生きてゆく限りは誰もが通らざるを得なかった青い時代。刻まれたキズ･恋と憧憬･イメージの航海･夢幻のように甘やかな毒･残酷なほどにかがやく世界──いまなお愛される唯一無二のクリエイター･寺山修司が、自由自在、縦横無尽に言葉を操り、ありとあらゆる衝撃のかたちをこの世に放っている。決して見果てぬ少年少女の鮮烈な青を壜(びん)詰にした物語。本文では、｢かくれんぼ｣にまつわる｢思い｣が綴られている。文章は平易で、内容はすぐに理解できるはずだ。実に多種多様な小問が並ぶ大問だ。以下、いくつか確認してみたい。

[問一]　｢理由説明選択肢｣(４択)。
傍線部①｢かくれんぼは悲しい遊びである｣について､その｢理由｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣を最優先に考えること)｡本問は｢理由説明｣なので、｢かくれんぼは悲しい遊びである｣ことの｢直接的理由｣として結びつかない｢説明｣を｢消去｣したい。各選択肢の｢文末｣⇒｢だから｣⇒｢かくれんぼは悲しい遊びである｣とつながるかどうかだ(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)。確認する。
(ア)｢焦燥感に襲われるから｣、(イ)｢世界から取り残されてしまうから｣、(ウ)｢成人男性が鬼であることがこわいから｣、(エ)｢自分だけが鬼役をやらされてしまうから｣｡さあ、どうだろうか？
｢かくれんぼは悲しい遊びである｣なのだから、｢世界から取り残されてしまう｣以外は｢消去｣できなくてはいけない。念のために、｢同一場面｣で他の部分の説明を確認する(｢小説｣｢随筆｣では｢同一場面の直前直後｣に｢ヒント･手がかり｣がある)。特に誤っていないと分かる。よって、｢答え｣は(イ)だ｡実に清々しい｢一発消去｣ではないか。
 ｢原意消去｣を徹底的に理解し定着させ、練習して応用できるようにすべし。  
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分強＞

[問五]　｢条件付き効果説明記述｣(｢60字以内｣指定)。
傍線部⑤の｢『知らなかった』｣には｢『   』がつけられているが、この表現にはどのような効果があるのか｣を、｢六〇字以内｣で説明する。
｢条件｣は、｢根拠を明らかにして説明する｣こと。一般的に『   』をつける理由は、「何かを強調したいから」｢読み手に注意を促したいから｣だということは知っているはずだ。では、傍線部では｢何を強調し｣｢どのような注意を促したいのか｣を｢同一場面｣から読み取っていきたい。
｢私｣は、マンホールの中に｢そばかすの子｣が隠れていることを知っていたのに、わざと知らないふりをして、そのことについて読者に注意を促し、強調したいから、『  』をつけていることが分からなくてはいけない。そうした内容を、的確にまとめていきたい。
たとえば、｢私はそばかすの子がマンホールの中に隠れていることを知っていたが、わざと知らないふりをしたということを読者に強調する効果｡｣(60字)といった｢答え｣だ｡
｢条件｣＝｢手がかり･ヒント｣と捉え、｢文脈｣を丁寧にたどって｢問われていること｣に的確に応じてまとめることが肝要だ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：３分半＞

[問七]　｢内容説明選択肢｣(４択)。
傍線部⑦｢鬼の意識｣について､その｢内容説明｣を答える。先ずは｢原意消去｣からだ｡ここは｢内容説明｣なので、｢鬼の意識｣の｢原意｣としてふさわしくない｢説明｣を｢消去｣することになる。各選択肢の｢文末｣と照合したい。
(ア)｢かくれんぼを全員みつけられないことを残念がる意識｣、(イ)｢残忍な性格の持ち主であることを誇りに思う意識｣、(ウ)｢閉じ込めてしまったという字実を忘れたいと強く願う意識｣、(エ)｢一生鬼であることに囚われ続ける意識｣｡｢鬼｣の｢意識｣なのだから、｢鬼であることに囚われ続ける｣以外は｢消去｣可能だと判別したい。念のために、｢同一場面｣で他の部分の説明を確認する。特に誤っていない。したがって、｢答え｣は(エ)になる｡またしての｢一発消去｣。
やはり、｢原意消去｣は最強だ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分強＞

[問九]　｢空所補充の語句選択肢｣(全４問/４択)。
本文中の空所　　Ⅰ　　～　　Ⅳ　　に｢あてはまる語句｣を答える。選択肢は全て｢副詞｣だ。本校に限らず、｢副詞｣や｢接続詞｣の｢空所補充｣は定番の問題だ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢語句｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢文脈｣を確認する必要がある。各空所の｢答え｣を確認していきたい。
　　Ⅰ　　には｢気づかないさま｣を表す｢副詞｣の(エ)｢うっかり｣、　　Ⅱ　　には｢ずっと以前に｣を表す｢副詞｣の(ア)｢とっくに｣、　　Ⅲ　　には｢もし…(だとしても)｣を表す｢副詞｣である(イ)｢たとえ｣、　　Ⅳ　　には｢特別｣を表す｢副詞｣の(ウ)｢とくに｣がそれぞれあてはまる｡
｢副詞｣や｢接続詞｣などの｢空所補充｣は必出だ｡失点は致命傷になると心得よ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で２分＞

[問十]　｢漢字の読み｣(全４問/｢ひらがな｣指定)｡
本文中の二重傍線部(ａ)～(ｄ)の｢漢字｣を｢ひらがな｣に直して答える。例年と比べるとやや難易度が高いか？ だが、本校志望者であれば｢全問正解｣をしたい。確認する。
(ａ)｢納屋の暗闇｣＝｢なや｣⇒｢倉庫｣のことだ。(ｂ)｢怒鳴りちらす｣＝｢どな(り)｣⇒問題なし。(ｃ)(｢貯えておくため｣＝｢たくわ(え)｣⇒読めて当然。(ｄ)｢懐旧の情｣＝｢かいきゅう｣⇒流石(さすが)に馴染みが薄いか？ ｢昔のことを思い出しなつかしむ｣ことだ⇒｢書きとり｣でも要注意。
本校では、平易から難解までの確実な｢漢字力｣を培っておくことが肝要だ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で１分＞

※尚、[問八]は｢本文内容合致の空所補充抜き出し設問｣(全５問)だ。｢本文解釈｣の｢説明文｣中の｢空所｣に｢あてはまる語句｣を抜き出して答えるのだが、｢説明文｣が｢420字ほど｣もあり、さらに｢本文全体｣からの｢抜き出し｣なので、とても手間がかかる。そこで時間をとられるよりは､他の小問をしっかりと確認し､確実に得点していく方が得策だ。したがって、戦術的には｢あとまわし｣にすること｡無論、｢捨て問｣でも構わない。

｢場｣を強調し、｢ウチ｣｢ソト｣を強く意識する日本的社会構造にはどのような条件が考えられるか？ ｢単一社会の理論｣によりその本質を捉え論じている。本文では、日本社会は絶対的な論理よりも相対的な人間関係を優先する価値観があると指摘している。やや難解な語句もあるが、内容は理解できるはずだ。以下、いくつかの設問を検証する。

[問二]　｢空所補充の表現選択肢｣(４択)。
｢総合的知識問題｣(故事成語･慣用句)。本文中の空所　　②　　に入れるのに｢適切な表現｣を答える。｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣で空所部分を確認してみる(｢傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要｣という｢重要解法｣)。｢どんなに一定の主義･思想を　　②　　としている集団でも……｣となっている。
各選択肢は、(ア)｢鬼の念仏｣･(イ)｢錦の御旗｣･(ウ)｢元の木阿弥｣･(エ)｢他山の石｣。当然ながら、｢答え｣は(イ)の｢錦の御旗｣だと特定できるはずだ。｢自らを正当化するための権威や大義｣などを形容する際に用いられる表現だ。
尚、｢鬼の念仏｣･｢元の木阿弥｣･｢他山の石｣についても、｢意味･用法｣、｢由来｣などについても確認し、定着させておく必要がある。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分＞

[問三]　｢理由説明の抜き出し｣(｢13字｣指定)｡
傍線部③｢日本人による『批評』の確立の困難さ｣について、｢どのようなものとして受け取られているからか｣を指す｢内容｣を｢一三字｣で抜き出して答える。｢抜き出し問題｣では、｢抜き出すべき内容｣を捉えた上で｢抜き出し範囲｣を特定し探していく。本問の｢抜き出し内容｣は、｢日本人による『批評』の確立の困難さ｣の｢理由｣になる。
｢抜き出し範囲｣は｢同一意味段落｣が原則(｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)。ここでの｢同一意味段落｣は傍線部からの５つの形式段落だとすぐに分かる。丁寧に探していくと、傍線部の５行後に｢人対人の直接の感情的出来事｣(13字)という部分がある。｢作品｣を｢批評｣しているつもりでも、｢作家｣と｢批評家｣という｢人対人の直接の感情的出来事｣と受け取られ、｢批評｣として成立しないわけだ。｢字数｣もＯＫ。｢条件｣の｢範囲｣に他に候補となる部分はない。よって、これでいいはずだ。｢答え｣は｢人対人の直接の感情的出来事｣(として受け取られるから)となる。
尚、｢抜き出し問題｣では｢候補｣はひとつとは限らない｡｢範囲｣を網羅的に確認し、全ての｢候補｣を確認してみることが肝要だ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分半＞

[問五]　｢空所補充の乱文整序選択肢｣(４択/複数完全解答)。
本文中の空所　　⑤　　に｢入るように｣、示されている(ア)～(エ)の各文を｢並べ替えて｣答える｡｢乱文整序｣では先ず、｢乱文｣どうしで｢順序｣が特定できる組み合わせを探すことで｢選択肢｣を減らしておきたい。その際は無論、｢接続詞｣や｢指示語｣が重要な｢手がかり｣になる。本問では、(イ)が｢そして｣という｢添加｣の｢接続詞｣で始まっていて、(ア)は｢それは｣という｢指示語｣が冒頭にある。これらから、(ア)→(エ)→(イ)が確定できる。その上で、(ウ)の内容を確定すると結果として、｢答え｣は(ウ)→(ア)→(エ)→(イ)だと特定できるはずだ。
｢乱文整序｣では、｢乱文｣どうしの｢順序特定｣が最大のカギとなると心得よ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分半＞

[問六]　｢換言内容説明記述｣(｢20字以内｣指定)。
傍線部⑥の｢実力よりも肩書の優先する学者の世界のあり方｣とは｢どういうことか｣を、｢二〇字以内｣で説明する。ここでの｢実力｣、そして、｢肩書｣とは何かを｢同一意味段落｣から読み解いていきたい。｢学者の世界｣での｢実力｣とは、｢真理の追究｣であり、｢肩書｣は｢上下関係｣という｢人間関係｣だと分かる。これらを踏まえて、簡潔にまとめていく。
たとえば、｢真理の追究より人間関係を優先すること｡｣(19字)といった｢答え｣だ｡
本校ではこのように短い｢指定字数｣もあるので、どのような｢字数｣でも要点を外すことなく、簡潔に｢記述｣する練習を重ねておくことが肝要だ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：３分半＞

[問十]　｢漢字の書きとり｣(全４問)｡
二重傍線部(ａ)～(ｄ)の｢カタカナ｣を｢漢字｣で答える。チェックする。
(ａ)｢感情がオウコウしている日常生活｣＝｢横行｣⇒｢自由気ままに歩きまわること｡ほしいままに振る舞うこと｣だ。
(ｂ)｢評者と作家のオウシュウ｣＝｢応酬｣⇒｢高校入試｣の定番だ⇒｢やりとりをすること｣という意味も押さえておきたい｡
(ｃ)｢自分をある程度ギセイにして｣＝｢犠牲｣⇒書けるはずだ。
(ｄ)｢そうした席ではいちおうブレイコウが許される｣＝｢無礼講｣⇒馴染みが薄いのも当然だ⇒｢身分の上下の別なく、礼儀を捨てて行なう宴会｣のことだ。覚えておこう。
ひとつでも間違ってしまった諸君は、改めて総復習しておくこと。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で１分強＞