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暁星中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2020年度「暁星中学校の理科」
攻略のための学習方法

まず、分野別に言えば、化学分野と他の分野を区別して考えるのが良い。
化学分野以外に関しては、細かい知識を漁るよりも、基礎的な知識をしっかりと頭に入れた上で、それらの理解に立脚して応用的な思考を展開する練習が重要である。特に、生物と地学の分野では教科書的な生物学的現象の発生理由や意義について記述形式で問われることが多い。教科書や塾の授業で解説される説明や、模試などの記述問題をしっかりと押さえ、同じ「ような」内容を「自分の言葉で」再生できるように練習しておこう。

わざわざ「ような」と「自分の言葉で」にカギ括弧を付したわけだが、説明の記述問題対策において重要なのは、「模範的な解説を丸ごと暗記しようとしない」ことである。特に、記述が苦手な受験生ほどそうした対策に走りがちだが、「言葉が思い出せなくて、説明が記述できない」という状況に陥り、余計に解答を書くのが難しくなってしまう。理科の記述は国語ほど意味内容や文構造の複雑さを要求されないので、まずは「絶対に外せないキーワード(これは覚えなくてはならない)」を意識し、用語同士を繋いで説明の文を構成していく意識で取り組むと良い。

また、地学・物理の分野で算数のスキルが要求されるのも暁星中の理科の特徴である。物理の問題はそもそも計算が多いので、基礎的な計算方法については当然頭に入れておく必要があるが、力学や電気に関する計算に、比を用いた計算や特殊算が応用されるケースがある。また、地学については旅人算や相似を用いた計算が出題されやすい。暁星中の算数は出題傾向が毎年類似しているため、第一志望として考えた場合に、対策の重点が頻出分野に偏りがちである。比、速さ、図形はほぼ毎年出題されるので対策が兼ねられる利点もあるが、特殊算の応用などはやや疎かになりかねない。過去問対策に加え、文章題の練習を少し厚めに設けておくと良い。

一方、化学分野に関しては、普通の小学生の知識や科学的リテラシーではきちんと考えて正解するのが難しいような問題がよく出題される。したがって、問題文の記述を参考とした類推が不可能な問題はまず飛ばしてしまい、確実に答えられる問題に集中するのが良い。逆に言えば、基礎的な知識があり、問題文や図表を理解する読解力があれば答えられるような問題で得点できないと、化学分野が大きな重荷となってしまう。実験結果の考察や実験装置・設計に関する理解を問われる問題が多いため、頻出の実験に関しては実験器具の使い方や装置の構造、実験結果をきちんと頭に入れておくこと。

なお、化学分野で他の受験生と差をつけたいのであれば、参考書に掲載されている実験のみならず、教育番組やインターネット動画で紹介されている面白実験にも目を配っておくと良い。本年度出題されたシャボン玉の実験は、中学入試で頻繁に出題されるものではないものの、比較的有名な実験ではある。暁星中のみならず、上位校〜難関校の理科ではシャボン玉のような身近な現象や素材をテーマとする実験の問題が少なくない。多くは問題文や実験結果からの類推で考えられるようになっているが、本年度のように実験を知らないと答えるのが難しい問題も存在する。また、類推を前提とする問題にしても、結果を知っていることは受験において大きなアドバンテージである。したがって、時間にまだ(比較的)余裕のある5年生〜6年生1学期の期間を利用し、積極的に実験を行ってみたり、科学実験の番組や書籍に親しんでおくと、強みになるはずである。

以下、各分野の学習において特に注力すべき点を挙げておく。

【生物分野】

なるべく得点を稼いでおきたい分野である。単純に用語や知識を問う設問が他の分野よりも多いので、知識に穴がないように勉強しておきたい。また、生命現象の意義や実験計画に関する説明を記述させる問題が多いのも特徴である。前者に関しては教科書的なレベルの知識と理解があれば十分である場合が多いが、後者については、初見の実験が扱われる中で、「対照実験」の必要性に関する理解が問われやすい。頻出の実験をよく見ると、ある要因の影響を単離するために、他の要因の存在の有無を実験間で統一させたり、予備実験を通じて他の要因の影響が存在しないことを確認していることに気付くはずである。そうした実験の設計にも目配りしながら問題演習に取り組むと良い。

【地学分野】

暁星中の入試では、色々な意味で合否の鍵を握る分野である。まず、設問数が他の分野よりも多くなる傾向にあるほか、化学分野と並んで難しい問題が出されたり、実力差がはっきりと現れやすい問題が出題されたりすることが多い。特に、天体は苦手とする受験生が多い上に、思考力を要する問題が作りやすい分野である。天体の運行や見え方については、丸暗記するだけではなく、きちんと平面図上で考えられるように理解を深めておきたい。また、分野を問わず、相似を用いた幾何的な計算が求められることが少なくない。知識を定着させる負担は生物や化学ほど大きくないと思われるので、こうした計算をしっかりとこなせるように習熟を深めておこう。

【物理分野】

本年度の問題は易しくはないものの、浮力に関する基礎的な理解と算数における「水量の変化」の応用レベル程度をこなす力があれば、答えられるはずの問題である。このように、物理分野の問題は限られたパターンの物理原則や計算処理に還元される場合がほとんどなのだが、多くの受験生が物理を苦手としている。これは、「問題の解き方」という個別的なレベルで見てしまうと、単純に知識を問う問題が少ない物理分野では、頭に入れる情報量が増えすぎて覚え切れないのが一因である。したがって、物理への苦手意識の払拭には、問題ごとにどういった解法のセオリーに還元できるかを整理しながら、「またこのパターンか」という発見に自らを導くような学習が効果的である。また、力学や電気に関する基礎的な原理に特殊算が組み合わされた問題には注意しておこう。

【化学分野】

年度によってばらつきはあるものの、基本的に難しめの問題が出題されるのを覚悟しておいたほうが良い。教科書的な知識に基づいて考えられる問題ならまだしも、小学生レベルを超えた科学的理解や知識が無ければ正解が難しい問題も出題されるため、他の学生とここで差をつけたいなら、積極的な知識の収集が必要である。特に、身近な素材を用いた実験には意識して触れておくと役に立つ可能性がある。ただ、合格者平均点が取れれば良いと割り切るならば、そこまで知識を広げるよりも、頻出の計算問題を円滑に処理できるようにするための練習に時間を割いた方が生産的である。むしろ、教科書で紹介されているような現象や実験に関する問題で失点しないことが、合格を確実にするためには重要となる。

 

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2020年度「暁星中学校の理科」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

40分の試験時間に対して解答箇所が33個。前年度に比べると記述問題が減ったこともあり、設問数はやや増加したが、本年度は選択肢や計算の問題でも思考力が必要なものが多く、時間を要するはずである。特に初っ端の化学分野は考察力のみで答えるのが難しいため、必要以上に悩むことなく、まず他の分野に集中する割り切りが求められる。

【大問1】 化学分野:水とシャボン液の性質

  • 難度:
  • 時間配分:8分

洗剤が持つ界面活性作用による水の表面張力の変化は、数年前も暁星中の入試で扱われていた。その際にも、問題文のみでは着想が難しい実験結果の類推が求められていたが、本年度の問題も、同じく予備知識が無いと答えるのが難しいレベルである。(1)(2)だけは確実に得点しよう。

(1) 液体の凝集性に関する知識が無い場合は、図1と図2の対比から答えを考えることになる。図1は水のみの水滴、図2はシャボン液の水滴(シャボン液は水に洗剤を加えて作るので、便宜上「水滴」と呼んでも良いことにする)であるから、水の性質を表しているのは図1の方だと判断できる。図1と図2の水滴を比較して、「どちらの方が」縮んでいると言えるだろうか?これは感覚的に図1の方であると判断できよう。ならば、水に縮む性質があるとして、それは水同士が引き合うから生じるのか、反発するから生じるのか?…と考えていけば、「水同士は引き合い、そして縮む性質を持つと言える」という答えにたどり着けるだろう。ポイントは、図1単独で判断するのではなく図2との比較を用いること、および直感的に判断しにくい①ではなく、②から考えることにある。こうした考え方は、科目を問わず役に立つ。

参考までに、水を構成する小さな粒(水分子)は隣同士で引き合うため、力の釣り合いのもとでほぼ定位置に安定して留まるが、空気など、別の物質(相)と接する境界面では隣り合う水分子が存在しないため、一方的に内側へと引き込まれる力が働く。そうした分子の数が多いほど形状は不安定な状態にあるため、表面積が最小になるように、水は球体に近づく。この時、球面に沿う形で発生する張力が表面張力である。洗剤などの「界面活性剤」は、水分子同士の凝集を妨げるため、表面張力を弱める働きを持っている。

(2) 水は油と混ざらないので、油性マジックの文字に水が触れても、油性成分が水に溶けだしていくことはない。一方、石けんや洗剤には水にくっつきやすい部分と、油にくっつきやすい部分とが含まれている。そのため、シャボン液を油性マジックの文字に垂らすと、洗剤に油の粒が付着し、洗剤と一緒に水の中へ拡散していく。その結果、マジックの文字は滲むことになる。

(3) 洗濯のりとゼラチンの物性、および(4)で問われている「シャボン液でつくられた膜が割れる」理由が共に分かっていなければ答えようがない。さらに、手掛かりとなる情報が問題文中に全く存在しない(強いて言えばゴム風船との対比を参考にせよということだろうが、それだけでシャボン玉が割れる理由を考えろというのは酷な要求であろう)ため、実質的にマニアックな知識問題となっている。さて、シャボン玉が割れる理由について最も体験から想像しやすいのが、「乾いてしまう」ことであろう。ゼラチンは保水力を持つため、シャボン液に混ぜることで乾燥を防ぎ、シャボン玉を長持ちさせる効果があるとされる。知覚が及ばないため分かりにくいのが、「重力による膜の厚さの変化」であろう。

たとえば、天井などに付着した水滴が落下する時のことを考えてみると良い。水滴は形を保ったまま落ちるのではなく、上方の水が徐々に下方へ移動し、物体と接している水の量が少なくなるという形状の変化を経て落下する。これと同じことがシャボン玉でも生じている。空中へ放出されたシャボン玉の膜では、重力によってシャボン液が下へ集まるように動き、その結果、上方の膜はどんどん薄くなってしまう。そのため、膜の強度が低下し、割れてしまうのである。これを防ぐためには、シャボン液の移動を妨げれば良い。洗濯のりには液体の粘性を高める作用があり、シャボン液に混ぜると液が下方へ移動する速度が減少する。そのため、シャボン玉は長持ちするようになる。このように、本問を解くには様々な知識が必要であり、かつ中学受験で頻繁に出題されるような内容でもない。解けなくても仕方がない問題と考えよう。

(5) 「水中シャボン玉」とか「逆シャボン玉」と呼ばれる実験を想定した問題で、実験を知らなければ答えられないであろう問題。(2)で触れた通り、洗剤のような界面活性剤には水とくっつきやすい部分と、油とくっつきやすい部分が存在する。そして、シャボン液の状態では水とくっつきやすい部分を液側に、油とくっつきやすい部分を空気側に向けた形で洗剤の粒(分子)が配列している。ここに空気を吹き入れると、液中に出来た空気の塊に向かって「油とくっつきやすい部分」を並べた分子の層が新たに形成され、元々外の空気と触れていた層と、内部に出来た層との間に水が閉じ込められるような形で薄いシャボン液の膜が形成される。これが、通常のシャボン玉の原理である。

一方、シャボン液の中にシャボン液を落とすと、新たに落とされたシャボン液の周りに空気が入り込む。すると、この空気に対して、元々存在していたシャボン液に含まれる洗剤の「油とくっつきやすい部分」と、落とし入れられたシャボン液の「油とくっつきやすい部分」とが向き合うように球形に配列し、落とし入れられたシャボン液を中に含む形で空気の薄い膜が保持される。その結果、シャボン液の中に新たにシャボン玉が形成されたように見えるため、この現象は「水中シャボン玉」と呼ばれる。また、「水中シャボン玉」は、通常のシャボン玉(シャボン液の膜に空気が含まれる)とは逆転した構造を持つことから、「逆シャボン玉」とも呼ばれる。いずれにしても、本問の結果を予測するにしても、シャボン玉の形成原理を知っていないと正しい類推にはなり得ない。その点からも、本問は知識問題であり、ほとんどの学生については「当て勘で正解できればラッキー」といった、運不運を問う問題になってしまっていることだろう。

【大問2】 生物分野:植物の生殖

  • 難度:やや難
  • 時間配分:10分
  • ★必答問題

植物の生殖は、中学受験だと受粉までの扱いに留まることが多いが、本問では受粉後の経過に焦点が当てられている。記述問題は考えれば十分に推測可能なレベルだが、実験の設定と結果の読み取りの難度がやや高い。読解の精度とスピードが大事。

(3) 本問では、「メダカの受精様式で生じそうな問題」と「メダカと植物の受精様式における相違点」を意識して押さえていくのがポイント。水中の卵に精子を振りかけただけだと、せっかく受精した卵も、外界に無防備に晒されていることから、他の生物に食べられるなどの要因で失われてしまうことが想像できよう。それに対して、植物では花粉管を通じて精細胞が確実に卵細胞の元へ届けられると共に、胚珠によって外界から遮断されていることから、他の生物に食べられにくいという利点が存在する。

(4) 実験結果を読んで考える問題だが、bとdの選択肢の違いが把握できたかどうかが鍵になる。共に植物Aの柱頭のねばねばした液体と、植物Aの花粉との組み合わせだが、bでは「別の花から取った」花粉と書かれているのに対し、dでは「花粉を得た花と同じ花の」柱頭と書かれていることから、bは同じ植物Aであるが異なる花の間での受粉を、dは同じ花の中での受粉を模していることが読み取れなくてはならない。さて、花粉管の伸長が見られなかった実験はdのみであるから、bとdを比べることで、受精は同じ植物種の中でも花が異なれば生じるが、同じ花の中では起こらないと考えられる。

(5) 簡単そうに見えて、実は奥が深い問題である。真っ先に思いつくのは、「砂糖を含まない寒天の上に植物Aの花粉をまく」実験を行い、aの実験と比べることであろう。だが、この比較は「砂糖があれば花粉管が伸長する」という十分条件を証明するものであり、「砂糖が必要である」ことの証明にはならない。なぜならば、「砂糖がなくても、柱頭のねばねばした液体があれば花粉管は伸長する」という結果が得られた場合、花粉管の伸長には「砂糖または柱頭の粘液」があれば良いことになり、「砂糖が必要」とは言えなくなってしまう。したがって、「柱頭のねばねばした液体のみをまぜた寒天の上に植物Aの花粉をまく」実験を行い、bの実験と比較するのが最良である。もっとも、自然界では柱頭の粘液だけで花粉管の伸長が起こっていることを考えると、柱頭の粘液と寒天を混ぜるのみで花粉管が伸長する可能性は排除できない。その場合も、砂糖と寒天を混ぜたのみの培地と(程度は違えど)同じ結果が得られることから、柱頭の粘液には砂糖と同じ成分が含まれており、花粉管の伸長には砂糖が必要であると類推することは、証明できないまでも、可能ではある(実際、その通りである)。

<落とせない問題(4)>

【大問3】 地学分野:内惑星と外惑星の観測、小問集合

  • 難度:やや難
  • 時間配分:11分
  • ★必答問題

前半は内惑星と外惑星の観測に関する問題である。内惑星については、頻出の「金星の観測」における基礎的な理解を適用すれば答えられる。一方、外惑星の観測が出題される頻度は相対的に低いため、知識に頼るのが難しいかもしれない。幾何学的な検討を通じて、答えにたどり着けるかどうかが勝負。後半の小問集合は基礎的な内容ばかりなので、失点は命取り。

(3) 天体の見え方を考える際のポイントは、内惑星だろうが外惑星だろうが同じである。アは月や金星が見えないのと同じ理由、すなわち天体が太陽と同じ方向にあるために、地球からは観測できない。逆に、ウは満月が見える時の地球・月・太陽の位置関係と同じであり、観測できる。したがって、アは正しく、ウは誤りである。イとエについては、それぞれ夕方と明け方に相当する地球上の地点を円周上にとり、接線を引いて考える。いずれも、接線に対して垂直な方向に外惑星が位置することから、観測されるのは南の空であると判断できる。よって、どちらも正解。オについては、地球と外惑星の両方を動かすと混乱するので、地球の位置を固定し、相対的な速度の差を利用して考える。選択肢の文の通り、地球の公転周期が外惑星よりも短いとすれば、回転の速度は地球の方が速いはずなので、地球の位置を図2と同位置に据えると、外惑星は公転方向とは逆向きに移動して見えることになる。新幹線が普通の電車を追い抜く時、新幹線の中からは電車が後方に遠ざかって動くように見えるのと同じである。よって、観測できる外惑星の順番は⑤→⑧→⑦→⑥となり、誤りである。

(4) 作図してみれば、外惑星の満ち欠けの程度が内惑星よりも小さいことは明らかである。基本事項だが、天体の満ち欠けは「まず、天体と太陽の中心を結ぶ線に対して垂直な線で天体を分割し、太陽側に面する半分を光っている面と考える」→「次に、天体と地球の中心を結ぶ線に対して垂直な線で天体を分割し、地球側に面する半分を地球から観測できる面と考える」という方法で作図し、視覚的に捉えることができる。さて、たとえば図1の②と図2の⑥は図の方向に対して右半分が光っている状態だが、地球との位置関係の違いにより、②では地球からは光っている面の半分しか見えないのに対し、⑥では3/4ほどが見えるという図が描けるはずである。さらに、同じく右半分が光っている状態のまま、外惑星と太陽との距離をさらに大きくしてみると、遠ければ遠いほど、光っている面のうち地球から見える範囲が広くなることが分かる。これが、太陽との距離が近い火星ではある程度満ち欠けが観測される一方、より遠い木星や土星では満ち欠けがほとんど観測されない理由である。

ところが、作図によって満ち欠けの小ささは容易に確認できるものの、言葉での説明が難しい。太陽から真横に引いた直線上で天体を近づけたり遠ざけたりすると変化するものは、地球−外惑星−太陽の角度であり、外惑星が遠ざかるほど、その角度は小さくなっていく。よって、「天体の光っている面」と「地球から見える面」の重なり具合の大きさを言葉で説明しようとすれば、「外惑星と太陽および地球を結ぶ線が作る角が大きくならない」という答えになる。

(7) なぜこの問題が地学の大問に配されているのか些か疑問だが、物理で学習する物体の運動の法則通りに考えれば良い。物体の運動する方向に力が与えられている限り、物体は加速し続ける。イ以降は傾斜が緩くなるものの、依然として下方向に傾いており、運動方向に力がかかり続ける点に変わりはない。加速度は小さくなるものの、速度は最低点(ウ)に到達するまで微小ながらも増加し続ける。

<落とせない問題(3)>

【大問4】 物理分野:密度と浮力

  • 難度:やや難
  • 時間配分:11分
  • ★必答問題

(1)から(3)までは正解できなければならない問題で、実力が問われるのが(4)以降。液体の密度が1[g/cm3]ではない場合の浮力の考え方さえ分かっていれば、実質的には算数における「水量の変化」の基礎的な計算である。

(1) 全く難しくない問題なのだが、問題文に書かれている「一辺が5cmの立方体」という情報を読み落とすと、表からXを推計する問題だと勘違いしかねない。「難しい問題が出るはず」という先入観を排し、まずは問題文を正確に読むこと。

(4) アルミの密度は油・水のいずれよりも大きいため、(3)の答えの通り、アルミの立方体は容器の底にくっつくことになる。その図が描ければ、以降の考え方は算数でよく見る水量の変化の問題と同じである。なお、ここで問題になっているのは水と油の境界の位置であり、油の液面の変化については関係が無いため、単に300cm3の水に125cm3のアルミを底まで沈めた場合の水面上昇を考えれば事足りる。さて、所期の水面の高さは300÷(10×10)=3[cm]であるから、1辺が5cmのアルミの立方体は一部が水面から出た状態になる。よって、「水量一定」の考え方から、300÷(10×10−5×5)=4[cm]が、アルミの立方体を入れた後の水面の高さ、すなわち容器の底から水と油の境界までの距離であると求められる。

(5) 物体を液体に沈めた際に生じる浮力は、(物体が押しのけた液体の体積)×(液体の密度)によって計算される。よって、まず油の層が125cm3の立方体に与える浮力を考えた場合、最大で125×320/400=100[g]の浮力が生じると分かる。これは、木片の重さ40gよりも大きいため、木片は水の層に達することなく、一部分だけが沈んだまま油の層に留まると判断できる。

(6) 木片は油から40gの浮力を受ける位置で、力の釣り合いによって静止する。40gの浮力を生じさせる油の体積は(浮力)=(物体が押しのけた液体の体積)×(液体の密度)の関係から、40÷320/400=50[cm3]である。よって、木片が50cm3だけ油に浸かって浮いている図を考えれば良い。この時、油面の下には水300cm3、油400cm3のほか、実験bで容器の底まで沈めたアルミの立方体125cm3および木片50cm3が存在していることになる。よって、(容器の底面積)×(水面の高さ)=(液体の体積)+(沈んでいる固体の体積)の考え方から、この時の水面の高さは(300+400+125+50)÷(10×10)=8.75[cm]と求められる。

<落とせない問題(4)>

攻略のポイント

本年度は各分野、基礎的な理解を応用的な形式で考えさせる良問が多かった。それは他方で知識のみで即答できるような問題が少なかったことを意味し、合格者平均が5割強という受験生受難の年になっている。その中で、生物と地学の選択肢問題や物理の前半部分は点数を稼ぎやすいレベルになっており、逆に言えば、この辺りで失点すると、合格者平均への到達はかなり難しくなってくる。
本年度の問題を難問たらしめているのは、化学分野である。例年、化学分野は他よりも難しい設定である印象を受けるが、本年度についてはシャボン玉の実験に関する知識が備わっていないと相当苦しい問題であり、(1)(2)が正解できれば上出来であろう。暁星中の化学は、折りに触れ、このような難問が出題されるので、そうした問題には早々と見切りをつけ、得点できそうな箇所で点数を稼いでいくのが合格への早道ではある。また、本年度は説明の記述問題でも難度の高いものが目立った。化学分野の記述のように特別な知識が要求されるものはともかく、知識や図表から類推が可能な問題に関しては、解答の組み立て方を練習しておく必要があろう。

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