、｢原意消去｣は徹底して活用すべきだ。
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[問四]　｢比喩換言説明選択肢｣(４択)。傍線部④の｢靴といっしょに一度も聞かなかった足音も、埋めた｣とは｢どういうことか｣を答える。ここも｢比喩換言説明｣(隠喩)なので、｢一度も聞かなかった足音も、埋めた｣という｢比喩表現｣の｢原意｣と結びつかない換言説明を｢消去｣していく。各選択肢の｢文末｣と照合する。(ア)｢(持ち主の後悔も)供養してあげようということ｣、(イ)｢(持ち主の人生そのものも)消し去ったということ｣、(ウ)｢(余計なことを考えるのは)終わりにしようとしたということ｣、(エ)｢(自分の無力感も)忘れてしまおうとしたということ｣｡｢一度も聞かなかった足音｣⇒｢靴の持ち主｣の｢歩んできた道｣だと考えられるはずだ。｢それも埋めた｣ということであれば、｢(持ち主の人生そのものも)消し去ったということ｣以外は｢消去｣できるに違いない。念のために｢同一意味段落｣で他の部分の説明を確認する。特に誤ってはいない。したがって、｢答え｣は(イ)になる。ここも｢一発消去｣だった。｢原意消去｣は本校合格へのショートカットだと心得よ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分強＞

｢総合的知識問題｣｡｢文学史｣、｢カタカナ語の用法判別｣、｢漢字の読み書き｣。｢漢字の読み書き｣以外は昨年度よりは易化している。全体としては本校としての標準レベルだ。以下、検討しよう。

[問一]　｢文学作品のジャンル判別不適切選択肢｣(４択)。｢総合的知識問題｣｡｢文学史｣。示されている｢作品｣の中で、｢ジャンルの異なる作品｣を答える。各作品を確認して、｢答え｣を出していく。(ア)｢源氏物語｣⇒｢作り物語｣･(イ)｢狭衣物語｣⇒｢作り物語｣･(ウ)｢浜松中納言物語｣⇒｢擬古物語｣･(エ)｢宇治拾遺物語｣⇒｢説話集｣。したがって、｢答え｣は(エ)の｢宇治拾遺物語｣になる。
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[問二]　｢文学作品の作者特定選択肢｣(４択)。｢総合的知識問題｣｡｢文学史｣。示されている｢作品｣の中で、｢作者が分かっている作品｣を答える。各作品を確認して、｢答え｣を出していく。(ア)｢竹取物語｣⇒作者不明･(イ)｢大鏡｣⇒作者不詳･(ウ)｢蜻蛉日記｣⇒藤原道綱母･(エ)｢平家物語｣⇒作者不詳。よって、｢答え｣は(ウ)の｢蜻蛉日記｣。本校では、｢文学史｣が頻出だ。｢作品名｣｢作者名｣｢成立年代｣｢ジャンル｣等を整理して定着させておきたい。
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[問三]　｢カタカナ語の用法判別不適切選択肢｣(全２問｡各４択)。｢総合的知識問題｣｡｢カタカナ語｣。示されている｢カタカナ語｣とその｢意味･用法｣で、｢誤った組み合わせ｣を答える。それぞれをチェックしていく。①(ア)｢アントレプレナー｣＝｢起業家、事業を起こす人｣⇒適切。①(イ)｢コンセンサス｣＝｢合意、意見の一致｣⇒適切。①(ウ)｢ハイブリッド｣＝｢混合物、複合物｣⇒適切。①(エ)｢コンプライアンス｣＝｢道徳を守ること｣⇒不適切⇒｢企業や個人が法律や規則、社会規範、企業倫理などを守り、公正･公平に活動すること｣だ。②(ア)｢クライアント｣＝｢関係者、仲間｣⇒不適切⇒｢顧客、取引先、依頼人」のこと。②(イ)｢イノベーション｣＝｢技術の革新｣⇒適切。②(ウ)｢アセスメント｣＝｢影響を評価すること｣⇒適切。②(エ)｢コンセプト｣＝｢基本となる概念｣⇒適切。したがって、①の｢答え｣＝(エ)、②の｢答え｣＝(ア)ということになる。尚、どれかひとつでも曖昧(あいまい)な言葉があった諸君は｢語彙力不足｣を自覚して精進せよ。
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[問四]　｢漢字の読み書き｣(｢書きとり｣４問/｢読み｣２問)｡本年度は難解だった昨年度に比べると難易度が低くなり、本校の｢標準レベル｣。よって、失点は避けなければならない。確認する。①｢僧侶のドキョウ｣＝｢読経｣⇒これは問題なし。②｢金銭のタイシャクの｣＝｢貸借｣⇒これもできて当然⇒｢貸し借り｣だ。③｢ここであきらめるなんて、イクジがない｣＝｢意気地｣⇒｢イキジ｣ではないので、｢読み｣でも注意せよ。④｢記念品をゾウテイする｣＝｢贈呈｣⇒｢高校入試｣の定番だ⇒｢ひとに物をさしあげること｣。⑤｢十二単がとても美しい｣＝｢じゅうにひとえ｣⇒これは分かるはず。⑥｢確認の押印をする＝｢おういん｣⇒｢おしいん｣ではないので要注意。やはり、｢高度な語彙力｣を磨いておくことが重要だ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で１分半＞