霊長類学者でゴリラ研究の第一人者である著者が、人類と自然の付き合い方、人類と文明、人類と戦争など、さまざまな切り口から、文明を変える力への期待、希望について論じている。本文では、時間とともに変化する自然を直観で理解することは、未来のコミュニケーションで個性を認め合う感性を育てていくことになると指摘している。いくつか難解な専門用語や未知の個人名があろうが、｢*注｣も活用して内容を理解したい。｢漢字｣を含めた｢総合的知識問題｣や、｢内容説明｣｢換言説明｣｢理由説明｣といった多様な小問が続いている。以下、いくつか検証してみたい。

[問１]　｢漢字の読み書き｣(全５問｡｢書きとり｣４問･｢読み｣１問/記述式)｡
例年と比較して難易度が上がっている。だが、本校志望者はできれば｢全問正解｣といきたい。確認する。
二重傍線部(ａ)｢邦訳された｣＝｢ホウヤク｣⇒悩むかも⇒｢外国語の文章を日本語に訳す｣ことだ。(ｂ)｢人間の精神世界のヒョウショウである｣＝｢表象｣⇒これまた馴染みが薄いはず⇒｢知覚してはいない事物や現象について、心に描く像｡イメージ｡象徴｣のことだ。(ｃ)｢主体性をゼンテイとして……｣＝｢前提｣⇒これは問題なし｡(ｄ)｢昆虫を集めてヒョウホン箱にとどめている｣＝｢標本｣⇒書けないはずがない。(ｅ)｢契機が潜んでおり｣＝｢けいき｣⇒｢きっかけ｡動機｣という意味も押さえておきたい。
尚、わざわざ問題文に｢一点一画を正確に書くこと｣と記されている。｢失点｣せぬよう丁寧に書くべし。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問４]　｢理由説明選択肢｣(５択/マーク式)。
傍線部(Ｃ)｢生きるという働きに立脚して見るならば、その働きは行為的に見られるものでなければならない｣について、｢その理由｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡
ここは｢理由言説明｣なので、｢行為的に見られるものでなければならない｣ことの｢直接的理由｣として結びつかない｢説明｣を｢消去｣したい。
各選択肢の｢文末｣⇒｢だから｣⇒｢行為的に見られるものでなければならない｣とつながるかどうかだ(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)。確認する。
①  ｢自己を含めることができるから｣、②｢自然を心身で感じ取っているから｣、③｢主体的に自然を作り変えているから｣、④｢『主語の論理』ではなく『述語の論理』で認め合っているから｣、⑤｢認知されているから｣｡さあ、どうだろうか？
｢行為的に見られるもの｣なのだから、｢心身で感じ取っている｣以外は｢消去｣できなくてはいけない。念のために、｢同一意味段落｣で他の部分の説明を確認する(｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠｣｢手がかり｣がある)。特に誤っていないと分かる。よって、｢答え｣は②だ｡実に清々しい｢一発消去｣ではないか。 ｢原意消去｣を徹底的に練習し、応用できるようにすべし。  
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分強＞

[問６]　｢換言説明選択肢｣(５択/マーク式)。
傍線部(Ｅ)の｢客観主義的な、還元主義的な考え｣とは｢どのような考えか｣を答える。無論、｢原意消去｣からだ。ここは｢換言説明｣なので、｢客観主義的｣｢還元主義的｣の｢原意｣と結びつかない｢換言｣を｢消去｣することになる。各選択肢の｢文末｣と照合する。
①｢『主語の論理』を使わなければならない、という考え｣､②｢『風土』を分析しなければならない、という考え｣､③｢主体性の発展として理解しなければならない、という考え｣､④｢(対象を分類して部分的に切り分け、)徹底的に分析しなければならない、という考え｣､⑤｢共感力を高めなければならない、という考え｣｡悩む必要は一切ない。
｢客観主義的｣＝｢客観的基準によって行動する(考える)｣、｢還元主義的｣＝｢複雑な事象やシステムをより基本的な要素や法則に分解し、それらを理解することで全体を説明しようとする考え方｣だということは知っているはずだ。｢(対象を分類して部分的に切り分け)徹底的に分析｣以外は｢消去｣可能に決まっている。念のために｢同一意味段落｣で他の部分の説明を確認しても特に誤りはない。したがって、｢答え｣は④だ。
改めての｢一発消去｣！ 畏るべし｢原意消去｣！ 必ずマスターして応用できるようにすべし。
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[問７]　｢空所補充の語句選択肢｣(５択/マーク式)。
本文中の空所　　Ｘ　　に｢当てはめる語｣を答える。空所部前後は｢生物どうしはその場を共有しつつ　　Ｘ　　を用いて認め合い、棲(す)み分けている｣となっている。
つまり、　　Ｘ　　＝｢生物どうし｣が｢認め合い、棲み分ける｣ために｢用いるもの｣になる。｢同一意味段落｣から読み解いていきたい。｢生物｣は｢時間と空間という相異なる現象を同時に直接把握する｣ので、お互いが｢認め合い、棲み分ける｣ことができると読み解ける。
各選択肢は、①｢身体｣･②｢情報｣･③｢ネットワーク｣･④｢言葉｣･⑤｢直観｣。｢直接把握する｣のだから、｢答え｣は⑤の｢直観｣だと判別できなくてはいけない。
｢同一意味段落｣の｢文脈｣を正確に読み解き、｢原意｣の微妙な相違をも意識する必要があると心得よ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分半＞

意外な方向へ自分の人生が延びていく可能性を感じていた｢ももちゃんのお父さん｣たが、結局は本気になれるものがなかったということかもしれないと思い、漠然と職を探していた――そんな｢ももちゃんのお父さん｣が、遠くにあれば陳腐にしか思えない｢まだまだこれから、満を持していよいよ｣という言葉を自分ごととして呟(つぶや)き、活力を感じられるようになっていく姿を描いている。
文章は分かりやすく、内容もすぐに理解できる。｢空所補充｣、｢理由説明｣、｢表現内容合致｣などと、｢小説｣のオーソドックスな小問ばかりだ。手際よく解き進めていきたい。以下、何問かを検討する。

[問１]　｢空所補充の語句の組み合わせ選択肢｣(５択/マーク式)。
空所　ⅰ　～　ⅲ　に｢当てはまる語句｣の｢組み合わせ｣を答える。選択肢にある候補は｢副詞｣の｢オノマトペ｣だ。空所前後の｢文脈｣から、各空所にあてはまる｢語句｣を特定していきたい。　ⅰ　には｢だんだん｣、　ⅱ　には｢どんどん｣、　ⅲ　には｢じりじり｣がそれぞれあてはまると分かる｡したがって、その｢組み合わせ｣になっている選択肢⑤が｢答え｣だ。
尚、｢接続詞｣｢副詞｣などの｢空所補充｣は本校に限らず頻出だ｡その際、｢接続詞｣では｢逆接｣以外には十分に注意しなくてはいけない。｢逆接｣以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢文脈｣を確認する必要がある。また、段落冒頭の｢接続詞｣は前段落全ての内容を受けているので注意すること。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分＞

[問２]　｢空所補充の漢字記述｣(｢２字の漢字｣/記述式)｡
総合的知識問題。｢四字熟語｣。空所　　Ｘ　　に｢二字の漢字｣を入れて｢遠回しな言い方をしないで、直接、問題点に触れること｣という意味の｢四字熟語｣を完成させる。
空所部分は｢　　Ｘ　　直入｣となっているのだから、｢答え｣は｢単刀(直入)｣だと即答できなくてはいけない。
本校では、｢四字熟語｣だけではなく、｢故事成語｣｢ことわざ｣｢慣用句｣なども頻出なので完璧にしておきたい。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問３]　｢空所補充の漢字記述｣(｢２字の漢字｣/記述式)｡
総合的知識問題。｢慣用表現｣。空所　　Ｙ　　に｢二字の漢字｣を入れて｢どの方面にも差しさわりがあって手の打ちようがない｣という意味の｢言葉｣を完成させる。
空所部分は｢　　Ｙ　　塞がり｣となっている。｢答え｣は｢八方(塞がり)｣になる。もともとは陰陽道において｢いずれの方角も悪く、どの方向にも進むことのできない状況｣を指した。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問７]　｢換言説明選択肢｣(５択/マーク式)。
傍線部(Ｄ)｢そういうときに必要なのは、本気さじゃなくて、決断する力なのかもしれない｣とは｢どのいうことか｣を答える。｢指示語｣があるので開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)。直前から｢そういうとき｣＝｢人生で決断を迫られるとき｣だと読み取れるはずだ。この｢指示語換言｣で｢原意消去｣したい。ここでは、各選択肢の｢冒頭部分｣と照合することになる。
①｢決断が次の決断をまた迫ってくるような時｣､②｢間違えられない決断を迫られている時｣､③｢人生の決断を迫られている時｣､④｢正解も不正解もない選択を迫られる時｣､⑤｢本気の決断が迫られる時｣｡悩む必要は一切ない。｢人生で決断を迫られるとき｣のだから、そのままの｢換言説明｣である③以外は｢消去｣可能に決まっている。
念のために｢同一場面｣で他の部分の説明を確認しても特に誤りはない(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。したがって、｢答え｣は③だ。改めての見事な｢一発消去｣ではないか。
畏るべし｢原意消去｣！ ｢小説｣でも役立つ。必ずマスターして応用できるようにすべし。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分強＞

[問10]　｢助詞の用法選択肢｣(５択/マーク式)。
総合的知識問題。｢口語文法｣だ。波線部｢実際になった道と｣の｢と｣と｢文法的に同じもの｣を答える。波線部の直後に｢そうでなかったいまに続く道｣とあるので、ここでの｢と｣は｢並立｣の｢格助詞｣だと特定できなくてはいけない。各選択肢の｢と｣を確認し、｢答え｣を出していく。①｢その乗り物の運転係として｣⇒｢～の立場で｣という意味の連語｢として｣の一部。②｢子どもと接する｣⇒｢相手｣を表す｢格助詞｣。③｢期待と興奮｣⇒｢並立｣の｢格助詞｣。④｢絶対になかったとも思わない｣⇒｢引用｣の｢格助詞｣。⑤｢年をとると｣⇒｢結果｣の｢格助詞｣。ゆえに、｢答え｣は③になる。
本校では、｢口語文法｣がほぼ必出なので、仕組みを完全に理解して練習を繰り返しておくこと。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分強＞

※尚、[問９]は｢本文内容合致(表現の説明)の選択肢設問｣(５択)だ。
｢論説文｣であれば｢本文内容合致｣＝｢論旨合致｣と捉え、｢序論部｣及び｢結論部｣と照合すればいいが、本問のような｢小説｣では｢本文全ての内容｣と照合する必要があり、とても手間がかかる。したがって、戦術的には｢あとまわし｣にすべきだ。無論、｢捨て問｣でも構わない。

｢古今著聞集｣は｢今昔物語集｣｢宇治拾遺物語｣とともに｢日本三大説話集｣のひとつで、鎌倉時代中期の世俗説話集。事実に基づいた古今の説話を集成することで、懐古的な思想を今に伝えようとしている。全20巻で726話を収録。本文は、巻第二の六八。｢現代語訳｣や｢内容解釈｣、そして、｢本文内容合致｣など、多種多様な小問が並んでいる。以下、いくつか検討してみよう。

[問２]　｢内容解釈の選択肢｣(５択/マーク式)。
傍線部(Ａ)｢むなしくてやみにけり｣の｢解釈｣を答える。｢むなしくてやみにけり｣⇒｢むなし｣(中に何もない)＋｢やむ｣(おわる)＋｢にけり｣(～てしまった)⇒｢答え｣は②の｢何もしないで過ぎてしまった｣。
｢古文｣の｢重要基本単語｣は押さえておくこと。
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[問３]　｢内容解釈の選択肢｣(５択/マーク式)。
傍線部(Ｂ)｢十余年にははてなん｣の｢解釈｣を答える。｢はてなん｣⇒｢はつ｣(終わる)＋｢なん(なむ)｣(～だろう)⇒｢答え｣は①の｢十数年かけたら完成するだろう｣。
｢古典文法｣についても、｢基本的事項｣は確認しておくことが肝要だ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分弱＞

[問６]　｢本文内容合致の選択肢｣(５択/マーク式)。
｢本文の内容と合致するもの｣を答える。長家が大般若経を全て書写したことで、鬼の姿をした神々に加護されている様子を見た親守は｢かかる不思議こそありしか｣(＝このような不思議なことがあった)と語ったのだから、｢不思議な体験をした親守……｣と説明されている選択肢⑤が｢答え｣だと判別できるはずだ。
こうした問題は、おおよその｢現代語訳｣の後は｢現代文｣と同様の｢解法｣で考察していくことが肝要だと心得よ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分弱＞