明治大学付属中野高等学校 入試対策
2025年度「明治大学付属中野高等学校の国語」
攻略のための学習方法
合格のための答案力、国語力について何が必要なのか。出題傾向を見てみると、「読解力」と「記述力」である。読解力と記述力とは、一見相異なるもののように思っている受験生も少なくないかもしれないが、実はこの2つの「力」は根っこの部分では繋がっているのである。言葉を換えれば、車の両輪のごとく、互いに互いを補完し合いながら、車が勢いよく前進するように国語の合格力が飛躍的に向上するのである。それでは、以下にその仕組みについて確認してみよう。
記述力は何によって養成されるか
国語力を向上させるための対策として、大概は「読解力」の養成を第一番目に挙げるのではないだろうか。確かにそのような考え方にも、合理的な根拠はあるであろう。しかし、ここで考えて欲しいのは「高校入試における合格のための国語読解力」である。
「合格のための国語読解力」とは具体的には何を意味するのであろうか。一言でいうならば、「客観的な思考力で設問の問題を読み込めるかどうか」であり、この「客観的思考」の確実な養成には、自身の考え方をいかに説得力を持って外部発信できるかどうかである。そして、「外部発信」のツールはいうまでもないが「自身の考え方の吐露」であり、より自分の考え方や主張を他者に理解してもらおうとすれば、その内実は文字通り「記述力」である。
ある人曰く「自分の頭の中にある思想が全部で100だとすれば、文章化できるのはそのうちの10(1割)である」。これは極めて興味深い話である。したがって、一見全く関係性がないように思える「読解力」と「記述力」とは、無関係なものではなく、密接不可分な関係にあるのである。
読解力を高めたければ、記述力をしっかり習得することである。自分の考えを自分の言葉でまとめきれないのであれば、真の意味での「説得力ある文章」を書くこともできないであろう。論理的な文章を書けるということは、それだけ自身の中で思考が組み立てられていることであり、そのような「組み立て」は論理を追いかける「力」、「読解力」がベースになっているからである。
つまり、記述力を安定し明確に文章を書けるようになれば、必ずそれに伴ってより実効性の高い読解力は身に付くのである。したがって、入試に対応した読解力を高めるためには、自身がしっかりとした「記述力」に裏付けられた自己表現力の向上ができれば、「読解力」は確実に上昇する。
「読解力」を飛躍的に高める「記述力」をより効率的に深める一つの具体的方法としては、一日10分程度で構わないので「文章を書く」ということである。内容は何でもよい。その日に自分の身の回りで起きたこと、社会の出来事などに対する感想を100~150字でまとめる練習を積めば、3ヶ月後には自身の「読解力」と「記述力」は間違いなく向上する。
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2025年度「明治大学付属中野高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、倫理に関する哲学的論説文の読解問題である。<39分>
内容把握問題、記述問題(40字)、要旨選択肢問題、抜き出し問題、接続語などあらゆる角度からの設問である。特に、記述問題対策はしっかり行っておくこと。
大問2は、知識問題に関する問題である。<3分>
標準的な慣用句、ことわざ、故事成句に関する問題である。
大問3は、語句に関する問題である。<3分>
指定された言葉と同じ意味をもつ選択肢を漢字で書く問題である。
大問4は、漢字の書き取り・読み取り問題である。<5分>
出題数は10題であるが、標準的問題であるので完答を目指したい。
【大問1】 哲学的分野に関する論説文の長文読解問題
- 時間配分:39分
出典は、『利他・ケア・傷の倫理学―「私」を生き直すための哲学』(近内悠太著)。
問一は、内容把握問題<2分>。
文脈を正確に把握し的確に選択肢を選ぶ。傍線①とは少し離れた個所に「『私とあなたは異なる存在である』と知ることよって正しくつながるための道が拓かれる」とある。
問二は、語句問題<1分>。
「口ごもる」という意味は「言うのをためらう」である。
問三は、内容把握選択問題<2分>。
「ありがた迷惑」を受ける場合の心情を正確に読み取ること。つまり、相手への「対応に困る」のである。
問四は、品詞に関する問題<2分>。
補助動詞、連体詞に関する知識をしっかり理解しておくこと。
問五は、内容把握選択問題<1分>。
「相手は私と似た存在である」と「私とあなたは似ている」という両者がどのような関係にあるかを考える。
問六は、内容把握抜出し問題<2分>。
傍線箇所とは離れているが、「利他とは、自分の大切にしているものよりも、その他者の大切にしているものの方を優先すること、である」とある。
問七は、指示語問題<2分>。
「利他はこの認識」から始まるとあり、「この認識」とは直前にある「あなたが大切にしているものは、私の大切にしているものと異なる」という認識である。
問八は、内容把握問題<2分>。
本問が含まれる段落の冒頭に「…多くは」とある。
問九は、内容把握抜出し問題<3分>。
本文には「それに対して、霊長類社会や…狩猟採集社会では…大切にしているものがきちんと少数のものに収束している社会」とある。
問十は、内容把握選択問題<2分>。
何を大切にしているかが共有できず、両立できない文脈が存在しているからである。
問十一は、内容把握選択問題<1分>。
「大きな物語」とは「人が共有する価値観」であり、「失効」とは「なくなること」である。
問十二は、内容把握抜出し問題<2分>。
「大切にしているものが一人ひとりズレている。それが多様性の時代」であると述べられている。
問十三は、内容把握抜出し問題である<2分>。
「善意が空転する」とは、自分の善意の「押しつけ」であり「利他の押し付け」となる状況であり、「他者の大切にしているものを無視して、こちらが与えたいと思っているものだけを押しつけるとき」である。
問十四は、内容把握選択問題<1分>。
Bにあてはまる接続語は直後に「結論」を述べているので、「つまり」が適切である。
問十五は、内容把握抜出し問題<2分>。
ダーウィンの指摘(道徳律(黄金律))は、「あなたと私は似た存在である」「あなたと私は同じような存在である」という前提が必要なのである。
問十六は、内容把握抜出し問題<1分>。
「利他の押しつけ」とは何かを考える。つまり「ありがた迷惑」のことである。
問十七は、内容把握選択問題<2分>。
本問より少し離れた個所に「時計をめぐる『物語』」に関する記述があり、「その物語は他者から問われ、応答するときに語られる」のである。
問十八は、内容把握抜出し問題<2分>。
本文に「大切にしているものは、モノとしては存在していない。それは、関係性だからです」とある。
問十九は、内容把握記述問題問題<3分>。
「星座を知る」ことは「利他とケアが始まる」ことであり、相手の大切にしているものに関する「物語」を聞いて、そのものと相手の関係性を知ることなのである。
問二十は、段落構成把握問題<2分>。
本文を二つの意味段落に分ける場合、「さて、利他の定義」までたどり着いたとあり、この前後で本文の文脈が大きく違っている。
問二十一は、要旨把握問題<2分>。
本文のテーマの1つである「多様性」に関する内容の選択肢が適切である。
※本文に関して以下の類似問題にも挑戦してみよう!
《問題》
問1.筆者は、現代の多様な価値観について、どのような懸念を持っていると述べていますか。50字以内の日本語で説明しなさい。
問2.筆者は、なぜ「黄金律」の考え方が、現代において有効なものとして見直されていると述べていますか。50字以内の日本語で説明しなさい。
問3.筆者は、現代において「大きな物語」が喪失した結果、どのような事態が起こっていると述べていますか。50字以内の日本語で説明しなさい。
《解答・解説》
問1.解答例:他人の価値観や利害に対して、無関心になったり、絶対的な正義を主張したりする姿勢が、現代の多様性の問題であると述べている。
解説:本文の論旨から「他者の利害に無関心になり、自分たちの利害を絶対的なものだと押しつける」という部分があり、これが筆者の懸念を示している。
問2.解答例:多様な価値観がぶつかり合う現代で、他者の立場に立ち、互いを理解しようと努める必要性があるから。
解説:本文には、現代社会において「人間的な理解の促進の基盤原理」としての「黄金律」が再評価されていることが示されている。また、本文の後半では、利己的な考え方ではなく、相手の立場に立って行動することで、相互理解が深まるという内容が書かれている。これらの内容から、多様な価値観が存在する現代において、他者を理解するための原理として「黄金律」が重要視されていると読み取ることができる。
問3.解答例:人々が「物語を持たない」状態になり、自分以外の他者や社会全体について考えることが困難になっている。
解説:本文には、「私たちが物語を失い、『物語を持たない』状態になってしまうと、自分以外の他者や社会全体について考えることができなくなる」という趣旨の記述がある。このことから、筆者は「大きな物語」の喪失が、個々人の視野を狭め、社会的な思考力の低下につながっていると指摘していることがわかる。
【大問2】知識問題
- 時間配分:3分
①「きんせん(=琴線)に触れる」とは「深く感動する様子」のことである。
②「たざん(=他山)の石」とは「自分のためになる他人の不適切な言動」のことである。
③「かつあい(=割愛)する」とは「不本意ではあるけれども物事を省略すること」である。
④「まご(=馬子)にも衣装」とは「外面を着飾れば立派に見える」ということである。ちなみに、「馬子」とは「馬を引いて物を運ぶ人」のこと。
⑤「しっしょう(=失笑)する」とは「笑ってはいけない状況、場面で思わず笑ってしまうこと」である。
【大問3】語句に関する問題
- 時間配分:3分
①「いまいましい」とは「しゃくにさわる状態」のことである。
②「うやうやしい」とは「相手に対して礼節を重んじ、丁寧である様子」のことである。
③「はかばかしい」とは「物ごとの進み具合が順調である様子」のことである。
④「ものものしい」とは「いかめしく大げさなさま」のことである。
⑤「かいがいしい」とは「動作などの手際が良いさま」のことである。
【大問4】漢字書取り・読取り問題
- 時間配分:5分
10題の漢字(書取り・読取り)はどれも標準的な漢字である。完答を目指したい。
書き取りは「哀愁」「湖畔」「変遷」「敏腕」「豪華」「専攻」「発酵」であり、読み取りは「繕う(つくろう)」「漸次(ぜんじ)」「擁立(ようりつ)」である。
攻略のポイント
攻略のポイントは、正確で迅速な文章読解力であることはいうまでもない。さらに求められる力は「記述力」である。この記述力に関しては、事前にしっかり演習を行っておくことが大事である。その際には、頭の中で考えてそれで済ませるのではなく、実際に50字ほどの記述答案を作成することが大事である。また、ことわざや漢字書取り・読取り問題は必ず出題されると考え、手を抜くことなく確実に知識の習得を行って欲しい。その際にも、漢字は実際に手を動かして「書く」ことである。目で眺めているだけでは漢字の定着は決して図れない。