桐朋高等学校 入試対策
2025年度「桐朋高等学校の国語」
攻略のための学習方法
設問は記述問題が大半(約90%)である。迅速で正確な読解力が求められるのはもちろんであるが、ここではどのような学習を行えば、合格できる「記述力」が習得できるかについて考えてみたい。
① 読解力は記述力が基礎となる
合格点を取るための記述内容にするためには、その前提として「正確な読解力」が求められる。その読解力を得るためにも「記述力」が必要なのである。言い換えれば、「読解力」は内容のあるしっかりとした「記述力」がその基礎となっているのである。つまり、自分の考えを過不足なく「まとめられる力」とは、展開する論理を明確にしたうえで読み手に説得力を与える力である。そのような文章を書ける能力は、物事を論理的に考えられる能力のことであり、そのような能力は正確で確実な読解力につながるからである。そのような記述力に裏付けられた読解力こそが、受験にとっては必須な「読解力」となる。
②自分の考えをまとめてみよう
自分の考えをまとめるという作業は、簡単なようで実は難しい。「今日は何をしようか」、「今日の昼ごはんは何を食べようか」というレベルにおいて、自分の考えを「まとめる」という作業は、皆さんは日常的に行っているであろう。しかし、そのようなレベルでの考えをまとめる作業と、あるテーマに対する自分の考えや主張をまとめる作業では、その質において大きな隔たりがあるのは言うまでもない。その隔たりとは何か。前者は「自分」が納得するか否か、後者は「他人」が納得するか否かの違いである。言い換えれば、前者は「主観的」であり、後者は「客観的」でなければならない。受験における自分の考えをまとめるポイントは、「客観性」が不可欠な要素である。そして、客観性とは不特定多数の人たちが納得できるか否かがその指標となる。そのための一つの効果的な手法としては、「具体例を例示する」ことも有効である。そのような手法を用いることによって、自分の主張の正当性を裏付け、説得性を増すことも可能になるのである。
③実際に文章を書いてみよう
本当の意味で「記述力」を高めるには、実際に文章を書いてみることである。初めから、本格的な記述・論述問題に取り組むことも必要かもしれないが、まずは日頃考えていることを文章にしてみることを勧める。その際には、まず「テーマ」を決めること。文章を書く上で、漫然と文章をダラダラ書いてみても、受験における合格水準の記述力は身につかない。やはりテーマを決めて、初めは100~150字の文章を書いてみよう。書き出しは「自分は、○○について……と考える」と結論を初めに述べるようにしよう。そうすることによって、読み手は書き手の主張に引き込まれるのである。そのような字数の文章を15~20編書くことにより、自身の文章力は確実に高まり内容も濃いものになる。そのうえで、ハイレベルの記述式入試問題の演習を繰り返してゆくことが、確実に記述式問題の合格答案を作成する結果をもたらしてくれるのである。
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2025年度「桐朋高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、随筆に関する読解問題である<26分>。
内容把握はもちろんであるが、本文からの抜出し問題もあり記述対策(60~80字)をしっかり行っておくことが重要である。設問は「説明せよ」となっているので過不足ない記述答案ができるかどうかがポイント。
大問2は、人間に関する哲学的論説文読解問題である<20分>。
大問1同様、記述対策はしっかり行っておくこと。字数指定はないものの「わかりやすく説明」しなければならないので事前にしっかり記述対策を行っておくこと。漢字・慣用句などの知識も必ず出題されている。
【大問一】随筆に関する読解総合問題
- 時間配分:26分
出典は、岩瀬成子著『まだら模様の日々』。
(問一)語句問題<2分>。
ある日の朝、犬小屋で口から泡を吐いて死んでいたタロ。タロの突然の死に接して、驚き、悲しくなっているのである。
(問二)内容把握記述問題<3分>。
タロを死なせてしまったことに対する悔やむ気持ちが強く、二度と同じ過ちを犯さないように「(タロと)同じ茶色の犬」にタロという同じ名前を付けたのである。
(問三)内容把握記述問題<4分>。
・散歩をどのようなものとして把握・把握していたかを考える。
・「友だちが遊んでいるのを見たりすると、そこらの木にタロを繋いで友だちと遊びほうけて、タロを忘れた」のである。
(問四)内容把握記述問題問題<5分>。
(一)タロが死んでしまった原因となった大けがは、「わたし」が散歩に連れて行くことをせず放し飼いにしたことによってタロが被った大けがであったのである。
(二)本文には「犬たちは孤独に死んでいった。かわいがるふりだけする人間に裏切られて」とある。
(問五)内容把握問題<2分>。
「態度が大きい」ことや「態度が生意気」である状態を指す言葉である。
(問六)語句問題<3分>。
「辟易」は「うんざりして嫌になり口もききたくなくなること」である。
(問七)文脈把握問題<5分>。
母は、以前は犬に関して無関心であったが、「わたし」の犬に対する接し方などに感化され、「わたし」も兄も独立し家に母一人になったとき、自ら犬の世話をするようになったのである。
(問八)漢字書取り問題<2分>。
書取り問題は「膨」「我慢」「催促」「裸足」「斜」である。
【出題意図】
桐朋高校の国語は随筆文において、「心情把握」を重視した、記述中心の難易度の高い問題の出題が特徴である。
① 文学的文章(随筆文)が出題される。特に、動物・家族・幼少期の記憶・生死観といった心情の機微を描くテーマが多く選ばれる傾向がある。
② 記述問題が中心である。抜き出し問題や空所補充もあるが、設問の大部分は「〜の理由を本文全体からまとめて説明せよ」といった、内容の統合と要約を求める記述に割かれている。
③ 主人公や登場人物(ここでは「わたし」やその家族)の感情の変化を正確に捉えることが求められる。理由を問う問題では、その感情が生まれる直接的な出来事だけでなく、その背景にある登場人物の考え方や価値観まで含める必要がある。
※上記出題意図(心情把握)を踏まえて、以下の類似問題に挑戦しよう。短い文章であるが、心情把握を確実に行うことをメインに取り組むこと。
【類似問題】(制限時間:15分)
問 以下の文章を読み、後の問いに答えなさい。
私の家には古い時計がある。それは祖父が戦地から持ち帰った、秒針の音がやけに大きな柱時計だ。幼い頃、私はその時計の音を、祖父の心臓の音だと信じていた。なぜなら、祖父はいつも静かで、その時計の音だけが、部屋の中で唯一、彼が生きていることを私に知らせる、頼もしい証拠のように感じられたからだ。
やがて祖父が亡くなった。その日も時計は正確に時を刻み続けていたが、私には、その音が以前よりずっと小さく、遠いものに聞こえた。私は、時計の音を聞くたびに祖父の不在を強く意識し、思わず時計を止めようとした。しかし、祖母がそっと私の手を取り、「止めちゃだめだよ。あの人は、この音と一緒に、ずっとここで生きているんだから」と静かに言った。
問1. 幼い「私」が、祖父の心臓の音だと信じていた柱時計の音が、祖父の死後に「小さく、遠いものに聞こえた」のはなぜか。「私」が抱いた祖父の不在の意識と、時計の音の持つ意味の変化に着目して、80字以内の日本語で説明しなさい。
問2. 祖母はなぜ「私」に時計を止めないよう言ったのか。祖母にとっての「祖父の存在」と「時計の役割」という二つの観点を含め、80字以内の日本語で説明しなさい。
《解答・解説》
問1. 時計の音が、かつては祖父の生存を示す頼もしい証拠だったのに対し、祖父の死後、その音は祖父の絶対的な不在を強く意識させるものへと意味が変わり、その意識が音の聞こえ方を変化させたから。(79字
(解説)
変化の前: 「祖父の心臓の音」=「生きている証拠」(頼もしい)
変化の後: 「祖父の不在」を意識させる音となり、心の距離が遠くなったことを示しています。
問2. 祖母にとって時計の音は、祖父の命が尽きた後も、その存在や時間の流れを自宅に留め続ける役割を果たしており、音を止めることは祖父の思い出との繋がりを断ち切ることになるから。(80字)
(解説)
祖母にとっての祖父の存在: 「この音と一緒に、ずっとここで生きている」=記憶や魂の継続。
時計の役割: 祖父の心臓の音の代替、つまり祖父の存在を象徴的に留める媒体。
【大問二】てつがく人間に関する哲学的分野の論説読解問題
- 時間配分:24分
出典は、永田和宏著『知の体力』。
(問一)品詞問題<2分>。
「すこぶる」だけが副詞で、他は全て連体詞である。
(問二)内容把握記述問題<3分>。
「ぼっち席」とは、「まわりの視線を気にせず」落ち着いて食事がとれるということである。
(問三)文章表現問題<2分>。
文脈を考えると「<人の目>が黙って」、しかし、「確実に、しっかりと」「友だちがいない人間は駄目人間」なのであるというメッセージを伝えてくるのである。
(問四)語句問題<2分>。
「由々しき」とは「程度がはなはだしく看過できない状態」のことである。
(問五)内容把握選択問題<2分>。
「群れていなければ不安で仕方がない」という異常な状態が目に見える状態(顕在化)が「ぼっち席」ということであるならば、「学生に孤独になることの意味と価値をきちんと伝える必要」を筆者は感じているのである。
(問六)内容把握記述問題<4分>。
一人になるという外形上の「孤独」を嫌って、友だちと群れたとしても、そのような友人関係には深い絆を形成することは極めて困難であり、見かけ上のそして表面上の友人関係にしかすぎなくなってしまう。したがって、そのような友人関係は、真の友人関係ではなく、大切な友人が一人もいない状態になってしまうのである。
(問七)内容把握記述問題である<4分>。
一人になってしまうという外形上の「孤独」を恐れるあまり、誰かと群れるということをするのではなく、誰からも干渉されない場所で自分のことを内省し、自分という存在がいかなるものであるかをしっかり考え、自立した自我を確立することが重要である。
(問八)内容把握記述問題<5分>。
コロナの蔓延により、社会全体が「人と人との接触」を控えるようになった。結果、人々は一人の時間と空間を得ることとなり「のびのびとした自分の時間と空間」を享受したのである。一方、人間関係が以前に比較して極めて希薄になり「孤独」に対する不安感を増幅したのである。
【出題意図】
本文は、現代社会における「孤独(Solitude)」をテーマにした論説文である。単に「孤独=悪いもの」とするのではなく、孤独が持つ積極的な価値、特に自己の確認(自分との対話による自我の確立)や他者との適切な関係を築く土台としての重要性を説いている。
① 社会学、哲学、心理学系の論説文が頻出する。定義の明確化(「孤独」と「孤立」の違いなど)や、筆者の主張を支える論理展開の把握が求められる。
② 傍線部の内容を、本文全体の文脈や筆者の定義(ここでは「孤独」の積極的価値)に照らして正確に解釈する力が問われる。
③ 本文の内容を踏まえて現代社会の変化(コロナ禍など)と結びつけ、筆者の主張がどう変化するかを論理的に説明する、難易度の高い意見記述が求められている。
※上記出題意図(論理把握)を踏まえて、以下の類似問題に挑戦しよう。短い文章であるが、筆者の論理展開に従い、的確な内容把握を確実に行うことをメインに取り組むこと。
【類似問題】(制限時間:15分)
問 以下の文章を読み、後の問いに答えなさい。
現代の社会において、人々は常に情報に接続され、他者の意見や評価に囲まれています。この状態を「つながりすぎ」と呼びましょう。つながりすぎは一見、不安を解消してくれるように見えますが、実は真の自己を曖昧にします。なぜなら、私たちは他者の期待に応えるための役割を演じることに終始し、自分が本当に何を考え、何を感じているのかを知るための静寂な内省の時間を失ってしまうからです。
真に必要なのは、他者との接続を断ち切る「孤立」ではなく、一時的に外部の評価から離れ、自分自身との対話を行う「独考(ひとりかんがえ)」の空間です。独考は、個人が社会との間で適切な距離を保ち、他者の声に流されずに自立した意見を持つための、最も重要な土台となるのです。
問1. 筆者が考える「つながりすぎ」の状態が「真の自己を曖昧にする」のはなぜか、「他者の期待」と「内省の時間」という二つの要素を使って、80字以内の日本語で説明しなさい。
問2.筆者が「孤立」ではなく「独考」が必要だと主張する理由を、「他者の評価」と「自立した意見」という二つの観点を含め、80字以内の日本語で説明しなさい。
《解答・解説》
問1.常に他者の期待に応える役割を演じ続けることに時間と意識を奪われる結果、静寂な内省の時間を失い、自分が何を考え感じているかを知ることができなくなるため。(80字)
(解説)「つながりすぎ」がもたらす弊害(他者期待への集中)と、その結果(内省の欠如)を因果関係で結びつける。
問2.独考は一時的に他者の評価から離れて自分自身との対話を行う空間であり、その時間を経ることで、他者の声に流されずに社会との間に適切な距離を保った自立した意見を持つことができるから。(80字)
(解説)「独考」のプロセス(他者評価からの離脱)が、「自立した意見」を持つという結果につながることを説明する。
攻略ポイント
迅速で正確な読解力が求められる。文脈を丁寧にたどることはもちろんであるが、日頃の受験勉強においてどのような手法で勉強に取り組めば、合格できる読解力が身につくのであろうか。一つの答えとしては文章の「見える化」であろう。日頃の文章読解において、重要だと思う箇所に傍線を引いたり、段落又は文中にある接続詞(順接・逆説に注意しながら)に印をつけたりなどしながら読解することである。そのような作業を積み重ねてゆくうちに、合格できる迅速で確実な読解力が身につくのである。さらに、的確に内容を把握したうえで記述答案にまとめ上げる力が必要であるため、自分の考えを80~100字でまとめる練習を事前にしっかり行っておくことが不可欠である。さらに、そのような自分の記述答案を第三者に添削してもらうとさらに記述答案の完成度が高まるであろう。