桐蔭学園高等学校 入試対策
2025年度「桐蔭学園高等学校の国語」
攻略のための学習方法
解法
「桐蔭の選択肢」で勝利するための鍵は、「問題解説」でも触れたように「消去」の際に「解法」をいかにうまく用いるかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。が、桐蔭などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。前述のとおり塾での学習でも不十分なので、「独習」をする他ない。
「古文単語」では「大学入試基礎レベル」(300語程度)を定着させ、「文語文法」は「動詞」「形容詞・形容動詞」は当然として、「助動詞」「助詞」の「意味・用法・接続」、さらに「敬語」までも理解しておく必要がある。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「高校用」の「ステップアップノート30——古典文法基礎ドリル」(河合出版)や、「古文単語」定着用として「重要古文単語315」(桐原書店)などが推薦できる。
速読
全てで6000字程度(「選択肢説明」ではそれ以上)を読解しなくてはならない。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。桐蔭に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「桐蔭の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題があり、難易度も高い。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からスタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
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2025年度「桐蔭学園高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問
は「漢字問題」。出典は中島義道「<対話>を圧殺する風土」所収の「<対話>のない社会――思いやりと優しさが圧殺するもの」(文字数約720字)。小問なし(解答数5)。「同音漢字判別」。3分ほどで解きたい。
大問
は「論説文」。出典は中島義道「<対話>を圧殺する風土」所収の「<対話>のない社会――思いやりと優しさが圧殺するの」(文字数約5900字)。小問は全10問(解答数11)。「内容説明」「理由説明」「空所補充」「本文内容合致」「乱文整序」「総合的知識問題」など(「不適切」あり)。問題文は7分程度で読み切り、設問を20分ほどで解きたい。
大問
は「古文」。出典は浅井了意「伽婢子(おとぎぼうこ)」(文字数約1400字)。小問は全9問(解答数11)。「内容解釈」「内容説明」「理由説明」「人物特定」「本文内容合致」など。20分程度で解きたい。以上は、全て「マークシート方式」の「選択肢設問」。
【大問一】
- 時間配分:
例年どおりの「同音漢字の判別」。それぞれを確認してみたい。
[問] 「同音漢字の判別選択肢」(全4問/各4択)。
本文中の[a]~[e]の二重傍線部の「カタカナ」と「同じ漢字」をそれぞれ答える。それぞれの「文脈」から傍線部の熟語を特定し、各選択肢で「同じ漢字」を判別する。本年度は標準的な難易度だ。やや悩みそうな2問だけチェックしておく。
[b] 「私がここでテイショウしたい哲学的対話」=「提唱」、各選択肢は、
(1)「恋人をショウカイする」=「紹介」/(2)「貯金をショウレイする」=「奨励」/(3)「人格をコウショウなものにする」=「高尚」/(4)「確認のために一度フクショウする」=「復唱」⇒「答え」は(4)。(3)の「高尚」は分かりづらいか?
[d] 「カクダンの重みをもつ」=「格段」、(1)「ゲンカクな指導」=「厳格」/(2)「目のサッカク」=「錯覚」/(3)「陰でカクサクする」=「画策」/(4)「カクシュ取りそろえている」=「各種」⇒「答え」は(1)。悩みそうな熟語はない。平易から難解まで、本校ではあらゆる「漢字力」が問われると心せよ。
<時間配分目安:全問で3分>
【大問二】
- 時間配分:
なぜ、この国の人々は、個人同士が正面から向き合う「対話」を避けるのか? ――そして、かくも無意味で暴力的な言葉の氾濫に耐えているのか? 誰からも言葉を奪うことのない、風通しよい社会の実現を願って、現代日本の精神風土の「根」に迫っている論考だ。本文では、日本には、他者と対立する場がない。対立のないところでは、<対話>は育たないと指摘している。多少難解な語句はあるが、「※注」も活用して内容を理解したい。
「理由説明」「内容説明」「空所補充」「乱文整序」「本文非合致」、そして、「総合的知識問題」と多種多様な「設問内容」の小問が並んでいる。以下、いくつかを検証する。
[問1] 「語句の意味の選択肢」(全2問。各4択)。
「総合的知識問題」。本文中の二重傍線部(A)「口さがない」・(B)「まかり通っている」の「意味」を答える。「原意」(=「本来の意味」)での特定を優先させ、それが困難な場合は前後の「文脈」から判断していく。「答え」を確認する。「口さがない」⇒馴染みが薄いか? ⇒「他人のうわさや批評を無責任・無遠慮にするさま」のことだ⇒(A)の「答え」は選択肢(2)「言うことに遠慮がない」。「まかり通る」⇒当然、定着しているはずの語句=「堂々と通る、または好ましくない物事が世間で通用する」という意味⇒(B)の「答え」は(3)「堂々と使われている」。
尚、「本文中の意味」・「文脈」にこだわり過ぎると,「原意」からかけ離れてしまって誤答となる場合があるので、要注意。
本校ではこの程度の「語彙力」は必須だと心得よ。
<時間配分目安:全問で2分弱>
[問2] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部①の「こうした無情の世間の眼」とは「どのようなことか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則なので、先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
ここは「内容説明」なので、「無情の世間の眼」の「原意」と結びつかない「説明」を「消去」したい。各選択肢の「文末」と照合する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。
(1)「自分に対する厳しい評価のこと」。(2)「問答無用にかたちづくられる自分の人物像のこと」。(3)「自分に向けてくる無神経な興味関心のこと」。(4)「自分に対して寄せられてくる無秩序なまでの好奇心のこと」。さあ、どうだろうか? 「消去」できるか?
「無情の世間の眼」なのだから、「無神経な興味関心」以外は「消去」だと判別できなくてはいけない。「同一意味段落」で他の部分の説明を確認しても特に誤ってはいない(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。したがって、「答え」は(3)でOKだ。なんと、見事な「一発消去」ではないか!
「原意消去」は必ずマスターして使いこなせるようにすることが肝要だと心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問5] 「指示語換言不適切選択肢」(4択)。
傍線部④の「こうした御仁」に「あてはまらないもの」を答える。「指示語」を真っ先に開きたい(「指示語」が出たら即開くこと)。直前から、「こうした御仁」=「他人の痛みがわかると思い込んでいる御仁(お方)」だと読み取れるはずだ。各選択肢を確認して、「答え」は(4)の「テレビで日本シリーズの中継を見ながら食事をするのが好きな人」だと判別できなくてはいけない。ここも「一発消去」だった。
「原意消去」は本校合格のための「ショートカット」だと心得よ。
<時間配分目安:1分強>
[問9] 「空所補充の乱文整序選択肢」(4択)。
本文中の空所部
に、示されている各文(a)~(d)を「並べかえて意味が通るよう」にする。
「乱文整序」では先ず、「乱文」どうしで「順序」が特定できる組み合わせを探すことで「選択肢」を減らしておきたい。その際は無論、「接続詞」や「指示語」が重要な「手がかり」になる。本問では、(a)が「しかも」という「添加」、(d)が「だが」という「逆接」の「接続詞」で始まっていて、(b)は「この差異」という「指示語」が冒頭にある。これらを総合的に判断すると、(b)→(d)→(a)が確定できる。その上で、(c)の内容を確定すると結果として、「答え」は(c)→(b)→(d)→(a)となっている選択肢(3)だと判別できるはずだ。
「乱文整序」では、「乱文」どうしの「順序特定」が最大のカギとなると心得よ。
<時間配分目安:2分半>
【大問三】
- 時間配分:
江戸時代に編まれた浅井了意による仮名草子。全13巻。奇談を集めたもので、江戸時代前期に数多く編まれた同種の書物のさきがけとなった。例年同様の「主語特定」「内容説明」「理由説明」「本文内容合致」「人物判別」等が問われている。以下、いくつか検討してみよう。
[問1(ⅰ)] 「人物特定選択肢」(4択)。
傍線部①「遺言」について、これは「誰から誰への遺言か」を答える。本文冒頭から、「加賀守昌俊」が子の「原隼人佐昌勝」に「遺言」したことが読み取れるはずだ。よって、「答え」は選択肢(1)の「昌俊から昌勝へ」になる。
尚、「古文」では「人物関係」が複雑なものが多いので、細心の注意を払って判別することが肝要だ。
<時間配分目安:1分>
[問3] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部③「家にある事まれなり」について、「これはどのようなことか」を答える。本文4段落目の「原の妻は……」の部分を解釈することになる。冒頭から、「加賀守はあちこちはせ向かい、陣中で長い間過ごし、家にある事まれなり(家にいることは稀だった)」ことが読み取れるに違いない。したがって、「加賀守は……、日頃は自宅で妻と暮らすことがほとんどなかった」と説明されている選択肢(4)が「答え」だと特定できるはずだ。
「古文」といえどもおおよその「現代語訳」のあとは、「現代文」の解法を適用すればいいということだ。
<時間配分目安:2分>
[問4] 「内容解釈選択肢」(4択)。
傍線部④の「さて、老僧はいかなる人にてましませば、かくあり難き御事ぞ」の「解釈」を答える。
先ずは「さて」に着目したい。「さて」⇒「さ(そう)・ありて」=「そうであって(それで)」となる。よって、各選択肢冒頭が「それで」となっている(1)か(2)の2択になる。その上で、「あり難き」を「ありがたくも」と「解釈」している(1)ではなく、「あり得ない」と説明している(2)が「答え」になる。
「古文」特有の表現や「現代文」とは「意味」が異なる「語句」に着目することが肝要だと心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問8] 「空所補充の人物判別選択肢」(4択)。
本文中の空所【 ★ 】に「あてはまる人物」を答える。空所部は「それより、加賀守再び妻を迎へず、かの男子は【 ★ 】なり」となっている。「現代語訳」としては「その後、加賀守は再び妻を迎えず、あの男子が【 ★ 】である」なのだから、「加賀守昌俊」の子である「原隼人佐」となっている選択肢(4)が「答え」だと判別できなくてはいけない。
尚、「古文」であっても、「空所部」前後の「文脈」を正確に読み取ることが肝要なのは、「現代文」と同じだ。
<時間配分目安:2分>
攻略ポイント
●判別が紛らわしい「選択肢設問」。どのように「攻略」するか? 各選択肢全体を対象として検討していたのでは混乱するばかりだ(「100字以上」の説明もままある)。そこで威力を発揮するのが「ブロック消去」。「最後のブロック」から「消去」していくわけだが、具体的な「消去」の「根拠」は、「設問内容」に応じた「解法」の適用がポイント。したがって、基本的「解法」を完全に習得し、的確に応用できるようにしておくことが重要だ。特に、「原意消去」が最優先となる。限られた「時間」でいかに「解法」を用いて解いていくかが、合否を分ける。
●配点比率が高い「古文」(本年度は37%)の「攻略法」も重要だ。もちろん、「中学レベル」の学習ではとても追いつかない。中堅クラスの「大学入試」に対応できなくてはならない。「古文重要単語」や「文語文法」「古典常識」まで幅広い「知識」が求められる。特に「文法」では「助動詞」「助詞」の「意味・用法」・「接続」が肝要なので、徹底的に習得しておくこと。
●あらゆることが問われる「総合的知識問題」も決して侮れない。直接的な出題は無論、問題文の内容理解でも「高度な語彙力」が問われる。独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要。学校や塾での学習だけでは全く不十分。「独習」は欠かせない。
●「解答形式」にも注意が必要だ。全て「マークシート」なので、「解答」を記入する際には十分に確認すること。「マークシート」に慣れておくことが肝要。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意を要する。問題文は全体で5000~6000字ほど(本年度は増加して約8000字)。当然、速く正確に読み取ることが必須条件となる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。