｢漢字の読み書き｣(｢書き取り｣８問と｢読み｣２問)。示されている例文の｢傍線部①～⑧のカタカナを漢字で、⑨･⑩の漢字をひらがな｣で答える。本年度の難易度は本校としての標準レベル。本校志望者であれば｢全問正解｣といきたい。注意すべきものだけを確認する。③｢土地をタイシャクする｣＝｢貸借｣⇒馴染みが薄いか？⇒｢貸すことと借りること(かしかり)｣。④｢議会の解散はヒッシの情勢｣＝｢必至｣⇒｢同音異義語｣に要注意。⑥｢動物のマネをする｣＝｢真似｣⇒意外とエアポケットになっているので注意したい。⑨｢将来は分別のある大人になりたい｣＝｢ふんべつ｣⇒無論、｢ぶんべつ｣ではない。尚、｢熟字訓｣や｢慣用読み｣には要注意だ。ひとつでも曖昧(あいまい)なものがあった諸君は、未だ本校の求める｢語彙レベル｣には達していないと心得て、精進せよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で３分＞

昭和～令和へ壮大なスケールで描く人間賛歌……。舞台は、令和と昭和の、とある出版社。コロナ蔓延の社会で、世の中も閉塞感と暗いムードの中、意に沿わない異動でやる気をなくしている｢明日花｣(28歳)。自分の会社文林館が出版する児童向けの学年誌100年の歴史を調べるうちに、今は認知症になっている祖母が、戦中、学年誌の編集に関わっていたことを知る。世界に例を見ない学年別学年誌百年の歴史は、子ども文化史を映す鏡でもあった……。本文では、｢明日花｣と祖母｢スエ｣の関係性が、さまざまなエピソードを通じて描かれている。平易な文章で、内容は理解できるはずだ。本校としてのオーソドックスな設問が並んでいる。以下、いくつかを検証してみたい。

[問一]　｢空所補充の語句選択肢｣(全２問｡各４択)。総合的知識問題。語句の意味･用法。文中の空所　　Ａ　　･　　Ｃ　　に｢入る語句｣を答える。前後の｢文脈｣を正しく読み取り、どのような意味の語句がふさわしいのかを確認し、｢答え｣を特定していきたい。｢内用を　　Ａ　　ほど、繰り返し、何度も何度も読んでもらった｣⇒｢何度も何度も繰り返し｣とあるので、｢答え｣は｢暗記する｣という意味の選択肢(エ)の｢そらんじる｣だと判断できる。｢(臨場感たっぷりに、物語を聞かせてくれ)いつしか月見草に恋をしてしまう蛍の話に、明日香は毎回　　Ｃ　　聞き入った｣⇒｢答え｣は｢ワクワクしながら、夢中になって｣という意味の(イ)の｢胸を躍らせながら｣だと判断できる。さまざまな｢語句｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要があると心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で１分強＞

[問二]　｢空所補充の漢字記述｣(｢漢字３字｣指定)。総合的知識問題。｢四字熟語｣。文中の空所　　Ｂ　　に｢適切な漢字三字を入れて四字熟語｣を答える。空所部分は｢すっかり　　Ｂ　　沈した蛍は……｣⇒｢○○○沈｣ということになるので当然｢答え｣は｢意気消(沈)｣だと分かるはずだ。｢元気をなくしてがっかりしている様子｣だと知っているに決まっている。尚、本校では｢四字熟語｣だけではなく、｢故事成語｣｢慣用句｣｢ことわざ｣等の｢語彙力｣高めておく必要があると心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：30秒＞

[問四]　｢内容説明記述｣(｢40～50字以内｣指定)。傍線部①｢なんにも知らないくせに｣について、｢『明日香』は『母』に対してどのようなことを不満に感じているか｣を｢四十字以上五十字以内｣で説明する。｢同一場面｣から｢状況｣を読み解いていたい。直前に｢この人(母)はいつも、なにかと口実をみつけては、自分と祖母を否定しようとする｣とあり、直後では｢明日香｣と｢祖母｣との関係が説明されている。そうした内容を的確に読み取り、｢指定字数｣に応じて｢過不足なく｣まとめていきたい。たとえば、｢幼少期に心のなぐさめとなり、就職にも影響を受けた祖母と自分の関係も知らず、二人の否定ばかりすること｡｣(50字)といった｢答え｣だ。｢小説｣では、｢同一場面の直前直後｣から｢状況｣を丁寧に読み取ることが肝要だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：３分半＞

[問七]　｢換言説明選択肢｣(４択)。傍線部③の｢子どもっていうのは、小さな人だな｣とは｢どういうことか｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ここは｢換言説明｣なので、｢小さな人｣の｢原意｣と直接的に結びつかない｢換言｣を｢消去｣していきたい。各選択肢の｢文末｣を確認する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)｡(ア)｢純粋な存在であるということ｣､(イ)｢完成された存在であるということ｣､(ウ)｢大人と変わらない存在であるということ｣､(エ)｢(人間としてまだ)未熟な存在であるということ｣｡さあ、どうだろうか？ 判別できるか？ ｢小さな人｣なのだから、｢純粋な存在｣以外は｢消去｣できなくてはいけない。念のために、｢同一場面｣を確認する(｢小説｣｢随筆｣は｢同一場面の直前直後に手がかり･ヒントあり｣が鉄則)。他の部分の説明も特に誤ってはいない。したがって、｢答え｣は(ア)だ。見事に｢一発消去｣だ。｢原意消去｣、是非ともマスターして活用したい。  

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分＞

思いをうまく言葉にできない方が、当然なのだ。本当なのだ――どうしても理路整然と話せない知人、酔うと後悔ばかり話し出す友人、洗面台で流されかけている小虫、授業中に夫の死を語り続ける先生……。弱いものたちのなかにこそ、陰影のある物語は生まれてくる。｢絶望名人カフカの人生論｣で知られる文学紹介者による、初のエッセイ集。本文では、人生で｢これだけは失いたくない｣というものが誰でもあるということに関してさまざまな観点から綴(つづ)っている。分かりやすい文章なので、内容は理解できるはずだ。｢空所補充｣や｢脱文挿入｣、｢関連文章の読み取り選択肢｣、｢説明記述｣等々、多種多様な小問が並んでいる。何とか食らいついていきたい。いくつかを確認しよう。

[問一]　｢脱文挿入の抜き出し｣(｢直前の文の最後の５字｣指定)。示されている｢脱文｣は、｢本文の▼ 　  ▲ではさまれた部分｣の｢ある段落の末尾｣に入るが、その箇所を特定し、｢直前の文の最後の五字｣を抜き出して答える(句読点は含みません)。｢脱文｣は、｢他の子どもが遊んでいるのを見て、自分も遊びを考え出せるようになるように｡｣だ。｢脱文挿入(そうにゅう)｣では｢接続詞･指示語･副詞、そして、内容｣に着目すること。ここでは｢接続詞･指示語･副詞｣はないので、｢内容｣で挿入する場所を特定していきたい。｢他の子どもが遊んでいるのを見て、自分も遊びを考え出せるようになる｣とあるので、｢▼  　 ▲ではさまれた部分｣の５段落目の最後の｢……まずは他の物語を読むことだ。そうすることで、自分の物語を書き直せるようになる｡｣の後に入ると判断できなくてはいけない。したがって、｢答え｣は｢ようになる｣だ。尚、｢脱文挿入｣では､｢挿入候補｣に必ず｢代入確認｣をして、丁寧に確認することが肝要だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分半＞

[問四]　｢空所補充の語句記述｣(｢ひらがな３字｣指定)。｢総合的知識問題｣。｢慣用句｣だ。本文中の空所　　Ｃ　　に入れるのに｢もっとも適切な３字の言葉｣を補い、｢○○〇を立てる｣の｢慣用句｣を完成させる。空所前後を確認する。｢目　　Ｃ　　を立てる……｣となっている。｢文脈｣を読み取って、｢目　　Ｃ　　を立てる｣といえば｢目くじらを立てる｣だ。よって、｢答え｣は｢くじら｣(３字)だ。｢目くじらを立てる｣＝｢他人の欠点を取り立てて非難する｣ことだ。｢慣用句｣に限らず、｢故事成語｣｢四字熟語｣｢ことわざ｣等々、こうした｢知識力｣が本校では不可欠だ。常日頃、｢語彙力｣を磨く努力を続けることが肝要。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分弱＞

[問五]　｢換言説明選択肢｣(４択)。傍線部②の｢これは決定的なちがいだ｣とは｢どういうことか｣を答える。｢指示語｣があるので、｢原意消去｣の前に開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)。直前から、｢これ｣＝｢元の事実｣と｢有名なエピソード｣の違いだと分かるはずだ。そして、｢『元の事実』が救いになっている｣と読み解ける。各選択肢の｢文末｣と照合する｡(ア)｢(『有名なエピソード』は『元の事実』の方が面白いという点で)きわめて特殊であるということ｣､(イ)｢(『有名なエピソード』と『元の事実』の違いについて)少女は気づいていたということ｣､(ウ)｢(『有名なエピソード』より『元の事実』の方が)救いになっているということ｣､(エ)｢(『有名なエピソード』より『元の事実』の方が)未魅力的であるということ｣｡さあ、どうだろうか？ 判別できるか？ ｢『元の事実』が救いになっている｣のだから、(ウ)の説明以外は｢消去｣できなくてはいけない。念のために、｢同一場面｣を確認しても他の部分の説明も特に誤ってはいないと分かる。したがって、｢答え｣は(ウ)だ。改めての｢一発消去｣だ。やはり、｢原意消去｣は本校合格への｢ショートカット｣だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分強＞

※尚、[問八]は｢関連文章の読み取り選択肢｣の問題だが、｢関連文章｣そのものの字数が｢約900字｣もある厄介ものだ。そのため、とても手間ひまがかかる。｢戦術｣としては｢あとまわし｣にする方がいい。無論、｢捨て問｣でも構わない。