｢病気｣と｢平気｣の線引きはどこにあるのか？　｢病気のアラーム｣とは何か？　｢かぜ｣と｢肺炎｣はどうちがう？――病理医である筆者が｢人体と病気の仕組み｣について論じている。

本文では、自分が｢病気｣なのかは先ず本人が未来予測によって判断するが、判断がつかない場合は医者が、また、場合によっては社会ガ判断すると指摘している。難解な語句がいくつかあるが、｢※注｣を活用すれば内容は理解できるはずだ。本校としては標準的な、多種多様な小問が並び、最後にお約束の｢自由考察説明記述｣が待ち構えている。以下、いくつかを検討してみる。

[問１]　｢語句の意味の選択肢｣(全３問/各５択)。｢総合的知識問題｣｡波線部(ａ)｢メカニズム｣･(ｂ)｢茶化して｣･(ｃ)｢のたうち回った｣の｢本文中での意味｣を答える。

これらの｢原意｣(本来の意味)に忠実に判別すれば何の問題もないはずなのだが、｢本文中での意味｣を意識し過ぎると間違ってしまう可能性があるので、要注意。それぞれ確認する。

｢メカニズム｣＝｢機械の装置。しかけ｣のことなので、(ａ)の｢答え｣＝選択肢(オ)｢仕組み｣

⇒｢外来語｣ではあるが、流石(さすが)に知っているはずだ｡

｢茶化す｣＝｢まじめな話を冗談(じょうだん)めかしてしまう｣

⇒(ｂ)の｢答え｣＝(ウ)｢まじめなことも冗談のようにしてしまうこと｣。

｢のたうち回る｣＝｢苦しみのあまりに転げ回る｣

⇒(ｃ)の｢答え｣＝(ア)｢苦しみもがいて転げまわること｣になる。

こうした｢語句の意味｣では、｢設問｣に惑わされずに｢原意絶対優位の原則｣を徹底させること。

＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問２]　｢漢字の書きとり｣(全３問)。本文中の二重傍線部(Ａ)～(Ｃ)の｢カタカナ｣を｢漢字｣に直す。

本年度は昨年度よりは難易度が増したが、本校としては｢標準レベル｣。本校志望者は全問正解したい。｢答え｣だけを確認する。

(Ａ)｢ルイスイ可能｣＝｢類推｣。

(Ｂ)｢涙はシダイに引っ込む｣＝｢次第｣

　　⇒｢物事の程度や状態が少しずつ変化･進行するさま｣を意味する｢副詞｣の一部。

　　　ちなみに、｢名詞｣の｢次第｣＝｢順序｣だ。

(Ｃ)｢シセイを変えたらラクになる｣＝｢姿勢｣。

曖昧(あいまい)なものがあった諸君は、確実に復習しておくこと。

＜時間配分目安：全問で30秒強＞

[問３]　｢理由説明記述｣(｢20字以内｣指定)。傍線部①｢子どもの頃と比べると、泣くほど痛いというシチュエーションは劇的に減る｣について、｢なぜか｣を｢20字以内｣で説明する。

｢シチュエーション｣とは、｢状態｣｢事態｣｢状況｣｢場面｣といったことだが、知らなくても、次文に｢私ももう長いこと、腹痛のために涙を流した記憶がない｣とあるので類推できるはず。直後の形式段落が｢なぜか？｣と始まっているので、これ以降で｢理由｣を述べているわけだ。｢同一意味段落｣から読み解いていく(｢説明文｣｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢手かがかり･根拠｣がある)。７行目以降で、｢これくらいの痛みだったら、もう少しで治まるはず……｣｢明日には治まっているはず……｣、｢そう、大人というのは未来予測ができる……｣などと説明されている。こうした内容を簡潔にまとめていきたい。たとえば、｢大人は痛みが治まる未来を予測できるから｡｣(20字)といった｢答え｣だ。

｢同一意味段落｣から的確に｢状況｣を読み解くことが重要だと心得よ。

＜時間配分目安：２分弱＞

[問５]　｢脱文挿入選択肢｣(５択)｡示されている、本文から抜けている一文｢一方、大人は痛みが将来どうなるかについての予測がつくから、子どもほど苦しまないでいられる｡｣が｢入るべき位置｣を、本文中の(Ⅰ)～(Ⅴ)のうちから選んで答える。

｢脱文挿(そう)入｣では｢接続詞、指示語、副詞、そして、内容｣に着目すること。ここでは｢一方｣という｢接続詞｣がある｡ということは、この｢一文｣の直前で｢子どもは痛みに苦しむ｣ことについての説明があるはずだ。それぞれの候補を確認すると、(Ⅲ)の直前が｢(子どもは)常に痛みに対して全力で苦しみ……｣となっている。まさに、｢子どもは痛みに苦しむ｣ことだ。他の候補にはそうした内容はない。したがって、｢答え｣は(Ⅲ)だ。

｢脱文挿入｣では､｢挿入候補｣に必ず｢代入確認｣をして、丁寧に確認することが肝要。

＜時間配分目安：１分強＞

[問７]　｢条件付き自由考察説明記述｣(｢101～120字以内｣指定)。傍線部③｢周囲にいる人々が『患者』を病気というワクに当てはめて、文字通り患者として対処するケースがある｣について、｢そこから生じる問題にはどのようなものがあると考えられるか｣を｢101字以上120字以内｣で説明する。｢条件｣は｢自分で考えて、具体的に説明する｣こと。

｢自分で考える｣ので何を説明してもいいのだが、何でもいいとなると逆に困ってしまうはず。そこで、｢同一意味段落｣に｢手がかり｣を求めたい。前段落で傍線部のような｢ケース｣として、｢高齢者介護｣や｢精神看護｣の現場が挙げられている。それらから｢具体的｣に想像し考えてみる。本人には｢病気｣という自覚がないのに、｢周囲にいる人々｣が勝手に｢病気｣だと決めつけて、｢患者｣として施設などに入れてしまうといったことが思い浮かぶはずだ。そうした場合、｢どのような問題が生じる｣と考えられるか？ たとえば、自らの決定権が奪われ｢自尊心｣が傷つく、本人には知らされなければ｢不安｣が募り、｢孤独｣になってしまう……、などといったことが考えられるはずだ。そうしたことを｢自分で考えて、具体的に説明する｣ことになるわけだ。

本校定番の｢自由考察記述(論述)｣では、｢問題文｣や｢条件｣を｢手がかり｣として、そこから｢あなた自身の考え｣をふくらませていくことが求められている。

＜時間配分目安：５分＞

11歳の｢咲(さき)｣はクラスメイトになじめず、13歳の｢光(ひかり)｣はあまりに普通すぎる自分が嫌でたまらない――そんな姉妹が出逢う人と事件が淡々とした語り口で展開する。こうありたい自分がいて、でも、なかなかそうはなれない自分がいる。そのときに呪文(じゅもん)みたいに唱える言葉が｢もうちょっとだけ子どもでいよう｣……。

本文では、少年野球クラブに入っている｢新(しん)くん｣の練習をひそかに眺(なが)めたり、毎日こっそりラブレターを書いたりしている｢咲｣が、告白する決意をする様子が描かれている。内容は分かりやすい。｢総合的知識問題｣を含めて、オーソドックスな設問内容が中心。以下、いくつかの｢設問｣を確認する。  

[問２]　｢空所補充の語句選択肢｣(５択)。｢総合的知識問題｣｡｢形容詞｣の判別だ。本文中の空所 Ｘ に｢入れるのに適する語｣を答える。各選択肢は(ア)｢よそよそしい｣、(イ)｢ずうずうしい｣、(ウ)｢うやうやしい｣、(エ)｢もどかしい｣、(オ)｢ばかばかしい｣。

本校志望者であれば全ての意味を知っていなくてはいけない。空所前後は｢一人だとおとなしいさゆりちゃんも、ゆきちゃんが一緒だと人が変わったように Ｘ 口調で言った｣となっている。｢おとなしい｣のが｢人が変わったように｣なり、しかも｢口調｣を修飾するわけなので、｢答え｣は(イ)の｢ずうずうしい｣だと判別できるはずだ。

尚、万が一にも未定着の｢形容詞｣があった諸君は確実に確認しておくこと。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問３]　｢様子説明選択肢｣(５択)。傍線部①｢守っている二人は左右に別れて前へ後ろへ、打ち上げられる球を追ってグラウンドを走り回った｣について、｢ここから少年たちのどのような様子を読みとることができるか｣を答える。

｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ここは｢様子説明｣なので、｢打ち上げられる球を追って｣｢走り回った｣の｢原意｣に結びつかない｢様子｣を｢消去｣していきたい。各選択肢の｢文末｣と照合する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)｡

(ア)｢一生懸命野球に取り組んでいる様子｣､

(イ)｢コーチの言うとおりに動いている様子｣､

(ウ)｢いいところを見せようとはりきっている様子｣､

(エ)｢疲れ切っている様子｣､

(オ)｢やけになって練習に取り組んでいる様子｣｡

さあ、どうだろうか？ ｢球を追って走り回った｣のだから、｢一生懸命野球に取り組んでいる様子｣以外は｢消去｣できるはず。念のために他の部分の説明が誤っていないかを、｢同一場面｣で確認する(｢小説｣では｢同一場面｣の｢直前直後｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。問題はない。よって、｢答え｣は(ア)でいい。何と｢一発消去｣だ。｢原意消去｣を完全に習得し、十分に活用すべし。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問５]　｢理由説明選択肢｣(５択)。傍線部③｢実際に出すつもりはなかった｣について、｢それはなぜだと考えられるか｣を答える。

無論、｢原意消去｣から｡ここは｢理由説明｣なので、各選択肢の｢文末｣→｢だから｣→｢実際に出すつもりはなかった｣と、｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣するのだが、先ずは何を｢出す｣のかを確認する必要がある。｢同一場面｣の直前から、｢咲が毎日書いていた新くんへの手紙｣だとすぐに分かる。では、｢消去｣していきたい。

(ア)｢渡そうと思っていたから｣､

(イ)｢住所を知らなかったから｣､

(ウ)｢いやな思いをすることになるから｣､

(エ)｢自分だけの心に留(とど)めておこうと思っていたから｣､

(オ)｢相手にされないとあきらめていたから｣｡

｢(手紙を)実際に出す｣という｢つもりはなかった｣のだから、｢渡そうと思っていた｣･｢知らなかった｣･｢思いをすることになる｣･｢あきらめていた｣は｢消去｣だと判別できなくてはいけない。(エ)の他の部分の説明も特に誤ってはいない。よって、｢答え｣でいい。

本問も結果として｢一発消去｣。畏るべし！ ｢原意消去｣だ。尚、｢時制(過去･現在･未来)｣も｢消去｣の重要な基準となると心得よ

＜時間配分目安：１分強＞

｢要約問題｣(｢小問｣は全２問)｡

[問１]は示されている本文の【要約文】中の｢空所補充｣で｢抜き出し｣の出題形式(５問)。本文自体が｢約300字｣と短く､空所前後の｢文脈｣と本文とを照合すれば、通常の｢抜き出し設問｣として難なく答えられるはずだ。

[問２]も｢空所補充｣の形式だが、実質的には｢要約｣の｢説明記述｣となっている(３問)。その中でも比較的｢長文｣でやや悩ましい１問だけを考えてみたい。　

[問２]　｢要約文の空所補充の説明記述｣(｢41～50字以内｣指定)｡示されている本文の【要約文】中の｢空所部③｣を､｢文中の言葉を用いて41～50字以内｣で埋める。

｢空所部③｣は【要約文】の最後で、｢国境を越えてきた貧しい移民の人たちが農園で働き始め、　 ③ 　という社会的な問題も起きている｣となっている。

本文と照合すると、最後の段落の後半に｢国境を越えてやってきた貧しい移民の人たちが農園で働き始めました｣とある。したがって、その直後の部分の｢要約｣が空所部以降だと判断できる。そこには｢戸籍がなく学校にも行かないこどもたちも含まれています。世界的に問題視されている児童労働が見過ごされている現実もあります｣と述べられている。よって、この内容を｢空所｣にあてはまるようにまとめていけばいい。たとえば、｢戸籍がなくて学校にも行かないこどもたちや、世界的に問題視されている児童労働が見過ごされている現実(という社会的な問題)｣(48字)といった｢答え｣になる。

本校で定番となりつつある｢要約問題｣だが、そもそも｢要約｣とは｢文章の論旨･要点を約(つづ)める(＝短くまとめて表す)こと｣だ。そして、｢論説文｣の｢要約｣は｢論旨｣中心にまとめていくのが鉄則。よって、｢序論部分｣＋｢結論部分｣＋｢本論部分からの補足｣が基本的なまとめ方になると心得よ。

＜時間配分目安：４分＞