早稲田大学本庄高等学院 入試対策
2025年度「早稲田大学本庄高等学院の国語」
攻略のための学習方法
きわめて抽象性の高い文章読解問題である。しかも、解答形式についても選択肢問題は殆どなく、圧倒的に記述式問題である。設問の文章自体が論理的であり、文章内容を的確に把握できるか否かが合格答案を書けるか否かを決定づける。受験生が最も苦手とする「論理的・抽象的文章」を如何にしたら確実に読み解けるかについて、以下にそのポイントを述べてみよう。
①論理的文章はなぜ難解なのか
そもそも「論理」とは何か。一言で言い表すことは非常に難しいが、敢えて誤解を恐れずに言い表すとすれば「言葉によって『思考』すること」であろう。そして、「思考」とは言葉によって考えることであるから、筆者の「論理展開」を丁寧に追いかけ、理解しなければならない。その「論理展開」を追いかける作業に受験生は限界を感じ、最後まで地道に論理を追い求めることができなくなってしまうのである。
そのような「壁」を乗り越えるためには、日頃から「物事を考え抜く習慣」を身に付けることである。それは、他人の言葉ではなく自分の言葉で、自分の論理で最後まで考え抜くことであり、「自分の言葉を大切にする」ということである。そのような「習慣」を持たない受験生にとって、論理的文章は馴染みにくく内容把握までには至らない結果になってしまうのである。それでは、論理的文章を読み解く具体的な手法について次項で一緒に考えてみよう。
②何が筆者の「結論」であるかを見つけること
目標は筆者の「主張」や「結論」を如何に的確に把握できるかである。そのための「読解術」は何かを考えてみよう。人間は自分の「言いたいこと」、「結論づけたいこと」は何度も繰り返す。また、それらは「キーワード」として文章の中に現れてくる。それらのことばについて本文を読みながら、○で囲んだり、傍線を引くなど「自分の手を動かすこと」が不可欠である。
そのような作業を本番入試で的確に行うためには、日頃から文章読解演習を行う際に必ず心掛けることである。初めは、的外れな個所に傍線を引いたり、理解力が浅いことによる「誤認」によって中々正解を抽出することが難しいかもしれない。しかし、諦めずに最後までその作業を徹底して繰り返すことである。個人差はあるだろうが、1~2ヶ月間続けることにより、必ず難解な文章を的確に読み解くことができるようになるのである。
③記述対策はどうするか
端的に自分の考えを文章にまとめ上げるという作業は、簡単そうで実は非常に難しい。自分の考えをまとめるだけだから簡単だろう、と思っている受験生がいたとしたら、即刻そのような考え方は改めた方がよい。自分の頭で思ったことを話すことだけでも十分に表現することは難しく、さらにその考えを文章にするということはさらに難しいであろう。
なぜかといえば、受験における「文章」とは読み手を説得させなければならないからである。
この「説得力」こそ「合否を分ける決定打」であり、「説得力」の内容は「言葉の選択」、「論理の展開」そして何より、「論理の明快さ」でなければならない。これらの要素を全て満足させる文章を書くということは、一朝一夕でできるわけではない。
日頃の努力、例えばその日一日の出来事に対する自分の考えを100字前後で書き上げ、文章表現力を高める努力を怠りなく積み上げることが重要である。
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2025年度「早稲田大学本庄高等学院の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問一】芸術・文学に関する論説文読解問題
- 時間配分:22分
出典は、『富士山』(著者:上垣外憲一)。
(問一)内容把握選択問題である<2分>。
本問の直前に「快楽を追い求めてやまない」とある。「快楽」は「利己」的である。
(問二)四字熟語問題<2分>。
「待ち遠しい状況」のことである。「一日千秋」の思いということ。
(問三)適切箇所抜出し問題である<3分>。
本文最後の箇所に「富士山に変わりはないが、それを見る人の心のあり方、民族や経歴が違っている」とあり、続けて「富士山は一切の近代的なものを排除した、なつかしくも尊い日本の伝統的な心性」と書いている。
(問四)内容把握選択問題である<2分>。
「正しくないもの」を選択する問題である。間違えて「正しいもの」を選択しないように注意すること。「山頂に雪が散っていき、次第に壮麗な白い峰々に変化」するのは富士ではない。本文に「ハーンはカナディアン・ロッキーの壮麗な白い峰」とある。
(問五)内容把握抜出し問題である<5分>。
日本の精神性(=宗教)に関する問題。本文には「日本の宗教は『神道と仏教、そして武士階級の場合は、…倫理性の極めて高い混合物』であって…」とある。
(問六)内容把握記述問題である<5分>。
「あらゆるものを死滅させる死んだ高い峰」が何を指すのかを考えることがポイントである。本文中に「西洋の偉大さは、その知的な面に、つまり科学文明にあるのであって、その宗教、倫理にあるのではない」、「その西洋の知性とは、冷たく凍った高山のようなもの」とある。
(問七)漢字の読取り問題である<3分>。
漢字の読みは「至(る)=いた」「穏(やか)=おだ」「権化=ごんげ」「景物=けいぶつ」「血潮=ちしお」
《本問の出題意図と類題》
※出題意図
本問の文章は、日本文化や国民性に対する外国人の視点を描いた評論です。早稲田大学本庄高等学院や慶應義塾などの早慶レベルの入試国語問題では、このような評論文・随筆文が出題される傾向にある。本問の文章からは、以下の出題意図が読み取れる。
1.多角的な視点の理解
筆者(ハーン)が、日本人の美意識や自然観を分析している点を読み取る力。特に、外国人の視点を通して日本の特異性を浮き彫りにする構造を理解することが重要である。
2.抽象的な概念の把握
「不思議に夢幻的な美しさ」「尊い日本の伝統的な心性」「日本の古い伝統的な、宗教的精神」といった、抽象的な概念が文章中でどのように説明されているかを正確に把握する力。
3.論理構成の把握
筆者が、具体的な描写(富士山の色の変化、景色の美しさ)から、より普遍的な思想(日本人の美意識、魂の精神)へと議論を展開する論理的な流れを追う力。
4.本文の正確な情報抽出
設問の要求に応じて、本文中の特定の箇所を正確に探し出し、それを基に解答を構成する力。
5.記述問題への対応力
筆者の主張や、本文中の比喩表現などが意味する内容を、自身の言葉で簡潔にまとめる記述力。
※類似問題に挑戦しよう!
問題
本文中では、西洋人が自然に対して抱く「美の観念」が、日本のそれとは異なると述べられている。この違いについて、本文の記述を基に80字以内で説明しなさい。
解答例
西洋人が科学や哲学を通じて客観的に分析し理解しようとする美の観念に対し、日本人は具体的な美の対象から直感的に心を揺さぶられ、魂の精神の深みを投影する点。(78字)
【大問二】小説に関する読解問題
- 時間配分:28分
出典は、『風鈴』(著者:松浦理英子)。
(問一)内容把握記述問題である<4分>。
本文中に、「父は集落を訪れる映像業界の人々をよく思っていなかった」「ミヤビはちょうど出番が終わった父親と一緒に東京へ帰った」とあり、最後の部分に「俳優である父親」ということから父親の職業は俳優であることがわかる。
(問二)内容把握記述問題である<4分>。
本文に「遊ぶ際に、それまではミヤビはまずワタルの家に、それからワタルとともにわたしの家に誘いに来るのが常だった」のであるが、「ある日いつまで待っても誰もわたしを誘いに来なかった」のである。
(問三)内容把握抜出し問題である<4分>。
本文には「ふとした折にワタルが感じている」のは「寂しさや羨ましさに対する罪悪感」とある。
(問四)内容把握選択問題である<3分>。
傍線部1の「奇妙な行動」に対する母の気持ちを推測する。
(問五)慣用句問題である<3分>。
「歓心を買う」とは「気に入るようにする」という意味である。
(問六)語句問題である<2分>。
「人を上手に操る方法」のことであり、「手管」という。
(問七)内容把握選択問題である<5分>。
外部(都会)からやってきた異質な存在(ミヤビ)が原因で、集落の子供たちの関係が徐々に崩れていく様を描いている。
(問八)漢字の書取り問題である<3分>。
「愉快」「無性」「淡泊[白]」「省」「滑」という漢字の書取り問題である。
ここで、類題問題(論説文、小説)を掲載する。短い文章ではあるが取り組んでみてほしい。
1.次の文章を読んで以下の問いに答えなさい。
現代社会は、情報の洪水の中にあります。私たちは毎日、膨大な量のニュースやデータにさらされ、知的好奇心を満たす一方で、その情報の「量」に圧倒されがちです。しかし、本当に重要なのは、情報の量ではなく、その「質」であると私は考えます。 情報が多ければ多いほど、私たちは物事を深く考える時間を奪われます。表面的な知識の断片をつなぎ合わせることに終始し、一つの事柄についてじっくりと掘り下げて考えることをしなくなります。これでは、単なる知識の収集家でしかありません。 真の知性とは、自ら問いを立て、情報を吟味し、自分なりの答えを導き出すプロセスに宿るものです。たとえば、一人の思想家の言葉に深く向き合い、その言葉が生まれた背景や、それが現代にどう通じるかを熟考する。これこそが、知的な営みと言えるでしょう。情報過多の時代だからこそ、私たちは意識的に①情報の「断食」を実践し、本質的な問いと向き合う時間を確保する必要があるのです。
問一 本文の筆者の主張として、最も適切なものを次の中から一つ選びなさい。
ア. 現代社会の情報過多は、私たちの知的好奇心を満たす上で不可欠な要素である。
イ. 情報を大量に集めることこそが、真の知性を身につけるための唯一の手段である。
ウ. 情報を吟味し、深く考察する時間を持つことこそが、知的な営みである。
エ. 表面的な知識の収集を効率的に行うことで、私たちは時代の変化に対応できる。
問二 傍線部①「情報の『断食』」とは、具体的にどのような行為を指すか。本文の論旨を踏まえ、60字以内で説明しなさい。
正解
問一 ウ
問二 情報過多の状況において、意識的に情報の摂取を控え、一つの事柄を深く考察する時間を確保すること。(59字)
2.次の文章を読んで以下の問いに答えなさい。
その洋館は、①忘れられた時間の中に佇んでいた。分厚いカーテンの隙間から差し込む陽の光は、部屋に舞う埃の粒を金色に照らし出し、時が止まったかのような錯覚を覚えた。かつて、ここで誰かが笑い、誰かが泣いた。その声は、もう遥か遠い記憶の残骸となり、風に吹かれて消えてしまった。 わたしは、使い古されたソファに腰を下ろし、壁にかかった色あせた写真を見つめた。そこには、幼い頃のわたしと、もういないあの人が写っている。わたしたちは、まるで遠い異国の王子と王女のように着飾っていて、その屈託のない笑顔は、現在のわたしとはあまりにもかけ離れていた。その写真を手に取ると、裏側には鉛筆で書かれた「二度と戻らない夏」という文字。わたしは、その言葉の意味を、今になってようやく理解できる気がした。この洋館は、わたしの心の中に永遠に閉じ込められた、②消えかけた夢の続きなのだろう。
問一 傍線部①「忘れられた時間の中に佇んでいた」とあるが、この洋館が「忘れられた時間」の中にあると表現されている理由として、最も適切なものを次の中から一つ選びなさい。
ア. 過去の住人がこの洋館での思い出を意図的に忘れ去ろうとしたから。
イ. 洋館の様子が、長い年月が経ち、誰も手入れをしていない状態だから。
ウ. 洋館が、遠い過去の記憶と現在の語り手をつなぐ唯一の場所だから。
エ. 語り手にとって、この洋館で過ごした時間が遠い過去の出来事だから。
問二 傍線部②「消えかけた夢の続き」とは、どのような内容を指しているか。「わたし」が洋館を訪れた心情を踏まえ、60字以内で説明しなさい。
正解
問一 イ
問二 幼い頃の無邪気な笑顔や、もう会えない「あの人」との楽しかった日々を、今も心の片隅で大切にしている心情。(59字)
攻略のポイント
論説文と小説からの出題であり、基本的には記述式問題である。選択肢問題は少なく、設問が要求している内容を的確に文章でまとめ上げられるか否かが合否の分かれ目であろう。
日頃から、自分の考えをまとめ上げる訓練を積むことである。
具体的には、日々感じたことを15分ぐらいの時間で書き留める習慣をつけることを勧める。自分の身辺に起きた出来事に対し感じたことを文章化するという作業は、論理をまとめ正確な読解力へ通じるのである。
漢字の読み書き問題(10題)などの知識問題の対策も怠りなく行うこと。