なぜ、｢人間の社会｣では｢コミュニケーション｣が問題になるのかということを、３人の偉大な哲学者の言葉から解き明かし、筆者自身の｢コミュニケーション論｣を展開している。
｢哲学論｣ではあるが難解な語句はさほどなく、内容は比較的理解しやすいはずだ。
が、いかんせん長い。要領よく読み進めていくことが重要だ。設問は明明らしい｢端的｣なものばかり。的確に対応することが求められる。
以下、いくつかを確認してみたい。

[問四]　｢換言説明記述｣(字数指定なし、30字程度の解答欄)
傍線部②の｢それ｣は、｢何を指すか｣を説明する。
端的な｢指示語換言記述｣だ。どうということはないが、｢減点｣を防ぐためには細心の注意を要する。
｢それ｣が直接的に指し示しているのは、直前から｢猿と同じことを目的とすること｣だと分かるはずだ。
ただし｢字数｣として不十分なので、｢猿の目的｣の内容を確認する。２文前に｢身の安全を図り、ひいては種の保存に貢献するため｣とある。
これらを合体すればいいのだが、｢指示語換言｣では｢答え｣を｢指示語部分｣に文法･文脈的にも内容的にも｢代入｣できるようにしなければならない。
ここでは｢でも人間の場合、それでとまっていなかった｣となっている。確認しつつ、表現を調えてまとめること。
たとえば、｢身の安全を図り種の保存に貢献するためという猿と同じ目的｡｣といった｢答え｣になる。
｢説明記述｣では｢途中点｣がある。極力｢減点｣されぬように配慮することが重要。｢指示語｣の場合、｢代入確認｣を絶対に忘れないこと。

＜時間配分目安：２分＞

[問五]　｢空所補充漢字記述｣(２字指定)
本文中の｢空所 Ｄ ｣に当てはまる｢漢字｣を答える。
明明らしい、文脈から内容を把握した上での｢知識問題｣だ。
内容を｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という｢重要解法｣)で確認してみる。
｢これだって、なんて欲張りなと言えますが、もう一面では、人間の Ｄ 心を表している｣となっている。
｢これ｣＝｢明日の自分は今日より『もっと』ということ｣(｢指示語｣が出たらすぐに開くこと)｡つまり、｢もっと｣＝｢欲張り｣とは別の｢人間の○○心｣ということだ。であれば、｢答え｣は｢向上(心)｣だと気づきたい。
｢解法｣を踏まえた上で習得した｢知識｣を駆使すること。

＜時間配分目安：１分＞

[問六]　｢空所補充語句記述｣(２字指定)
本文中の｢空所 Ｅ ｣に当てはまる｢言葉｣を答える。
｢ Ｅ の子を散らす｣｡端的な｢総合的知識問題｣｡
｢答え｣は｢くも｣｡｢くもの子を散らす｣とは｢多くのものが散り散りに逃げていく様子｣を表す｢慣用句｣だ。やや難易度は高いかも知れない。
明明ではやはり、｢高度な語彙力｣が求められているということだ。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問九]　｢内容説明抜き出し｣(８字指定)
傍線部⑤｢新参者の主張｣について、｢その具体的な内容｣を抜き出す。
｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を捉えた上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。
先ずは、｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣から｢内容｣を捉えていきたい。
直前直後は｢この古参者の努力と新参者の主張の単純さ｣となっている。｢この新参者の主張｣＝｢泣き声や手の動き、顔の筋肉の緩み｣によって｢主張｣しているもの。その｢内容｣は傍線部の次文から｢おなかがすいた、おしめがぬれている｣ということだと分かる。
つまり、これが｢抜き出し内容｣なのだが、このままでは｢字数｣が合致しない。
｢抜き出し範囲｣の最優先は｢同一段落｣なので確認する。
すぐ後に｢空腹と排泄の訴え｣とある。｢内容｣及び｢条件｣に合致しているので｢答え｣となる。
｢抜き出し内容｣を捉えても｢条件｣が合致しない場合は、｢範囲｣を絞って｢同じ内容のもの｣を探すこと。

＜時間配分目安：２分＞

[問十二]　｢理由説明記述｣(字数指定なし、80字程度の解答欄)
傍線部⑥の｢新参者であった子どものほうに非があります｣について、｢なぜなのか｣を説明する。
これまた、ぶっきらぼうな設問だ。丁寧に何が問われているのかを読み解く必要がある。
そもそも、何について｢非｣があるのか？
｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣で確認すると、直前の｢これ｣についてだと分かる。
｢指示語｣を開くのだが、注意する必要があるのは｢これ｣が｢段落冒頭｣だということ。｢段落冒頭｣の｢指示語｣は｢前段落全ての内容を指し示す｣という｢重要解法｣を意識しないと、捉え方を誤ってしまう。
｢前段落全て｣を考慮すると、要は、｢これ｣＝｢言葉がましていくと両者(＝｢古参者｣と｢新参者｣)のわかりあいが難しくなっていく｣ということ｡
では、｢理由｣はどこで説明されているか？
傍線部は｢段落冒頭での問題提起｣、であれば、｢段落最後｣と対応しているはずだ(｢形式段落のＮの法則｣、これは｢論説文｣の｢最重要解法｣である｢Ｎの法則｣のひとつ)｡
確認する。｢子ども(＝新参者)は、自分のほうが優位に立ったと感じたら、集団維持のコミュニケーションをスムーズに進めるために、努めなくてはいけないが、いままでの癖で親(＝古参者)が努めてくれると思い込むのはただの甘えだ｣といったことが述べられている。まさに、これが｢理由｣だ。
従って、最も重要な｢直接的理由｣を｢文末｣として(｢説明記述｣では｢最重要要素｣を｢文末｣とすること)、｢過不足なく｣まとめればいい。
たとえば、｢子どもは自分が優位に立ったと感じたら、集団維持のコミュニケーションをスムーズに進めるために努めなくてはいけないが、いままでどおり親がするものと思い甘えているから｡｣といった｢答え｣となる。
明明の｢端的すぎる設問｣は自らで｢内容補足｣をして、順順序立てて考えていくこと。

＜時間配分目安：３分半＞

[問十六]　｢換言説明記述｣(字数指定なし、40字程度の解答欄)
傍線部⑨の｢一番ものぐさな道｣とは｢何か｣を説明する。
｢設問｣にそのまま答えれば、｢ものぐさ｣＝｢面倒くさがること･無精者｣なので｢最も無精な方法｣ということだが、無論、これだけでは不十分だ(ここが、明明の面倒くさいところ)｡
前後の｢文脈｣から確認する。
｢正しい解決法｣ではない｢無精な方法｣｡何の｢解決法｣か？ ｢段落相互関係｣で読み解く(｢論説文｣では常に｢段落相互関係｣を意識すること)｡
｢同一意味段落｣から、｢おもちゃ｣という単語のアクセントが筆者の家と友達の家では異なっており、｢あちらの家｣の方が正当だと分かった後に、どちらの家でも白眼視されないための｢解決法｣だと分かる｡そして、そこで筆者が見出した｢逃げ道は『おもちゃ』という単語を使わなければいいということ｣となっている。
また、傍線部の直前では｢自分の親を説得することやアクセントを言い換えるという方法ではなく｣と説明されている。
従って、｢傍線部の換言｣としては｢『おもちゃ』という単語を使わなければいいという、逃げ道としての最も無精な方法｡｣といった｢答え｣となるはずだ。
｢解答欄｣の大きさには当然｢意味｣がある。それを考慮して、｢設問｣で直接問われていなくても対応させる必要がある。

＜時間配分目安：２分半＞

[問二十一]　｢乱文整序｣(ここでは｢文｣ではなく｢段落｣)。
本文中の｢段落ａ～ｅ｣を、正しく並べかえる。
｢乱文(段落)整序｣では先ず、それぞれの｢乱文(段落)｣どうしで｢順序｣が確定できるものを特定し、次に、｢乱文(段落)｣全体と｢本文｣とのつながりから｢最初｣と｢最後｣を決定していく。その際に｢手がかり｣として重要なのは当然、｢指示語｣｢接続詞｣などになる。
ということで、｢ａ～ｅ｣で｢順序｣が確定できるものを確認する。ａの冒頭には｢コミュニケーションはこんなに厄介｣とあるので、最後が｢コミュニケーションどころではない｣となっているｄの直後だと分かる(ｄ→ａが確定)｡また、ｄの冒頭は｢この運動｣なので、最後に｢～という試みには賛成｣とあるｂの後しかない(ｂ→ｄ→ａが確定)｡
残りのｃは｢それでも大変な試みだろう｣、ｅは｢いまから数年前｣が最初であって、｢それ｣は本文の｢ａ～ｅ｣全体の直前とはつながらない｡従って、ｅが｢ａ～ｅ｣の中での最初となる。
そして、ｃの｢それ｣はａ(最後が｢コミュニケーションが不可能になったら｣)ではなく、最後が｢交流もスムーズに行く｣とあるｅの後になる。整理すると、｢答え｣は結局｢ｅ→ｃ→ｂ→ｄ→ａ｣｡とても複雑だ。が、筋道に則して判別していけば何とかたどり着く。
決して諦めてはいけない。

＜時間配分目安：３分半＞

[問二十二]　｢論旨説明記述｣(字数指定なし、80字程度の解答欄)
｢筆者はコミュニケーションをどのようなものだと考えているか｣を説明する。
本文のテーマは｢コミュニケーション論｣なので、｢本文｣全体から説明するということか？
確かにそうだが、この｢設問｣は決して｢要約問題｣ではない。そもそも、｢本文全体から｣などといったことはしていられないはずだ。
ここは冷静に｢設問趣旨｣を把握しなくてはいけない。
｢論説文｣での｢テーマ｣ということは、｢論旨｣が問われているわけだ。｢論旨｣が述べられているのは通常、｢序論部｣か｢結論部｣、あるいは｢両方｣だ(｢論説文｣の｢基本的解法｣)。本文は明らかに｢尾括型｣なので、｢結論部｣(最後の１段落)を中心にまとめることになる。
｢結論部｣で筆者は｢コミュニケーションで意思が通じ合うのは簡単で当たり前のことと思い違いをしているが、本当は、伝達し、伝達される両方が心配りをしてようやく成り立つ大仕事なのだ｣と論じている。従って、こういった内容が｢答え｣ということだ。
｢論説文｣において、｢テーマについての筆者の考え｣＝｢論旨｣だという当然のことを改めて確認すること。

＜時間配分目安：３分＞

｢漢字の書きとり｣(全10問)。
本年度は、明明にしては平易なものばかりだ。志望者は当然、｢全問正解｣といきたい｡
あえて、｢失点｣しやすいものを挙げれば、
(１)｢テンケイ的｣(＝｢典型｣)、
(５)｢和紙で箱をホウソウする｣(＝｢包装｣)、
(８)｢トウブンの多い飲み物｣(＝｢糖分｣)、
(10)｢赤くソめる｣(＝｢染｣)｡
特に、｢トメ｣｢ハネ｣等には要注意だ。