｢『地方自治』と『民主主義』､『政治』と『社会』をめぐるさまざまな問題についてのリード文｣からの出題。
｢公民｣と｢時事｣の基礎的な問題の中に、やや考えさせられるものが紛れている。
また、｢選択肢設問｣では｢適切｣と｢不適切｣とが混在しているので、注意を払う必要がある。以下、いくつかの小問を確認してみる。

[問１]　｢下線部についての事項記述設問｣(｢漢字４字｣指定)。｢時事｣単元。

｢リード文中｣の下線部①｢希望しているにもかかわらず、保育所に入れない子ども｣について、｢このような子どもたちのことを何というか｣を｢漢字４文字｣で答える。

直近の｢時事問題｣ではないので抜け落ちている諸君がいるかも知れない。｢答え｣は｢待機児童｣だ。
2016年にＳＮＳに投稿された｢保育園落ちた日本死ね!!!｣という言葉をきっかけに大きな社会問題となった。現在でも問題は解決されておらず、2018年10月現在、全国で約４万７千人余りとなっている(厚生労働省発表)。

尚、｢時事問題｣は当該年度だけではなく､過去数年間は押さえておかなければ対応できないので注意すること。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問３-(２)]　｢下線部についての条件付き理由説明記述設問｣(字数指定なし､｢30字ほど｣の解答欄)。｢公民｣単元。

下線部③｢地方自治｣について､｢国会議員の選挙とは別に知事や地方議会の議員を選挙したり、国が集める税金とは別に都道府県や市(区)町村が税金を集めたりするのはなぜか｣を説明する。
｢条件｣は､｢リード文中｣にある｢『住民の意思を地域の政治に反映すること』｣とは他の｢理由｣とすること。

｢知識｣だけでは太刀打ちできない｢考察｣が求められるなかなかの難問だ。｢考察｣するといっても何か手がかりがほしい。そこで、｢リード文｣を詳細に確認していく。
すると、下線部直前に｢地方自治｣とは｢住民がみずから地域のことを決めていく政治｣とある。ここから考えていくと、｢地域のことを住民自身が決めていく｣ためには、｢条件｣にある｢住民の意思を地域の政治に反映すること｣＝｢知事や地方議会議員の選挙｣の他に、｢決めたことを住民みずからのお金で予算化し、実行していくことが必要になる｣ことが分かるはずだ。
こうした｢地方自治の特性｣を簡潔にまとめていけばいい｡たとえば､｢地方自治は地域のことを住民自身が決め､実行していく政治だから｡｣(31字)といった｢答え｣になる。

｢リード文｣は､下線部だけではなく前後の｢文脈｣も大きな｢手がかり｣になると心得よ(｢国語｣と同じだ)｡

＜時間配分目安：２分＞

[問６]　｢下線部についての事項記述設問｣。｢時事｣単元。

｢リード文中｣の下線部⑥｢住民運動｣について、｢沖縄県では、名護市辺野古にみられるように、政府が進めようとしているある計画について反対する住民運動が続いている｣が、｢この計画とは何か｣を答える。

典型的な｢時事問題｣だ。問題文そのものについては、そういう｢住民運動｣が続いていることは誰もがよく知っているはずだ。が、｢ある計画｣を何と答えればいいのか？　とても悩ましい。
理解していることを整理したい。｢沖縄県宜野湾市の住宅密集地域にあるアメリカ軍普天間飛行場を､危険除去のために県内の名護市辺野古に移転しようという計画｣だ。このことを端的に答えたい。
たとえば、｢アメリカ軍普天間飛行場の移転計画｣という｢答え｣だ｡

｢用語｣そのものとして定着していなくても、内容を的確に理解していれば｢問題｣に応じて｢答え｣にできるということだ。そうした練習もしておく必要がある。

＜時間配分目安：１分弱＞

｢東北地方や北海道という地方や､少数派の人びとの側から日本の歴史を振り返ったリード文｣からの出題。
｢縄文時代｣～｢昭和時代｣(21世紀)までのさまざまな分野に及ぶ様子が説明されている。
｢不適切｣｢複数｣｢整序｣などの｢選択肢設問｣､｢事項･人名記述｣､｢説明記述｣等々と目まぐるしく解答形式が変わっていく｡まさに、本校の真骨頂発揮といったパターンだ。
先ずは混乱しないことが必須条件となる。また、｢正誤判別｣で紛らわしいものがあり、｢歴史｣単元として極端に難易度が高いわけではないが、一歩間違うと自爆もあり得る曲者の大問だ｡
悩ましい問題を中心に検証する。

[※]　｢地名･事項の空所補充記述設問｣(全３問)。

先ずは｢リード文｣全体の３カ所の空所について、〔あ〕〔い〕には｢地名｣､２カ所の〔う〕には｢共通して入る語句｣を答える。

〔あ〕＝｢平泉｣､〔い〕＝｢函館｣が｢答え｣だということは即決できる。
しかし、〔う〕はそれほどヤワではない。
｢(1997年に『アイヌ文化振興法』が制定された後も)アイヌの人びとは〔う〕としての権利を訴えてきた｣｢2008には国会で『アイヌ民族を〔う〕とすることを求める決議』が採択｣⇒さあ、どうだろうか？　｢答え｣は｢先住民族｣だ。

この｢語句｣､定着していたか？　なかなかの難問だ。本校ではやはり｢深知り知識｣が問われると心得よ。

＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問３]　｢下線部についての事項記述設問｣(複数解答)。

｢リード文中｣の下線部③｢税として布などを都に運んだ｣について、｢律令で定められている、布を納める税を何というか｣を｢二つ｣答える。

こんなもの､誰でも知っている。｢律令制度での税｣といえば｢租･庸･調｣､｢租｣＝｢それぞれの『国』に納める稲｣､｢庸｣＝｢都で働く代わりに納める布｣､｢調｣＝｢都に納める各地方の特産物｣に決まっている。なので、｢答え｣は｢庸｣､あれっ？　｢一つ｣しかないじゃん！　｢二つ｣？　どういうこと？　そう、これは曲者だ。ここは動揺せずに冷静に考えていきたい。
しっかりと思い出してみよう。｢地方の特産物｣だが、その基本は｢繊維製品｣(絹や麻など)だったはずだ。無論、それには｢布｣が含まれているわけだ。したがって、｢答え｣は｢庸｣｢調｣となる。

本問は典型的だが、名称が異なることがらではその｢違い｣が分からなくては判別できないので、テキストではそれぞれの｢特徴｣として｢違い｣を強調していて、｢共通点｣にはあまり触れられていないことが多い。
そうしたことを踏まえて、的確に理解しておく必要があるのだ。
本校ではそこを突かれ、｢真の理解力｣が求められるということだ。

＜時間配分目安：１分＞

[問５]　｢下線部についての時代判別および年代整序選択肢設問｣(８択)。

｢リード文中｣の下線部⑤の｢平安時代｣における｢出来事｣を､示されている(イ)～(チ)の中から｢４つ選び｣､｢年代の古い順に並べたとき｣に､｢３番目｣になるものを答える。

２段階での｢年代整序｣なので､なかなか厄介だ。先ずは、｢平安時代｣以外を｢消去｣したい。
(イ)｢最初の遣唐使｣⇒飛鳥時代(630年)、犬上御田鍬(いぬがみのみたすき)が派遣された｡
(ニ)｢鑑真来日｣⇒奈良時代(753年)､５度の失敗を経て来日｡
(ホ)｢法隆寺建立｣⇒飛鳥時代(607年)､無論、聖徳太子によるもの｡
(チ)｢古事記｣⇒奈良時代(712年)､稗田阿礼(ひえだのあれ)が誦習(しょうしゅう)したものを太安万侶(おおのやすまろ)が編纂(へんさん)｡
以上を｢消去｣して残りが｢４つ｣だ。各選択肢から｢平安時代の時期｣を特定していきたい。
(ロ)｢藤原道長が政治の実権｣⇒中期、摂政になったのが1016 年｡
(ハ)｢平清盛が太政大臣｣⇒末期(1167年)｡
(ヘ)｢保元の乱｣⇒後期(1156年)｡
(ト)｢遣唐使中止｣⇒中期(894年)､菅原道真の進言。

仮に｢年代｣が曖昧(あいまい)でも､菅原氏を追い落として藤原氏による｢摂関政治｣全盛に⇒(ト)→(ロ)､｢院政｣→｢保元の乱｣→｢平治の乱｣→｢平氏の政治｣⇒(ヘ)→(ハ)､こうした｢流れ｣で年代整序できるはずだ。
(ト)→(ロ)→(ヘ)→(ハ)の順。したがって､｢３番目｣なので｢答え｣は(ヘ)。

尚、｢年代整序｣では正確さが危うい｢年代｣の｢数字｣だけに頼るのではなく、｢背景｣や｢流れ｣を理解した上で｢整序｣していくことが肝要だ。

＜時間配分目安：１分強＞

[問８]　｢下線部についての位置特定選択肢設問｣(５択)。

｢リード文中｣の下線部⑧｢伊達政宗｣の領地から｢最も離れたところに領地があった戦国大名｣を答える。

戦国大名の｢支配領域｣､テキストにそれを示した地図があったはず。どれほど正確に覚えているかが、勝負の分かれ目となる。
先ずは｢伊達政宗｣だが、｢仙台藩｣だということは知っていなくてはいけない。次に各選択肢の戦国大名を確認したい｡
(イ)｢今川氏｣⇒すぐに｢桶狭間の戦い｣で織田信長に敗れた｢駿河｣の大名だと結びつくはず､
(ロ)｢武田氏｣⇒これまた信長つながりで、｢長篠の戦い｣で敗北した｢甲斐｣の｢武田勝頼｣が結びつく､
(ハ)｢北条氏｣⇒豊臣秀吉の｢天下統一｣の最後は｢北条氏｣への｢小田原攻め｣で確定､
(ニ)｢毛利氏｣⇒誰もが知っている｢中国地方｣を領有した大名､
(ホ)｢上杉氏｣⇒｢川中島の戦い｣で｢武田氏｣と争った､そう｢越後｣を支配していた。

というわけで、｢仙台藩｣から｢最も離れたところ｣は｢中国地方｣なので､｢答え｣は(ニ)だ。

なかなか手強い難問だった。本校ではこうした｢細部にこだわる問題｣があると心得よ。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問13]　｢下線部に関連する不適切選択肢設問｣(５択/複数完全解答)。

｢リード文中｣の下線部⑬｢1890年に第一回衆議院議員選挙が行われたとき、北海道では実施されず｣に関連して､北海道とともに沖縄でも遅れて選挙が行われたが、｢沖縄の歴史｣についての(イ)～(ホ)の説明で､｢正しくないもの｣を｢二つ｣答える。

各選択肢の｢キーワード｣で正誤判別していく。
(イ)｢室町時代に成立した琉球王国｣｢貿易で栄えた｣⇒1429年､尚巴志(しょうはし)が琉球を統一して成立､｢中継貿易｣で繁栄したのは周知のこと＝適切､
(ロ)｢江戸時代の初め､薩摩藩が征服｣｢中国との貿易は中止｣⇒征服された後も｢朝貢貿易｣は続いたことは知っているはず＝不適切､
(ハ)｢明治時代、日本は琉球王国を琉球藩とし、さらに軍事力を背景に沖縄県とした｣⇒言わずと知れた｢琉球処分｣のことだ＝適切､
(ニ)｢第二次世界大戦末期、アメリカ軍が上陸、地上戦によって多くの一般人が犠牲になった｣⇒1945年４月～６月の｢沖縄戦｣は必須定着事項＝適切､
(ホ)｢日中平和友好条約締結のとき、沖縄ではアメリカによる統治が続いていた｣⇒｢沖縄返還｣はいつだったか？　｢1972年５月｣だとはっきりと覚えていたい。そして、同年９月に｢日中共同声明｣が調印されている。｢日中平和友好条約｣は｢1978年｣だ。混同しないこと＝不適切｡

よって、｢答え｣は(ロ)(ホ)となる｡

｢正誤判別｣では､｢内容｣は当然として､｢時期｣(｢同年｣のことがらではその順序にも注意)についても的確に判別することが肝要。

＜時間配分目安：２分弱＞

｢四国地方への旅行先からの葉書の文面｣に関する出題。｢日本地図｣｢統計資料｣｢地図記号｣などからの､典型的な｢地理｣の設問が連なっている。
ただ、中には紛らわしい問題もあるので注意したい。そうした小問のいくつかを検証する。

[問１-(１)]　｢下線部に関する統計資料読み取りの事項記述設問｣。

｢文面中｣の下線部①｢四国地方｣に関して、示されている｢日本地図｣(｢都道府県境｣が描かれている)には､｢四国地方｣を除く､｢米｣｢小麦｣｢にんじん｣｢なす｣のいずれかの｢各都道府県別生産量｣が｢円｣の大きさで表されている。そこで示されている｢農作物名｣を答える。

地図上の｢円｣を丁寧に確認する。｢北海道｣が圧倒的に大きく、次に｢福岡県｣､さらに｢佐賀県｣と続いていることが読み取れる。
上記の｢農作物｣で｢生産量｣がこの順といえば、そう、｢答え｣＝｢小麦｣だと判別できなくてはいけない。ちなみに、｢４位｣は｢愛知県｣で｢５位｣は｢群馬県｣だ。

尚、｢農作物｣の｢都道府県ランキング｣は本校に限らず必出事項だ。さまざまなものについての最新データを定着させておかなければならない。

＜時間配分目安：30秒弱＞

[問３]　｢下線部についての組み合わせ選択肢設問｣(５択)。

｢文面中｣の下線部③｢世界遺産｣について､示されている(イ)～(ホ)は｢日本の世界遺産に指定されているものと、現在の地図記号の組み合わせ｣だが、このうち｢正しいもの｣を答える。

各選択肢を確認する。
(イ)｢日光東照宮 ｣､(ロ)｢富岡製糸場 ｣､(ハ)｢屋久島の縄文杉 ｣､(ニ)｢原爆ドーム ｣､(ホ)｢石見銀山 ｣となっている。
各項目は全て｢世界遺産｣に登録されているのでその点では｢消去｣できない。
｢地図記号｣のチェックだ。
｢日光東照宮｣は｢神社｣なので、｢｣ではなく｢｣､｢富岡製糸場｣は確かに｢工場 ｣だったが今は閉鎖されているし、｢石見銀山｣も｢採鉱地 ｣だったが閉山となっているので、両者ともに｢史跡 ｣だ。また、｢縄文杉｣は｢針葉樹林 ｣であって、｢桑畑 ｣ではない。
ということで、｢答え｣は(ニ)の｢原爆ドーム｣＝｢史跡 ｣になる。

本問の｢地図記号｣程度は誰もが押さえているだろうが、それだけでは答えられない。｢閉鎖｣｢閉山｣といったひとひねりが加わっていた。難問だ。やはり、本校は一筋縄ではいかない。

尚、本問では無理だったが、｢組み合わせ選択肢｣では｢ひとつの項目｣で先ず｢消去｣するという手法が欠かせない。

＜時間配分目安：１分強＞

[問５-(１)]　｢下線部についての不適切選択肢設問｣(５択/複数解答)。

｢文面中｣の下線部⑤｢瀬戸大橋をわたって、新幹線に乗って東京へ帰ります｣について､｢終点の東京に着くまで｣に｢横切った川｣として､｢正しくないもの｣を｢二つ｣答える。

先ずは各選択肢の｢河川｣の位置を特定したい。
(イ)｢多摩川｣⇒山梨県→東京都と神奈川県の境､
(ロ)｢富士川｣⇒山梨県→静岡県の駿河湾､
(ハ)｢紀ノ川｣⇒奈良県→和歌山県､
(ニ)｢江の川｣⇒広島県→島根県､
(ホ)｢木曽川｣⇒長野県→岐阜県と愛知県の境｡

｢瀬戸大橋｣ということは｢本四連絡橋｣の｢児島･坂出ルート｣なので、｢香川県｣→｢岡山県｣になる。そこから｢東京｣へ向かうのだから当然、｢紀ノ川｣と｢江の川｣は横切らない。
したがって、｢答え｣は(ハ)(ニ)だ。

さまざまな｢自然地名｣､とこに｢河川｣は頻出なので、確実に押さえて、その流れているルートも地図でしっかりと確認しておくことが肝要｡

＜時間配分目安：１分弱＞