幾層もの｢境界｣を徹底的に問い直し、内/外を無効にする流動的な｢存在のあり方｣を提示している論考の一篇。
本文では、｢ファッションはその遊戯性によって、私たちの価値や目的、さらには世界そのものが無根拠であることを理解させる｣と論じている。｢哲学論｣であり難解な語句も多く、内容も理解しづらいに違いない。｢*注｣も活用して可能な限り読み解いてほしい。
手強い｢選択肢設問｣や｢総合的知識問題｣に学附らしさが表れている。
以下、いくつか確認してみたい。

[問１]　｢漢字の読み書き｣(全５問/記述式)｡
難易度は高い。が、学附志望者には｢全問正解｣してほしいレベルだ。
二重線部
(a)｢フクジュウ｣＝｢服従｣、
(b)｢チョサク｣＝｢著作｣
はともかく、悩ましいものとしては、
(c)｢篤実｣＝｢とくじつ｣、
(d)｢忌み嫌う｣＝｢い(み)｣、
(e)｢ホショウ｣＝｢保証｣(※同音異義語に要注意)｡
｢ハイレベルな語彙力｣が必要だと心得よ。
尚、わざわざ｢一点一画を正確に｣と記されている。｢失点｣せぬよう丁寧に書くこと。

＜時間配分目安：１分＞

[問２]　｢語の空所補充組み合わせ選択肢｣(５択/マーク式)。
本文中の｢空所　 Ｘ 　･　 Ｙ 　｣に当てはまる語の組み合わせを答える。
前後の｢文脈｣から内容を特定した上での｢知識問題｣｡
｢流行とはスタイルの　 Ｘ 　的模倣｣、｢流行とはスタイルを　 Ｙ　 的に模倣すること｣｡無論、これだけでは判断不能。が、それぞれの直後に、前者は｢同時期的に模倣すること｣、後者は｢過去の様式を受け入れること｣とある。従って、｢答え｣は、　 Ｘ 　＝｢共時｣、　 Ｙ 　＝｢通時｣の組み合わせである｢③｣となる｡
｢内容把握｣と｢知識｣との一体化をしっかりと意識せよ。

＜時間配分目安：１分＞

[問４]　｢換言説明選択肢｣(５択/マーク式)。
傍線部Ｂ｢ファッションは表面的なものであり、軽佻浮薄なものだと捉える考え｣について、それは｢どういう考えか｣を答える。
｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡
各選択肢の｢文末｣が(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)、｢表面的なものであり、軽佻浮薄なものだと捉える｣に結びつかないものを｢消去｣する。
選択肢の②｢見せるものではない｣と⑤｢内面に迫る助けにはならない｣は、｢肯定｣ではなく｢否定｣表現で説明しているので｢消去｣できると分かるはずだ。
また、｢表面的｣｢軽佻浮薄｣の｢原意｣から、③｢持続性のない一時的なもの｣、④｢形をもたない精神的なもの｣も｢消去｣可能だ。
よって、｢答え｣は①の｢人のうわべをかざるだけで内実がなく、自己の本質から離れたもの｣となる。
｢選択肢設問｣では、｢解法｣に基づき段階的に｢消去｣していくこと。

＜時間配分目安：１分半＞

[問５]　｢理由説明選択肢｣(５択/マーク式)。
傍線部Ｃ｢ファッションは純粋の遊戯である｣について、｢なぜそう言えるのか｣を答える。
先ずは｢原意消去｣をする(｢理由説明｣では｢直接的理由｣で｢消去｣)。
各選択肢の｢文末｣が、｢～だから｣⇒｢純粋の遊戯である｣に結びつかないものを｢消去｣する。
選択肢は、
①｢変化に向かう根拠や必然性を求めていく活動であるから｣、
②｢新しさや楽しさや創造性を常に追求していくものであるから｣、
③｢秩序を作り上げていかなければならないあり方であるから｣、
④｢変化それ自体を楽しむところにその本質があるから｣、
⑤｢モードを生み出し続けることに喜びを見出すものであるから｣｡
もう分かったはずだ。そう、④以外は｢直接的理由｣として全く結びつかない。よって、｢答え｣は｢④｣｡
｢原意｣(｢直接的理由｣)で｢一発消去｣、絶対に活用すべきだ。

＜時間配分目安：１分半＞

[問７]　｢換言説明選択肢｣(５択/マーク式)。
傍線部Ｅ｢ファッションは、じつに無邪気に世界全体を否定する｣について、｢どういうことか｣を答える。
当然、｢原意消去｣からだが、選択肢の③④⑤はそもそも｢世界｣に一切言及していないので論外｡
①②の｢後半｣を確認する。①｢世界そのものが無根拠である｣、②｢世界そのものも根拠なく変化する｣なので、これ以上｢原意｣だけでは｢消去｣できない。次に、傍線部の｢文脈｣で考える。直後で、｢世界がファッションのように｣｢理由なく次々に変わってしまわないという保証はない｣と説明されている。従って、｢答え｣は｢②｣となる。
いくつもの｢解法｣を駆使して｢消去｣していくことが重要だ。

＜時間配分目安：２分＞

病気療養のために伊豆の温泉宿に滞在していた｢私｣はある日、川の中州に一匹の｢赤蛙｣を見つける。
本文は、川に飛び込んでは流れに押し戻されるということを感度も繰り返している｢赤蛙｣の姿に、｢私｣が｢本能的な生の衝動｣｢自然界の神秘｣を感じていくという場面｡
戦後すぐの作品で、なじみのない難解な語句が多く読みづらいかも知れないが、｢心情の機微｣を読み解いていきたい。
学附らしい設問をいくつか検討してみる。

[問５]　｢内容説明抜き出し｣(10字以内指定/記述式)。
傍線部Ｄ｢一種の逃避かも知れない｣について、｢何からの逃避か｣を抜き出す。
｢抜き出し｣では、｢抜き出すべき内容｣を特定した上で｢抜き出し範囲｣を絞っていくことが鉄則。
ここでの｢内容｣は語義そのままだ。｢傍線部一文一部の法則｣(｢傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という｢重要解法｣)に｢手がかり｣を求める｡
直前は｢それは｣という｢指示語｣｡つまり、｢一種の逃避｣＝｢それ｣＝｢天体の事、宇宙のことを考え、そこを標準として考えを立ててみる｣ということだと分かる(｢指示語｣が出たらすぐに開くこと)。｢天体｣や｢宇宙｣は非日常の世界、それを｢標準｣として考えることが｢逃避｣ということは、｢普段の生活や日常｣からの｢逃避｣だと分かるはずだ。
そうした内容を探すことになる｡傍線部の段落には見当たらない。｢範囲｣は｢同一場面｣だ(｢同一場面に根拠あり｣は｢小説｣の｢重要解法｣)｡ここでは傍線部からの２段落。２段落目の最後に｢私はしばらくでも俗悪な社会と人生とを忘れることができた｣とある。これだ。従って、｢答え｣は｢俗悪な社会と人生｣｡
｢解法｣に則して｢内容｣を把握すること。

＜時間配分目安：２分＞

[問６]　｢理由説明選択肢｣(５択/マーク式)。
傍線部Ｅ｢波間に没する瞬間の赤蛙の黄色い腹と紅の班紋とは妖しいばかりに鮮明だった｣について、｢病床の夢で見た赤蛙の色｣が｢なぜ『妖しいばかりに鮮明だった』のか｣を答える。
先ずは｢直接的理由｣での｢消去｣。各選択肢の｢文末｣が、｢～だから｣⇒｢鮮明だった｣に結びつかないものを｢消去｣する。
選択肢
①｢いっそう鋭敏に感じているから｣、
②｢希望を喚起しているから｣、
③｢悩ませているから｣、
④｢感銘を受けたことを表したいから｣、
⑤｢明確に訴えたいから｣｡
②③④は即｢消去｣できなくてはいけない｡残りは２択。改めて、｢設問文｣を確認する。わざわざ｢病床の夢｣と限定している。｢直接的理由｣に直結するということだ。①は｢病床であるがゆえに｣｢鋭敏に感じている｣だが、⑤は｢極めて例外的なものであることを｣｢訴えたい｣となっている。当然、｢答え｣は｢①｣｡
｢設問文｣自体も重要な｢手がかり｣｢ヒント｣だと心得よ。

＜時間配分目安：２分半＞

[問８]　｢品詞判別選択肢｣(５択/マーク式)。
｢総合的知識問題｣｡二重傍線部｢不思議な｣について、｢同じ品詞のもの｣を｢文中の①～⑤｣から答える。
｢口語文法｣の基本、｢品詞判別問題｣だ。
｢不思議な｣は当然、｢不思議だ｣という｢形容動詞｣の連体形。
選択肢①｢そんな｣と②｢小さな｣は共に｢連体詞｣、③｢静かに｣は｢形容動詞｣の｢静かだ｣の連用形、④｢どのような｣は｢連体詞｣の｢どの｣＋｢助動詞｣の｢ようだ｣の連体形、④｢ちがった｣は｢動詞｣の｢ちがう｣の連用形｢ちがっ｣＋｢助動詞｣の｢た｣の連体形｡よって、｢答え｣は｢③｣｡
学附では｢口語文法｣が頻出。確実に理解し、定着させておくこと。

＜時間配分目安：１分以内＞

江戸時代中期の儒学者で、異文化への卓抜した識見が豊かな筆者の｢随筆｣｡
本文では、｢子育て｣について卓見を述べている。｢古文単語の意味｣｢文語文法｣｢文脈把握｣｢内容解釈｣｢主語特定｣など多様な設問が並ぶ。｢古文｣を全体として理解、習得していなければ太刀打ちできない。
以下、いくつか検証する。

[問１]　｢語義特定選択肢｣(２問･各５択/マーク式)。
｢古文単語の意味｣｡波線部ア｢年たけ給ふ｣、イ｢うし｣の｢意味｣をそれぞれ答える。
アの｢たく(長く)｣は｢高く上る｣｢長じる｣｢盛りを過ぎる(｢年齢｣について)｣という意味、よって、｢答え｣は②｢年をおとりになる｣｡イの｢うし(憂し)｣は｢辛い｣｢煩わしい｣｢恨めしい｣という意味、よって、｢答え｣は①｢つらい｣｡
基本的な単語だ。知らなかった諸君は｢単語の徹底習得｣をすること。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問２]　｢内容解釈選択肢｣(５択/マーク式)。
｢文語文法の基礎｣｡傍線部Ａ｢さはなく候ひき｣について、その｢解釈｣を答える。
ポイントは、｢さはなく｣の｢さ｣だ。｢指示語｣で、ここでは｢それ｣ということ。指示しているのは直前の｢御身の若き時は、物事御親の仰せのままにありしや(＝あなたの若い時は、何事につけても親のおっしゃるとおりにしていましたか)｣という問い｡それに対して、｢それはない｣と答えている。従って、｢答え｣は選択肢⑤の｢私も若い時には親の言うことに素直に従うことはありませんでした｣となる。
｢さ｣＝｢指示語｣はしっかりと意識しておくこと(｢さらば｣＝｢そうであれば｣などは頻出)｡

＜時間配分目安：１分以内＞

[問３]　｢主語特定選択肢｣(５択/マーク式)。
傍線部Ｂの｢と言ひし｣の｢主語｣を答える。
｢古文｣では｢主語｣が省略されることが多い(だからこそ｢設問｣になる)｡｢文脈｣や｢敬語｣などから特定していくこと。
｢と言ひし｣は｢敬語｣ではない。選択肢①｢折檻せし人｣、③｢その子｣、⑤｢年たけたる者｣に対しては、本文の他の部分で｢敬語｣が用いられているので｢消去｣できる。次に｢文脈｣から判断すると、④の｢道ゆく人｣は｢と言ひし｣(＝と言った)｢セリフ｣の中の人物なので不適切、よって、｢答え｣は②の｢ある人｣となる。
｢敬語｣と｢文脈｣、両者を組み合わせて考えることが重要だ。

＜時間配分目安：１分以内＞