青山学院高等部 入試対策
2025年度「青山学院高等部の国語」
攻略のための学習方法
〇長文読解
文章量の多さが、やはり本校の特徴といえるだろう
例年、現代文2題で合わせて9000字ほど、これに古文を加えておよそ10000字の文章に目を通す必要があったが、2022年度では約6600字、2023年ではまた約12000字で2024年度は約9000字で2025年度では約11000字と年度により文量にばらつきがある。
設問は書き抜き・穴埋め・選択肢と一般的な国語の試験で見慣れた形式であるが、これだけの長文だと正解や手がかりを探すのに手間がかかる。読むスピードとともに要点を整理する手際の良さが求められる。
まずは長文読解の基本に忠実に。
説明的文章であれば、形式段落→意味段落の整理。段落の最初と最後に注意しながら要点のチェック。それらをまとめて要約し、要旨・結論を把握。本文を読み進めながら印や下線を用いて上記のようなポイントを目立つようにしておく。
文学的文章であれば場面・段落の変わり目をマーク。登場人物・筆者の気持ちや意見とその変化に最大の注意を払いながら、重要な発言や行動をチェック。そこからテーマとそれに対する人物や筆者の考えを読み取る。印・下線を使ってすぐ探せるようにしておくことはもちろん有効である。
長文の問題では、部分的に戻って確認する程度はできても、全体を読み返す時間はおそらく無い。1回の読みで上記のプロセスを終えなければならないので集中力と慣れが必要である。同程度の文量の問題でしつこく練習しておくこと。
と、理想を言えばそうなのだが、現実にはなかなかそうはいかない。本校のような長文の試験で全ての設問に時間をかけるのはやはり無理がある。全問に正解しようと気張らないことである。設問を見てピンと来ないものは後回し。できる問題をまずは拾って最後まで目を通すこと。
合格最低点は6割5分ほどである。
〇古文
他の中高一貫の高校にも言えることだが、試験を受けるのはまだ中学生なのに、出された問題はすでに高校レベルであるという点がなんとも厄介である。しかも本校の問題はなかなかに難しく、低レベルの大学ならこれくらいの問題は出してもおかしくない難易度である。
当然、中学で軽くなぞった程度の古文学習では足りないので、本校の古文に本格的に対策する場合は、いっそ高校古文の基本レベルの教材を使ってしまおう。
難しいとは言っても、難解な助詞・助動詞の区別や複雑な文法まで問われるわけではない。
おおよそは文章の内容理解が主で、あらすじが理解できれば答えられる問題が多い。最重要単語100~200や、基本的な文法だけ覚えて、なるべく多く文章にあたって古文に慣れておくことである。
また、問題構成を見ると現代文の長文読解18問・漢字と言語事項14問・古文読解9問という割合(2025年度)で、現代文読解に比重がある点を考え、前半で点を稼げる自信があるなら古文は3~5割の正解でよしとするのもひとつの考えではある。
〇漢字・その他
漢字の読み・書きは毎年出題されている。手を抜かなければ得点できる分野なので、全問正解を望みたい。言葉の意味など、言語事項も数問出される。
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2025年度「青山学院高等部の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問は4つ。2025年度は論説文と随筆文の2題で約10000字・古文1200字で約11000字になり、昨年度よりやや多かった
やはり比重の大きい現代文2問をなるべく急いで、答えられる問題をしっかりこなし、残りを古文に当てるのが順当だろう。
漢字は8問出題され、できれば失点無しですませたいが、中学で習う漢字の中でもやや難しいものが見られるのでしっかり覚えておきたい。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:16分
欧米と日本の自然に対する見方の違いを比べながら、日本の伝統的な感性である「心と一体になった自然」を守り、個人がそれぞれ個性を持った存在として認め合うコミュニティを作る必要があると述べている。
問一 枕草子
問二 日本にも時代によって移り変わる景色がある→日本の原風景と言えば照葉樹林である→しかし、唱歌で歌われたのは田園の風景である→田園は弥生時代以降であろう→ただ、神社は今でも照葉樹林に覆われている⇒神社には縄文時代の原風景、暮らしには弥生時代の原風景が宿っている
問三 「人間だけが自分の意思で自然を作り変えることができた」とあるので、「言葉と意識」が選べる。
問四 自己の意識こそが「この」世界を成り立たせている根拠……であるから、「この」世界を認識しているのがだれなのかという「主語」がはっきりしないと、その示す世界もはっきりしないのである→選択肢3。
問五 西田の考えも和辻の考えも、人間と環境を区別する西洋式の「主語の論理」ではなく、自分と風景・環境が一体化している「述語の論理」に基づいていると言える。
問六 生物はそれぞれの能力で別々の「環環境」を認知している。人間にとっては、そこに暮らす人間と一体で精神世界の表彰でもある「風土」が、生物で言う「環環境」に当たると考えられる。
問七 昆虫を標本にして研究するだけでは、生物を部分的にしか理解できない。生物の本質である「生命の流れ」や「未来を先取りする能力」は、生きて働き変異して主体性を発展させる「生きている生物」を研究することでしか知ることは出来ないのである→選択肢4。
問八 「人間は何百万年も自然の一部として心身を鍛えてきた」「自然は人々の個性を発揮させる」、そのような自然を文化というフィルターを通して認識してきた「反作用」として、こんどは自然が文化を造り文化が情緒を作るという「心と一体になった自然」が立ち現れるのである。
問九
1. ハイデッガーの感想は「環世界」を誤解していると筆者に指摘されている。
2. 自然学と自然科学の説明が逆である。
4. コミュニティを刷新させる原動力は、時間とともに移り行く自然にあると述べられている。
5. シャーマは、文化が違えば色の見え方も違うと述べているので、合わない。
〔ワンポイント!――記号選択問題といえども、記述で答えられるくらいに読解できていなければ正解を選べない。自分の予測した答えが選択肢にあるくらいが理想であるが、もちろん他の選択肢の吟味もして消去法で選んでも正解にはたどり着ける。〕
<時間配分目安:16分>
【大問二】随筆分の読解
- 時間配分:14分
家庭の食卓を定点観測した報告書から見える現代の日本の家庭の姿について考察している。
問一 鹿児島の農家でいただいた採れたてのきゅうりのおいしさを、はしゃいだように大げさに伝えてしまうという「東京の人」としての悪癖を「イタい(みっともない・恥ずかしい)行動」と言う意味で自己卑下する感覚であろう。
問二 4
問三 4
問四 『家族の勝手でしょ!』というタイトルと「喜劇」とうサブタイトルには、「食卓に勝手でしょと居直らせて、返す刀で喜劇と断じる」という、読者への「挑発」とも思える意図が感じられる。
問五 およそ丁寧な調理・健康な食事とは思えない写真の数々には、現実の生活なんて理想通りにはいかないでしょという人々の諦観(あきらめ)・開き直りがあらわれているのである。
問六 普通の家族の食卓の実際を示すレポートによって、怠けたい気落ちやいい加減な生活という、他人事ではない我々の現実を突きつけられてしまう点で、「怖い」わけである。
問七 3
問八 「家族がおたがいに向き合う関係」のひとつの形として短歌が紹介されているので、選択肢3がよい。
〔ワンポイント!――本校は文学史や短歌・俳句などの出題もある。問題数は少ないが答えられれば有利なので、対策はしておこう。〕
<時間配分目安:14分>
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:12分
いい加減な予言者の言葉を恐れていたある男が、実際に起こった地震に慌てふためき、妻と住居を失うことになった話。「なゐ」は地震のことで、「ふる」をともなって「地震が起こる」の意。
問一 さようにはあるまじきぞ――そんなこと(地震が起こる)にはならないだろう
問二 「男たるもの、顔に出して恐れ惑ったら、人に笑われるのも悔しい」と思って、「そうでない」ようすで寝ていた。
問三 「いまにも地震が起こって、(予言した男が言っていたように)泥の海になるか、火の雨がふるだろうか」と思っていたところ……。
問四 ひつじ
問五 大きな地震がきたので「人も鳥もけだものも、皆一緒に成仏するのだ。しかし、もしや逃げられることもあるかも、走れるだけ逃げてみよう」といって妻の手を引っ張って……。
問六 男が連れて逃げたのは、地震を恐れて家に逃げ込んできた熊野比丘尼だったのである。
問七 「地震(なゐふる)よりも妻に振られる方が苦しい、機嫌を直してくれと言おう、地震のときに世直し(地震のとき唱えるおまじない)というように」
問八 「自分が(女房を置いて)出ていったら、世間は浅はかと言うだろうか、このいさかいを世間の人は知らないのだから」
問九 水無月(6月)の次は文月(7月)。
問十 5. 地震を怖がり慌てたせいで家を追い出されるはめになったので、合っている。
〔ワンポイント!――本校は古文もしっかり出題される。中学の授業だけでは練習不足なので、きちんとした教材を使い、基本的な単語くらいは暗記しておくべきである。〕
<時間配分目安:12分>
【大問四】漢字の読み書き
- 時間配分:8分
問1 ① みぞう ② かも(す) ③ 倒錯 ④ 深紅 ⑤ 払拭
問2
① 清算――精密・聖人・生還・清涼・正常
② 不断――果断・団結・暖冬・糾弾・対談
③ 覆水――反復・副会長・至福・起伏・転覆
問3 ① 射 ② 枚 ③ 山 ④ 同 ⑤ 三・四
<時間配分目安:8分>
攻略ポイント
現代文・特に説明的文章の読解には十分な対策をしておくこと。テストの形式はクセのない一般的なものなので、過去問を含めて他の学校の問題も良い練習になるはずである。長文読解の場数を踏んでおこう。
記述問題がないのは時間的に助かるが、選択肢を考え分けるのに時間がかかる問題もあるので、それほどの余裕はない。手に負えないと感じた問題は諦めて、とにかく最後まで手を付けることである。
その上で残った余裕を古文に回す。
全体として、読解のスピードが必要となるので、意識して訓練しておかれたい。